私の名前は「      」   作:捻くれ餅

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63話です。

あ〜前回投稿した私は何やってんだよもう……こんな展開どうしろってんだよ……

そもそも何で4章こんなに長くなったんだろう → 教官たちが悪い。


心の内②

 

バシィッ

 

 俺の頭に伸びてくる提督の手を弾く。勿論下心を感じたとかそういったのでない。

 この人がそんなことをしないっていうことは分かり切っている。だから手が頭に伸びてくる―――頭を撫でようとしている意味が分からない。考えようにも酔ってるからまともな思考なんて出来やしねぇんだけどな。

 

「触らないでください……」

 

 口から出てくるのはそんな言葉。だって気色悪いじゃん? 艦娘の中に一人だけ艦娘の皮被った男が混ざってんだぜ?

 

「貴方だって気持ち悪いって思ってるんでしょうよ。女の振りをし続けてたヤツなんて……」

 

「……君は強い」

 

「……は?」

 

 やっぱり提督も酔ってんのか? 強い? 俺が? 何言ってんのこの人。そんな訳ねぇじゃん。自嘲気味の笑いが零れるぜそんなの。

 

「……私は超人でも何でもない。だから君の内面までは分からない」

 

「貴方は、自分が何かを隠していることを知っていた」

 

 だから気が付いていたなんて言ったんだろ?

 

「あんなもの只の勘だよ。それに、悩みや隠し事っていうのは隠してるつもりでも、存外隠せていないものだ。それに、私だって多くの艦娘と接してるから、そういった心の機微には敏感なんだ」

 

 ……。

 

「……ゴホンッ! ……私は勿論、知人にも女性になった人は居ない。だから君の経験がどのようなモノだったか想像しか出来ない」

 

 お酒の所為か、ブレて揺れる視界の中で、しっかりと俺の目を見て話をする提督は「だが」 と続ける。

 

「突然己を取り巻く環境が変わり、混乱したんじゃないか?」

 

 その通りだ 頷く。

 

「その中で、誰にも頼らず一人で頑張っていた君は間違いなく強い」

 

 そんなことはない。あの時は……妖精さんが居た。お喋り 食料調達 索敵etc…… 俺は何にもしていない。そんな俺は……弱い。それに……

 

「そんなことは……現に今、貴方に打ち明けた」

 

「一人で頑張るのも強さだが、別に人を頼ってはいけないなんてことはない。頼ることだって強さだ」

 

「クッ……フフフ」

 

 その理屈で言ったら弱い人なんて居なくなるな? 独りで頑張っても、二人以上で頑張っても強い事になるもんな。

 あ~……可笑しい。相変わらず提督は真面目な顔で俺の方見てるしさ……。あ、俺が笑たったからかちょっと微笑んだ。なんか毒気抜かれちゃったな~。

 溜息を吐く。

 

「……結局のところ、君は何に悩んでいたんだい?」

 

「……自分は、どうすれば良いんでしょうか?」

 

 そう訊くと、手に持っていたお酒を飲んだ提督がのんきに答える。

 

「それは自分で考えるべきだと、私は思うけどね」

 

 ……御尤もだ。でも人生の先輩なんだから訊いても良いじゃないか。

 

「……どうするか、どうあるべきかで悩むより、どうしたいか、どうなりたいかを考える方が良いんじゃないかな?」

 

 どうしたいか……

 

 どうなりたいか……

 

「自由に……周りと同じように過ごしたい……」

 

 一度死んだのに

 

「大きな隠し事もせずに……」

 

 望みすぎだろうか

 

「貴方の鎮守府のように、家族のように……」

 

 それでも……

 

「楽しく過ごしたい」

 

 驚くくらいスルっと口から出てくる言葉。それを聴いた提督が笑う。

 

「ハハハ! そうか、あの子達の中に混ざりたいか! なら自分から行動しなければいけないね」

 

「でも……自分は……」

 

 それでもやっぱり、中身は中身で―――

 

「まだ中身を気にするのかね? 私から見たら、君は只の艦娘に見えるけどね。さっきも言ったように中身なんて見えないんだから」

 

