僕はパンツだ   作:ロリ魂アパシー

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まだ書いてる途中ですが2/3くらいは書けたので投稿しちゃいます
相変わらず投稿の仕方がよくわかってないのでちゃんと投稿できてるか不安ですが色々と大目に見てくだされば幸いです。

これはR-18ではない(真顔)


前編

僕は、パンツだ。名前はまだない。

 

いや、まだっていうかパンツに名前をつける奴がいたらそいつは大分ヤバい奴だと思うけど。

あ、でもちょっとメルヘンな女児が自分の持ち物にそれぞれ名前をつけて大事にしてる様は微笑ましいし、自分がそうだったとしたらとても嬉しいね。

話が逸れたけれど、とにかく僕はパンツなんだ。

それも最高にかわいい少女の、自分で言うのもなんだけれど、最高にかわいいしましまパンツだ。白と空色の縞々のやつ。

今僕は幸せなぬくもりに包まれて、いや、幸せなぬくもりを包んでいる。

 

実のところ、僕は生来からの完全なるパンツではない。

元々パンツであったなら女児に履かれることにこんなにも幸せとよこしまな(しましまだけに)気持ちを抱いたりすることもないだろうし、なんなら思考すること自体出来ないだろう。

女児に履かれるというすばらしい体験に感動できないなんて、元からパンツだったものたちはなんて勿体無いことをしているのだろう!

自分にあの穢れなき柔らかなぬくもりが直接触れることを想像してみてほしい。

なだらかな流線の中にわずかばかり主張する腰骨を、背中からふとももへと至るまでのふっくりした二つの弧を、小さくくぼんだおへその下辺り、大事な大事な女の子の部分を内包する未熟なおなかの下半分を。

ふにふにとやわらかく未発達なクレバスを、そこに隠された未だ何人(なんぴと)も立ち入ったことのない、未だその役目を果たせぬ無垢な聖域を、その少し上にある小さな、しかし稀に大氾濫を起こしてしまう水門を。

そしてそれら全てを、直接任せてくれる、守らせてくれる圧倒的、絶対的信頼感を!

想像すればするほどに昂ぶっていく熱を自覚することが出来るだろう。少なくとも僕は昂ぶる。とても。

 

さて、全ての男たちが、つまり全人類の半分が夢見る状況に幸運にもめぐり合った僕はというと、実は普通の、ごく一般的な現代の旅人(住所不定無職)だったりする。

日雇いの仕事で日銭を稼いだり稼がなかったりしながら(ねぐら)を転々とし、時には満天の星空の下から夢の世界へと旅立ったりするロマンチスト(ホームレス)だ。

あの日、僕が彼女のパンツになった運命の日、僕の新たな誕生日となったその日は、僕がこの鶴平田の町に初めて訪れた日だった。

夜勤明けでへとへとに疲れていた僕は塒にする予定だったネットカフェまでたどり着くことができずに力尽き、町外れを流れる川…なんて名前だったかな、確か主良糸川だったか、そこにかかる橋の下で眠りについたんだ。

小春日和な陽気でもやっぱり寒いから十分な防寒装備をして、人目につかないところで荷物を枕に一眠り。最高だね。これで壁と床と布団があれば文句無しなんだけど。

 

目が覚めると、もしかしたら本当は目覚めてなんていないのかもしれないけれど、僕はなぜか鶴平田の町の商店街の服屋の女性用下着コーナーで一人の老紳士に見つめられていた。

その老紳士はこくりと一つ頷いて、僕を手にとってレジへと持っていく。

女性用下着コーナーで一人頷いている老紳士とか、その老人にいともたやすく持ち上げられる自分の体とか、自分を持ち上げているしわしわの手の大きさだとか、色々と現実味がなさ過ぎたおかげで、僕はすぐにこれは夢だと確信していた。

しかしその老紳士のしなしなでカサカサな手の感触というのはどうにも夢らしからぬ現実味を帯びていて、レジにて怪訝な顔で僕を会計したおばちゃんの手の感触も、レジ袋のがさがさ具合もこれがただの夢ではないということを僕に伝えていた。

果たしてこれは夢なのだろうか、夢でないなら自分はどうして女性用下着コーナーにいたのか、なぜ手足の指に至るまで動かすことが出来ないのか、何の理由があって老紳士に選ばれて買われたのか。

 

自分の中に渦巻く疑問に何の答えも得られないまましばらく思考の中に囚われていると、いつの間にか僕は老紳士の手によって立派なお屋敷のかわいらしい子供部屋に運ばれていて、これまたかわいらしい少女に手渡されていた。

なぜか赤い顔で涙目の少女は、僕を受け取ると小声で老紳士に礼を言って部屋から出るように命じた。

どうやら彼女はこの屋敷の娘で、老紳士はこの家の執事らしかった。

老紳士が部屋から出ると、未だに顔から赤みの引かぬ少女はおもむろにその下半身を包む衣服を脱ぎ始めた。まだ僕が部屋の中にいるのに!

