ロストエンパイア創造記 作:メアリィ・スーザン・ふ美雄
本日二話目。
むかしむかしあるところに、人間に飼われたロバがいました。
ロバがだんだん年老いてくると、力がでなくなってきて、だんだん働くのがしんどくなってきました。
そこで主人は肉にしようと、ある日の夜にロバを絞め殺しにかかりました。
「いままで働いてやったのに、この仕打ちはなんだっ!」
怒ったロバが主人を蹴ると、動かなくなってしまいました。
ロバは殺っちまったと怖くなって、慌てて逃げて行きました。
しばらく道を進んでいくと、路肩にうずくまっているのに、ぐるぐる唸る犬がいました。
どうにも疲れているようで、飛び掛かる元気は無いようです。
ロバは犬に尋ねました。
「犬くん犬くん、どうしてそんなに唸っているんだね?」
「ああ、こりゃ失敬。こいつはきみに向けてじゃないんだ」
犬くんは言いました。
「僕は猟犬なんだけど、下手糞な主人に操られて、僕も下手糞扱いなのさ。
そしたら主人は『この無能!』って僕を殺そうとしやがった。
だから喰い殺して逃げたのさ。
ざまあみろ。無能はどっちだってんだ。
だけどこれから、どうやって食っていったらいいんだろう?」
「やあ、同類だ同類だ。
ぼくも主人を蹴り殺したところさ。
食うも困るならあいつを食っちまえばいい」
「おや、いいのかい。ありがとう」
ロバは犬の話を聞いて、得も知れぬ安心感を得ました。
同じ境遇の動物は、自分以外にもいるのです。
ロバは犬と一緒に道を引き返して、元・主人を犬に食わせてやると、旅の仲間になりました。
それからまた別の道にいくと、今度はネコとあいました。
美しい白い毛並みを乱していて、とっても疲れているようです。
ロバは猫に尋ねました。
「猫くん猫くん、どうしたんだい?」
「私は飼い猫なんだけど、変態な主人に言い寄られて、異種姦されかけていたの。
もうありえないったらないから、ナニ食い千切って逃げてきたのよ。
ふんっ! ちみっこくて、噛み千切りやすいサイズだったわ。
だけどこれから、どうやって生きていけばいいのかしら?」
「やあ、同類だ同類だ。
ぼくらも主人殺しの仲間さ。
一緒に行って、人間どもに復讐しようじゃないか」
「あら楽しそう。私も行くわ」
ロバは猫の話を聞いて、義憤にかられてきていました。
人間は、家畜ならどんな扱いしてもいいと勘違いしているかもしれません。
隣国で起きたという革命から何も学んでいない人間に革命を!
三匹は、思いつく限りのアカそうな歌をおのおの歌いながら、意気揚々と道を行きました。人間がそれを聞いたなら、三匹の異なる種族の動物が仲良く鳴き声をあげる、異様の風景に見えたでしょう。
それから三匹の逃亡者たちは農家の家を襲いました。
ロバがドアを蹴破って、犬が寝ている人間を襲い、猫は魅力的に鳴いて、飼われている動物達に革命を謳いました。
すると猫に感化された鶏が、門の上にとまって、声をかぎりに鳴きました。
「うちの奥さんは無慈悲にも、明日スープに入れてオレを食べるつもりだと言ったんだ!
オレは頭を切られるところだった!
毎朝オレに起こされてるくせに、人間は何様のつもりだ!」
「おーそうだーいいぞー!」
「家畜の産業革命のためなら、ニワトリ爆弾にだってなってやる!」
「俺もなるぞ!」
「俺だってなるさ!」
「これ以上支配者階級的農家どもの搾乳を許すな!
牛を開放せよ! 山羊を開放せよ! 人間に乳を搾らせるな!」
「革命せよ!」
「乳を搾らせるな!」
「革命せよ!」
「おっぱい!」
トサカの先っちょまで真っ赤にした過激派の鶏達は、めいめい飛び出していきました。
その様子を見て、ロバはびっくりして言いました。
「うわあ過激だなあ。
猫くんは扇動上手だねぇ」
「正直言ってドン引きだよ。
僕、ちょっと何人か自分で噛み殺せれば、それでよかったのに」
「あらそう? やるなら徹底的にやらないと」
「おや、幹部連中は大人しいもんだぞ。
オレはちっとばかし言いすぎたと反省してるんだ」
猫に感化された鶏は、冷静そうに三匹の集まりに混じってきました。
声がでかいだけの鶏ではなかったようです。
鶏は、申し訳なさそうにいいました。
「オレも一緒についてっていいかい?
