全力で死亡フラグを回避しようとしたら、事態は加速していく 作:クリス&シェリー全力投球
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32話
<偵光side>
森谷帝二の事件から、二ヶ月半の時が経ち、俺は病院を退院してリハビリしながら、怪我する前の状態に戻していっている。仕事の方は周囲の人間に強制的にセーブさせられ事務仕事だけしかこなしていない。
今は、山川さん、美樹ちゃんと一緒に書類をまとめている。ヤバい、めっちゃ身体動かしたい・・・・・
「手が止まってるぞ、偵光」
「いやあ、暇だなあと思ってさ」
「今までの仕事の内容が凄すぎたんですよ。偵光さんはだいたい大怪我してたんですから、今の事務仕事ぐらいがちょうど良いんです」
「それには俺も同感だな。美樹さんと一緒に東京戻ってきてすぐに病院に行ってお前の姿を見た時は焦ったぞ。みんな沈み込んでたんだからな」
「二人の言う通りか。平和なのが一番ってことかね。あの時はご心配をおかけしてすみません」
「ベルモット、佐藤さん、七槻ちゃん、蘭ちゃん、志保は特に酷かったですよ。偵光さんが目覚めるまで私達が側にいて見てないと危ない状態でした」
「ははは・・・おかげで外で俺と鉢合わせたら拘束されて、危ないことしてないか根掘り葉掘り聞かれるからな。
ベルモットに関しては、組織の仕事が無い時は変装してまで見張られるようになったぞ、時々だけど」
「いやいや笑いごとじゃないだろ。透の奴も、公安の警察使って、影からお前の護衛をさせてるからな」
「・・・え? なにそれ初耳なんだけど。美和子の奴も俺を張っているのには気づいてたけど、公安警察まで動いてるのは予想外なんだけど。ベルモットと美和子達でお腹一杯よ?」
「あ、そういえば、志保の方は博士に偵光さん専用の発明品を色々と頼んでるって言ってましたよ。コナン君みたいに発明品使うようになれば怪我する機会も減るだろうからって」
「そいつは面白いことになってるな。ぶっちゃけ動物スーツ着て行動すれば怪我することは無いんだが、組織の連中が集まって一般人に被害が及ぶから余り使えないんだよなぁ」
「あのスーツは、組織とやりあう時の専用だな。ちょうど良い機会なんじゃないか? コナンみたいに作ってもらえば、お前も色々できることが広がるだろ」
「そうっすね・・・それにしてもみんな過保護すぎない?」
「偵光さんは目を離すと、すぐに事件に首突っ込んで怪我するんですから護衛がついてもおかしくありませんよ! 少しは大人しくしてください!」
「はい・・・・・・・」
「失礼します。お仕事の邪魔をしたでしょうか?」
「ああ、大丈夫だよ幸ちゃん。こっちに来るなんて珍しいね。どうしたの?」
「こんにちは、幸さん」
「喋りながら休憩してたからちょうど良かったよ」
「こんにちは、美樹さん。山川さんもお疲れ様です。偵光さんに二点ほど話がありましてよろしいでしょうか?」
「うん、良いよ」
「まず一点目ですが、会社の求人に応募者が二名ほど来ました。こちらが履歴書になります。瀬戸瑞樹さんはアルバイト希望で、米原桜子さんは正社員希望ですね。
どちらも家政婦経験おありということなので、会社と事務所の建物の管理、夏美さんの店の手伝いとしても申し分ないかと思われますが、どうなさいますか?」
「ふーん、瀬戸瑞樹ちゃんに桜子ちゃんか・・・」
おいおい、ここでどうして快斗君がウチの会社受けに来るんですかね? 変装しても俺にはまる分かりだよ・・・盗一さんの件についてか、それとも他に理由があるのかね。
桜子ちゃんも久し振り会うし絶対に何か言われる気がするな・・・
「二人とも女性なんですね。瀬戸さんは23歳で、米原さんも23歳ですか。
米原さんとは知り合いなの、偵光さん?」
「高校生の時に事件で関わったんだよ。その後もちょいちょい関りがあって、兄みたいに慕われるようになったんだよ。俺からしたら妹みたいな感じかな?」
「そうなんですね。蘭ちゃんも大変だろうし、米原さんの状態によっては私達も大変かなぁ」
「ん、何か言った美樹ちゃん?」
「いえ! 私は面接してみても良いと思いますよ? 建物の清掃とかに詳しい人がいれば助かりますし」
「俺も賛成だな。家政婦ならどちらの仕事にも役に立つし、偵光の知り合いなら問題無いと思うぞ。
