私の名前は「      」   作:捻くれ餅

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97話です。

沢山の誤字脱字報告に圧倒的感謝ッ!
どうして誤字は自分では気が付かないんでしょう……?


世間は七夕!
近所の小学校で書いたと思われる短冊(落ちてた)に「少子高れい化社会からの脱出」って書いてあって衝撃を受けました。

天の川? 空を見上げても見えるのは曇天と雨だけですねぇ……。



気を抜く

 派手に水飛沫が上がる音がする。

 

 手をつくことが出来る体勢では無かった。万歳みたいな体勢でうつ伏せに海面に倒れたから腹と顔、鼻が痛い。

 仰向けになるように体制を整える。どういう訳か右足は沈んだままだけど……艤装なんて背負っておきながら、海底に落ちていかないのはやっぱり艦娘っていう不思議生物? だと思う。

 

 あ、左足も沈んだ。

 

「……(イテ)ぇ……」

 

スチュワートさん! 大丈夫ですか!?

 

 あらら……通信していた旗風が俺の方に来ちゃったみたいだ。

 

 ダメじゃないか……俺がそういう “フリ” をしてたらいいカモだぞ……間違いなく香取さんならやる。俺はやられた。

 まぁ、動けなくなった時点で決着は付いたし……

 

「あー……大丈夫ですよぉ~

 

 取り敢えず、緊急でピンチなヤバさはないですって感じの間延びした返事をしておいた。

 

 

 

 

 

「燃料切れ?」

 

「はい。よく加減を知らない新人……いえっ! スチュワートさんが新人だなんて……」

 

 なるほどなるほど……燃料は使い切ると動けなくなると。

 燃料が尽きても動ける軍艦とかがあったら燃料革命だし、流石に補給無しでは戦えないんだね……。

 そしてそれをやらかすのは加減を知らない(バカな)新人だけと。なんかショック……。

 

「まぁ、間違っちゃ居ないですね……それっ!」

 

「あっ!」

 

 ―――ポンッ ポンッ

 

「「……」」

 

 最後に旗風に向かって砲を向けるもパスパスと、弱い空気砲しか出てこない。

 仮に弾が数発撃てたところで大したダメージにはならないだろう。……ビックリした?

 

「ハハハ……」

 

 どうやら完全に弾切れ、燃料切れらしい。

 

「降参ですぅ~」

 

「……」

 

 仰向けのまま、両手を上げるジェスチャーと共に降参する。っていうか、降参せざるを得ない。

 確か戦争中だったら、動けないやつは死ね! って感じだったんだっけ? 捕まる位なら……って感じで。

 

 ……ちょっと旗風さん!? なんでそんなふくれっ面!? おこなの? 俺、マジで動けない! 全力でやった! 舐めプしてない! 止めはヤメテ!

 

 必死の顔芸が通じたのか、小さく溜息を吐いてから手を差し伸べてくれた。

 旗風の手を借りて立ち上がる。うん、手を引いてもらってる間はしっかり海面上を動けるらしい。

 

「……スチュワートさんが最後らしいですよ」

 

「ありがとうございます。……そりゃあ、ねぇ?」

 

 他の人たちは建造から一週間と経ってないから、佐世保の人たちが良い感じに教材になったら終了。対して俺たちは互いに有効打が無い、遅延に遅延を重ねたんだ。そら最後になるわ。

 

「旗風は何か学べましたか?」

 

 恐らく、旗風だけは “教える” のではなく “教わる” を意識していたんだろう。……盾を持ってこなくて本当に申し訳ない……。

 

「はい、とても有意義な時間になりました。ありがとうございます」

 

「どういたしまして? ……それと機雷の使い方、凄いですね。是非とも教えて頂きたいです」

 

「いえっ! あれは偶然で―――」

 

 演習の反省、課題、感想を言い合いながら鎮守府に戻った。

 

 

 

 

 

 

 

「お疲れ様!」

 

「あら、遅かったじゃない」

 

 鎮守府に戻ったところを出迎えてくれたのは、神風と……加賀さんだった。

 神風が旗風に話しかけ、俺の方には加賀さんが来た。

 

「加賀さん、初めましてです。スチュワートです」

 

「加賀よ。貴女の事は赤城さんから聴いているわ」

 

「……因みにどんなことを?」

 

「そうね……いつか、貴女とはやり合ってみたいわね」

 

 それだけ言って去っていった。

 

「……」

 

 ……赤城さんは加賀さんになんて言ったんだ?

