私の名前は「      」   作:捻くれ餅

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94話です。

演習回……ではなく、そのちょっと前の話です。


愉快な頭

「演習……ですか?」

 

 聞き間違いじゃない? 遠征じゃなくて?

 

「そうなの~。他所から演習のお誘いがあったらしくてぇ~……話があるから提督が執務室に来てって言ってたわよ~。うふふ……早く書類と睨めっこしてる大潮姉さんのとこに行って見ないと♪

 

 じゃあ宜しくね~。なんて言って去る荒潮の背を眺める。

 バスの中でも秘書艦の席がどうたら言ってたけど……心なしかツヤツヤしているように感じるし、何か楽しいことでもあったのかな?

 

「……」

 

 演習と聞いて思い出すのは、大本営に居た時に赤城さんがやってきたことだろう。

 他所からお誘いってことは、流石にそんな超大物で大湊の艦娘(ヒヨッコ)を叩きのめすなんて非人道的、スポーツマンシップに欠けることは無いだろう……。

 

 問題はどこに行くかってことと、そのメンバーの事になりそうだなぁ……。

 大本営とか佐世保なら俺も行くことになるんだろうけど。……っていうかそういうことは今日の秘書艦と話し合ってくれないかなぁ!?

 

 何でもかんでも最初に俺を巻き込みやがって……俺は提督のママじゃねーんだぞ!?

 

「あーもう! 面倒だなぁ……!」

 

 苛立ちが募ってカレーの皿にスプーンを立てる。大きめのジャガイモがきれいに割れた。

 暫く放置して冷ましてたし……猫舌の俺でもそろそろ食える筈だろう。

 

「……うん、美味しい!」

 

 流石は間宮さんだ。これは、季節のイベントで出てくる様々な料理も期待できそうだ。

 夏……は今だからアイスとか、秋は秋刀魚に焼き芋、冬はクリスマスにはチキン……いや、漫画とかにありがちな七面鳥とかもアリかも知れない。そして春には花見とか? 東北だし、自然に富んでるからちょっと山にってのもいいな……。

 

「まぁ、暫くはそんなことしてる暇は……何か御用で?」

 

じー……な、何でもないわ!」

 

 対面の暁が なんでもなさそうに こちらを みている。

 

「……分かった。これ(カレー)食べたいんでしょう」

 

「い、嫌ねぇ…… レディは他人の料理に手を伸ばしたりしないわ!」

 

 そう言いながらも、カレーの隣に置いてあったアイスに視線が吸い寄せられている。

 何だよ……欲しいなら欲しいって言えば良いじゃないか。

 

「……食べますか?」

 

「えっ、いいの!? ゴホン……施しなんて要らないわ!」

 

 え~? ホントぉ?

 アイスを暁の目の前に置くとピタリとフリーズした。アイスだけに……ハハハ

 

「いやぁ……もうお腹いっぱいでして、食べきれないんですよぉ~……残すのも勿体ないですし、代わりに食べてくれる人は居ないでしょうか?」

 

 露骨に暁をチラチラ見ながらそう言うと、期待の眼差しを向けてくる。素直じゃないなぁ……お互いにさ。

 暁が “何故か” 持っていたスプーンをアイスに突っ込み、一口サイズ掬った。

 

「暁、目を閉じて、口を開けてください」

 

 すると指示通りに目を閉じて口を開ける暁。

 バカめ……俺が暁の口に入れようとしているのはアイスではなく、俺用に辛く調整されたカレーだ。

 間宮さんに絶対に残すなって言われたんだけど、こんなに美味しいイベントがあるならと一口残しておいて正解だったぜ。因みに主犯格は響だ。やるじゃないか。

 近くで見ていた妹三人(暁型)を手招きで呼ぶ。電だけだよ心配してるのはさ……。

 

あ~ん……ガフッ!? 辛っ……ゴホッ……み、水ッ!」

 

 そこにアイスがあるじゃろ? 面白い物を見せて貰ったお礼に置いておくよ。

 あ~お腹いっぱいだぜ。

 

「スチュワートさんって実は二人いたりするのです?」

 

「仕事の時以外はこんなもんですよ。ねぇ、雷?」

 

 逆になんで常に真面目で居る必要があるんだ? 疲れるだけじゃん。

 

「……そうね!」

 

「あーあー……酷い顔だよ暁。ほら、アイス食べて落ち着こうか」

 

 微笑ましい子供たちの騒ぎを背に受けながら、食器を片付ける。

 暁にカプサイシンの魅力を伝えられる日は遠そうだ……。

 

 

 

 

 