お前が面接すれば、変装も見破れるしな。人手が増えるのは正直助かるんじゃないのか?」
「そうだな。履歴書も問題無いし面接の日程を後日組むことにしよう。それでもう一件は何かな、幸ちゃん?」
「アクアクリスタルの件についてです。オーナーからいつでも下見に来てくれても構わないとのことでしたので怜子さんと相談して、来週から日程を組んでいこうかと思うのですがどんなでしょうか? 都合が悪いようでしたら変更致しますが・・・」
「いや、今の所は事務仕事しかないしその日程でよろしく頼むよ。面接の方は、アクアクリスタルの件が終わってからってことにしてもらって良いかな? 応募者の二人に早くしてくれって言われたら再度調整しよう」
「分かりました。そのように伝えておきます。皆さん書類仕事頑張ってください。それでは失礼します」
「ふう。ちょっとお茶入れてくるから二人とも休憩しようか」
「え、大丈夫なんですか?」
「なるほど。対策会議か・・・」
「ははは、山川さんは流石に分かってるね。はい、どうぞ」
「ありがとうございます」
「サンキュー」
「対策会議ってどういうことなんですか、山川さん?」
「アクアクリスタルって海上娯楽施設だろ? そんな所に偵光が行ってみろ。
絶対に何か起こるぞ。殺人事件か爆発のどちらかの可能性が高い」
「ホント俺のことよく分かってるよね、山川さん。そうなんだよなぁ。俺も何かが起こるって予感がするんだよ・・・」
「そんな!? また米花シティービルの時みたいなことが起こるってことですか!?」
「そこまでの規模とは思いたくないんだが・・・」
「何か起こる事を見越して警戒しておくのは良いことだろう。警戒した結果何も起きなければ、別に問題は無いんだからな」
「そうですね。準備しておくにこしたことは無いですよね!」
「さて、そうなるとアクアクリスタルに行く人物をもう一人増やしたいな」
「候補は?」
「透かな? アイツがいたら何か起こったとしてもあらゆることに対応できる」
「俺は行かなくて良いのか?」
「山川さんは美樹ちゃんと一緒に何か起きたら外部で動いてもらうように考えてるんだ。萩原さんと松田さんと七槻ちゃんもそのつもりかな」
「二人で大丈夫なんですか、偵光さん?」
「大丈夫だろう。透が近くにいるなら安心できるし、二人なら秋庭さんの身は安全だ」
「問題は他にイレギュラーが起きた時をどうするかねってとこなんだよな。アクアクリスタルには怜子さん以外も招待されてるらしいからな。
流石にその人達と一緒にいる時に何か起こったら対処が厳しくなる」
「やっぱりもう一人付けるべきか?」
「仕方ない。怜子さんに俺、透、七槻ちゃんの三人を付けよう。
それで山川さん、美樹ちゃん、萩原さん、松田さんの四人で外部で対処だな。
うーん、動ける人材がもう二~三人欲しいなぁ。誰か入ってくれないかなウチの事務所」
「分かりました。七槻さんを連れてって大丈夫なんですか?」
「この間の一件以降、俺が動くとなると間違いなく付いてくるだろうし、目の届く位置にいる方が俺も動きやすいしね。
本当は連れて行きたくないんだけど・・・・・」
「確かに偵光の近くにいさせる方が暴走しないだろうな。それも今回の一件が終わればたぶん落ちついてくるはずだ。それで伝手に関しては一人いるな」
「マジで?」
「ああ。警察学校の時にゼロ、俺、松田、萩原の他にもう一人同期がいたんだよ。伊達ってやつでな。
一年前ぐらいまで刑事やってたんだが事故に遭って怪我が治ってから、その後奥さんの為に警察辞めて、今は普通の会社に勤めてるはずだが・・・」
「伊達さんかぁ。確かにあの人なら申し分ないだろうな」
「知ってるのか?」
「うん。美和子とよくコンビ組んでたからその関係でな。それにあの事故の現場に俺と高木刑事が一緒にいてすぐに対処したからな。
美和子達から助かった後に刑事辞めたってのは聞いてたんだよ」
「俺は初耳なんだが?」
「だって他の人に話したこと無かったからな。美和子と高木刑事ぐらいしか知らないはずだし、伊達さんと仕事以外で話すってあんまり無かったし、山川さん達と同期だったとは思わなかったよ」
「お前という奴は・・・」
「その伊達さんと偵光さんが知り合いなら声かけたらどうなんでしょうか? もしかしたらこの事務所に入ってもらえるかもしれませんよ?