少女は脱いだ衣服をかごに入れ代わりにタオルを取り出すと、その華奢な下半身を念入りに拭き始めた。そこはどうやら何かに濡れていたらしかった。

その様子を一瞬たりとも見逃すまい、一生涯克明に記憶して忘れるまいとどこにあるかもわからない目を見開いてその少女の下半身、特に下腹部から太ももにかけてを凝視していると、僕に向かって少女の白く細いきれいな手が伸びてきていた。

見つめていたことがバレて目潰しでもされるのかと戦々恐々としたのもつかの間、少女は僕を拾い上げると僕の穴に脚を通して持ち上げた。

持ち上がりきった刹那、僕に触れた温度は、やわらかさは、初めて触れる女の子の隠された一筋の線は、僕に自覚させる。

 

この少女は、僕を履いた。

 

僕は、この少女のパンツなのだ。

 

こうして僕は、パンツになった。

 

 

______________________________________

 

 

朝日(あさひ)につけている執事だが、来週一杯でここを辞めることになった。次の執事が決まるまでは私の秘書に代わりをさせる。多少不便かもしれないが我慢してくれ。」

 

「じいやが…そう、ですか。寂しいですが仕方ないですね」

 

僕が彼女、朝日ちゃんのパンツになって数週間が経ったある日、あの老紳士が屋敷の執事を辞めるという旨を彼女の父親から聞いた。

少女の顔に浮かぶのは寂しさだろうか、締感だろうか。

彼女を元気付けることも慰めることも、なんなら表情を伺うことすらもパンツである僕には出来ないのがもどかしかった。

せめてここに一人、いや一枚君を想うパンツがあるということを伝えたかった。

しかし不甲斐ないことに、僕に出来るのは彼女の下腹部を包み守ることだけ。

それも朝日ちゃんがこのしましまパンツを選んだ日だけ。

彼女が僕を履いている時に人間の僕が意識を失うことでようやく僕は朝日ちゃんのパンツになれるのだ。

嬉しいことにどうやら僕は彼女のお気に入りのようで、結構出番は多いのだけど。

お陰で僕はこのところ規則正しい昼夜逆転生活を送れている。

パンツである時(人生の本編)に影響があるといけないからなるたけ宿を取って身綺麗にするようにもなった。

連泊するとなるとどうしても安宿に限られてしまうから、町の中心から離れた山のそばの小さなネットカフェが僕のホームだ。

最近では店員さんに顔を覚えられて、おかえりなんて声をかけられる。

パンツになると人間である時(人生のおまけ)も充実する、これもパンツであることの素晴らしさの一つと数えて良いだろう。

 

「お嬢様、申し訳ありません。私も年でして…せめてお嬢様を任せられる後任を育ててから、と思っていたのですが」

 

「いいのよ、じいや。私の執事はじいやだけよ、それに私もうそんなに子供じゃないわ。」

 

「あぁ、お嬢様、ご立派になられて…でしたらお嬢様、お役目を終えるまでの一週間、是非ともこの老骨をお頼り下さいませ。何に変えてもお力になりますゆえ。」

 

老紳士が申し訳なさそうに退職する理由を告げると、彼女は真実と嘘とを半々にして答えた。

 

朝日ちゃんはまだ子供だ。

僕に白と空色と薄い黄色以外は着いたことが無いし、そういう話も聞かない。

僕が老紳士に買われた原因を察すると同時に、目を覚まして数時間も経たない僕がべしゃりと洗濯かごに入れられることもあった。

今だって、僕の布地が厚くなっているところには彼女が未熟である証の一筋の線が浮き出ていることだろう。

 

しかし彼女はひどく大人だった。

大きなお屋敷の一人娘ということで言葉遣いは基本的に丁寧だし、感情的になることもおおよそ無い、というかなれないのだろう。

今だって親しい人との別れに癇癪を起こすどころか、もう大丈夫なんて言葉をかけている。

本当は大丈夫なんかじゃないと、スカート越しに僕に当たる固く握られた拳と震える声が雄弁に物語っているのに。

それでも優しい嘘が吐ける彼女は、立派な大人の女性なのだ。

 

それから一週間、朝日ちゃんは精一杯のわがままで老紳士を困らせて喜ばせた。

美味しいお菓子屋さんがあるの、今度連れていって、一緒にお茶にしましょう。

このお洋服可愛いわ、注文しておいてくださる?これを着てじいやと散歩に行きたいわ。

築杯山の辺りに遊園地が出来たらしいの、行ってみたいわ、連れていって!