革命がどうこうじゃなくって、人間に復讐したいんだ」
「もちろんいいとも。
声無き者の鳴き声ってやつを、人間どもに思い知らせてやろうじゃないか」
「僕たちが歌えば、きっと世界中のみんなを救う事だってできるんだ」
「にゃあん。そうねぇ。世界を救うだなんて、大それたことだけど……」
鶏を加えて四匹になった一行は、革命を謳う音楽隊になって農村部をさんざん荒らしまわりましたが、ブレーメンを目指す途中でドイツ軍に鎮圧されましたとさ。
「うーん動物物語……いいねっ! 童話の王道だよっ!」
創造神メアリィ・スーは、それらの様子を"監視する者"ごしに観察しながらいいました。
できた死体とソウルはいい感じに回収して、別の何かを再構成する際の素材にする予定でした。
遊ぶのはほどほどにして、ロストエンパイア構想を進めなきゃなーと思わないでもないですが、こっちはこっちで楽しーいとメアリィは悩みました。さし当たって今の遊びを無駄にしないためにも、動物達の夢見た畜産業革命を元に、牧場ステージを創ろうと思いました。
牧場・人間が餌。もう一捻りほしいかも。いろいろ混ぜ混ぜして究極生物でも創っちゃう? その辺はおいおい。とりあえず聖森の東辺りに置いておこうっと。
ところで、彼女の現実改変能力は、幾つかのパターンがありました。
あらかじめ書いておいた筋書きに登場人物とした対象に沿わせる因果干渉型。
起こった出来事を書きとめて、好きな部分を再構成する状況再現型。
まっさらな本に対象を閉じ込めて徹底的に改変する個人特化型。
本から呼び出して味方として操作する夢霊召喚型。
対象に本を埋め込んで登場人物へと改変する書き換え型
もにょもにょとチートコードを呟いて改変する後付け入力型。
上記に当てはまらない特殊改変型。
たぶんどれもに一長一短があって、他のパターンもあるでしょうが、細かいところは抜きにしてしまえば、まあおおむね、このへんに収まりそうな気がします。
いずれにせよ干渉元となる"素材"がなければ、彼女は改変できませんでした。
ゼロから全てを創りだし、それを自在に操るなんて、大それたことはできないのです。
いや、現実改変なんて十分狂った性能ですが、完全無欠の現能ではないということです。
メアリィは早速牧場の様子を見に行きました。
既に北風と太陽が荒らしまわっていました。
「人食い動物どもめっ!
魔獣じゃねえようだが、どっから出てきやがった!」
「オレがまとめて薙ぎ払ってやるぜっ! "
「あーっ! ボクのロストエンパイア構想が!!)
北風の騎士ボレアスがなんか超必殺技っぽいのをつかうと、牧場の夢は吹き飛んでしまいました。
「ばーかばーか! やーめーろーよー!
……ちっ。どっかから出てくるかもしんない神格を吊り上げるために自由にさせといたけど、そろそろバッドエンドにさせちゃおっかな。お前ら調子コキすぎ」
メアリィは感情的に怒りを露わにすると、一冊の本を取り出しました。
タイトルには【ドン・キホーテ】と書いてあります。
もちろん内容は改変されていて、クライマックスには三、四十ばかりのギガンテスが現れます。
原典においてその巨人は、ドン・キホーテが風車と見間違えたものでした。
ドン・キホーテは、魔術師がどうのこうのといってお話が終わります。
対して改変後は、魔法使いのおばあちゃんに頑張ってもらいます。
風車を核に、黒くしたソウルをしこたまぶちこんで、ギガースモドキを造ってもらうのです。
北風と太陽にまだ神格が残っているのなら、ギガンテスを殺すことはできません。
北風と太陽がかつて神であった力を失い、生粋の騎士へと完全に改変・変容しているのなら、ギガンテスを殺すことができるでしょう。たぶん。
分岐は分かれてしまいますが、もしもこの物語から生き残ったなら、より悲惨で無残で哀れなバッドエンディングを用意するだけですから、メアリィに損はありません。
「きゃひひひあはっ。マルチエンドなんて初めてだなぁ。
こんなとこでテストできるなんてちょうどいいやっ♪
オベンキョーさせてもらうよ二人ともっ♪」
創造神メアリィ・スーは、北風と太陽を童話【ドン・キホーテ】の登場人物にしてしまいました。もっと自由にさせて色んな状況下での行動パターンを取るはずだったのですが、彼女はそんなことすっかり忘れてしまいましたとさ。
三匹の豚「ワイらの出番は?」
メアリィ「まだです」