1日が24時間で足りない!
そう思ってる人は結構居そうですが、48時間になってもそれはそれで大変そうだと思いました。
「あーッ!? もうっ! 無茶しすぎですぅ!」
いきなり妖精さんが目の前に現れて騒ぎ立てる。俺は今まで妖精さんがどこにいたかを知っているから悪いとは思わない。この妖精さんは俺が砲を駆逐イ級に撃った後に艤装のハッチ? のような場所に入っていったから答えは分かり切っている。
無茶のし過ぎ? 果たしてそうだろうか? 受けた攻撃はたった一発。最後に一緒に吹っ飛んだときくらいだと思う。目の前でまだぷんすか! と怒っている妖精さんに適当に相槌を打って手を振ろうとして――
「あーハイハイ分かってる分かって――ッ!」
左腕に激痛が走る。腕を見ると袖が破れていて腕は血だらけ、深紅のセーラー服には血が黒いシミを作っていた。なんで今まで気づかなかったんだろう。アドレナリンの力ってすげぇな。この傷じゃあ妖精さんもそりゃあ怒るわな。
「ほら見た事かですぅ! 近くの港に行きますよ! しっかり休まないとすぐに死んじゃいますよぉ!」
人なんて死ぬときはあっさり死ぬかしぶとく生き残るかのどちらかだと思う。そして俺はあっさり逝く方だろうから、この妖精さんの言ってることは多分正しい。
そしてやっぱり倉庫に行くことは確定のようで、妖精さんは騒ぎ続けている。
確かに前世でも経験したことが無いレベルで出血してるし、処置しないとマズイだろう。それに飲まず食わずも辛すぎるし、この際にしっかり休んでおきたい。……怪我したくらいで簡単に意見をひっくり返す俺は意志が弱いのだろうか。
もう一度イ級を見る。歯が一本抜けてちょっと間抜けな雰囲気を漂わせているものの、先程同様ピクリとも動かずに波に揺られている。
死体の処置について妖精さんは何も言わなかった。このまま魚や鳥に食べられるのか、それとも消えるのか、気になるところだったけれども、今はそれよりも大事なことがあるからそのまま放置した。
「難しいなぁ……」
本当に儘ならないと思う。ゲームの中じゃあ一番の雑魚だった筈なのに、ゲームじゃなくなったらこれか。他のイロハ級、鬼や姫はこれ以上? だったら人間、いや艦娘って規格外も良いところだろう。俺も仲間入りしてしまった訳だがイ級に苦戦するなら落ちこぼれもいいとこじゃないか?
そう考えながら、妖精さんに言われた港へ向かう。港までの間に深海棲艦から襲われなかったのは夜で見えなかったからに他ならないだろう。
「知らない天井だ」
お約束を呟いた後に起き上がる。やってみたかったんだよねコレ。
この倉庫に着いた後は忙しかった。艤装を外して服と一緒に修繕、弾や燃料などの補給、食事と睡眠。この間僅か20分だ。因みに俺がしたことは艤装を外して服を脱ぎ、飯を食べて寝ただけである。ほとんど妖精さんがやってくれた。俺をダメにする気かな?
そして俺は今現在スポブラにスパッツという通報待ったなしの恰好……ではなくちゃんと服を着ている。一番最初に服を直してもらった。いくら何でもあんな格好で寝るのはありえない。
「あっ起きましたかぁ? 体の調子はどうですかぁ?」
妖精さんが話しかけてきた。腕もまだ痛むが昨日ほどではない。昨日は寝る前に何から何までお世話になった。お礼を言わねばなるまい。
「あー……昨日は助かったよ。ありがとう」
「無事なら何よりですぅ、あ、これ食べ物ですぅ」
そんなことを言う妖精さんは袋を持っている。……ん? 昨日の食べ物といいそれといい、何処から持って来たんだ? やっぱり泥棒?