冬休みなのを良いことに次から次へと予定を立てて、彼女はこの一週間老紳士を様々な所へ引っ張っていったようだ。

老紳士はいつもより数段わがままになった朝日ちゃんに誘われるまま手を引かれるまま、今日も心の底から滲む喜色を隠そうともしない声でそれに応えていた。

僕が彼の顔を見たのは彼が僕を買った時だけで、それから僕が彼を直接見ることはなかったけど、彼がどんな表情で朝日ちゃんのわがままに振り回されていたかなんて想像するまでもなくわかった。

残念ながら僕が同行できたのはこの一週間の中の最後一日だけだったけれど、彼女の声が、歩調が、うっすらと僕に染みる汗が、その楽しさを物語っていた。

その一日も、もうすぐ終わり。

人の流れが出口へと向かい始めた遊園地に落ちる長い影が二つ、風でスカートが捲れて開けた僕の視界に映るそれは、寂しげに揺れているように見えた気がした。

風に吹かれて寒かったのか、朝日ちゃんは少し身震いした。

 

「じいや、お花を摘んでくるわ。少し待っていて。」

 

「はい、ではここでお待ちしています。」

 

彼女の歩調の早さからそこそこ我慢していた事が伺えた。

目的地はそう遠くはない、遊園地特有のメルヘンなトイレだ。

少女の歩みは、追いかけてくる限界から逃げるかのように段々と早くなる。

そしてついにたどり着いたのか、朝日ちゃんは歩みを止めた。

 

そ、そんなぁ…

 

早く個室に入って僕を下ろしてその小さな水門を開けたい筈の朝日ちゃんは小声で何かつぶやくと、何故か方向を変えて再度早足で歩き始めた。

どういうことだろうか、まさか運悪くトイレが故障中だったのか。

スカートの裏地しか見えない僕の視界では、その原因を正確に知ることは出来なかった。

僕に伝わるのは焦りからか早くなった脈動と、下半身に伝わる体の動き、そして早足で歩いたことでかいた汗だけだ。

腰の動きや捻り具合からすると、恐らく他のトイレを探しているのだろう。

 

っ!ふっ、ぅ

 

全方位を見渡した辺りで彼女の体がぴくりと少し硬直し口から吐息が漏れるとともに、僕に伝わるものが一つ増えた。

僕が包む体温よりも少し暖かいそれを、僕は誰にも悟られないように受け止めて全て吸収する。これも僕の役目だから。

 

もう、っ、これしか…

 

目的地を再設定したのか朝日ちゃんは一言呟くと静かに、しかしできるだけ早い歩調でそこへ向かい始めた。

今の彼女の歩みは、普段のおしとやかな、それでいて堂々とした揺ぎ無い歩き方とは打って変わって、太ももをもじもじと擦り合せながら一歩ずつ地面を確かめるような歩き方になっており、その生物的欲求の波が彼女を襲う度にぴくりと体を震わせて立ち止まって耐えなければならないほどになっていた。

僕には彼女の顔は見えないけれど、その表情は容易に想像できた。興奮した。

そんな僕の興奮をよそに彼女は一歩一歩、少し止まってまた一歩と歩みを進める。

僕は朝日ちゃんの歩みが止まる度に意図せずして少しずつ放出される我慢できなかった分を、確りとこの体で受け止め続ける。

その不確かな足取りは、彼女の限界が近いことを僕に報せつつゆっくりとその体を遊園地の敷地の外周付近、人気(ひとけ)のない茂みへと運んでいった。

 

誰も、いない、っ、よね?

