私の名前は「      」   作:捻くれ餅

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96話です。

五月雨、張り切り過ぎないで……?

夕立ィ、ステイ! ゴーホーム!


盾の駆逐艦

「さてどうすっかな……」

 

 目の前には旗風。

 赤城さんや戦艦レ級も相手にした俺ならやれると思ってたけど……実際のところ、なかなか決着が付かないでいた。

 

 たかが駆逐艦と心の何処かで侮り、油断してたことは認める。

 そうじゃなくても、きっと俺よりも余程長い間艦娘をやってる先輩で、俺とは違って遠征や演習の回数も多いに違いない。間違っても油断なんてしていい相手じゃない。

 

じゃなくって……」

 

 演習で手を抜くなんて全力で相手をしている人に対する侮辱だ。

 レ級みたいにせめて舐めプし続けてくれよ~なんて思わせるような戦力差はきっとないだろう。

 

「面倒くさいことになったなぁ……」

 

 時間は、演習開始直後まで巻き戻る。

 

 

 

 

 

 

 俺と旗風はやっぱり、少し離れた場所まで来ていた。

 

どうして……

 

 旗風が呟いたのを、俺の耳が捉えた。

 「どうして」って……何が?

 

持ってないのですか、盾を……

 

「お、置いてきたモンはしょうがないじゃん!

 

 反射的にそう返す。今から盾を召喚なんて出来る訳ないだろファンタジーじゃあるまいし。

 盾を持ってこいって言われたら持って行ったさ!

 

盾の使い方を教えて頂こうとしたんですけれど……残念です……

 

ん? ……は?」

 

 なんかおかしいこと言わなかった?

 

「え? 盾って何……」

 

 俺がそう呟くと、緩やかに近づいていた旗風が「信じられない!」って顔をした。

 

「スチュワートさんが私に教えてくれたではありませんか。強くなるには~―――」

 

 旗風が話し始める。内容は、いつぞや遠征に行った時に、俺が旗風に贈った言葉を旗風は真剣に捉えて、俺みたいに盾を扱い始めたってことらしい。

 なるほどね。盾を使う先輩としての俺を期待してたのに実際は普通の艤装で来たから、演習前におこ()だった訳ね。憧れ? の先輩が長所を放り捨ててました~では「は?」ってなるのも頷ける。

 

 その旗風は、犬がとっておきの玩具を自慢するように大きな盾を持って来ていた。

 

「えっと、目標にしてくれたことは嬉しいんですけど……その盾はどこから?」

 

 まさか俺に付いてきた偉そうな妖精さんみたいな変態技術者的な妖精さんが他にも居るとは思えないし……それに旗風にはイメージ的にもミスマッチな可愛げのカケラも無いやたらと歪な盾。

 だからこそ俺はその盾の出所が気になってしょうがなかった。

 

 

 元々の形は “U”の字に近かったんだろうけど、上部を溶接でもしたのか “O” の字のイマイチ防御力があるかどうかわからない盾だ。真ん中弱くね?

 

「これは戦艦ル級が持ってた艤装です。明石さんと夕張さんに頼んで、私に合わせてくださったのです。……スチュワートさん、強くなる道を探すとは……こういったことですよね?」

 

 そう、満足げに盾を構える旗風。

 

 これは……やっちまったなぁ……。

 まさか俺の言葉で旗風が道を間違えてしまったらしい。

 

「……。ええ……」

 

 でも、弱いと感じたら元に戻せば良いって言った記憶あるし……戻してないってことは、旗風自身も満足してるってことだろう。

 だからちょっと後悔はしてるし、旗風には悪い事をしたとは思うけど……曖昧な返事で誤魔化すしかない。

 

 ……後で佐世保と警備府のダブル神風から怒られそうだ……。

 

―――ブゥウウウン……

 

 艦載機の音が遠くで響いている。

 

「演習の時間が勿体ないですね……」

 

「……ソウデスネ。……じゃあ旗風は旗風の課題を意識していきましょう。私は、防御の硬い相手に対する攻撃を意識してみすね」

 

「はい! お願いします!」

 

 ……お願いしますはこっちのセリフなんだけど……まぁ、香取さんを意識して、ちょっと余裕が出来たらあれやこれや変なことしてみても良いかもしれない。

 

 

 

 

 

「チッ……あ゛~……ダリィ

 

 流石は高回避に高防御を足した変態構成(ビルド)。俺が真正面からぶつかっても意味は無かったか……。

 たった今何発か撃った砲撃も全て有効打にはならなかったし……メタルス〇イム殴ってる気分だ。

 

―――バン!

