ギリギリセーフ。まだ午前……
水の流れる音に癒されたい……静岡とかに行ってみたいですねぇ……
艦娘って川とか湖にも艤装さえ着けていれば浮かべるんだろうか……
「起きてください……」
……
「スチュワートさん、起きてください」
……はっ!?
「ハイ起きましたァーーッ!」
「うわぁ!」
誰かに声を掛けられながら揺すられて意識が覚醒する。
どうやら寝ていたところを起こされたらしいことを瞬間的に悟り、起きてと呼びかけられたから脊髄反射で飛び起きる。起こされた時はこうやってちょっとふざけると驚かせることも出来るから素晴らしい!
……相手が
「……ごめんなさい。択捉ちゃん」
「い、いいえ……それより! 提督の写真を択捉の枕下に入れたのがスチュワートさんだって青葉さんに聞いたんですけど、本当ですか?」
「……本当ですよ」
俺がそう答えると択捉は笑顔になり「ありがとうございます! ……でも、貰ってしまっても良いんでしょうか?」なんて訊いてきたから、ここぞとばかりに択捉が持ってた方がその写真も喜ぶって言って押し付けた。返品は止めてくれよ?
青葉さんが択捉に喋ったのは本当にそれだけかは後で確認するから良いとして……俺は二度寝を敢行して、今は
「朝食ですか?」
「あっ、忘れてました! 朝食です! 皆さんが待ってますよ」
「……」
待たせてるぅ!? ……こんなことしてる場合じゃねぇ!
「行きますよ択捉!」
「えっ? うわあぁぁ!」
何時までも呆けて突っ立っている択捉をお姫様抱っこして、出来る限り揺らさないように気を付けながら廊下を出来る限りのスピードを出しつつ走らないように移動した。
「「「ごちそうさまでした」」」
律義に全員揃うまで待っててくれたみんなのお陰で一人で朝食を食わずに済んだ。それはそれで嬉しいんだけど、人を待たせたっていう罪悪感が半端じゃないから先に食べていて欲しかったとも思う。
申し訳ない気分で席に付いたら目の前には和風な朝食。朝から焼き魚とか納豆とか味噌汁とか……金剛さんが納豆を平気な顔して食べてたのはちょっと意外だった。
……何? 俺が箸を使って納豆を食べてる方が意外? 何でや! 納豆はジャパニーズの朝食の最適解だろ? 俺は食べちゃダメなのかよ!?
一足先に食べ終わった提督が居なくなってからそんなやり取りがあり、多くの人から驚かれた。
……俺が普段より相当取っつきやすいように感じるという理由で。
取っつきやすいって何だよ……そりゃあ俺だって仕事の時は真面目にやるけど、普段から仕事の時みたいにしてたら凝り固まっちまう。だけど普段からこんなに弾けてたら体力が持たないし……要するに、偶に爆発するからスッキリするんじゃないか。
「昨日も付き合ってくれたし、スチュワートさんって実は結構フランク?」
雷のこの一言は随分ダメージが大きかった。そんな親しみやすい性格だったとしたらボッチやってないんだよ……。
あぁ、ヨーグルトがしょっぱい……。
「スチュワートさん。朝食後、私と一緒に提督の部屋へ来てください。提督がお呼びです」
俺が変わった味のヨーグルトを食べていると大淀さんが話しかけて来た。
提督が呼んでる、ねぇ……俺と大淀さんだけを呼ぶって時点でなんか怪しいけど、断るなんて選択肢は無いから行くしかない。
「……そうだ、村雨さんも連れて行っていいですか? ちょっと用事があるので」
「構いませんが……何の用事ですか?」
「警備府の制服の事とかで提督に相談しようかと……村雨さんはお洒落に明るそうだったので参考人としてって感じです」
「……申し訳ありませんがそれはまた後日にして貰えませんか? 提督の様子を見る限り、結構深刻そうだったので……」
「……分かりました。村雨さん、やっぱり何でもないです……ごめんなさい」
さて、提督が深刻そうにすることって何だろうなぁ……資材が大本営から届いたからまだマシだけど、この間の戦艦の建造で今だ資材が危機的状況にある。とかだったらカワイイんだけどそんなんじゃないんだろうなぁ……。
「「失礼します」」
「……来てくれたか」
おう来てやったよ。慰労とか言っておきながら旅館で仕事する上に巻き込むとか、提督も相当なワルですなぁ……。
「……単刀直入に済ませちゃいましょう。今度は何が起こりましたか?」
「……いや、まずはこれだ」
「これは……何ですか?」
提督が渡して来たものを大淀さんと俺が受け取った。
大淀さんがそれを触りながら疑問符を大量に出し、ついに分からなかったのか提督に説明を求めた。
だけど俺はこれが何なのか知っている。
「スマートフォン、スマホ、電話……通信機器ですよ、大淀さん」
「電話……こんなに小さくなるなんて……!」
「……良く知ってたな、スチュワート」
まぁ……俺は大戦時代に生きてないバリバリの現代人だから……。
「……他人の過去を探ろうとするのはちょっとどうかと思いますよ?」
「……済まない」
チョロいな。
……にしてもあの事件の後に提督にスマホを寄越せって言ったんだけど……準備早いな。まさか大本営からの承認を待たずに自費で用意したとか言わないよな?