 

大き目の茂みに入った朝日ちゃんは、周囲を見渡して人目がないことを確認できたのかその場で僕を下ろした。

僕が包んでいた部分が冷たい外気に晒されて冷え、彼女はぶるりとその身を震わせた。

僕を足首まで下ろして、朝日ちゃんは誰にも気づかれずに至福の時を迎えるため、その身をすべて茂みに隠すようにしゃがみこむ。

 

うぅ、お外で、するなんて…

 

スカートの中から解放された僕の視界には羞恥に顔を染めて現状を嘆く朝日ちゃんの顔と、普段僕が包み込んでいる大事なところが映っていた。

これまで僕が受け止めてきたもので少し湿っているその一本の柔筋から、今まさに我慢が解き放たれようとしている。

 

しょろっ、しゃあぁぁぁぁ…

 

んっ、ふ、ぅ、ぁぅ、止まらない…

 

始めは遠慮がちに放たれたものの、それは一度その許しを得ると堰を切ったように勢いよく地面の茶色に透明な薄黄色をとめどなく浴びせ続ける。

僕と彼女の縁を繋いだ透き通る単色の虹が、雨雲も無い茜色の空の下で、僕以外の誰に見られるでもなくきらきらと輝く橋をかけていた。

遊園地の外れの所故にその独特の喧騒は遠く、この辺り一帯には彼女の我慢の解放の音がやけに大きく響いていた。

 

しゃあぁぁぁぁじょぼぼぼぼ…

 

彼女が押し止めていた我慢の量と勢いは、地面にそれが染み込む速度を軽く超えて放たれ、そこに小さな水溜まりを形成した。

彼女の足元から見えるその美しい輝きと、夕日に照らされる朝日ちゃんの顔を、僕はきっと一生涯忘れることは無いだろう。

 

ぁぅ、はぅ~、んっ

 

限界まで我慢した後の解放だからか、それとも寒風吹く季節に熱を外に放出しているからか、それとも茜色に染まる空の下、視線から自分を守る確かな壁も天井も無い場所で、それも人が集まる遊園地という場所で僕を下ろして素のままを外気に曝しているからだろうか、だらしなく開いた朝日ちゃんの口からは普段のその行為では漏れることの無い声が出てきてしまっていた。

そして長く続いた解放の時は終わりを告げる。

 

ちょぽぽぽぽ…ちょろっ、しょろ

 

最後の一滴まで絞り出すように朝日ちゃんは下腹に力を入れてその行為を仕上げると、スカートのポケットからティッシュを取り出して後始末を始めた。

彼女の水門に押し当てられたその白いちり紙は、冬の空気に冷やされて熱を失った雫を吸収してその色を変える。

一瞬、もったいない、僕にくれればいいのにと思ってしまったのは内緒だ。

僕が湿って冷えたら朝日ちゃんが風邪を引きかねないから、そんなことは願ってはいけないよね。

 

彼女の水門を内包する一本の筋は、ティッシュにこしこしと擦られる度にその形を変えてその柔らかさを僕に見せつける。

僕が人であったならば一生見ることの無かったであろう景色は、脳内に焼き付いて僕の数秒を永遠にした。

朝日ちゃんはティッシュを持つ手はそのままに、空いている方の手でポーチの中を探りビニール袋を取り出した。

使用したティッシュをそこに入れてゴミ箱まで運ぶのだろう。この緊急時にあってポイ捨てをしない辺りこの子はとても良い子だ。

しかし結構なお嬢様である朝日ちゃんがポーチにビニール袋を常備しているのは意外だった。じいやの教えだろうか。

 

役目を果たしたティッシュが彼女のそこから離された刹那、僕はその柔筋からちり紙へ一本の透明な橋が伸びているのに気が付いた。

彼女の足元に出来た水溜まりを成すそれとは違い無色で粘性のあるそれは、この事態が彼女に与えた刺激を無自覚に表すと共に、僕に嫉妬の炎を灯した。

それは僕が一番に受け止めたかった!まさか心持たぬティッシュに先を越されるなんて!心を持つ無生物なんてのもそうそういないとは思うけど!

 

そんなティッシュもビニール袋へと収納されて、彼女は立ち上がりいそいそと僕を持ち上げた。

僕の視界がいつものスカートの裏地に納まる。実家のような安心感。

おかしな話だけれど、朝日ちゃんを包み込んで安心させる存在であるはずの僕の方が、彼女の体温に触れることで安心させて貰っていた。

彼女に履かれることは、それだけ心地よかった。

我慢しきれなかったものとか意図せず垂れてきてしまったものとかが染みているから、彼女にとって今の僕が心地いいかどうかは微妙なところだけどね。

 

