物事って、集中してる時以外は、むしろリラックスしてる時の方がいろいろ捗りますよね。
トイレ、お風呂、散歩etc……。
日常が……ほのぼのがッ! 足りないッ!!
「よっ、ほっ……ヘヘッ」
横にステップをして、時には急ブレーキや急加速、身体を捻って大ダメージを避ける。
俺はまるゆから言われた通り、艦載機から放たれる攻撃を観察していた。
まるゆの言っていた弱い攻撃が豆鉄砲みたいなミニマムサイズの弾。確か機銃? だっけ……。
それらは密度は高いものの威力は大したことが無かった。全身が
でも目に入ったり、魚雷に当たると何が起こるか分からないから魚雷は盾で庇って、目は半開きで少しでも入らないようにしている。失明は怖いもんな。
そして強い攻撃が、艦載機から落とされる黒い玉。
ピンポン玉くらいの大きさのソレは、弱攻撃より飛んでくる頻度は少ないし、速度も自由落下だから速いとは言えない。
盾で防いだ時に結構な衝撃があったからきっと爆弾か何かで、ずっと盾を構えていたときに盾が矢鱈と重たくなる原因の大半はコレだろう。そして盾にぶつかった時にガンガンと喧しい音を出すのが弱攻撃だ。
「おっと」
避け切れそうに無い強攻撃を盾で防ぐ。
出来るだけ危険度の高い黒い爆弾は気合で避けて、もしダメそうな時に盾で防ぐ。しかもそれなりの高さから落とされてるから見てから回避が出来る。
「ヘッ……イージーだな!」
『スチュワートさん、ちょっと速いです……』
まるゆから通信が入る。ちょっと速いって文句を言うみたいなトーン言われた。
……まるゆから教えてもらったのが想像以上にいい感じだったから、きっと無意識的にスピードが出ちゃったんだろうな。だから俺にアドバイスをした過去の自分を恨んでくれ。俺はアドバイスをくれたまるゆに感謝するけど。
『遅かったら置いてきますよ! ……騙されて良かったです』
だってお陰でこんなに楽できてる……クソ痛いけど。
『でも過信し過ぎないように気を付けてくださいね。いくら大したダメージじゃなくても、艤装はどんどん傷ついていっちゃいますよ』
『大丈夫大丈夫! ……です』
まるゆにそう通信を叩きつけて後は無視する。どうせ緊急性のある内容ならしつこく通信してくるだろう。
それにその辺は妖精さんから教えてもらってたし。艤装が大破まで行ったらその後は艦じゃなくて只の海に浮く人としてあの弾受けるんでしょ? 普通に死ぬわそんなの。
死にたくないなら中破で引き返すのが良いって香取さんも言ってたし、俺も死にたくはないけど……逆に言えば中破までは安全に無茶できるってことだろ?
「でも『艦これ』みたいに中破とかで服が破れるのはなぁ……」
自分じゃなくて他人、そして
相手がそう思ってなくても俺がそう思う。俺だって自分が他の艦娘の前で服を破られるのは本意じゃないし、そんな変態チックなムーブはしたくない。
……こんなことを考えられるくらいには余裕ができている。
艦載機からの攻撃を避けながら進み続け、気が付けば赤城さんの影は随分と大きくなっていた。
「……ん?」
よく見ると赤城さんの近くで水柱が上がっている。俺は魚雷を撃ってないし……まるゆか?
『もうこっちの攻撃も射程内ですよ! どんどん撃って大丈夫ですって!』
通信が飛んでくる。流石にこれは無視できないな。
『分かりました。ありがとうございます』
そう言うが早いか早速魚雷を発射させる。いつまでも投擲物ばっかりで出番無くて鬱憤溜まってんだろ〜? 赤城さんに全力でぶつかって行け〜? なんて心の中で言いながら。
随分と赤城さんの近くまで来た。後退する赤城さんを守るように展開されている艦載機が実に鬱陶しい。
赤城さんは俺たちに攻撃をするだけの元気がまだあるらしい。だが、まるゆと俺の魚雷攻撃によってところどころ服が破れたりしている。
同じように俺も、服の袖や裾が所々焦げたり破れたりし始めているものの、未だ軽傷……だと思う。
魚雷は既に撃ち尽くしているし、投擲物もない。ここまで来たんだからと遠慮なく盾を構えている。
時雨にやったみたいにラムアタックを仕掛けるしかないと考えている……っていうか、そうやって赤城さんを大破まで追い込むか、赤城さんが降参する以外に決着が付かないというか……。
俺は降参するつもりは無いし、赤城さんも同じだろう。だからあとは俺が致命傷を負わないように赤城さんのところまで辿り着けば決着だ。
それなのにあとちょっと、あとちょっとが届かない。火事場の馬鹿力ってヤツだろう。ここに来て一段と厳しさを増した攻撃に、なかなか距離を詰められない。
―――ドォン!
