私の名前は「      」   作:捻くれ餅

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65話です。

金週ブースト!
今回から5章です。

誤字脱字報告いつも助かってます。ありがとうございます。



新環境
着任!


【大湊警備府】

 

 そう見える建物まで歩く。

 

 心機一転、とは間違っても言えない心情だ。こう……やる気がイマイチ出てこない。どれもこれも佐世保鎮守府の居心地の良さが悪い。

 今すぐ佐世保に引き返してぇなぁ~なんて囁く頭の中の悪魔は、罰はしっかり受けないといけないなんて言う別の悪魔(天使)から分の悪い戦いを強いられていた。

 

「あそこで一年間引きこもりの刑か……ハァ」

 

 溜息を吐く。俺は自称引きこもりなのであって、普通に散歩とかしてた所謂アクティブ陰キャなのだ。そんな俺が一年間も鎮守府から出るな! なんて言われたらどうなるか……間違いなくゆで卵が破裂するように限界を迎えるだろうことは想像に難くない。

 

「どうにかして暇つぶしの方法を見つけなければ……!」

 

 どんな人がここの提督になるかは分からないけど、どうも大本営の偉い人が決めたっぽいし、きっと「真面目」が服を着て歩いているような人なんだろうなぁ……。

 そうなると俺の退屈がマッハだ。つまり暇潰しを探すことは急務だ!

 

「でもそう都合よく転がってたりはしない……ん?」

 

 恐らく入口だろう場所には人集(ひとだか)りがあった。前世ならまだしもこの世界には深海棲艦がガチで存在するんだし、まさか観光ツアーか何かな訳無いだろう。

 近づいてみると、憲兵と……一般人だった。何やらちょっと揉めている様子。穏やかじゃないけど……青森県民の皆様は何故ここに?

 

―――船――――!? ―――ッ! ―――

 

 ちょっと耳を澄ませて聴いてみようとしたけど……分からんね! 波の音と風の音しか聞こえて来ねぇ! 何かを言ってるのは分かるんだけど、何を言ってるかはさっぱりだ。

 ……でも、一応俺もここの住居者になるんだし、地域住民って言うお隣さんとは揉めたくないなぁ……。仕方がないけど、接触するか。どう足掻いてもあの人達と憲兵を無視して入れそうにないし……。

 

―――! ―――なんだべが!?」

 

 う~ん……揉めてるのは大体おじちゃんおばちゃん達か……あ、憲兵さんチーッス! どないしたん? まぁ会釈は返すけど……あ、憲兵さんの会釈でみんなこっち向いた!

 えっ……まさかいきなりタゲが俺に移るとか想定外。モンスタートレインだけは勘弁して欲しかった……。話の内容全然分からないんだけど、どうしろと!?

 

「おおーっ! めんこい女の子(おなんご)だの~。……まさか艦娘だべが!?」

 

「ふぇっ!?」

 

 ん~!? 鈍りが強すぎて何言ってるか分からねぇ……。多分前半は雰囲気からして容姿を褒められた……筈。後半は「まさか艦娘ってヤツ!?」って意味か?

 

「え、えぇ……新しく此処、大湊警備府に配属された艦娘ですが……」

 

 そう返すと、一番俺に近かったジャージのおじいちゃんがニカッと笑う。

 

「ありがてぇ……こいで怯えるごどなぐ漁ができるなぁ!

 

 そう言って豪快に笑いだす集団。漁って言ってたし多分漁師だろう。……だけどどうせなら何言ってるか分かりやすい人が居たらと願わずにはいられない。

 

 それに怯えることなく漁が出来る……って言ったの? 俺一人が居たところで影響なんてこれっぽちも無いんだよね……。そもそも出撃出来ないし……。だから艦娘が建造で増えるまではもう少しの辛抱を続けて欲しい。

 

「いや~すみませんねぇ。こご(此処)に新しぐ艦娘たちが来っどわがってがら、みんな舞い上がっちまって……。深海棲艦は本当に怖ぇんで……ありがとうございます」

 

 一人のがっしりしたオジサンが話しかけてくる。……なんだよ! 訛りがそこまで強くない人居るじゃん! だったら最初からその人で良くない? いや、おじちゃん達は悪くないよ。

 

 その後、集まっていた漁師の人達はお礼を言って去っていった。台風一過。後に残されたのは俺と二人の憲兵だけだった。

 

「えっと……新しく此処に配属になります、艦娘のスチュワートです。……入っても良いですか?」

 

「話は伺っています。念の為、事前に持たされている封筒を見せて貰えますか?」

 

 まぁセキュリティ的にフリーパスは拙いよね……。佐世保はこういう人居なかったけどセキュリティ大丈夫なの……?

