私の名前は「      」   作:捻くれ餅

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77話です。

日中が暑くなってきましたね。
今年の最高気温は何度になるんでしょうか……
群馬辺りで記録更新されると予想します。

皆様も体調にお気を付けください。


帰還とその後

 艦隊帰還の伝令? を受けて慌ただしく外へ出る。時間も時間だからほとんど人にはすれ違わなかった。いつもランニングしてる長良さんは居ないし、川内さんは大鳳さんに抑えて貰っている。大鳳さんスゲェ……。

 

「おはようございます……提督」

 

「おはよう祥鳳。出撃した艦隊が戻ってきたのか?」

 

「ええ。まだ離れてはいますが、直に到着するでしょう」

 

 祥鳳さんの言葉で提督も俺も水平線を見る。

 何かのトラブルでこんな時間に戻ってきたんじゃないと分かって一安心だ。提督も安堵の息を小さく吐いたの俺は見逃してねぇからな?

 

 それにしても、まだ人影すら見えないんだけど……。どうして戻ってきたなんて分かるんだろうね? 空母の人達は艦載機と視界をリンクさせてる説が濃厚になるね……。

 脳ミソへの負担ヤバそうだと思うんだけど、俺は空母じゃないから分からない。でも空母になって頭おかしくなって死にたくはないから今のままで良いや。

 

 

 

 

 

 待つこと十数分。提督は祥鳳さんと雑談をして時間を潰し、暇を持て余した俺はだんだん明るくなる西の空を眺めつつゲッター線について考え(精神を虚無に溶かし)ていた。

 

「見えてきましたね」

 

「ああ……」

 

そうか……ゲッター線とは……ゲッターとは……!? そ、そうですねぇ!?」

 

「「?」」

 

 危ねぇ危ねぇ、戻ってこれなくなるところだった。

「何コイツ……」みたいな顔で二人から見られたけど、確かに水平線には小さいながら点が並んでいる。十より少なそうだし、二つの内一つの班が戻ってきたってことか。

 次第に点が大きくなってきた頃、提督がスッと姿勢を正して微動だにしなくなった。

 

「本当に提督が板について来ましたね」

 

「止めてくれ……」

 

 ちょっと揶揄ったつもりが、普通の反応が返って来たので面白くない。そこで祥鳳さんに話を振ろうとしたけど、結構近くまで艦隊が戻って来てたから俺もお出迎えの為に姿勢を正す……が

 

「……ぉぉぉぉぉぉおおおおおおっ!!

 

 気合のある声を上げながら隊列なんて無かったと言わんばかりにスピードを上げて突っ込んでくる影が “二” つ。

 

「クッソ~……不意打ちだなんて卑怯だぞ!」

 

「キヒヒッ、戦場で気を抜く方が悪いのさ」

 

「くっ……お、憶えてろよな! 次は負けないからね!」

 

「そう来なくちゃ面白くないね! おっ? 提督じゃン」

 

 派手に水飛沫を上げながら陸に上がった二人……長波と江風は提督に「お帰り」の一言も言わせなかった。

 

「どーだい! 私達は完璧に作戦を遂行して見せたよ!」

 

「そーそー、褒めてくれても良いンだぜー……ッ()ァ!

 

このおバカ! コホン……提督、ちょっとコレ(江風)借りていきますね♡」

 

 良い音を立てて叩かれた頭を抑える江風が(´・ω・`)(ショボーン)な顔をしながら村雨からドナドナされていった。

 

「長波も、流石に提督の前でそんなに騒ぐこたぁねーだろ。バカみてーじゃねーか」

 

「おいお前ら、戻ったら一番最初にやらなきゃいけねぇことがあるだろ……」

 

 騒がしい駆逐艦の後ろから戻って来た摩耶さんが言う。

 ……滅茶苦茶威厳があるって言うか……親分、姉御気質と言うか……。ついつい従っちゃいたくなる雰囲気がヤバい。

 摩耶さん改め摩耶様の一言で六人が整列した。

 

「「「只今帰投しました!」」」

 

「ああ、お帰り」

 

「お帰りなさい。お疲れ様です」

 

 提督とついでに俺も言っておく。やっとお帰りと言えた……。いつも遠征に行ってる人たちにも言ってるけど、出撃から戻って来た人に言うのは初めてだ。ちょっと感動。

 

「よし。じゃあお前ら……散った散った。あたしはこれから戦果報告しなきゃいけねぇから、先に戻ってな」

 

 そう言われた直後にダッシュで行動し始めた江風と、それを見て溜息を吐く村雨。楽しそうに会話しながら工廠の方に向かう夕雲型の二人。

 そして提督と一緒に寮の方に向かう摩耶様。そして俺は、一人でその場に残った菊月に声を掛けた。

 

「お疲れ様でした……って随分眠そうですけど……大丈夫ですか?」

 

 菊月は提督も居なくなって気が緩んでいたのか、ぶっちゃけ言うと死にそうな目をしていた。隈がヤベェ……

 