爆発音と共に赤城さんが水飛沫で隠される。
『スチュワートさん! 今です!』
そして間髪入れずに送られてきた通信。
内容からして赤城さんに有効打を入れたんだろう。最高かよ。
『まるゆさんナイスゥ!』
一瞬止んだ攻撃の隙間。いくら疲れていたとしてもこの隙を逃すほど馬鹿じゃない。
「うぉぉぉぉおおおおおおっ……!」
赤城さん目掛けてアクセル全開。俺自身が一つの弾丸になることだ。
「ッ! しまっ……」
焦ったような顔の赤城さんが一瞬視界に映り、直後盾に感じる衝撃。手首、肘、肩までの衝撃は、神州丸さんからガチで投げられた時以上で、脱臼したんじゃないかと思うほど。あまりの衝撃から、ぶつかった瞬間に首が振られて盾に頭を勢いよくぶつける羽目になった。だけど―――
―――
これらの感覚で確信してから惰性で進む。止まるまで相当な距離を進んだ。
「ハァ……ハァ……や、やったー!」
念願のリベンジを果たせたぞ! 今日から俺はヴェンデッタだ!
滅茶苦茶盾が重たい。いつもなら不快に感じるコレも、勝った後には心地良いものに変わる。
「ヘヘヘ……」
息を整えて振り返る。赤城さんの影は無く、同じように飛んでいる艦載機も無かったからやっぱり俺の感じた手ごたえは間違いじゃなかった。きっと赤城さんは通信の来ないまるゆが回収して運んでくれたんだろう。
「さて、他の人達は……」
―――ズルズル……バシャッ
前方から水音。
だがしかしそこに人影は無かった。
視線を下に降ろしていくと……
「ヒェッ」
真っ青な顔、海面に広がる髪、一緒に浮かぶ鉄の残骸。
これは忘れもしない……
「潜水カ級……」
いやマズいどうすればいい? 戦う……は武器無いし……逃げる? っていうかなんでここに深海棲艦が!? いつの間にか鎮守府の海域の外に出ちゃってたか? やっぱり救援を……
『スチュワートさん! 大丈夫ですか!?』
まるゆ~! いいタイミングだありがとう愛してるッ!
『まるゆさん潜水カ級が居ます! 自分魚雷持ってないですどうすれば良いですか!?』
『スチュワートさん、そういう冗談は良くないです』
……は?
「―――ぷはあっ! ……ちゃんと見てください。これは潜水カ級じゃなくて。赤城さんですよ」
「……」
ん゛っん~……よく聞こえなかったけど、改めて確認しようじゃないか。
気を失ってるのか、顔を真っ青にしてピクリとも動かない赤城さんと、艦載機の破片が俺の足元近くに漂っていた。
「……鎮守府に赤城さんを連れて戻りましょうか」
赤城さんを背負うように担いで、ゆっくりと動き始める。後ろには、艦載機の破片を拾って、落とさないように慎重に進むまるゆが見える。俺と赤城は勿論、まるゆの服装もボロボロで疲れ切っている様子を見せている。
俺も戦闘が終わって気が抜けたことと、すっかり真上まで昇っていた太陽と、雨ではないものの季節による湿っていて生暖かく、気持ち悪い風。そして早とちりの所為で感動が少なかったのもあって、一気に疲れてきた。
赤城さんにリベンジは果たせた。時雨の乱入、まるゆと神州丸さんの支援があったものの、それでやっと倒せるようなレイドボス染みた赤城さんは、やっぱりスゲーななんて考えていた。
※主人公は午後に呼び出しを喰らっています。
※赤城さんは死んでいません。