□2044年3月20日
部屋に戻って先ほど告げられた醤油抗菌に関して掲示板に挙げられた情報を思い出す。
醤油抗菌というPC名はグランバロア関連の掲示板を覗いたことがあるなら一度は目にする名前だ。討伐と決闘ランキングのランカー。"人間爆弾"という物騒な通り名を持ち、頭が痛くなる逸話をいくつも持っている。
曰く、半径500メートルの海水を全て爆薬に変え、モンスターの群れを木っ端微塵にした。
曰く、敵対クラン所属の<マスター>の体液を爆薬に変え、そのクランのアジトを吹き飛ばした。
「会うのは怖いけど、そんな人にサポートしてもらえるならスタートダッシュになるよな。」
とつぶやきながら考える。
無駄な時間を作らないためにも、キャラメイクとエンブリオの孵化とジョブの取得まで進めておこう。
トイレ、食事はOK
ゲーム機のヘルメットをかぶりスイッチを入れる。
光を感じると景色は一変していた。
「はーい、ようこそいらっしゃいましたー」
気がつくと自室ではない空間に僕はいた。
部屋の内装は木造洋館の書斎を思わせる。
そこにいたのはベストを着た猫チェシャだった。
多くのプレイヤーのチュートリアルに登場しているAIだと掲示板に上がっていた。レアなAIに当たってみたかったなと考えてしまった。
「一番多いぼくでごめんねー」
思考が読まれているのだろうか、びっくりして変な声をあげてしまう。
「こちらこそ、変なこと考えてごめんなさい。」
「いいよ、いいよ、気にしないで。事前に情報集めてた人には多い反応だから。それにしても僕たちAIに謝る人は珍しいかな。」
「本当にデンドロの中なんだ。目を閉じて開けたら切り替わってるなんてすごいです」
「ふふふ、ありがとう。それじゃあ各種設定を始めるよ。まずは、描画だよ。3種類に切り替わるから選んでね。」
3Dは酔いそうだし、アニメ描写はリアルに戻れなくなりそうだしな。
「そのままでお願いします。
「オッケー。次はプレイやネームだよー。ゲーム中の名前は何にするー?」
「ウィルでお願いします。」
「その名前は使用している人がいるね。そのまま進めることもできるけどどうするー?」
「じゃあ、苗字としてテンミリオンをつけてください」
「オッケー。該当なしだよ」
「次、容姿を設定してねー。」
のっぺらぼうと膨大なデータが表示される。
チェシャにお願いして自分のリアルをデフォルトに設定してもらいいじっていく。
出来たのは身長120cmほどの金髪碧眼の少年だった。あんまり原型が残らなかった気がする。。
「初期の所持品をプレゼントするね。」
アイテムボックスと5000リルと初期装備に選んだ革鎧と長袖シャツにズボン、ブーツと身長よりも大きな槍を受け取る。
自分よりも大きな武器を操る小さい戦士ってかっこいいよね。
「<エンブリオ>の移植だけど、<エンブリオ>の説明はいるー」
「予習してきたので大丈夫です。」
「オッケーじゃあと言ってるうちに<エンブリオ>移植完了です」
すごいいつの間にか移植されていると話題だったからずっと左手を見てたのにまばたきしたら移植されてた。
「じゃあ最後に所属する国を選択してくださいねー」
「グランバロアでお願いします。」
「ちなみに軽いアンケートだけど選んだ理由はー?」
「父の知り合いの方がサポートしてくれるとのことなのと、漫画の影響です」
「うんうん、答えてくれてありがとうー」
「いよいよグランバロアに飛ばすね。大丈夫ー?」
「よろしくお願いします。」
「<Infinite Dendrogram>へようこそ。“僕ら”は君の来訪を歓迎する」