 執務室で、いきなり座れと言われて用意されていた椅子に座る。

 机には荒潮が冷たい麦茶を出して、そのまま提督の隣に座った。……大潮が書類と睨めっこをしてるから手伝ってやれよ……。

 

「佐世保から演習……というか、小規模な交流が申し込まれた」

 

「はい……どうして受けたんですか?」

 

「今回の交流は田代前提督のアイデアだ。消費する資材は全部彼方(あちら)が持ってくれるそうだ」

 

「……」

 

 あの提督は相変わらずエスパー染みたことを……つまりは「持て余し気味の戦艦とかを連れてきても構わない」ってことだろう。助かるなぁ……。

 

「それと、佐世保の新提督は私の同期でね……私も彼方に行こうと思っているよ」

 

「そうですか……演習に行くのは誰でしょう? それと、提督も行くってことは緊急時のマニュアルは既にあるんですよね?」

 

「……」

 

 無いのかよ……。

 

「出来れば今日中に私以外にも演習に行かせるメンバーには声を掛けてくださいね。それと……マニュアルは後で大淀さんと話し合ってください」

 

 提督の言葉を待たずに失礼しますとだけ言って席を立つ。

 

「あら~、提督、フラれちゃったわね~」

 

 いいぞ荒潮、もっと言ってやれ。

 

「でも」

 

 外に出ようとしたら腕を掴まれた。

 

「大潮姉さんだけじゃあ書類が片付きそうにないの~。優しいスチュワートさんはモチロン、手伝ってくれるわよね?」

 

「……はい」

 

 断れねぇ……。

 

 結局、いつもの十分の一くらいの量だったけど書類を処理することになった。

 大潮が信じられないものを見るような目で俺を見て、荒潮が大潮を煽り、提督が苦笑いしていたことは覚えている。

 それと、荒潮は提督の自室で寝ずの番をしたがっていた。その際、拒否する提督との攻防は見てて面白かった。

 遂に提督が折れたかと思ったら「冗談よ~? ま、さ、か、本気にしてた? ウフフフフ……」なんて……イイ性格してるじゃん。

 

 

 

 

 

 イカレたメンバー紹介するぜ!

 

「スチュワート」

 

「はい」

 

 最近『艦これ』の(CV)と、今目の前にいる艦娘の声が同一なのか考えて宇宙を見た俺!

 昨日のうちに提督に行くって言っといたから、まぁ選ばれるだろうとは思っていた。何せ俺の古巣? なんだ。この提督だったら連れて行くだろうとは思ったよ。

 そして今回は普通の艤装を持っていくことにした。盾に慣れ過ぎて、万が一盾がダメになった時に普通の艤装が使えませんでは話にならないと思ったからだ!

 

「瑞鶴」

 

「はい」

 

 爆撃魔の瑞鶴さん!

 佐世保が色々と負担してくれるって言うから、思い切った提督が正規空母を動かしたぜ! これで赤城さんも怖くねぇな! でも最近来た新人だから戦力としてカウントして良いかは微妙なところだ!

 

「高雄」

 

「はい」

 

 今日の朝一で建造された新人、高雄さん!

 いきなり演習だなんてツいてるのかツいてないのか分からない運の持ち主だ! 戦艦を投入するかでチキった提督が救いはここにあったと言わんばかりに即決された可哀想な人でもある!

 

「千歳、千代田」

 

「「はい!」」

 

 その……何? 水上機母艦とか言う微妙によく分かんない艦種の姉妹!

 気が付いたら食堂でお酒を飲んでるから、俺の中でアル中の疑惑がある千歳さん!

 そしてその姉にたいして誰が見てもベッタリなシスコン、千代田さん!

 二人も一週間前には居なかった新人だ!

 

「神風」

 

「はい!」

 

 綺麗な新人、神風!

 大正ロマン溢れる美しい服装が特徴的だ! きっと懐には護身用の小刀を仕込んでいるに違いない!

 

「以上六名に、私が付いていく」

 

 最後に我らが提督!

 新米提督として、佐世保に居る田代提督と色々と教わるという、向上心のある男だ!

 

 ……新人ばっかりじゃねぇか!?

 

 大丈夫かコレ……

 




ドキッ!? 新人だらけの佐世保演習!
ちなみに主人公は一般的な装備です。

暁は
①基本的に無知シチュ (和む)
にわか知識(ちょっとしたこと)でイキる (微笑ましい)
③弄られる      (カワイイ)
 がワンセットで非常にお得!
 異論は認めます。

次:7/4〜5 ……しばらくお待ち下さい……
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