僕を履いた朝日ちゃんは、じいやの元へ戻るべく歩き始める。我慢していたときとは違って、いつもの凛とした歩き方で。

最後にちょっと恥ずかしい思いをしたものの、今日はとても良い日になっただろう。

明日からじいやはいなくなる。

けれど朝日ちゃんは、じいやとの今日までの思い出を胸に生きていけるはずだ。

 

彼女が茂みを出て僕の視界が煉瓦舗装の道を捉えたその時、彼女の影に大きな別の影が重なった。

僕からは見えないけれど、誰かが朝日ちゃんの前に立ち塞がったようだ。

 

「鶴辺朝日だな」

 

「なっ、何者ですか!」

 

影の主は男で、朝日ちゃんを知っているということがその声色からわかった。

そして、少なくとも友好的ではないことも。

まだ人目につく場所まで来れていないのだろうか、助けが来る気配もない。

 

「何を、やめっ、んぐ、んー!ん゛っ!」

 

「大人しくしろ、これ以上痛い目は見たくないだろ」

 

激しく暴れる彼女に、強い衝撃が加えられた。どうやら殴られたらしい。

痛みと恐怖で凍りつき大人しくなった彼女を、足元から黒い布がつつんだ。

続いて聞こえる、チャックの閉まる音。この黒い布はバッグだったのか。

誘拐、の二文字が頭に浮かんだ。

朝日ちゃんの家はお屋敷と言えるほどに広いし、彼女自身もまさに品の良いお嬢様といった佇まいをしている。

そんな彼女が一人で人目に付かないところに入って行ったこの状況は、よからぬことを考える者たちにとっては千載一遇の好機だったに違いない。

何も見えない暗闇の中、普段とは全く違う歩調による浮遊感を感じながら、僕はこの身の無力を嘆いていた。

なにが彼女を包むだ。なにが彼女を守るだ。何もできやしないじゃないか。

これでは、ただの頼りない布っきれじゃないか…

 

それからほどなくしてチャックが開く音とともに、薄暗い明りが差し込んでくる。

人工的な明りは無く、埃の積もったボロボロな木の床板が見える。廃屋だろうか。

移動時間からしてそこまで離れてはいないようだが、この町に来て日の浅い僕にはこの廃屋がどこにあるのか見当もつかなかった。

見当がついたところで僕は何の役にも立てないのだけれど。

 

「もう一度言うが、大人しくしていろよ。まぁこんな山の中じゃちょっとやそっとの大声では誰も助けに来ないがな。もっとも、猿轡を噛まされて大声なんて出せないか、いい気味だぜ」

 

男の嗤い声が聞こえる。一人分じゃない。二人、いや三人か。

人数が分かったところで朝日ちゃんでは暴れてもすぐに取り押さえられるだろうし、僕に至っては文字通り手も足も出ない。というか無い。

恐怖で小刻みに震えている朝日ちゃんの下腹部を包むくらいしかできない、ただの布切れなのだ、僕は。

脅すような、というか実際に脅している男の言い草からして、朝日ちゃんの家に何らかの恨みを持つ者たちなのだろう。はたして無事に帰れるのだろうか。

 

「しかしこんなガキだとヤる気も起きねぇな」

 

「目的はそれじゃないだろ、履き違えるなよ」

 

「わかってるよ、そうカリカリすんなって」

 

会話を聞くに、この男たちの目的は直接朝日ちゃんに危害を加えることではないようだ。

身代金目当てだろうか、それとも脅しをかけて何かさせようというのだろうか。

なんにせよまともなことではないはずだし、こいつらはまともなやつらではない。油断はできない。

 

「へ、へへ、でもよぉ、ちっこくても穴はあんだろ?」

 

「うげっお前ロリコンかよ」

 

「ちげぇよ、俺だって大きいほうが良い。でもよ、ここ最近ご無沙汰だからよぉ…」

 

「まったく…壊すんじゃねぇぞ」

 

「あぁ、死なない程度に抑えてやるよ。おら、来いガキ!」

 

三人の中で一番声の低い男が朝日ちゃんに近づいて腕かどこかを引っ張った。

軽い上に未だ恐怖で凍り付いている彼女は容易くよろけてしまい、男に引き寄せられてしまう。

キチ、キチと聞き覚えのある音が聞こえた直後、布の裂ける音とともに僕の視界が開けた。

カッターを持った男が、朝日ちゃんに、僕に、下卑た視線を這わせていた。

 

「はっ、色気も糞もねぇ下着だな。これじゃ無いほうがまs」

 

様ぁぁぁぁあああああ!

