またまた時間は飛びます。
何せ人数が少ない鎮守府のお描写が個人的に難しく……。
俺の朝は早い。
日の出の前に起きて風呂で軽く汗を流す。
前世だったら男オンリーの工場だったから、朝にそういうことをするっていう考え自体無かったけど、
そんな訳でもう見たところで何とも思わなくなった己の裸体を風呂場の鏡越しに見る。
「おかしい……」
出撃しないからと運動不足を疑い、寝る前に腹筋運動を行うようにしてから暫く経つというのに一向に筋肉が付いた気がしない……。やはりプロテインか? たんぱく質か? それとも腹にあるなけなしの脂肪を落とせば腹筋が割れて見えるようになるのか?
「う~む……」
湯船に浸かりながら唸る。そして湯に入って五分と経たずに湯船の外へ。何せ季節は夏真っ盛り。
例え東北の、それも明け方だとしても暑いもんは暑い。
最後に水のシャワーを浴びてサッパリし、髪を乾かしてから食堂へ向かう。こういった時に髪が比較的短いと楽でいい。
「おはようございます」
「おはようございます。相変わらず早いですね」
「あれ? 今日は一人なんですか?」
俺が食堂に行くと、必ずいるのが伊良湖だ。「今日は一人です~」なんて言ってるから分かる通り、食堂には主が二人居る。
一人は応援で来てくれた伊良湖。
そしてもう一人が……建造で来てくれた伊良湖。
伊良湖が二人……来るぞっ! ってなりそうだけど、これには理由がある。
本来応援で来てくれた伊良湖は、間宮さんが建造出来た時にお役御免となって帰る予定だったらしいんだけど、肝心の間宮さんが全く
因みに元の鎮守府に帰ってないのは伊良湖だけで、他の面々は既に鎮守府に帰ってしまっている。
帰る前にシュークリームを投げてきた佐世保の卯月は次会ったらボコボコにしてやる。
そして相変わらず間宮さんは現れず、そのまま他の艦娘が増えていくばかり……という訳で、現在食堂は驚愕のダブル伊良湖体制で回っている。
それでもいつまでも他の鎮守府から借りっぱなしは良くないと思うので、そろそろ伊良湖も横須賀に帰してあげたい……ということで此処でまさかの俺に白羽の矢が立った。
人数が増えて来たとは言えまだまだ人手が足りない現状、相変わらず出撃禁止で秘書艦業務をやってる俺は、大淀さんが持ってくる割と少ない書類を大体午前中には片付け、後は食堂で伊良湖から料理の修行を受けていた。
お蔭様でレパートリーが矢鱈と多くなった。具体的には今日、深海棲艦が絶滅して艦娘の価値が一般市民と変わらなくなったとしても、適当な飲食店にお邪魔して即戦力になれるレベルと言ったら修行の成果が如何程か分かると思う。
そんな訳で提督の朝食を適当に漬物や白米、味噌汁、焼き魚にしようと計画を立てて、後は伊良湖とウン十人分の朝食を作っていく。
「あ、そろそろ時間ですね。ちょっと抜けますね」
「分かりました!」
伊良湖に簡単に断りを入れて厨房を抜ける。いつも通りならそろそろ時間だろう。
「お! 来だの~」
「おはようございます!」
警備所の前、だんだん明るくなってきた時間帯、何時ものように漁師さんが来ていた。
「今日も
「はい、いつもありがとうございます」
「礼
にこやかに、豪快に笑いながら漁師さん達が去っていく。
「は~い!」
見えなくなるまで見届けて、それから警備所に
「戻りました!」
「お疲れ様です! いつもありがとうございます。わたし、漁師さん達がなんて言ってるのか分からなくて……」
分かるわ~。みたいな感じで楽し気な雰囲気になる。流石に数ヶ月も近くに居たら俺でも仲良くなれる。
「嘘……漁師さん達さまさまですね」
「ハハハ……いっぱい捕れたって言っても太っ腹が過ぎると言うか……」
いつも以上に重たい台車……ぶっちゃけ押してるだけで腰やられるかと思ったソレの上に乗ってた木箱から出て来たのは……マグロだった。
嬉しいには嬉しいんだけど……。
「ちょっと気を遣いますよね……」
「朝に食べるものでもないですし……仕舞っておきましょう……」
伊良湖がマグロを冷蔵庫に仕舞い、引き続き朝食の用意をしていく。
デカい鍋の蓋を開けると、しっかり蒸された白米が眩しく輝いた。
「流石伊良湖さん、完璧ですね」
「えへへ……照れますね」
