温泉回っぽいサブタイトルの癖に……
四話も風呂に入らない主人公が居るらしい。
えっ、汚い……。(作中時間は数時間)
「狭霧、お疲れ様です……が、これからの提督の動向のチェックはお願いしますよ?」
「お任せください!」
青葉さんと食堂に向かい、食堂の前で外を眺める振りをして手鏡で食堂を観察するなんて器用なことをやっていた狭霧に声を掛ける。
「それで、これからどうするつもりなんですか? 大淀さんからノートを借りていたようですけど……スチュワートさんがソレをどう使うのか青葉、気になります!」
「そうですね……そんなに凄い事はしませんよ。私一人で行きますので、青葉さんはここに残っていてください」
「了解ですっ!」
そして、青葉さんを狭霧の横に待機させたところで提督の正面に座っていた祥鳳さんと目が合ったので、ジェスチャーをしてみる。
((自然な 感じで 頼む))
((回れ右 上品に お願い……? 右? ……お手洗いに行けってこと……?))
俺が渾身のジェスチャーをしたら祥鳳さんが一瞬困惑したような顔をしてから席を立った。どうやら上手く伝わったらしい。……さて、ここからが俺の演技力の見せ所だな。
「あっ……居ました。提督……ちょっと用事があるので、部屋の鍵をお借りしてもよろしいでしょうか……?」
そう言って大淀さんから借りてあるノートを提督に見せると、いつもより赤い顔で「……ああ、分かった」と言って鍵を渡して来た。
「二階、龍の部屋。……終わったらちゃんと鍵返してください……」
「……はい」
結構お酒入ってるなこれは……口調が丁寧になっちゃって擬態が解けてるぞオイ。さては随分飲ませたな? と呆れ交じりに金剛さんを軽く睨むと、いい笑顔でウインクを飛ばして来た。
……酒の所為で判断がおかしくなってたことに関して言えば俺がやり易かったから文句は無いけど、あんまり酔わせると提督が寝る為にさっさと戻ってしまう可能性がある上に、だらしねぇ寝顔を撮ることになるんだけど……それで良いのか? 俺はそもそも提督の写真なんざ欲しくはないが、寝ゲロしてる写真なんかもっと要らない。
「Hey提督ぅ……私のお酒が飲めないですか~?」
そう言いながらウイスキーを注文する金剛さんはまぁ……ほろ酔いくらいで楽しそうだし……良いか。
「ああ、飲みますよ……」
提督は……急性アルコール中毒でぶっ倒れたりしないなら良いか……。そのまま金剛さんからのアルハラに応え続けてくれ。例え何があってもお前の介抱なんてしないからな!
「じゃあ……置いたら返しに来ますね?」
「はい……」
提督から鍵を受け取ったので、お手洗いの方からこっちの様子を伺っている祥鳳さんに首を細かく振ってダメだと合図をしてから、耳をトントンと叩いて無線機のジェスチャーをしてから食堂から出る。
「スチュワートさん、やりましたね!」
俺が鍵を持ってきたことに対して狭霧が褒めてくれた。
「ノートを翳しただけで提督から鍵を預かるなんて、一体どれほどの……」
青葉さんは勝手に戦慄してるし……意味わかんねぇ。
「……いえ、こうしている場合ではありません。早く提督の部屋に行きましょう!」
「……歩きながらで良いですか? それと、狭霧は引き続き見張りをよろしくお願いしますね? 青葉さんはちょっと待って下さいね……。祥鳳さんに伝えたいことがあるので……。こちらサプライズ、オペレーター。ピストルとの通信を許可して欲しいです」
『了解しました』
俺が言うとすぐに祥鳳さんとの個別回線に切り替わったようだ。大淀さんマジで有能過ぎる……裏商人とか黒幕とかピッタリじゃないかな?
