金週ブースト、ラストスパート!
時間軸もあったもんじゃねぇな。
提督が来てから早くも一週間が経とうとしていた。
提督が毎日のように工廠に行っては新しいメンバーを仲間に加えてくるので、早くも警備府に居る艦娘の数は倍近くに増えた。
それは嬉しいことなんだけど、提督が資源を建造につぎ込んでいく所為で毎日のように遠征に行かないといけなくなったと言ってる人が居るのも事実。遠征に行ってる人達には本当に頭が上がらない。応援で来てもらっている人達には尚更だ。
それでも、流石に元一般人として週休一、二日くらいは用意したいところで、同じように考えていたらしい提督によって昨日と今日は遠征は休んでもらっている。人が増えて来たからそろそろ班を増やしてみるのも良いかもしれない。後で提督に意見してみようか。
そのどれもが、“一日で往復できるくらいの距離にある資源集めに向いてる島” を長良さんが見つけてくれたおかげだ。流石にこの提督のビギナーズラックが発動してそんな都合よく島があるんだと思うけど、今は兎に角人手が足りない。
「……ですので、申し訳ありませんが衣笠さんに暫く休みは無いと思います……」
休暇は取らせたいけど、警備府の最高戦力の衣笠さんと大鷹さんが休んで防衛が疎かになるのはちょっと……なんて考えたらしい提督から「ちょっと考えを聴いてきてくれない?」って言われたから、俺は衣笠さんが使っている部屋で衣笠さんに相談していた。
「う~ん……」
考えるような素振りをしてから、衣笠さんが口を開く。
「衣笠さんとしてはね? 別にお休みは貰わなくても平気だよ。今のところ最高戦力で、ホイホイ出撃出来ないから今もこうして部屋に待機してゆっくりしてるんだし。これでお休みまで貰っちゃったら、他の子達から不公平だ~って文句言われちゃうよ」
「……分かりました。提督に伝えておきます。……ありがとうございます」
良いの良いの~なんて言ってくれる衣笠さんの優しさに感動しながら部屋を出る。
次は同じように代わりが居ないから休みを取らせられない大鷹さんに話をしに行かなければならない。
多分何時ものように海沿いで艦載機を飛ばしていると思っている。
漁に出る漁船の上にも艦載機を飛ばしているらしく、漁師さん達から物凄い感謝をされているって聞いたが、無理はして欲しくない。
「あ、スチュワート!」
「曙ちゃん…… “さん” は付けよう……?」
廊下を歩いていたら呼ばれる。
振り返ると曙と潮が居た。二人とも建造で生まれた駆逐艦だ。日にちから考えて一、二回は遠征に行ったかも知れない。
「何でしょうか?」
「あんたに……いや、提督に言いたいことがあるんだけど! 今大丈夫!?」
おおぅ……結構気が強いってことは知ってたけど随分グイグイ来るなぁ……。
「ええと……今から大鷹さんに話を聴きに行くんですが……それが終わってからでも良いですか?」
「そうね……じゃああたしも付いてくわ! ヒマだし!」
付いて来ちゃうかぁ……。 自分が仕事してるところってあんまり見られたくないんだよなぁ……授業参観が恥ずかしく感じるのと同じ理由で……。
それにしたって暇だってことを強調するとか……曙は暇な事に不満があるらしい。
大鷹さんは予想通り、海が良く見える場所に立っていた。
「今日もお仕事、お疲れ様です」
驚かさないように隣に立ってから声を掛ける。海を見ていた大鷹さんが俺の方を向く。
「……スチュワートさんもお疲れ様です。後ろの二人も、何か御用でしょうか?」
「あ、二人は関係ないです。……大鷹さん、まだ空母の人達が建造出来ていない為、休みが取れないかもしれません」
そう話し始めてから、提督が心配していたことを話す。休みが取れないって言うのは最悪の場合で、大鷹さんが休みたいって言った時は、普通に休ませてくれるとは思うんだけど……。
俺の言葉、提督の考えを聴いた大鷹さんは、にっこりと笑った。
「私は大丈夫です。……以前よりもやりがいを感じてます。舞鶴鎮守府には空母の皆さんが居るので……」
「漁師さん達からも感謝されるので、嬉しいです」なんていい笑顔で言う大鷹さんは、毎日ここで見張りをしているとは思えないくらい生き生きとしていた。仕事に見合った報酬が漁師さん達からの感謝の言葉って……モチベーションにはなるだろうけど……聖人かな?
