私の名前は「      」   作:捻くれ餅

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75話です。

【勘違いタグ】が役に立つ?
小説内の一日が長すぎる……。


大鳳 嵐と爆弾

「ハッ……ハッ……」

 

 喉が張り付く。肺と脇腹が痛い。

 

 俺は大鳳さんと訓練という名の走り込みをしていた。「体力は基本だけど最も大事!」と熱弁する大鳳さんを見て相当キツイだろうな~なんて思っては居たけど、想像をはるかに超えてキツイ走り込みに言葉の代わりに二酸化炭素しか出てこない。

 

「ふぅっ、ふぅっ……ふ~ぅ。 一旦休憩にしましょう」

 

 今まで隣を走っていた大鳳さんが止まる。

 一旦? 今一旦って言ったよね!?

 

「流石に……これ以上は……」

 

 キツイなんてもんじゃない。学校の部活動が軽く思えるレベルだよ。

 なんかもう走り込みのペースからしてヤバいもん。絶対にオリンピックに出るアスリートとかプロのスポーツマンがやるようなトレーニングでしょ。過度な運動は身を滅ぼすって。

 

 一旦休憩って言った大鳳さんは汗を掻いて肩で息をしてるけどまだまだ元気そうだし……ホントになんなのさ。疲れると元気になるとか、追いつめられたら覚醒するゲームのボスか何かかよ。

 それでもコレはマズイって……明日の仕事に支障をきたすって。でも訓練に付き合うって言っちゃったし……。気軽にそんなこと言った過去の俺を助走を付けてぶん殴りたい気分だ。

 

 毎日つき合ってたら確実に、冗談抜きで死ぬ。

 だけど普段午後って残った書類を提督から奪って片付けたり、警備府内を見回りしたり、厨房に籠って伊良湖から料理教えて貰ったりしてるから、時間はあるっちゃあるんだよね……。

 

「こんなものじゃ終わらないわ! まだまだ行くわよ!」

 

 嘘やん。

 

 

 

 それからどれだけ時間が経ったか分からない。一時間かもしれないし、四時間くらいかもしれない。

 日が傾く前には走り込みが終わり、それからは腹筋や体幹トレーニングをしていた。

 

「そろそろ晩ご飯ね! 」

 

「あっ……」

 

「……どうかしたの?」

 

 飯の支度の手伝いをするの忘れてた……。今から行っても遅いだろうしなぁ……伊良湖が怒ってたりしないと良いんだけど……。

 

「えっと……食堂で伊良湖さんの手伝いをするの忘れてました……」

 

「ええっ!? ご、ごめんなさい! 私、訓練に熱中しちゃって……やだ……」

 

 俺が答えると恥ずかしそうに謝ってくる大鳳さん。

 

「もしかして、無茶させてないかしら……?」

 

 そのまま大鳳さんが無茶させて無いか質問してくる。

 まず走るペースの時点で大多数の人が無理しなきゃいけない思うけど……それを言っちゃ拙いだろう。

 

「大分疲れましたけど、だからこそのトレーニングでしょう?」

 

「っ! ええ、ありがとう!」

 

 何故か感激された。解せない。

 

 

 

 

 

「何も言わずに出なくて済みません……」

 

「い、いいえ! 謝らないでください!」

 

 俺は食堂で、伊良湖に謝っていた。

 出撃させたお陰か、艦娘の人数自体がちょっと少なかった何とかなったらしい。本当に申し訳ない。

 

「そ、そうです! 今日の夜は今朝いただいたマグロなんですよ!」

 

 許してくれる上に露骨に話まで変えてくれた伊良湖には感謝しかない。

 

「あ~……ありましたねぇ。刺身ですか?」

 

「はい、シンプルが一番です!」

 

 そう言って厨房に消えていった伊良湖。

 本当に済まんね。少ないとは言ってもいつもに比べたらって話で、それでも十人は余裕で超えるから楽な訳ないのに……これは早く間宮さんを建造してもらわないと拙いな……。なんで大本営は明石と大淀のレシピしか持ってこさせなかったのか疑問に思うね。

 

「頂いたって言ってなかったかしら? マグロを?」

 

「はい。漁師さんたちからいつものお礼ってことで、魚介類は貰いものが多いんですよ。大鳳さんのお陰ですね」

 

「……なっ……っ!」

 

 大鳳さんは俺の言葉を聞いてポカンとしたような顔を浮かべた。

 

け、軽空母の皆さんのお陰です……

 

 ちょっと間を開けてから赤くなって、照れ隠しからこんなことを言い始めた。可愛いなオイ。

 

「お待たせしました!」

 

 伊良湖が二人分のお盆をカウンターに置いた。綺麗に光を反射する赤身が食欲をそそる。

 