あっ、でも、危険な仕事だったら奥さんが反対しますかね?」
「いや、松田と萩原から聞いた話だが、この間飲みに行ったらしくて、刑事か探偵みたいな仕事したいとぼやいてたらしいぞ。
奥さんも白銀探偵事務所とかはどうかって勧めてたらしいぞ」
「マジで? 渡りに船じゃね? 伊達さんって刑事の時ずば抜けて能力高かったもん。なんとしてもスカウトしたい人材だな」
「そういうと思ったよ。ただ問題は、透の奴を納得させる必要があるぞ? アイツ、自分の仲間が危険の多い場所に関わるのやたら嫌うからな」
「そこは任せなさい。説得してみせるね! 伊達さんがたいていの事で死なないように鍛えれば、アイツも納得するはずだし奥さんも安心だ。
久しぶりに腕が鳴るぜ!」
「偵光さんが凄く燃えてますよ、山川さん?」
「変なスイッチ入ったか。最近碌に動けて無いしストレス溜まってるんだろうな・・・ こいつがやる気出した時の特訓って警察学校の訓練が楽に思えるレベルなんだよな」
「そんなに凄いんですか?」
「ベルモットから受けた厳しい特訓を基準で考えてるからな。偵光がだからこそ耐えれたってレベルの奴を俺達にもやらせようとするからな・・・
伊達班長も来ることになったら大変だぞ」
「そうなんですね・・・私達は護身術とか軽いものばかりでしたからそんな厳しい訓練があったことなんて知らなかったです」
「この事務所で受けたのって、俺と萩原、安室と松田しかいないからな。まあ、そのおかげでホント生き残る術は身についたし組織にいた頃もすごく助かったよ」
「へえ、凄いんですね。でも、ベルモットって偵光さんにどうしてそんな厳しい特訓をさせたんですか?」
「ああ、それは偵光に生きていて欲しかったんだろうよ。その為に妥協しなかったから今の偵光があるんだろうしな。
アイツも家族ができて変わったってことだろう。実際に偵光引き取ってからは、情報集めとかに徹して殺しとかをしてないしな」
「そうなんですね。組織にいた頃、ベルモットと関りが無かったので知らなかったです」
「コードネーム持ってなかったら、なかなか会う機会は無いだろう」
「そういえば組織で思い出しましたけど、最近大人しいですね?」
「確かにそうだな。偵光、何か掴んでるか?」
「組織関係のことか? ベルモットの奴は最近忙しなく動きまわってて、帝丹高校内部を探ってるみたいだぞ。
おそらく誰に変装して忍び込むか考えてるんじゃないか?」
「まだ何かを探ってる段階ってことだから、動きようが無いな」
「帝丹高校って蘭ちゃんが通っている学校でしたよね?」
「探ってる内容に関しては心当たりあるぞ。おそらく工藤新一についてだな」
「新一君? まさか、コナンの正体がバレたのか!?」
「おそらく正体掴んで、目的の為に動きだしたってとこだろうな」
「そんな落ち着いていて大丈夫なんですか、偵光さん!?」
「コナンの身の方は心配してねえよ。アイツがコナンを襲うはずが無いからな。昨年、ニューヨークで事件に巻き込まれた時に新一君と蘭ちゃんに命助けられて、その恩があるだろうしな」
「そんなことがあったのか・・・なら、狙いはなんなんだ?」
「これはあくまで俺の予想だが・・・・」
「私を見てどうしたんですか、偵光さん?」
「おい、まさか・・・?」
「ベルモットの狙いは、アポトキシンを作っていた志保ちゃんだろうな。あの薬のことを相当恨んでるからな、アイツ・・・」
「そんな!? 志保が狙われるんですか!」
「妹が危なくて心配なのは分かるが今は落ち着くんだ、美樹さん。ベルモットが哀ちゃんを殺そうと実行してるなら、此奴が動くはずだ。動いてないってことはまだ大丈夫ってことだろう・・・・・なるほど。
それで帝丹高校か。哀ちゃんの正体の確証を得る為に工藤君を探ってるのか」
「そういうこと。ヤバくなったら流石に動くさ。あのバカに殺しをさせるつもりは無いし、哀ちゃんには何があっても守ってやるって約束したからな。
だから心配しなくても大丈夫だよ、美樹ちゃん」
「偵光さん・・・・・分かりました。何かありましたら教えてください。
私も志保の為に手伝うので」
「ありがとう。それに当分は動きは無いと思うよ?」
「どういうことだ、偵光?」
「アクアクリスタルに行くことになってるだろ? その事を怜子さんがベルモットにもう話したらしいんだよ」