 

 旗風からの砲撃。微妙に狙いが甘いってこともあって避けやすかった。

 だけど、避けた先にはいつの間に設置されたのか機雷があって、水中で爆発したらしく足元が崩されたのには焦った。こういうのは経験の差か? 相当テクニカルだよコレ……

 

 それと、旗風の盾は “O” 字の盾の真ん中に砲を突っ込むことで隙間が埋まるようになっていた。それを両手で持つらしい。……やっぱり盾、大きすぎない? もうちょっと削ってもらったらどうかな?

 それと、盾がデカいだけあって防御力がヤバい。仮に俺もこんな感じだったとしたら、真正面から艦載機で力押ししてきた赤城さんはやっぱりヤバい。制圧力って正義なんだね……。

 

「っと……そうじゃない……」

 

 問題はこの防御を前にして、俺に有効打が存在しないことだ。

 

 なにかいい案は……。

 

「……せや!

 

 思いついた! こういった時に思いつけるとかやっぱり天才だな俺。

 

 

 盾が意味を為さない程の至近距離で、盾の内側に砲身を捻じ込んでから発砲する。

 赤城さんが俺の盾の内側ともいえる部分に艦載機を使って爆雷を捻じ込んできたときと同じようなことをする。

 いかに外側が頑丈でも内側まで頑丈なものはそう多くはない。内側に弱い部分があるから、外を固めて守るのだ。

 

「……いや」

 

 絵面が俺の倫理観的にアウトだからコレは止めておこう。

 なんか……旗風の服とかに砲身を引っかけたりしたら俺が羞恥でフリーズする(隙だらけになる)

 

 ……大分前にイ級相手にやった目隠し戦法。コレを使おう。

 盾を構えて、攻撃を弾いた時に視界が悪いのは盾を使ったことがある俺が身をもって知っている。あとは魚雷が微妙にホーミングすることを利用して、左右から攻める!

 

 コレだ。

 

 思いついたら即実践。いざぁ……

 

 

 

 

 

 

 

「ハァ……ハァ……」

 

さ、流石です……

 

 互いに肩で息をしながら睨み合う。

 

 旗風をまだ K.O 出来ていないから、俺の作戦は失敗に終わったと言えるだろう。その代わりと言ってはアレだが、やはり盾持ちの宿命……攻撃力の不足が旗風にもあった。

 

 俺は偶々の被弾があって小破と言った具合で、旗風の方も無理やり隙間にブチ込んだ魚雷で小破。つまり、互いに疲労はしているがまだまだ元気だということだ。

 

 そして俺は、失敗したことを延々と繰り返すほど馬鹿ではないつもりだ。当然旗風だって、決着が付かないなんて嫌だろう。

 俺はそろそろ仕掛けたいし、旗風も勝負に出るならあと少しってところか?

 

 

 

「う~ん……」

 

 旗風の盾が砲身と合体するようになってるなら、分離させれば良いってことにさっき気が付いた。

 多分砲身に魚雷を当て続けたら、砲身と盾の噛み合わせがズレて盾部分がモ〇ハンの部位破壊よろしくポロッ……と外れるだろう。

 そうなったらあとはドーナツシールドのド真ん中を撃てば決着が付くんだろうけど……。

 

「故意に艤装は壊したくないなぁ……」

 

 勝ち負けと、旗風の盾を天秤に掛ける。

 

 ……

 

負けてもいいか……

 

「いえっ、駄目です!」

 

「!?」

 

 俺の呟きは聴こえなかった筈では!?

 まさかとは思うけど、読唇術を身に着けている……?

 

「本当に流石、です……でも、負けません。大丈夫です!」

 

 ……微妙にかみ合ってないな? 他の人と通信でもしてるのかな?

 

 こうして待ってるのも詰まんないし、ちょっと屈伸でもして身体ほぐそうかな……

 

 

 

ガクッ

 

 

 

ハァッ!?

 

 視界が急に傾いて、同じくらい上半身も傾いた。伸ばしきれない左膝が曲がる。

 

 ……右足が無くなった!?

 

 そう思ったが、水中に入っただけだったらしい。落とし穴に落ちた感じだ。

 何これぇ!? 艤装の故障? それとも何!?

 

 一瞬の間に様々な予想や考えが浮かんでくるが、左足一本では崩れたバランスを立て直すなんて到底不可能。

 

 海面がどんどん近づいてきて……

 

 派手に水飛沫が上がった。

 

 




旗風……主人公の言うことを聞いたばっかりに……。
しっかり耐えつつ設置技で削るタイプのテクニシャン旗風でした。

主人公は小破です。
いつか主人公を大破とか轟沈もさせてみたいですね。

※主人公が盾を持っていた場合
 魚雷を足元に複数発射 → 盾を下に構える → 爆発の勢いで……
「飛んだーーッ!?」「これが……航空駆逐艦……」

なんて変態挙動をしたかも……
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