私の名前は「      」   作:捻くれ餅

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8話目です。

評価欄が白じゃなくなってる!?
ありがとうございます。

戦闘回のつもりです


砲撃➀

 朝日が眩しい。

 

「なんだよ……もう少し寝させてくれよ」

 

 移動から五日目、俺は無人島に居た。地図でいうところのブルネイの近くにいるらしい。漂流物のゴミ……布切れを見つけたのでそれを布団代わりにして寝ていたが、太陽に邪魔された為起きざるを得ない。昨日の夜に点けた火は消えていて、微かな温かさを放つ石と灰だけが残っている。

 

 俺はノロノロと起き上がり支度を始める。ただ寝ていても港ではないので妖精さんは食べ物を持っこない。自分でどうにかするしかない。

 

 艤装とは別の大荷物、背嚢から釣り竿を取り出す。アランさんから貰った宝物である。あとは小分けにしておいた弾薬。これは火を点けるのに非常に便利だと知った。

 何せ乾いた木を集めてちょっと油を付けてそれに向かって発砲するだけだ。弾の温度で勝手に火が付くのでマッチよりも余程派手に燃える……炸裂するから危険だけどかかる時間はかなり短縮されるから無駄遣いでは無いはずだ。

 

「辛いなぁ……」

 

 独り言が漏れる。一人暮らしはしていたから独りで居ることには慣れていたと思っていたがどうやらそんなことはなく、妖精さんが居なかったら相当危なかった。何せずっと移動しているので娯楽なんて在りはしない。その上変わり映えのしない海が広がるばかり。市街地とは違って目移りのしようもないので退屈を極めるのだ。

 五日目にして俺の精神は大分参っている。これでまだ予定の四分の一だとか考えたくない。

 

 そんな俺の現在の唯一の楽しみがサバイバルである。五日もすれば慣れてきた頃合いで、あれやこれやと色々な罠のことを考えてたりすると時間が経ってたりするので結構気に入った時間の潰し方だと思っている。因みにあれから港には寄っていない。

 つまり弾薬が補給できないということである。かなりピンチなのだが火をマッチも無しに点けるのは俺では恐らく不可能だろう。だから発砲式着火による弾薬の消費は所謂コラテラルダメージというやつだ。

 この調子で行くと確実に日本到着の前に弾薬が底を突き、生肉を食すことになり最悪詰むので絶対に港に立ち寄る必要があると考えている。

 

「おっ?」

 

 アレンさんから貰った釣り竿を海上で垂らすこと数分、手ごたえを感じたから竿に力を込める。

 これでようやく魚一匹。でも到底満足できないからこの前は魚を餌に海鳥を捕まえた。当然魚よりも大きいので空腹は凌げるからこれからも続けていきたい。しかし味はもう酷いもので、妖精さんが(パク)ってきた香辛料が無かったら栄養失調だった。

 まぁ、アレンさんが居なかったら今頃もどこかの港で泥棒しながら生活していたに違いない。そんなことをしていたら俺のゼラチンメンタルは音を立てて崩れ去るのでアレンさんがいて良かったと心の底から感謝している。

 魚よりもゴミの方が釣れる呪いの装備的なオブジェクトだったとしてもだ。きっと俺の使い方と釣りのスキルが足りないからゴミばかり釣れるんだ。

 

 ……海面から姿を現した魚は昨日より小さかったのでこれも鳥の餌コースだ。もう一度竿を垂らす。

 

「何処かの鎮守府の艦娘から見つけてもらえないだろうか」

 

「ブルネイ泊地が近くにあるみたいですねぇ。艦娘が居れば補給とかの期待も出来るんじゃないですか?」

 

 確かに。艦娘が沢山いるであろう泊地ならきっと俺を見つけてくれるだろうし、声を掛けるなら気付いてもらえるだろう。

 目的地はブルネイ泊地。今日はそこまで移動することを決めてから竿を上げて無人島に撤収する。結局あの後は鳥も魚も来なかった。仕方がないので痛んでしまう前に食べた。もはや毒があっても気にしてられない。カサゴやフグっぽいのは鳥の餌だし、他の魚だって捌く技術なんて無いし、一応火は通すから大丈夫だろう……多分。

 

 

 魚をくれてやっても尚虫が鳴る自分の腹を押さえながら移動する。缶詰を使っても良かったんだが限界まで取っておこう……出し渋って抱え落ちはもっと嫌だから今日の夜に食べよう。

 

「……なんか来るな」

 

 遠くに黒い点が見えた。アレは駆逐イ級だろう。

 荷物から以前引き抜いてきたイ級の歯を取り出す。これがそれなりにサイズがあり軽くて丈夫という優れものだった為削って持ちやすくしてみた。スコップの先端みたいな形をしているので穴を掘ったりするのにも使えたりする。

 敵から剥ぎ取って加工して戦うとか某ハンティングゲームを思い出して苦笑する。これから人生二度目の命のやり取りがあるかもしれないというのに何を考えているんだ。緊張で固まり動けないよりは余程いいだろう。

 

「聞いたところによるとイ級って食べられるそうなんですよねぇ~刺身とかで」

 

「は? マジ!?」

 

 緊張を解す為なのかそれともただの独り言か、妖精さんが聞き捨てならないことを口にした。

 なんとあのデカブツは食べられるらしい。もし本当だったら俺の食糧事情はほとんど解決したと言っても過言ではない。これは精神衛生の為に何が何でも勝利して、弱肉強食の掟に従いイ級を食さねばならん!