朝食の用意もあらかた終わり、後は朝食を執務室に持っていくだけ。手伝いもここまでやればあとは伊良湖が一人で十分対応出来ることは分かっている。
応援の言葉を掛けて厨房を後にする。
執務室への道のりを歩く。今まではやらかしてないけど、いつ五月雨をリスペクトして朝食をブチ撒けるか分からない以上、慎重にならざるを得ない。
早起きな艦娘は既に何かをしているようで、ゆっくり進む俺に挨拶をしてくれる。
だいたいはランニング前の長良さんと大鳳さんだったり。
「ふわぁあ~……あ、スチュワート。おはよ~……」
こんな具合に眠そうな川内さんだったり……っておいィ!? 昨日出撃したの!? 静かに出撃しないで!? いや騒がしくされても迷惑なんだけどさ。
「おはようございます……出撃するならせめて一言お願いします」
「あ、そうだ! 提督には内緒にして! お願い!」
これは既に提督に報告案件だよ。諦めてくれ。
無言で笑顔を浮かべて執務室に歩く足を速める。俺はまだ
「おはようございます」
「ん? あぁ、おはよう」
執務室に入ると、提督が板についてきた提督が椅子に座って何かの資料を読んでいた。
最初はアレだったんだけどね……今じゃコレだよ。すっかり提督らしくなっちゃって……。
……まぁ、
「午前六時、朝食の時間ですよ」
「いつもありがとう」
「仕事ですので」
この会話も何回繰り返したか分からん。結構な頻度でお礼は言われるけど、
提督が朝食を食べていると大淀さんが書類を持って現れた。これもいつも通り。挨拶を済ませて書類を受け取る。
「今日は随分沢山ありますね?」
「他の鎮守府が夏季の慰労や暑気払いで休むみたいで、そこのカバーの為でしょう。詳細は書類に書いてあります。何かあればお呼び下さい」
大淀が執務室から出ていった。
「……
提督の意識はすっかり休みに向けられている。そんなに休みたいの?
バカな……いつも午前中には書類仕事を片付けているから提督の午後はフリーの筈では……? トレーニングとか疲れることでもしてんのか? それともまだ休み時間が足りないとでも?
「まずは他の鎮守府が休んでいるときのカバーの事を考えましょう」
「やっぱりそうだよな……。ご馳走様」
「お粗末様です。片付けてきますので先に仕事を始めていてください」
「……なんてことがあったんですよ~」
「おぉ! それはスクープですよ! では不肖この青葉、皆さんに何がしたいか訊いて回りますね!」
「ありがとうございます」
これで慰労の内容は考えなくても良くなったな。食器の片付けも終わったし、いつまでも食堂で油を売ってないで俺も書類仕事をせねばなるまい。
「それにしても……」
随分艦娘も増えたなぁ……。最初は二桁も居なかったのに一月ちょっとの間に数十人にまで増えた。
遠征の班も交代制を確立したし、警備府近海は日中なら軽空母と空母、海防艦、夜間は重巡と軽巡、駆逐艦で哨戒。佐世保鎮守府と同じようなローテーションが出来上がった時は目標に近付いたと結構喜んだことは記憶に新しい。
最近の悩みは戦艦の建造の為に必要な資材のやりくりがあまり上手くいってないらしいことと、人が増えた故に騒がしくなってきた寮の統制。
特に資材の問題は結構深刻で、艦娘が増えたことで警備府が防衛しなきゃいけない範囲が拡大した。近海だけでは無くなったが為に危険度の高い深海棲艦が出てくるらしい。
そうなると頼りになる戦艦が望まれるんだけど……戦艦の建造にバカみたいに資材を消費する。だからと言って建造の為に資材を集めようとすると今度は防衛が疎かになるという一種のスパイラルに突入してしまっている。
「ハァ……」
考えることが多すぎる。
「大淀さんにでも相談してみようかな……」
そう呟きながら執務室へ向かう。午前中の内にさっさと書類を片付けて、お疲れらしい提督を休ませるのも仕事だ。
戦艦の資材のくだりは、某狩りゲーに似てますね……
○○を倒すためにその○○の防具がテンプレ……ソロを殺すシステムですね。
妖精さんはこれでもまだ有情です。
駆逐、潜水、海防、軽巡 → 軽空母、重巡 → 正規空母、戦艦
といった順番で建造してくれてます。
もし逆なら……あな恐ろし……。