私の名前は「      」   作:捻くれ餅

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73話です。

今回は短いです。
なんで一日は24時間なんだろう……


任務遂行(始まってない)

 ヤッベー……いやマジこれはヤベェ……

 

「えっと……い、今警備府に残ってる人達に出撃するかもしれないって知らせてくるので、大淀さんとしっかり話をしてくださいね!」

 

 逃げよう。

 

 大淀さんには悪いけど俺には艦隊運用の知識なんて無い。餅は餅屋って言うし、ビビってるだけであって提督だってその道のプロ。大淀さんも居るからたった二人でも文殊の知恵が出てくるに違いない。

 

 だから俺は呼びかけをしに行く。考える人と行動する人、うまい具合に役割分担できるじゃないか。そう……これは戦略的撤退ってヤツだ。決してやっちまったことが怖くなったとかそういうのじゃない。

 

 ……いや嘘。めっちゃ怖いから逃げるわ。

 

 

 

▼――――――――――

 

ちょっと乱暴に閉められた扉を見る。

 

「「……」」

 

 無言で扉を見つめる。普段はこんなことをしないスチュワートに驚いているのか、大淀も無言だ。

 

 ……スチュワートを怒らせちゃったな……。

 

 申し訳ないと思う。

 普段から無表情で、仕事だからと何かと気を遣っている彼女が、あそこまで声を荒げることは本当に珍しい。寝坊して遅れた時も、グリーンピースを残した時も、果てには深夜、浴場に入った時に彼女が居た時でさえ怒らなかったのに……。

 確か前回は曙と一緒にもっと遠征を増やせと言ってきた時だったような気がする。いや、あの時ですらどこか楽しんでいたような感じがあったから、本当に怒ったのは今回が初めてなの?

 

 ……本当に情けなく思う。

 自分が情けないことを言ったばかりに怒らせたこと。

 そして、怒らせたと気づいた時に、黒川提督と同じ目に遭うんじゃないかって考えてしまったこと……。

 

「大淀」

 

「はい」

 

「任務について、もう一度説明してもらえないか?」

 

「はい、必要でしたら何度でもご説明いたしますよ?」

 

 本当にありがたい。

 

 自分みたいな新人にも期待してしっかり怒ってくれる艦娘()がいる。知らないことをしっかり教えてくれる艦娘(大淀)がいる。前に進めるようにちょっと強引だけど背中を押してくれる艦娘(スチュワート)がいる。

 

 とても頼りになる艦娘に囲まれている。

 

「……ありがとう」

 

 自分がお礼を言うと、ちょっと照れた大淀が「では、説明しますね?」と前置きして、任務の説明をしてくれた。

 前回説明を受けた時は何を考えながら説明を受けたんだろう……説明を受ければ受けるほど、今のやり方の効率の悪さが浮き彫りになる。

 

 スチュワートの言っていた通り遠征だけでも資材は集められる。それに、余程のトラブルが無い限り艦娘は安全だ。

 だけどそれは大本営が良しとしなかった。実際に間近の問題は深刻な資材不足。これも自分が出撃させなかった影響だ。 “遠征だけ” を続けて来た結果、大湊(ウチ)の艦娘は戦闘に慣れていないんじゃないかと思い始めている。……あとで佐世保に居たことがあるスチュワートに訊いてみよう。その前に謝らなきゃいけないな。

 

「―――と、色々と良い事があるんですよ……って提督? 聴いてましたか?」

 

 大淀がちょっと怒ったように言ってくる。……全く聴いてなかった。だけど、任務の重要性と大体の内容は聴いてたから大丈夫だと思う。

 

「あ、ああ。しっかり聞いていたよ」

 

 だから自分はそう返す。

 

「それでは、スチュワートさんが戻ってきたら、どういった編成が良いか一緒に考えてみましょう」

 

 スチュワートが言っていたように「これなら大丈夫」って笑えるくらい策を練って帰りを待てばいい。

 大淀も居るんだ。今までだって、今だっていろんなことを教えてくれてるじゃないか。時間を掛ければきっと納得のいく良い編成、良い作戦を立てられる筈だ。

 

 艦娘を喪うのは怖い。自分の所為で傷付くかもしれないのが怖い。

 だけどそれは市民を危険に晒しても良い理由にはならない。……スチュワートは、艦娘を無理やり出撃させて、半ば強制的に自分に指揮をさせるつもりだったのか……?

 

 ……この強引さには敵わないな。

 

 自嘲気味に笑う。

 

「そうだね。でも、まずは誰が残ってるか確認してから……」

 

 この直後、執務室に艦娘が一斉に集まって作戦を考えるどころではなくなった。

 

▲――――――――――

 

 艦娘達の部屋を次々に開けては声を掛けていく。

 ノックをしたら「待って! 待って!」なんて言ってくる(望月)も居たけど問答無用。……ルームメイトが出来たらちゃんと片付けろよ? 居ない間は許す。俺は優しいんだ(片付けメンドいもんな)

 

「……それにしても」

 

 部屋でのんびりしていた人たちに声を掛けたら、意外なことに殆どの人が「よっしゃ、やってやんよ!」みたいなノリになって漲り始めたのは意外としか言いようがなかった。

 普段から遠征ばっかりでストレス溜まってたから深海棲艦 “で” 発散するつもりなのかもしれない。対象が俺じゃなくて一安心だ。

 

 大淀さんは提督と一緒に今頃作戦会議でもしてるだろう、明石さんには後で説明するから良いとして……。

 

「最後は大鳳さんか……」

 

 大湊(ウチ)で唯一の “軽” じゃない空母。かなり頼りになるんだけど……言うまでもなく資材の消費が洒落にならない。現在の資材不足に深刻な打撃を与えたM V Pだ。

 「これが空母の燃費? ヤバない?」って考えたことは一度や二度ではない。あのレベルの消費を気にせず哨戒の為にバンバン配備できる佐世保って凄かったんだな~なんて現実逃し始めるレベルでヤバい。

 だからこれから、その大鳳さんには暫く出撃や哨戒を控えてもらうように話をしなくちゃいけない。

 

 

 

「……だったら仕方ないわね。私の我儘でご迷惑をかける訳にはいきません。……あ、そうだ! スチュワートさんも一緒に訓練、体力づくりしませんか!?」

 

「えっ!? え~っと……」

 

 すんなり了承されるのは想定内。いつも長良さんと走り込みしてる人だし、やることが無いなんてことは無いっぽいね。

 だけど訓練に誘われるのは想定外だ。どうしようかな……。

 

「えっと……午後に都合の付く日には……」

 

「本当!? 訓練も一人より沢山居る方が捗るからね! これからよろしくね、スチュワートさん」

 

 ……この人、訓練の間に人生過ごしてない?

 




デイリー縛りとか、すげぇ不良(変態)ですよコレ……

初遠征は兎も角、初出撃はまだです。川内さんは非公式なのでノーカンです。

寝坊時のスチュワートの反応
「まぁ人間、寝たい時はあるよね〜」
好き嫌い時の反応
「まあ、俺も嫌いなもんはあるし……」
風呂に乱入された時の反応
「うわ、ラッキースケベとか……主人公かよ」

次話「見送る人達」
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