 味がちょっと気になるっていう理由もあるし。

 

 

 

 

 

 こちらへ向かって来るイ級は俺が目的ではなかったらしく、ある程度の距離まで近づいた時に初めて気が付いたような反応をするくらいのノロマさだった。

 そして今は俺がイ級と睨みあっている。

 距離は遠く、イ級も近づいてこない。前回の経験からイ級はこのままの距離を維持すると砲撃を始めるだろうし、隙を見つけてこちらから近づき目に歯を突き立てるか。いや難しい。そんなに上手く事は運ばれないのを今までの人生で学んでこなかったのか俺は?捕らぬ狸のなんとやらだ。

 

 だったら近づいて魚雷をぶつけた方が効果があるだろう。当たり所によっては二発で倒せたんだ。今度は三本くらいやれば倒せ――

 

 ドン――

 

 考え事の途中に攻撃するのはルールで禁止じゃないの?

 

 右に避けて砲を撃つ。自分が先程まで居たところに水柱が上がる。俺の撃った砲は当たってはいるがあまり効いていないようだ。この砲は何なの? 牽制用のゴム銃じゃないんだしもう少しくらい痛がってくれよ……そんなに気にされないとこっちのプレッシャーが凄いんだよ。

 

 砲は効果が薄いと踏んで魚雷で仕留める方針に変更する。でも遠距離から当たる気がしないし、どうにかして隙を見つけなければならない……

 

「でもどうすりゃ良いんだよ……」

 

「砲の使い方は一つじゃないですよ~」

 

「まだなんかあるの?」

 

 別の使い方とは? でもきっと妖精さんは俺が自分で気づけるように敢えて答えを言わなかったに違いない。さぁ考えろ砲の別の使い方……うぉっ危ねっ!

 

「だから撃ってくんじゃねー!」

 

 怒りに任せて二、三発くらい砲を撃つ。やはり効果はなさそうだ。

 

 イ級が近づいてきたから後退する。距離を詰められると噛みつきという即死級攻撃されるとか溜まったもんじゃない。この如何にも貧弱そうな体では体当たりでも致命傷になりかねない。

 

 

 さて、まずは艦娘と軍艦を比較して艦娘の優れているであろう点を挙げていこう。幸いイ級は俺が攻撃しなくなって回避に徹していても攻撃をし続けている。まだ時間はある。

 

 艦娘がモデルとなった軍艦よりもの優れている点、まずは今俺がやっている後退、機動力だろう。後退や急旋回、ましてや砲弾の回避や防御なんてものは軍艦じゃあ絶対に出来ないだろう。そんなことが出来る(ふね)が存在するならその設計技術者達と船長と操舵手は変態だ間違いない。

 

 そして攻撃の範囲の増加。砲弾の飛距離ではなく射撃の角度? の増大か。流石の艦娘も20キロメートルも砲弾を飛ばすなんてことは出来ないだろう。

 そこは大きく劣っている筈だが、動物的な動きで滑らかに照準を合わせて撃つのは軍艦では出来ないだろう。だから照準の定めやすさと連射性能、命中率は艦娘が優れているだろう。

 

 あとは軍艦よりもスペースを取らない……当たり前か。これも今は関係ないな。

 

 逆に劣っている点はさっきの射程と総合的な耐久力、深海棲艦以外に対する攻撃力だろう。

 妖精さんの支援があって深海棲艦にダメージを与えられるのであって、そうじゃなかった場合、鎮守府以外の陸上の場合は砲は拳銃並、魚雷も普通の爆弾くらいだといつか妖精さんが言っていた。

 いや、普通の爆弾も十分に恐ろしいけどね?

 

 そして俺は駆逐艦、他の艦種よりも速く移動できるらしい。そうなると大した火力の無い砲の上手な使い方は……

 

「閃いた!」

 

 この勝負は俺が勝つ。

 




 艦これ世界に転生したんだから多少は強くしても問題は無いと思うこの頃。
でも個人的には無敵性能は好きじゃないのでちょっと変わったことをさせようと思います。

強いけど普通に対策できる弱点があるって素敵だと思う。

これからもよろしくお願いします。
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