「えっと……コレを大淀さんは分かりますけど、私に渡すのはどうかと思いますよ? 出撃できませんし」
「あ~……今はこれしか用意できなかったんだ」
そう言いながらバッグからもう三つくらいスマホを取り出した提督。
おいおいおい、スマホ五台とか相当な出費じゃないの? 言い方からして自費って感じするし……あんまり無理はすんなよ?
隣でスマホをうんうん唸りながら弄っていた大淀さんが、画面が点いたところでスクリーンショットを撮りまくったり画面を点滅させたりしていた。大淀さん……それ画面触るんスよ。ちなみにそのボタンは音量調節ね。
「……スチュワートさんはコレを電話と言いましたが、やはり連絡用ですか?」
「ああ……先日の事件で思い知らされたからね」
「……そうですね」
情報の伝達速度でいくらでも初動が速くなる。無線と違ってLI○Eみたいなものがあったら素早く広く情報共有ができるだろう。一般には傍受出来ないように細工するのは大本営か明石さん、妖精さんにでも任せよう。きっと何とかしてくれる筈だ。
「提督。先程、 “まず” って言いましたけど……コレの他にも何かあるんですか?」
俺がそう提督に尋ねると、提督は辺りを見回して誰も居ないことを確認してから俺と大淀さんの近くまで来て小さな声で言った。
「実は……ハワイが深海棲艦に制圧されたらしい」
「「……」」
は?
「いやいや……待ってくださいよ提督、今はエイプリルフールじゃないんですよ!?」
「ニュースでもやってなかったですよ! 説明をください!」
俺も大淀さんも、突然伝えられたヤバすぎるニュースを脳が拒み、一拍以上の間を開けてからようやく理解して提督に詰め寄る。
ハワイ落ちたって何? さっき食堂でやってたニュースではいつもと変わらない天気の事だとか、地元の小学校が地域の~とか、そんなニュースしかやって無かったじゃん!
「死人に口なし、だろうね……。私も朝食の後に伝えられたばっかりなんだ。聞いた話だと、長距離遠征をしていた大本営の艦隊がハワイ近海の様子がおかしい事に気が付いたことで、衛星を使って確認したところようやく判明したらしい」
「じゃあ、ハワイの人達は……」
「……」
提督が顔を背けた。嘘だろオイ……。
確かにハワイって海に囲まれた小さな島国? だけどさ……十分過ぎる程には大きい島だと思うんだけど、それが落ちたとか……。
「それで、大湊警備府がこの件に対応することになってね……勿論、大きな作戦になる以上色々と
「提督! このスマートフォン? を購入した理由は素早く物事を進める為でしょう!? でしたらここで時間を無駄にするべきではありません! 今日……いいえ、今すぐにでも戻りましょう!」
うんうん、大淀さんの言う通りだ。
「そんなにゆっくりしてたら “また” 艦隊が大破帰還することになるかもしれませんね……それでも心が痛まないなら明後日までゆっくり観光を楽しみましょう。優先順位を間違える人じゃないと信じてますよ?」
「……全員に通達してきてくれ。今から警備府に戻る」
「了解しました!」
「
ついいつものノリで……しかも提督の前で……恥ずかしい……。
穴があったら入りたい気分の俺は逃げるように提督の部屋を出ていった。
Q.結局湯号作戦ってなんなの?
A.温泉に行って疲れを取ることが目的。
温泉旅館に行って、寝た時点でクリアのアホみたいな計画。
提督が連絡用にスマホを五台導入して、ハワイが犠牲になった。そんな回。
次回から新章「大型作戦」をはじめようと思います。