 

「確認しました。それでは案内しますので、付いてきて下さい」

 

「はい、有難う御座います」

 

 そう言って進んでいく憲兵の後ろに付いていき、警備所? の前を通過してとうとう大湊警備府の中に入ってしまった。さぁ、これから一年間の引きこもり生活がスタートするぜ。

 

「あっ」

 

「どうしました?」

 

「あ、あぁ……お気になさらず……」

 

 ヤッベー……どうせなら入る前に欲しいものとか買っておくべきだったー! これはやらかし案件だよ畜生! ……しょうがないからその内誰かに買ってもらおう。きっと心優しい誰かが買ってくれる筈だ。

 

「あっ」

 

「……今度は何ですか?」

 

「私に対してはそんな態度でなくて大丈夫です。貴方の方が人生経験のある先輩なんですから」

 

「……仕事なので」

 

「成る程。失礼しました」

 

 それからは簡単な説明だけ受けてサラッと全体を見て回り、警備所に戻ってきた。

 

「これからよろしくお願いしますね」

 

「こちらこそ」

 

 そう言ってから見た感じ無人だった警備府の中に改めて入っていく。建物の形は佐世保と大して変わらないように見えた。現実だったらそんなことは無いんだろうけど……まぁ『艦これ』故致し方なしって感じだろうか。でも佐世保と違って「居酒屋鳳翔」が無かったり、倉庫の数や大きさが違ったりはしたなぁ……これらはオプションなのか。

 

 

 

 静かな鎮守府の中を歩く。人が居らず活気が感じられない。心なしか佐世保よりも肌寒い印象を受ける。

 

「提督も居ないとか……問題では?」

 

 そもそもここら辺の海は今まで誰が防衛していたのか……。漁師の喜び方から考えて深海棲艦がぽこじゃか出てくるって程では無いけど、安全に漁をするには心許ない、若しくは最近になって深海棲艦が見られるようになったか……。

 

 取り敢えず中身、部屋の配置は大体同じだった。

 執務室まで歩いてノックする。

 

―――コンコン

 

 返事は無い。

 

「失礼しま~す……」

 

 扉を開けようと手を掛ける。―――あっさりと開いた。

 

「……」

 

 電気も点いてない部屋、普段なら一番偉い人(ていとく)が座ってる椅子は空白で机の上にも書類は無く、本棚も空っぽだ。

 

「……」

 

 窓際まで歩いて外を見る。警備府の一部と海が良く見える。

 特に思うことも無いから窓から離れて、改めて無人なのを確認してから提督が座る椅子に座る。

 

「う~ん……」

 

 革特有の感触が微妙に気に入らない。ガッツリ堪能しようと思ってたけど、これはちょっとなぁ……。数回跳ねる様に動いたら興味が無くなったから引き出しを漁る。

 

「目星技能は~……七十五ぉ!」

 

 一番手に掛けやすい引き出しには封筒が入っていた。目星は成功したみたいだ。

 出て来た封筒はご丁寧に付箋で「提督用」と「初期艦用」で分けられている。

 

「俺の動きは読まれている……?」

 

 そうじゃなかったら態々引き出しに入れずに机の上に置くとか、警備所に預けるとか……やっぱり盗難とかあったらどうするつもりなんだろうねぇ……。

 初期艦用の封筒を取って空ける。

 

「えっ、えぇ~……」

 

 中に書いてあったのは、明日の朝に提督がそちらに到着するって情報。

 

「初ミッションはまさかのおもてなしか……」

 

 だから俺がここに来るように言われたのが今日だったのか……。

 

 更に読むと、今日から各鎮守府から数人ずつ手助けに来てくれるらしい。これは有り難い。

 そして、提督が来てからは提督の指示に従うこととある。

 

「ハンッ、舐めんな。超絶イイ子ちゃんに徹してやるから見てろよ……なぁ、妖精さん?」

 

 佐世保から付いてきた妖精さんに向かってそう言う。すると「そうだそうだ」と言わんばかりに首を縦に振っている。

 

 でも、『艦これ』的テンプレートに則って、やらなきゃいけないことがある。

 

 椅子から立ち上がって執務机の前へ移動する。

 

「駆逐艦スチュワート 着任しました。よろしくお願いします」

 

 そう言って敬礼をする。

 

(それは陸軍の敬礼ですぅ……)

 

 ……何か聞こえた気がするけど、まさか霊的なナニカが出るとかは無いでしょ。

 部屋も綺麗だし、今日はこれから来る艦娘の受け入れかなぁ……。

 




【ご都合主義】案件。
・鎮守府の内装は同じ……。エキサイトな内装(ニンジャ屋敷)は却下されたようです。

方言が合ってるか分かりません。一応調べてはいるんですが……
提督(ヒーロー)は遅れてやってくるッ!

私は、一般人に敬礼させたら大体の人は陸軍式敬礼をすると思ってます。
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