桜の散る季節……。
今年の桜は心なしか散るのが速いように感じでビックリしてます。
まるゆの指示に従い、フラフラとした足取りながらも鎮守府に戻る。
……早く横になって休みたい。
身体の疲れと気の緩みから、大きな欠伸をしてまるゆに話しかける。
「赤城さん撃破したってことは、実質私たちの勝ちで良いんじゃないですかね?」
「赤城さんが最後だから、もう演習は終わってるよ」
「えっ」
……他のところ終わるの早くね? っていうか何でそんな事知ってんだよ。
それにいくら各個撃破重視の作戦を立てたからと言っても、一応チーム戦なのに俺のところに来たのがまるゆと神州丸さんの艦載機だけって……薄情過ぎない? 赤城さんなんて強敵中の強敵、みんなで力を合わせるべきだと思うんだけど……。
残念ながらどうやら教官の中にヒーローはまるゆだけだったみたいだ。神州丸さんは謎のクソ強助っ人枠に違いない。
「まるゆは結果知ってるけど……聴く?」
うわめっちゃ気になる。終了時点で俺とまるゆは生存、そして伊26と時雨、赤城は倒してるから……どんなに悪くても引き分けだろうってことは分かる。だけど時雨の相手が誰だったのか、夕立と神通さん、満潮はどうなったのかは訊きたくて仕方がない。仕方ないけど……
「……止めておきます。我慢できなくなったら訊きます」
こうする。今は楽しみを取っておきたい気分だ。
俺が地上に戻って最初に見たのが、一緒に演習した面子が敵味方問わず、いつの間に準備したのかテントの下に集まって談笑している光景だった。
……楽しそうなのは良いんだけどさぁ……やっぱり救援に来て欲しかったなぁ。なんて思う俺は決して悪くは無いだろう。
「あーーっ! 赤城さんがやられてるとか嘘でしょ!?」
戻った俺たちを真っ先に出迎えたのは大きな声。驚愕の感情が乗ってるソレに反応して、俺と俺の背中に担がれて気を失ってる赤城さんに視線が集中する。
「えっと……赤城さんはどうしたら?」
多くの視線に晒されてちょっと緊張してしまう。だけどずっと赤城さんを背負ってる訳にもいかない。本人には言えないけど、やっぱり重たいから降ろしたい。
俺の体が見た目通りの力の無さではなく、大人の女性を暫く担いで居られるパワーがあるんだとしても、流石に十分前後ともなるとね? 腕がほら……プルプルしてヤバいんスよ。何度引き摺って行こうかと考えたことか。
「赤城さんはこちらに……スチュワートさん、お疲れ様でした♪」
そう声を掛けてくれたのは鹿島さん。指し示す場所にはシートが敷かれていて、そこには時雨が横になって休んでいた。
「よっ……と」
「あ……赤城さん……そっか……」
時雨の横に赤城さんを降ろす。その時の物音で起こしちゃたんだろう、時雨が赤城さんを確認して何かを呟いた後にまたゆっくりと目を閉じた。
「し……死んでる……」 なんてふざけようとしてごめんなさい。
「ふぅ~~……」
深く息を吐きながら立ち上がる。直後に軽くなった背中や肩を叩かれたり、誰かに抱き着かれたりした。
「
「スチュワート……よくやった」
「赤城さんを倒すなんて凄いわね……でも、ちょ~っと遅かったんじゃないかしら?」
香取さんはちょっと厳し過ぎない? 更に早く撃破しろと申すか……。普段の訓練から滅多に褒めてくれない神州丸さんでさえ褒めてくれたと言うのに……。
「スチュワートさん! 赤城さんを倒すなんて凄いっぽい! 今度は夕立と勝負しよぉ!」
あと夕立は……勘弁してくれ。『艦これ』の先入観から考えて、夕立の相手をするのに俺の経験値は圧倒的に足りない。瞬き一つの内に距離を詰められて、右ストレートの魚雷パンチで盾を粉砕されて、果てに飛び膝蹴りで10割くらいしてきそうなイメージがあるんだよなぁ……。
