私の名前は「      」   作:捻くれ餅

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82羽です。

投稿予約ガバりました。許してください……
ちょっと駆け足気味になったかな……?
シナリオを見直したりして、ちょっとおかしくなってます。

※提督視点。


提督の憂慮

▼――――――――――

 

 

 警備府に居た殆どの艦娘が居なくなった。

 

 自分が情けないが故に見放されたという訳ではない。

 深海棲艦が現れ、その対処の為に戦場に向かわせたんだ。

 

 自分が。

 

「……」

 

 先程まで晴れていた空がいつの間にか雲で覆われている。まるで自分の心情を表したかのような陰鬱になる色だ。

 

 艦娘を見送った後、大淀と立てた作戦で艦娘の配置に問題が無いか紙に穴が開くように何度も確かめようとした。

 だけど、出撃させた艦娘たちの事が心配で全く集中できなかった。文字は見えてるけど、見てはいないことが自分でも分かる。

 

 今は午前中。それなのに秘書艦用の机に座る彼女(スチュワート)が居ない。

 毎日ここに通い、午前中に書類を片付けて午後には居なくなる彼女が。

 

 居たら居たで、黒川提督のことが頭を過るから気を遣うけど、一月もこの部屋で書類整理をし続けた人が居ないとなると、どことなく寂しいように感じた。

 

 ……この部屋はこんなに広かったかな……?

 

 自分が仕事以外で執務室を使うことは稀だ。午後はいつも警備府内を見て回り、彼女に言われた通り艦娘とのコミュニケーションを図っている。若しくは執務室とは違う、自分の部屋で勉強や趣味の時間を過ごしている。

 

 だからだろう。執務室がとても広く見えた。

 

 

 

「休んでる場合じゃないでしょ!?」

 ふと、曙にそう怒られたことを思い出した。確かその後、彼女も自分に対して発破をかけて来たんだっけ……?

 

「……よし!」

 

 こうしてはいられない。

 艦娘が出撃した今、作戦の概要を纏めた紙など既に価値を失っている。

 だったら現在の警備府で艦娘が居る工廠に行って、直接話を聴くしかない。

 

 彼女から言われた通りどっしり構える……ただ待つなんて出来そうにもないんだ。

 

 

 

「あっ、提督! どうしました?」

 

 妖精と一緒に工具を手に艤装の修理をしていた明石が、自分に気が付くと声を掛けてきた。

 

「ああ、帰還した艦隊にも話を聴きたくてね」

 

「成る程。それなら今は……潮さんと飛鷹さんが起きてた筈ですから……確認してきますね!」

 

あっ……ああ」

 

 自分の要望を伝えたら、手を止めて話の出来る艦娘の確認に行ってしまった。忙しいだろうに……申し訳ない事をしたと思う。

 ……自分の声は震えていなかっただろうか? 堂々と、人を率いる人物に相応しい態度で居られただろうか? 

 

 明石が確認に行ってから程なくして工廠の奥、白いベッドが沢山並んでいる医務室から声が聞こえてくる。

 

え、提督が来てる?

あの……まだ起きていないってことには……

 

 なんて声が聞こえてきた。

 意外そうに驚いている飛鷹の声と、逃げ場所を探すような潮の声が聴き取り辛いものの、しっかりと自分の耳に入って来た。

 もしかしたら自分は多くの艦娘から嫌われているんじゃないかと一瞬考えたが、大破帰還となった申し訳なさから顔を合わせ辛いようだった。

 自分はそんなことで責めるつもりは無いんだけど……。

 

 

 

 

 

「―――本当に数が多くって! ……提督、後で祥鳳さんにしっかりお礼した方が良いよ。祥鳳さんが居なかったら間違いなく深海棲艦はすぐそこまで来ていたんだから」

 

「……ああ」

 

 大破帰還って聞いて不安だったけど、無事なようでホッとしている。

 大本営で講義を受けたから知ってはいるけど、大破などと聞くと、やっぱり欠損とかの暗いイメージが浮かんでしまって不安になる。

 