「ちゃんと廃棄されたやつですから安心してください。完全にダメになる直前に採って来たので大丈夫ですぅ」
絶対大丈夫じゃないヤツだ。海外と日本のダメの基準は違い過ぎるってテレビで見たような気がする。まぁ食べるけど。それで腹痛を引き起こして痛い目にあって初めて俺は学習する。それでしばらくすると忘れるまでがワンセットだ。
「漁ったならセーフ……か? 泥棒より良いけど……」
「つべこべ言わない! 文句あるなら食べないでくださいぃ! あと普段から少しでも女の子らしい言葉遣いをしてください!」
確かにそれもそうだ。文句があるなら自分で調達してこいって話で……口調はうん、猫被るのは慣れてるし、そうそうボロは出さないだろうよ。
俺としてはそんなことより侵入するなら廃墟にしてほしかった。明らかに誰か使ってますってところで一晩過ごせたのはちゃんと休めたと同時に怖くて仕方がない。こちとら元日本人の一般人だぞ? 不法侵入で捕まりたくはないんだよね。
まぁ、これらのことも日本ではアウトでも海外なら案外セーフってこともあり得るのか? 日本の法律も良くわからないのに海外の法律を知ってるわけがないが。
「まぁ食べたら直ぐに出るからいいか。妖精さん、その食べ物頂戴」
「これの他にも食べ物がありましたのでぇ、しばらくは持つと思いますぅ。頑張ってください」
……まだ移動から半日しか経ってないんだよなぁ。こんなんで日本まで帰れるんだろうか。妖精さんの後ろにある袋は大きい。菓子パンなら六つくらい入りそうだな。一日、いや二日か?
地図を見る。今いる場所は……だったらまずはジャカルタを目指そう。そしてブルネイ、フィリピン、台湾、そして日本だ。だいたい六千キロメートルと見た! 四十日も要らねぇ! 二十日でクリアしてやるぜ!
「他に何か必要な物はありませんかぁ? 簡単な物なら用意できますよぉ?」
一体“何が”簡単なら用意出来るんですかね……盗みの難易度かもしれない。この妖精さんならやりかねない。廃棄処分とはいえ食べ物を盗ってきたから無いとは言い切れない。
「じゃあナイフとフライパンと水筒をくれ」
艤装があるから動物は獲れるだろうし火も点けられるだろう。だから俺は調理器具を選んだ。水は煮沸出来るし、生肉を食べることもなくなるだろう。素人だから衛生の管理は大事だという事しか分からない。サバイバルの動画を見ても出来るようにはならないんだよ。
分かりましたぁなんて言ってどこかへ行ってしまう妖精さんを見送る。……俺も妖精さんにばかり悪事を働かせる訳にはいか。もう既にやらかした後だ、今更善人みたいなこと言ってる場合じゃない。
倉庫の外に出る。雲が張っていて薄暗い。朝方か夕方か判断しづらい空をしていた。通行人からチラチラ見られている。……やっぱり外国だろうとセーラー服は珍しいんだろう。目当ての物を探して港をふらつく。
誰からも話しかけられないのは良かった。日本語、と多分この体は英語でも問題は無いだろう。しかしここはインドネシア。言語が通じるかわからない上にボッチ歴の長い俺には外国人の相手は難しすぎる。
「ここにもない……あそこには……あった」
目当てのものを見つけたので場所を覚えて倉庫に戻る。きっと妖精さんが碌でもない方法で入手してきた三つの道具を持って待っているだろう。
「日本に行く為なら泥棒だってやってやろうじゃねぇか」
そう呟いた俺の顔はきっと、前世で友達から「悪い人がしそうな顔」と評価された顔をしているんだろう。今の顔は前世と違って自己補正があっても整ってると思うしそうそう酷い評価はされないだろう……
なんてことを考えながら倉庫に戻る。
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――とある一般人たちの会話
「おい、お前見ろよ。あの子すっげぇ可愛くね?」
「確かにな。お前の可愛いダリアが霞んじゃうね」
「ぶっ殺されてぇか!?」
「まぁ落ち着け。俺が彼女のハートを掴んでくるのを見てろよ――ッ!?」
「な、なんだあの顔……やっべぇ……」
「やっぱり止めるよ……ありゃあテロリストの顔だ。絶対まともじゃない」
「ああそうしておけ。……残念だったな。そう簡単にいい女は見つからねぇって話だ」
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予想通り倉庫には妖精さんが戻ってきてた。三つの道具もある。ホントにどうやって調達してきたんだろうね? せめて廃材からのリサイクルであって欲しい。何であれ希望を叶えてくれた妖精さんにはお礼を言うべきであろう。
「ありがとう妖精さん。……ところで外には普通に人が居るけどどうやって海に出るつもり? 昨日みたいに人避けで行けるかな?」
「それはやってみないと分からないですぅ」
そりゃそうか。もしかしたら案外コスプレです~でいけるかもしれない。
「そうと決まれば行くか。なるようになるだろう」
いざ、二度目の海へ向かって……
艦これ要素ある? 無いですね!
速く他の艦娘と絡ませたい……