「ありがとうございます。大鳳さん、食べましょうか」

 

「え? ええ……」

 

「「いただきます」」

 

 大鳳さんとマグロに舌鼓を打つ。ワサビを付けなくても特有の生臭さを感じないのは何度食べても凄い。

 なんて考えていたら大鳳さんがお代わりに行った。「沢山食べて沢山動く。それが一番です」なんて言ってた。

 見た目が小柄な少女? 女性がトレーニング大好きな男子高校生と同じこと言ってる……なんてドン引きしそうになったのは秘密だ。

 

 

 

大鳳さん!……とスチュワートさん」

 

 自分の名前を呼ぶ声が聞こえてきたから二人して箸を止める。

 

「あら、青葉さん。どうしたの?」

 

 俺の後ろから現れたのは警備府の情報屋、青葉さんだった。

 肩に手を置くのを止めないか! 手を払って軽く睨む。それでもあらら……なんて言うばっかりでこれっぽちも悪いと思ってない反応をしてくるからやり辛い。

 

「いや~……今日の朝にですね、ここに居るスチュワートさんから特大のネタを提供されまして……他の皆さんには色々と取材したんですけど、大鳳さんが最後に残ってしまいまして」

 

「特大ネタ……? 気になるわね」

 

 朝の特大ネタ? 朝の特大ネタ……。 はて?

 

「実はですね……近いうちに夏季休暇があるそうなんですよ! それで、大鳳さんは何をしたいですか? 因みに他の人達に訊いて回った結果がこうなってます!」

 

 一気に捲し立ててくる青葉さんが手帳を見せてくる。そこには海水浴、温泉旅行、山でキャンプ、とか実に “らしい” 回答の横に正の字が並んでいる。……一番多いのは温泉旅行か。

 

「そうね……私だけだったら山にって言いたいけど、私が何を答えたところでこれだと結果は変わらないじゃない」

 

 そう言って苦笑いをする大鳳さん。……でも違うんだなぁこれが。

 

「最終判断は提督ですし、どんな回答でも大丈夫ですよ。あ、青葉さん。私は “屋台とかやる” 案を出しときますね」

 

 まぁ、艦娘はまだ全然揃ってないからイマイチ盛り上がりに欠けるってことで却下されるんだろうけど……俺としては地域密着型の警備府にしたいんだよね。

 

「なるほど……では大鳳さんは山で良いんですね?」

 

「はい」

 

 山の隣の正の字に線が足されて、新しく警備府でお祭りって選択肢が書き込まれた。そしてそのページを破って俺に渡してくる。

 

「ささっ、提督にコレを渡してください。この青葉が集めたデータを活かしてくださいよ。それでは!」

 

 突風のようにやってきて、掻き回してから去っていった……。

 

「「……」」

 

 それからはしばらくの間、会話もせずに残った料理を食べ続けた。

 

 

 

「……そういえばスチュワートさんって皆さんに顔が利きますよね。何でですか?」

 

 大鳳さんから一つの質問がされる。顔が利くって言われてもなぁ……そりゃあいっつも提督の近くで仕事してるし……強いて言うなら―――

 

「初期艦だから……ですかね?」

 

「えっ」

 

「……えっ?」

 

 何その反応。俺が「えっ?」なんだけど……。

 

艦娘だったんですか!?

 

「……えっ?」

 

 W h y(ホワイ) ? 大鳳さんが何言ってるか理解できないね~?

 

「え? 嘘!? え、でも……」

 

「失礼な。提督でも憲兵でもなければ何だって言うんですか」

 

 消去法で行ったらどう考えても艦娘って答えに辿り着くと思うんだけど……。

 

「ええと……提督のメ、メイドの方かと……

 

「……」

 

 なんで?

 仮に、億分の一でそうだったとしても、こんな服装(セーラー服)のメイドなんて居ないだろうよ。それに艦娘でも無けりゃこんな常識はずれな髪の色なんてあり得ないって。

 

「ご、ごめんなさい! でも、誰もスチュワートさんのこと分からなくて……」

 

「分からない? いやいやそんな―――」

 

話は聴かせてもらいました!

 

「ヒッ」

 

 青葉さん!? 出ていった筈じゃ……。

 




壁に耳あり障子に目あり。
彼女の(レンズ)は真実を映し、耳はネタを逃さない!
そんな彼女は~~青葉~ッ!

実際主人公は艦娘の誰にも駆逐艦って言ってません。
唯一大本営から来てる伊良湖さんが知ってますが、
まさか名前しか言わないなんて想定外だったんでしょう。
しかも事態が段々面白くなってきたからって放置している勘違いの原因その①
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