ロストエンパイア創造記 作:メアリィ・スーザン・ふ美雄
むかしむかし牢獄の国には、数え切れないほどたくさんの妖精がいました。
元はといえば
そこでみんなは、地獄のような労働を強いられていました。
妖精たちは
生きて連れてくることができた赤ん坊たちは、創造神メアリィ・スーが捨てられの森に連れ帰って、なにやら怪しげなことに"使って"いるそうです。
口に出すものはいませんが、自分達はこんなことするために生まれてきたわけじゃないのになあ、と思う妖精はたくさんいました。
ところで世の中には働きアリの法則というものがあって、ある一つの集団の中では、二割が働き者になって、六割が普通に働いて、残る二割が怠け者になる法則を意味します。
妖精達のなかにも、メアリィ・スーの残虐さに感化される者もいれば、ことなかれ主義であんまり考えないようにする者もいれば、やだなあという気持ちを隠さない者もいました。はっきり口にだして反抗した連中は"素材"にされたので、もうここにはいません。
ある秋の日、妖精の皮を被ったメアリィ・スーがやってきていいました。
「そろそろここ改変するよー」
メアリィは自分と趣味趣向の近い妖精たちを『ダークフェアリー』と呼んで別種とし、捨てられの森に移住させました。
普通に働いていた妖精たちは『人食い蟻』たちに改変されました。
怠け者の妖精たちは『皆殺しキリギリス』たちに改変されました。
そして、人食い蟻と皆殺しキリギリスを谷の一部に集めると、その領域を『鉱山』として、ロストエンパイアの牧場跡地北あたりに移設したのです。
「ゴールドラッシュをいまも夢見るもの来たれっ!」
メアリィ・スーは鉱山付近の箱庭世界への入場設定を弄くると、かつてゴールドラッシュの旨みをたんと味わい、あの日々の事が忘れられず今も夢に見る者たちが、歓喜と悲鳴入り混じる鉱山を集まってくるようになりました。
『無限の黄金が掘れる鉱山』
そんな偽りの看板を出せば、金の亡者たちが我先にとツルハシを始めとした採掘道具を持って入っていきました。
こうして禁の鉱山(仮名)の中で、アリとキリギリスは餌に困らず仲良く暮らしましたとさ。
「とりあえずここはコレでよしっと。鉱山の先には……どれにしよっかなー。
うーん。しかしアレがあんなオチになるとは……面白かったなァ……アレは」
創造神メアリィ・スーは、手元に童話【北風と太陽】を取り出しながら、だらしのない笑みを浮かべて呟きました。
義兄弟の契りを交わした二人の騎士……途中経過は省くとして、二人は童話【ドン・キホーテ】の筋書きに沿って動き、クライマックスでは風車小屋が良く働きそうな丘で、ギガースモドキたち、つまりはギガンテスと戦いました。
一人は神の力を宿した騎士としてギガンテスと戦い、一人は一介の不死者の騎士としてギガンテスと戦いました。不幸の蒼い鳥は端役としてちょろっとでてきて自信満々にアレコレ語った後すぐやられました。メアリィは、蒼い鳥が雑魚過ぎて面白かったので助けてあげました。
戦いの結果、一介の不死者となった者はギガンテスを殺せ、神が騎士のマネゴトをしている者はギガンテスを殺せませんでした。
「おまえっ、なんで……」
「知るかよ。巨人族を殺せたからいいじゃねえか」
北風と太陽は口論になりました。
片や神である事を無くしたものを非神者と罵り、片やそれでも世界を守る事はできるはずだと反論しました。
その様子を見てなんだか楽しくなってきたメアリィは、不死者の方にチートコードを使って、先に手を出させました。
二人は殺し合いました。
もう止まりません。
口論ですめばよかったのに、手を出してしまったのですから、もう止まることはありません。
メアリィは惜しい事をしたと後悔しました。メアリィが手を出さなくても、もしかしたらそうなっていたかもしれないというのに、好奇心で展開を歪ませてしまったのです。この失敗を活かして、もっとこう、悲劇的な感じで仲違いさせる展開に持っていける筋書きを考えようと決心しました。
二人は狂おしいほどに殺し合いました。
しかし、義兄弟の契りが働いて、どちらか一方が死んでも、どちらか一方が生きていれば、すぐに蘇ってしまいます。
このままでは決着はつきません。
決着がつかないまま争い続けるかに思えましたが、不死者のソウルはどんどん黒く穢れていきました。
ついに不死者はその穢れを以て義兄弟の契りを破棄すると、血涙を流しながら神の騎士を殺しましたとさ。
感動のあまり、妖精の皮を被ったメアリィ・スーは不死者の前に姿を現してしまいました。
「いやー最高! おめでとう!
ボクが思ってたよりずっと立派になっちゃってっ!」
「あぁん? 何言ってんだお前っつーか誰だよ」
「そだねー。いわゆる『黒幕』ってやつ?」
「っ! てめえがかあああああああああああああっ!」
不死者は手にした剣でメアリィにすぐさま斬りかかりました。彼女はあえて両手を広げて、その剣を受け入れました。死なないのならば、いくら殺意の篭った刃を突き立てられても心地よいもののようで、メアリィは自然と嗤っていました。
「心を通わせた二人が殺し愛! そして誓約を裏切ったっ!
身も心も人に近くなりすぎたばっかりに……
人間って、なんでこんなことができるんだろーっ!
ああ、素敵! なんて悲劇! ほぼイキかけました!
このネタは絶対絶対ロストエンパイアでも使うから!
ナイトさまネタの提供ありがとぉぉぉおおおおおぉぉぉおおおおっ!」
「このオレ様を……ナメてんじゃねぇーっ!」
不死者の騎士はメアリィを半ばまで切り裂いた剣を引き抜き、その刀身に自らの属性を纏わせて、大上段から斬りかかりました。その一撃でメアリィ・スーは真っ二つにされてしまいました。
「やったかっ!?」
不死者の騎士が叫ぶやいなや、妖精の皮から脱皮するかのように、創造神メアリィ・スーは真の姿を現しました。
「なん……だと……」
「じゃあ次はボクのターン♪」
創造神メアリィ・スーが片腕を天に掲げると、光の中から無数の武器が舞い上がり、不死者に向かって雨あられの如く降り注ぎました。皆大好き例のアレと比べれば、水平に射出するのではなく上空から対地に撃ち降ろす形になってるので、パクリじゃなくてオマージュです。
「ぬわーっ!」
たぶん対不死特効とかの何かがあったのでしょう。不死者はあっさりやられてしまいました。
「ハイ残念でしたー♪ 次頑張ってねー♪
次があればだけど。くすくすくすっ♪」
「はいダメー。不死性は没収しまーす」
メアリィが何事かをモニョモニョと呟くと、剥き出しの穢れた黒のソウルは淡い虹色の光に包まれ、そして童話【北風と太陽】の中に入っていきました。
こうして創造神メアリィ・スーはダークフェアリーに分類した妖精種族にカットアンドペーストでもするかのように不死性を配りました。これで予備生命がどうこうとか関係なく、メアリィは妖精の皮を被っている間は不死の存在になりました。
この本の中には、まだもう一人、不死性を内包したものがいます。
彼女はいつかその不死性を剥いで、"主人公"に付与すると決めていましたとさ。
あれっ。先に白雪姫書こうと思ったのにラプンツェル書く流れになってる……まあノリと勢いで書いてたらこういうこともあるか。