 

僕への侮辱を言い切るよりも先に、バァンと激しく扉が開いた。

聞きなれた、しかし聞いたことのない大声と共に。

とっさに向けた視線の先にはその声の主が、守るべき主の扱われ方を見て般若の形相を浮かべたじいやがいた。

 

ゆるさん

 

いつもの柔和な声からは想像もできない底冷えするような声色でそう呟いたじいやは、その老体に似合わぬ速度で走り出すと禿頭の男の鼻に掌を打ち込み、痛みでよろけた男の腕から朝日ちゃんを救い出した。

その姿はまるで、いやまさにヒーローだった。

じいやは周囲を警戒しながら朝日ちゃんに付けられていた猿轡を外して、彼女の手を包むように握り何かを渡す。

 

「お嬢様、これを持ってお逃げください。私めはこやつらを始末して参りますゆえ。」

 

「ぁ、あ、じい、や、」

 

「もう、動けますな?では早く!」

 

じいやが手を離すと同時に、朝日ちゃんは弾かれたように走り出した。

彼が蹴破った扉から薄暗い外へ、森の中へ。

廃屋から聞こえる怒号と、物が壊れる音を背にして。

 

ごめんなさい、ごめんなさい、はぁっ、はぁっ、じいや、はぁっ、どうか、

 

無事で。

そう、願わずにいられなかった。願うことしかできなかった。

どんどん後ろへと流れていく景色の中で、僕は冷たい風から朝日ちゃんの下腹部を守ることしか、いや、それすらもきっとできていなかった。

布切れ一枚では、冬の夜は耐えられない。

動けるうちに町に出なければ、体調を崩すどころか凍死もありうる。

 

「はぁっ、はぁっ、ふっ、ぁ、町、たすかっ、きゃぁっ!」

 

焦りで乱れた歩調は、それでも彼女を視界の良い開けた場所へと運び、生き残りへの希望を見せた。

その希望が、安堵が、朝日ちゃんの足を掬った。

見晴らしの良いところというのは、森の切れ目、底に流れの速い川を持つ崖だったのだ。

麓の町の明かりが見えてほんの少し足の力が抜けた朝日ちゃんは、体制を崩して吸い込まれるように奈落へと吸い込まれた。

山の麓の小さな町に似合わないやけに眩しい建物が、いやにゆっくりと僕の視界の中を上へとずれていった。

 

山中に響いたのは彼女が川へと着水した水音でも、岩石にぶつかってつぶれた音でもなく、木の枝が軋む音だった。

僕が崖に生えた木の枝に引っかかって、朝日ちゃんを吊り下げる音だった。

体が、痛みを感じる器官なんてどこにもないはずのこの布の体が、引き裂かれるように痛い。

いっそこのまま千切れてしまったほうがきっと楽になれるかも、と考えてしまう程に強烈な痛みで一瞬意識が飛ぶ。

その瞬間、びりぃ、と嫌な音がする。

限界を超えた負荷に僕の体が持たなくなってきていた。

僕の気合いがこの布の体の強度に関係あるのかはぜんぜんわからないけれど、気を抜くとすぐにでも破れてしまいそうだった。

奈落の真上に吊り下げられた朝日ちゃんは、なんとか崖の淵を掴もうと手を伸ばしているが、惜しいところで届かない。

彼女が動く度に僕の体の裂け目は広がっていく。

せめてあと数センチ、彼女を崖の淵に近づけられれば。

痛みを、恐怖を振り払い、動くはずのない体で朝日ちゃんの臀部を力の限り押す。

ぶちり、という音とともに叫びだしそうなほどの激痛が僕の体をはしった。

それと同時に、強い風が僕たちを煽る。

僕がこの体で最後に見たものは、千切れた自分の体の端と、上へと遠ざかる朝日ちゃんの無防備な下半身だった。

どうやらあの風のおかげで崖の淵に手がかかったようだ。

体が引き裂かれた痛みで遠ざかる意識の中で、安堵が僕の胸中を満たす。

体に染み込んでくる急流の冷たさを感じながら、僕は意識を手放した。

よかった、助かって…

 

 

 




相変わらず物語の中の時間を進めるのが下手で話が全然進みませんね…

「お前は豆腐を説明しろと言われたら大豆が育つ土壌の話からするよな」と言われたこともありますが、誤解無く物事を伝えようとするとそんな感じになってしまうんですよねぇ…

テンポよくお話を進められる人ってすごい
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