絶対に心臓一つじゃ足りない。俺は間違いなく “素敵な” パーティーの役者に成れない。殺る気十分な夕立の威圧感だけで三回は軽く死ねるね。
「スチュ「夕立、いきなり飛びつくのは止めなさい。スチュワートさんに迷惑でしょう―――」……」
憐れあきつ丸さん……タイミングの悪い星で生まれた宿命ってヤツだ。セリフ被りとかも甘んじて受け入れるべきそうすべき。
そして神通さんの言葉で背中にくっついていた夕立が離れる。リアクションが完全に犬のソレだ。リードが相変わらず微妙に握り切れてないのが怖いんだけど……とにかく神通さんには感謝感謝。
「それに、夕立よりも指導に慣れてる私と演習した方が、スチュワートさんの為になると思いませんか?」
「……え?」
……感謝を撤回。この人も俺と演習する気満々じゃねーか! 指導と言う名の皮を被ったナニカじゃん。バトルジャンキーっぽさを感じる夕立と言い、身に覚えのないリベンジマッチを仕掛けて来た赤城さんと言い、なんなのこの武闘派な人達は……。
「……」
あ~良いねぇ~……ちょっと半目で睨みを利かせてくる満潮の顔に和むわ~……。なんかこう……近所のノラ猫って感じ? がして今この場に於いて間違いなく俺の癒しになっている。微妙に心を許しきってない感じが溜まんねぇぜ……。
「いやはや……流石は大本営で教官を務めている艦娘ですね、本当にお強い」
「作戦や戦い方次第ではいくらでも勝敗は変わっていただろう。今回は偶々ウチが勝っただけだろう」
「「「!?」」」
艦娘達の会話を、聞きながらボーっとしてたら、いきなり男性の声がして、俺を含むほぼ全員の肩が跳ねた。
「スチュワート。呼び出しの放送に応じないと思ったらこんなところに居たのか」
「あ……も、申し訳ございません! 私が連絡を怠った所為で……」
偉い人に謝る鹿島さん。……完全に忘れてた。そういえば俺、呼び出し喰らってたじゃん。午後までには終わるっしょ~なんて軽い気持ちで夕立からの演習に乗って、香取さんに相談して海の上に居たけど、鹿島さんには大きな負担を掛けてたみたいだ。次があるならこうならないように心がけよう。
「いや、私たちも面白いモノを見れたからいいよ。それに、大したことじゃないからね」
「? ……ッ!?」
おいおい……なんでこの人がここに居るんだよ……。
「提督……」
「やあ、スチュワート。久しぶりだね」
「再会の挨拶はまた今度にして欲しい。私も忙しいんだ」
……忙しい人は他人の感動を台無しにしても良いのか? いや良くない! でも呼び出し無視っていうことやっちゃってるからなぁ……しょうがねぇから話聞くか。
「スチュワートを今日呼び出した理由は……提督候補との連絡が付いたから、そのことを教えておこうと思ったんだ」
「……はい」
そいつぁあ目出度いな。俺が行くところの新しい提督はどんな人かな……
「それと、これを渡そうと思ってね」
「……ありがとうございます」
そう言って偉い人から封筒を受け取る。……これって滅茶苦茶大事な物じゃない? こんな他の艦娘見てるところで堂々と渡しても大丈夫なモンなの?
「あとはそれに従って行動してほしい」
「……分かりました」
中身も見てないのにこう言うことしか出来ないとか辛い……。断れないとか……一種のパワハラなのでは?
「それと、準備もあるだろうから、一旦、田代前提督と佐世保鎮守府所属の艦娘と共に、佐世保鎮守府に行って、支度を進めるように」
「……わ、分かりました!」
理解したと同時に元気よく返事をする。だって嬉しいじゃん。
久々の佐世保鎮守府に、久しぶりに帰れる。俺の心はちょっと舞い上がっていた。
次は佐世保鎮守府に行きます。
久々に教官たち以外の艦娘が出せる……。