 

「―――~ですよね、スチュワートさん」

 

「えっ!? ハイ」

 

 いつの間にか、後ろから肩に手を置かれていた。

 勢いよく振り返ると、鳥海さんと高雄さんが居た。……で、適当に返事しちゃったけど……

 

「なんて言ったんですか? もう一度言ってくれませんか?」

 

「佐世保の、私達の危機を救ってくれた凄い人って、高雄さんに説明を……」

 

 ええ……何してんの……

 

「……詳細は言ってないですよね?」

 

「勿論です。でも、救ってくれたのは本当じゃないですか」

 

 そりゃあ詳細なんて言わないよな。あと、照れるからそんなに広めないで欲しい。

 

「本当ですか?」

 

「まぁ……誇張はされてると思いますが……」

 

「なんということ……! 鎮守府を救うだなんて、凄いのね!」

 

「凄いことはしてないので……あと、この話は広めないようにお願いします……。出来れば忘れていただきたいですね」

 

「……ダメよ

 

「えっ」

 

「凄い事をした人は、それに合った評価を。もっと褒められて良いと思うわ」

 

「……褒められることはしてないんですよ

 

 なんか広めそうな雰囲気を出してたから、ボソッと聞こえるくらいの大きさで呟き、意識的にジットリした眼で高雄さんを見る。

 あんなものは知らない人は知るときまでは知らないままでいいんだ。

 

「……分かったわ」

 

 雰囲気で察してくれたらしい。いい人だなぁ。

 

「……こんな話題は置いておきましょう? スチュワートさんはどうだった? あの子(旗風)、最近頑張ってるのよ」

 

「ええ。見事にやられちゃいましたね……」

 

 

 

 それからは、戻ってきた千歳型も含めての感想の言い合いだった。

 やっぱりベテラン、強い人からは色々と学べたらしい。

 

 瑞鶴さんはもうちょっと素直になろうよ……尊敬はしてるけど、それとは別にライバル意識もあるなんて俺には難しくて分かんない。

 

 ……千代田さんは、相手の千代田さんの事にも触れてあげて? なんで千歳さんの感想しか出てこないの? 流石に可哀想なんだけど……。

 

 神風は……。何やってんだ島風ェ! 鬼ごっことか……自由過ぎるわ! 健気にも乗ってしまったらしい神風は悔しそうで涙目だ。……全面的に相手が悪い。

 

 千歳さんと高雄さんが俺的に一番普通(まとも)だった。

 ……演習の内容自体は神風以外はみんな同じくらいだと思うんだけど……話し方って大事だなぁ……。

 

 

 

 

 

「みんなお疲れ様」

 

 感想を言い合っていたら、田代前提督が声を掛けてきた。

 

 その声を聞いて、佐世保の人たちの口元が若干緩む。好かれてんなぁ……。

 そして、後ろには提督と……同年代くらいの男も居た。

 

 

初めましてだ! 俺は梅木 塁。新しい佐世保の提督だ。よろしく!」

 

「「「よろしくお願いします」」」

「……」

 

 えぇ……ナニコレ? 

 大きくてハキハキした声、捲った服から見える腕は筋肉で太い。

 身長も大きく、浅黒く焼けた肌と、相対的に真っ白に輝く歯。

 

 ……完全に陽の者ですね。 近寄らないで貰えます? 灰になる。

 

とても……ユニークな提督ですね?

 

やっぱりそう思います? でも悪い人ではないのよ? ちょっと活発すぎるけど、仕事はしっかりしてるみたいだし

 

いいですね~。 それはそれで楽しそうで。ウチの提督なんて―――

 

 それからは、みんなの前で喋る筋肉を完全に無視して鳥海さんとお喋りしてた。

 

 (大湊の提督は、午前中で仕事を終わらせるの……? 凄く優秀じゃない。スチュワートさんは何が不満なのかしら?)

 

 

 

 

 

「お疲れ様。……各自、課題や目標は見つかったかい?」

 

 昼食前。用意された一室で皆とのんびりしてたら提督が入って来た。皆はしっかり目的を果たせたらしいけど……そんな提督はどう?

 ちゃんと田代前提督から色々と教えて貰ったんだよね? まさか涼しい部屋で茶をしばいてただけとか言わないよな?

 

 おい、何故俺の方に視線を寄越さない。

 

「……午後にもう一回の予定だから、それまでしっかり休んでくれ」

 

 了解、と全員が答えて、それを聴いた提督が部屋から出ていった。

 

 演習が終わったら工廠に来てって夕張さんに言われてたけど……昼食挟んで、ちょっと休んでまた演習。……全部終わってから行こう。

 

 それはそうと、この前シュークリームを投げて来た生意気なウサギ(卯月)には、しっかりとお礼をしないといけないなぁ……。

 




船は燃料が無くなったら動けなくなる。
それとは別に、艦娘は腹が減ったら動けなくなる。
メリットがあれば、デメリットもある。……そう信じてる某、【ご都合主義】侍に候!


「ほら、卯月にプレゼントの温麺(うーめん)です。いい色でしょう? 卯月の髪の色にそっくりにしましたよ」

「ッ……! (逃げられないぴょん……)」


次は7/11予定です。
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