「そうですか……本当に休みは要らないんですね?」
「はい」
「分かりました……体調不良などには気を付けてくださいね?」
「大丈夫です!」
う~ん……ここまで言われたら休んでくださいって言い難いよなぁ……。衣笠さんはいつも休んでるみたいなもんって自分で言ってたからまだ分かるんだけど……。
まぁ、しつこく言ってもウザがられるだけだし、提督に報告してお終いか。
「それじゃあ、無理はせずに頑張ってくださいね」
「提督、衣笠さんと大鷹さんから話を聴いて来ました」
「ありがとう。……後ろの二人は?」
「私の報告の後になりますが、曙が提督に用事があるそうです」
「分かった」
そういえば曙は提督に用事って言ってたけど、何なんだろう? 気になるけど、プライベートな事なのかもしれないしあんまり踏み込んじゃいけないのかな……。
「えっと……衣笠さんと大鷹さんどちらも休みは必要ないそうです。ただ、大鷹さんは無茶をするかも知れないので、そこは注意が必要に感じました」
「分かった」
「……では、曙が用事あるそうなので、一回外に出ていましょうか?」
「あぁ」
執務室の外へ潮と一緒に出る。あくまで用事があるって言ってたのは曙で潮は関係ないと思ったからだ。
「曙の用事が何か分かりますか?」
「いえ、分かりません……今日は休みだって聞いてからあの調子で……」
「そういえばそうでしたね……」
執務室の扉の外で潮から、暇な事に何か不満があるらしい曙のことを訊く。が、大した情報は出てこなかった。
それでも気になることは気になる……。
「ええっ!?」
「シッ!……」
しょうがないから、盗み聴きくらいは出来るかも知れないと扉に耳を当ててみる。
「このクソ提督! 今がどういう時期か分からないの!?」
「――――――……――――――――――?」
「だったら何よ! 休んでる場合じゃないでしょ!? 私達のことを考えるのは結構だけど、本当に考えなくちゃいけないことは市民の事でしょ!?」
「――――……」
「だったらさっさと艦隊運用の準備をしなさい!」
提督が曙に滅茶苦茶怒られてる……。
「怖……」
「え?」
でも曙の言うことも最もだし……俺も混ざってこようかな。 どっかの誰かさんは昨日から遠征を休みにさせてるにもかかわらず、今日も工廠に入って建造してたからなぁ……。
間違いなく提督は分かっててやってるんだろうけど、倉庫に資材が殆ど無い現状は拙い。この辺のバランスもどうしようかその内相談しようと思ってたら曙が爆発したって感じだな。
立ち上がって扉を開ける。
「提督、曙の言う通りですよ!」
「「え?」」
驚いた顔で俺を見てくる二人。……なんで曙まで驚いた顔で見てくるかなぁ? 反対意見じゃないんだし、「ほら! 他の人もこう言ってる!」って乗ってきても良いと思うんだけど……。
「皆の前で切った啖呵は嘘だったんですか!?」
こう言えば大人しくなるよな。
「ウッ……」
提督の意見が完全にひっくり返った瞬間だ。
休暇を与えられゆっくりしていた人が遠征に行く準備を進めていた。
休んでいた面々は誰も警備府の外に出ていなかったのが幸いした。
時間も正午ちょっと過ぎたくらいだし、ちょっと遅くはなるけど今日中には戻ってこられると思う。
「曙、ありがとうございます」
今回の資材が底を付くかハラハラさせる行動をした提督に当たった曙にお礼を言う。
「別に、あんたの為にやったことじゃないから! 私が不安になるのよ! 何よあの資材の量! あれで建造しようだなんてどうかしてるわ!」
「ですよね……ハハハ」
「あんたもあんたよ! ダメだって分かってたならちゃんと言いなさいよ!」
「……ハイ」
非常に耳が痛い……。
「……提督はどこか抜けてたり、甘かったりするので、曙みたいにしっかり怒ってくれる人が居ると助かりますね」
「あ ん た が! しっかりするの!」
「……ハイ」
初期艦道は俺が思っていた以上に長いらしい。
所謂資材が無いのに何のんびりしてんの!?って回でした。
曙ちゃんの傀儡になるヘタレ√が存在します。
次回は5/11 いつもの時間です。以降の投稿間隔は2日置きに戻ります。