 そりゃあそうだ。でもずっと女の振りってのはやっぱり疲れる訳よ。

 

「疲れる? じゃあ手を抜いてしまっても良いんじゃないか?」

 

 ……提督の顔も随分と赤くなっている。気の所為ではなく話し始めた時よりも饒舌だ。

 心なしか悪戯っぽい、ちょっとワルい笑顔を浮かべている。

 

「例えば口調だ。天龍を見て見なさい。そんなものはただの個性だよ」

 

 なるほどと俺が納得してる間に提督が立ち上がり、「付いて来なさい」 って言って部屋を出ていく。

 

 

 

 建物の外に出て、ちょっと歩いたところにある木造建築。

 

「『居酒屋 鳳翔』 ……」

 

 灯りに照らされた店……だろう。居酒屋の中からは結構な人数の話し声がする。

 

「入ろうか」

 

 楽しそうに笑う提督の顔は、間違いなく下らない悪戯を楽しむ一人の男の顔だった。

 

ガラガラ―――

 

「ギャハハ―――」「良いねぇ~!」「―――んですか、もうっ!」

「お待たせしました!」「ん、ありがとー」「Zzz……」「追加ぁ~!」

 

 扉の先にあったのは……混沌(カオス)だった。

 

 上品にお酒を飲んでる人も居るけど、やっぱり目に入るのが、畳の上でバカ笑いしながら下品にお酒を飲む人達。……何アレ。海賊?

 その他にもテーブルに突っ伏して寝ている人、食器類を積み上げている人、女性にあるまじき座り方で椅子に座る人……。

 居酒屋 鳳翔 ってある位で、鳳翔さんは非常に忙しそうにしていて、入って来た俺と提督に気が付いてない。鳳翔さんが、騒ぐ彼女たちに忌避の視線を向けていないことから、これがデフォルトなのだと悟る。

 

「ほら、案外こんなものだよ」

 

「……参りました。……ただ、流石に一人称が俺は抵抗が大きすぎるので……私か自分で良いですか?」

 

「それを決めるのは私じゃない。君だよ「あーーっ! 提督じゃん!」君も楽しんでね」

 

 そう言い残して連れ去られてしまった提督から取り残されて、入口で佇む俺。

 

「……」

 

 目の前には、先ほどの光景に加えて、表面張力が仕事をしまくっているグラスを苦笑いしながら受け取っている提督の姿があった。 

 

……提督、大変申し訳ありません

 

 近くに寄ってってそう言う。それが聞こえたのか聞こえてない振りをしたのか、酒を口元に運んでは周りに囃し立てられていた。

 

「プッ……アッハハハハハハ!

 

 面白くて笑ってしまう。提督が艦娘に煽られてやがる!

 お酒の席は完全に無礼講。覚えたぜ。

 

 ……ちょっとネガティブになってたかもしれない。酔いも醒めて来たかもしれない。

 

「私も混ぜてください!」

 

 今くらいは、何もかもを忘れて楽しもうかな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あっという間だったな……」

 

 佐世保鎮守府に戻ったと思ったら、ちょっとゆっくりしただけで、それ以外は専ら準備に追われていた。

これでも封筒の中身から考えると相当楽な分類だろう。

 めっちゃ簡単に言うと、「引っ越し」 だ。与えられた自室に殆ど物が無かった俺は幸運だろう。

 

 そして、口にも出てたがあっという間だった。東京駅で迷わなければもうちょっと余裕を持って到着できたものを……おのれ日本のダンジョン……。

 

「それにしても……強引だなぁ、君も」

 

 肩に乗ってるのはいつも工廠に行くと偉そうに踏ん反り返っている妖精さん。どこから聞きつけたのか、付いていくっていう断固たる意志を持っていると確信できるレベルでくっついてきた。今回は鞄の中……ではなく服の中から出てきた。……もう何も言うまい。

 

 そんなちょっとゲッソリした俺の見えるところに

 

 

 

【大湊警備府】

 

 

 

 新しいスタートラインが 目の前に。

 




4章はお終い! 流石にグダグダし過ぎました。
この提督は聖人か何かですね。

5章「新環境」です。幕間後に始まります。
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