 飛鷹と話をして分かった事は、もう一つの北東側に向かった摩耶達の艦隊は無事に戻って来たので特に問題は無くて、南南東に向かった長良たちよ艦隊が交戦したということ。

 そして、その時に交戦した深海棲艦は、駆逐イ級やロ級のような脅威度は低いのが大半だったものの、兎に角数が多かったということ。

 そして、後で祥鳳にしっかりとお礼をしなくてはいけないということ。

 

「……」

 

 深海棲艦がイ級やロ級のようなものが大半だったと聴いて、少しだけ安心した。それならば大鳳や摩耶のような力のある艦娘が居れば何とかなると思ったからだ。

 長良達は、少人数だったから数に押されてしまっただけで、今回は警部府に居た艦娘は明石以外全員出撃したんだ。話を聴いた限りではちょっと過剰戦力に思ったけど……それぐらいが丁度いい。万が一があったら大変だ。

 

「ちょっと~? 聴いてる~?」

 

「……ああ、聴いて「どうしたんですか!?」

 

 明石の驚いたような声が工廠内に響き、医務室まで聞こえてくる。

 

「「……」」

 

 飛鷹と顔を見合わせ、一緒に工廠へ行く。

 後ろには飛鷹と話している間に起きたのか、長良達が全員付いてきていた。

 

 

 

 医務室から出ると、工廠の入り口のところで艤装を外している明石。

 そして……祥鳳、大鳳、川内が居た。

 

「えっ……?」

 

 長良から困惑の声が漏れる。

 当然だと思う。 自分だって大鳳まで出たら過剰戦力だと思っていたら……まさかの帰還。一体何があったんだろうか。

 

「ちょっと! 何があったのよ!」

 

 雷が説明を要求すると、大鳳が事情を話し始めた……。

 

 

 

「そんな……」

 

 警備府で単体の最高戦力である大鳳の大破帰還で騒がしかった工廠内は、嘘のように静かになっている。

 正直に言うと、自分だって絶望的な気分だ。

 

「まさか戦艦レ級だなんて……」

 

 この一言で全てに説明が付く。

 講義でも、非常に脅威度の高い深海棲艦の一つとして教わった。姫や鬼とは違うらしいけど、非常に好戦的らしく、被害はそれらを上回る場合もあるらしい。

 駆逐艦を処理していたら突然現れ、大鳳たちを相手に壊滅的な被害を与えたらしい。そして、その時一緒に居て、二手に分かれて撤退した長波と朝霜がまだ帰ってきていない。

 

「じ、じゃあまさか……」

 

 雷の呟きはみんなの想像の代弁だろう。

 最悪の想像が過る。まさか……まさかとは思うけど……

 

「悪い! やっちまった!」

 

「長波! 朝霜!? 大丈夫なの!?

 

 工廠に再び響いた大きな声。その主は長波と、長波に背負われている朝霜だった。

 

 戻って来た!

 

 喜びが一気に押し寄せて来た。安堵のあまりその場に座り込んでしまいそうだった。

 朝霜が意識を失ってるのか、医務室の一番手前のベッドを響が急いで片付けに行って、素早くそこに朝霜を横にした。

 艤装が大破状態で、朝霜自身には大きな傷が無いようで何よりだった。

 

 

 

「スチュワートが一人でレ級の相手をしてる! 何とかしろよ!」

 

 一息ついた後に長波が放った一言はここに居た全員を驚かせた。

 五人がかりでも撤退に追い込まれた戦艦レ級を相手に一人だけ!?

 レ級から追われていた長波たちの様子から、時間稼ぎの為に相手をしたんだろうけど……正気の沙汰ではない。自殺しに行くようなものだ。彼女がそんなことを分からないとも思えないし……。

 どうにかして助けたい……助けたいが……どうすれば良いのか……

 

高速建造材!

 

「え?」

 

 近くにいた妖精が叫ぶ。

 堂々と腕を組み仁王立ちをする、とても頼りになりそうな妖精の言葉でピンと来た。

 

 その手があったか!

 

「明石! 急いで資材を用意してくれ。ありったけだ」

 

「提督!? 何を……」

 

「高速建造材を使う」

 

 無力な自分は、これに賭けるしかない。

 

▲――――――――――




さ〜て、誰を召喚しようかな……
(例の妖精さん謹製の戦艦確定ガチャ)

次は6/6予定です。
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