「問題ない。……と言いたいところだが、正直に言うと疲れた」

 

 菊月の言葉を聞いて驚いた。普段から弱音は吐かないあの菊月が……珍しい事もあるものだ。明日は三式弾の雨が降ってくるに違いない。

 

「全く……本当にあの三人、特に江風と長波はなんなのさ……」

 

 曰く「一番多く深海棲艦を撃破できるか競い合った」らしい。結果として深海棲艦はあっという間に姿を消し、出撃の主な理由である深海棲艦の掃討は終わった。だけど休める島が運悪く近くに無かったから、無理して夜間に警備府に戻ることになったと語る菊月。その割には江風と長波がまだまだ元気すぎると思うんだけど……。

 

「だが菊月は放っておいて村雨を慰めに行ってやってくれ。江風のお守りで相当疲れている筈だ。あとで甘いものでも奢ってやると良い」

 

「じゃあその時は菊月もどうです? 初出撃の感想も聞かせてくださいよ」

 

「フッ、良いだろう。楽しみにしておけ」

 

 そう言ってちょっと上機嫌になった菊月も工廠に向かっていった。最後に祥鳳さんに頑張ってと言って俺も執務室に戻る為に足を動かした。

 

 

 

「お、スチュワートじゃねぇか。報告なら終わっちまったぞ」

 

 執務室に向かう途中、摩耶様とすれ違った。

 やはりと言うか眠そうに大きく伸びをしながら歩いていたが、俺を見つけるなり気さくに声を掛けて来た。報告が終わったって……早くね?

 報告がそんなすぐに終わるようなものだったとか知らなかったわ……そうだと知ってたなら菊月に話しかけずに摩耶様と一緒に執務室に向かったと言うのに。次からは気を付けよう。

 

「フッフッフ……あたしらの戦果を見て驚くなよ?」

 

 なんて言ってニヤッとした顔を向けてくる。

 う~んかっこいい……じゃなくて、戦果が凄いってことはやっぱり菊月が言ってたように深海棲艦のキルマークの数で競ってたからか。きっと物凄い数の深海棲艦が海の藻屑と消えたんだろうなぁ……。

 

「楽しみですね」

 

 そう返すと、おう! なんて言って歩いて行った。

 服装に乱れも無さそうだから小破すらしてなさそうだ。喧嘩慣れしてそうっていう小学生並みの感想はあながち間違いじゃなかったってことだな。

 ……もしかしたら艦娘としての能力に加えて、個人個人のモチベーションとか性格、得意不得意も実力の内に入ってくるってことか?

 カタログスペックだけ見てベストな編成組んでも互いの相性が悪くて全然ダメでしたなんてこともあり得そうだな。やっぱり提督に艦娘とのコミュニケーションを図れって言ったのは正解だったみたいだ。

 ……この『艦これ(ゲーム)』難し過ぎない?

 

 

 

 

 

「これは……」

 

 なんというか物凄い数だ。摩耶様に言われた通りしっかりと驚かされた。

 提督から渡された紙には手書きの文字、駆逐イ級を始めとする深海棲艦の名前が複数書いてあってその脇には数字。パッと見ただけで五十超えてるって分かるんだけど……それをたった六人で?

 

「凄いですね……」

 

「そうだな。しかも疑ってる訳じゃないが嘘では無いらしい。……それに、遠征で止む無く交戦したというケースはあったけどこんなに沢山深海棲艦が居たなら、普段の遠征でももっと遭遇していてもおかしくは無い……のか?」

 

 言われてみれば確かに……撃破した数が多すぎる。

 佐世保で遠征に行ったときは俺たちは三日かけて往復したが今回の出撃した班は徹夜したとはいえ一日で戻って来た。ということは間違いなく佐世保の遠征よりは遠洋に出ていないことになるが、それなのにこんなに遭遇、撃破するのはおかしい。

 例え遠征は逃げが基本で今回は掃討を目的としてるから比較対象が違うにしてもだ。

 

 もう一度渡された紙を見る。駆逐イロハ級、潜水艦、軽巡が多いけど、重巡と戦艦の名前が無い。

 鬼や姫が居たとするなら摩耶様達がほぼ無傷で戻ってくるのは失礼だけどあり得ないと思う。

 佐世保の夜戦大好きな軽巡御一行が纏まって掛かる相手だ。俺も駆逐棲姫にサンドバッグにされたことがある。それに、そんな危険度の高い相手が居てたら真っ先に報告することは間違いない。

 

「なんか怪しいですね……」

 

 俺と提督がよく分かんない違和感を感じていた時だ。

 

 

 

 

 

バン!

 

 扉が勢いよく開けられた。

 

艦隊が大破で帰還しました! 深海棲艦も多数確認できます!

 




トラブル「ヒャア! 我慢できねぇ! 騒ぐぞー!」

哨戒の祥鳳さんは何してるかって?
艦載機を使って深海棲艦を殴ってます。
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