「ということはその間は安全だな・・・」
「なるほど。偵光さんを守る為に変装して来るってことですね」
「そういうことだ。間違いなくアイツは来るさ。その後のことはそれから考えよう」
「そうだな。色々と準備することもできたしな」
「はい、私も頑張ります!」
「よろしく頼むよ、みんなのことは頼りにしてるからさ」
「偵光、今度はあんな無茶させないからな」
「今度は、事務所のみんながいますからね、偵光さん!」
「ああ、分かってるよ。それじゃあ書類をさっさと片付けて、みんなに連絡して備えるとしますかね」
「ああ!」
「はい!」
そうして俺達は、アクアクリスタルの件について準備を進めるのだった。
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<山川光side>
俺と松田の二人で目暮警部のお見舞いに来ていた。目暮警部がランニングをしていたらボウガンみたいな物で撃たれたらしい。
犯人は未だ逃走中で捕まってないらしい。それにしても現職の警察襲うって大胆な犯人だな・・・。
今は気にしてる場合じゃないか。
「失礼します。お体の方はどんなですか目暮警部?」
「失礼するぜ。久しぶりだな、目暮警部。ランニング中にボウガンで打たれたんだって?」
「おお! 山川君に松田君! 二人とも来てくれたのか! わざわざ済まないな」
「白鳥刑事もお疲れ様です」
「山川君、松田君もどうも」
「傷の具合はどんななんだ?」
「幸い急所は外れていたので命に別状はありませんが、数日の入院が必要なそうです」
「まさか、白銀君みたいにワシが入院することになるとはな」
「アイツと一緒にしたらダメだと思うぞ?」
「そうですね。偵光は特殊すぎるんで。それで凶器はなんだったんですか?」
「はい。使用されたのはハンドガンタイプのボウガンだと思われます。目暮警部と知って狙ったのか、たまたま見つけて面白半分で撃ったのか両面で捜査しています」
「ふーん。なるほどな。ジョギング中なら拳銃で対処とかもできなかったって訳か」
「拳銃の腕は、佐藤君や松田君、毛利君達に比べてイマイチだからな。持っていたとしても意味無かったよ」
「おいおい買いかぶりすぎだぜ、警部さん。俺が敵わない奴らもいるぞ」
「ほう。それは面白いな。君が敵わないって相当な腕なんだろう?」
「まあな。一人はそこにいる奴で、もう一人はウチの所長だ」
「山川君と白銀君がそうなのか!?」
「へえ、それは僕も興味がありますね」
「あはは。松田が話を盛ってるだけで、俺と偵光は大したこと無いですよ」
「嘘言うな」
「ははは。相変わらず君達の事務所は仲が良くて面白いな。そう言えば、白銀君はどうしたんだい?」
「アイツなら他の仕事でちょっと外せなくてな。時間が空けば来るだろうよ」
「そうか。彼が元気そうなら良かったよ。米花シティービルの一件でワシ達は何もできんかったからな」
「気にすることないですよ、目暮警部。アイツが今元気にしているってだけで充分でしょう?
それに佐藤さんとかが隠れて護衛してくれてるみたいでこちらの方が迷惑かけているのでは?」
「ああ、あれは佐藤君から進言があってワシが許可したんだ。
もちろん仕事が無い時と休みをしっかり取って無茶をしない程度の範囲でならとな」
「そうなのか。まあ、佐藤刑事って強そうに見えて脆いらしいっから良いんじゃないのか? その辺は白銀の奴が付き合い長いし上手くやるだろう」
「そうだな」
「こほん。白銀君と佐藤さんの話はそこまでにして警部が撃たれた件についての続きを話してもよろしいでしょうか?」
「すみません、白鳥刑事。お願いします」
「いえ。ボウガンを撃った場所と思われる場所から妙な物が発見されました。これです」
「西洋の剣か・・・ん、これってどっかで・・・」
「確かにどこかで見た気がするな・・・ちょっと写真撮っても良いですか? 所長にも送りたいので」
「ああ、構わないよ。白銀君達に協力してもらえるならこちらも助かるよ」
「そうですね、警部」
「ありがとうございます」
証拠品の写真を撮り、偵光に送った後は、事件についての話を全部聞き事務所へと戻るのだった。
今回から14番目の標的編に入りました。
次回の更新は明後日です。