『ス……サプライズ。何を言いたいのでしょうか?』
「あ~……ダイアモンドが結構いいペースで対象に飲ませているみたいなので、そのペースをコントロールしてもらおうと思いまして……」
『了解よ。そっちも上手くやって頂戴ね?』
『任せてください』
そう言ったら大淀さんも聞いていたのか、個別通信が切れた。
『こちらエレキテル、二人が対象の部屋に入るときの見張りをするわ。安心してちょうだい!』
『有難いです』
いや……大淀さんの指揮下で動いたら何? コレ……。
俺はついさっきまで祥鳳さんと話していたら会話が終わった瞬間に個別通信が解けて、次の瞬間には雷が支援するって内容の通信が飛んできた。マルチタスクとか、聖徳太子だとか、最早そのレベルだろ……。大淀さんが居れば提督不必要説が浮上するんだけど……。
「青葉さん、お待たせしました。……行きましょうか」
「スチュワートさん……今は名前で呼ばないでください」
「良いじゃないですか。誰が聴いてるか分からない場所でそう呼ぶのはちょっと不自然過ぎると思うんですけど……」
「それもそうですね……木を隠すなら森の中……艦を隠すならと島にもなったこの青葉としたことが忘れていたようです。それは今は置いておいて、行きますよ~!」
「……ハイ」
「来たわね!」
「お待たせしました……」
周りに人が居なくてよかった……。
提督の部屋の前で腕を組んで仁王立ちをしていた雷は俺たちを見つけるなりそう言ってきた。今はまだ寝るには早すぎる時間だけど……あんまり廊下で騒ぐと迷惑だからちょっと控えて欲しいな~なんて。
そう思いながら提督から借りて来た鍵で戸を開けて、部屋の中に入った。俺たちに続いて、外をしっかり確認した雷が素早く入ってきて鍵を掛ける。……潜入成功だ。
「提督の部屋に潜入しました」
『それではウルフは準備に入ってください』
『りょーかいですっ!』
青葉さんはそう言ったものの、この部屋は流石宿泊施設。しかも隠れられる場所が押し入れくらいしかない。
……仕方がない。布団を敷いてやるか。
これは押し入れに青葉さんが隠れるスペースを用意する為の行為だ他意はない。と心を無にしながら布団を敷いていく。きっと金剛さんからベロベロになるまでお酒を飲まされるであろう提督なら、旅館のサービスか何かだと勘違いするか、そのそもそんな事を気にせず布団にダイブして眠りこけるかの二択だろう。流石にあの場で寝落ちとかはしないと思うんだけど……。
何はともあれ、準備は終わった……!
「青葉さん、提督が戻ってきて、眠るまで押し入れに入ってジッとしていてくださいよ? くれぐれも寝落ちにご注意ください」
「安心してください。レアな写真を撮る為ならこの青葉、例え火の中水の中です!」
「……」
「水の中って沈んでるじゃない……そんなんじゃダメよ」
雷の言う通りだ。本物のプロならポリゴンとかデータの隙間を通って土の中とか なぞのばしょ くらいは行けるはずだ。死ぬ覚悟で写真は撮らなくても良いんだぜ?
「こちらウルフ。準備完了ですっ!」
あっ、青葉さんこの人大淀さんに報告しやがった!
『……了解しました。ミストはピストルを連れて撤収。その後、サプライズとエレキテルの撤収のサポートとして対象の部屋周辺の監視をお願いします。サッカーとマグナムは、各部屋から誰かが出てこないかの監視を厳にしてください。サプライズ、エレキテルも撤収してください。万が一の場合は、サプライズは自然を装ってカバーストーリー「忘れ物」を実行してください。出来ますね?』
大淀さん、いくらなんでも無茶ですよそれ……出来ますね? じゃないんだよ。
そもそも提督にバレさえしなければ割と何とかなるような気がするんだけど……そのためにカバーストーリーなんて必要ないだろ……。
「勿論です。プロですから」
「そうね。青葉さん! 期待してるわ!」
そう言ってサムズアップする俺たち三人。
……おっといけね。
結局、撤収の時は何もハプニングは起こらず、金剛さんの泊まる部屋に青葉さん以外が集まってプチ打ち上げみたいな感じでジュースを飲んでお菓子を食べて、ちょっとダラダラして青葉さんが戻ってくるのを待ち、一時間半が過ぎた頃、青葉さんが戻ってきた。
「スチュワートさんも、どうぞ!」
みんなに写真を配り、俺にも渡して来た。
……うん、フツーに提督が寝てる写真じゃん。要らないから後で択捉の枕の下にでも突っ込んでおこう。
戦場……カメラマンの……A O B A です……
お酒が入ってるとは言え提督を起こさずに押し入れから出て写真を撮り、気付かれずに部屋から出ていって従業員に話をして鍵を掛けて貰うのは間違いなく忍者。
フライングバードの後ろは綺麗 (?)