ロストエンパイア創造記 作:メアリィ・スーザン・ふ美雄
むかしむかしあるところに、狡賢いカメがいました。
のんびりのほほんとした顔で、平気で皆を騙してきました。
カメの住処の池の中には、彼に逆らえる者はいません。
そんなカメが棲む池へ、ある日ウサギがやってきました。
ウサギが水浴びをしていると、カメはしめしめと思いつつ、澄ました顔でのんびりのそのそ出てきます。
そのスットロイ動きを見て、ウサギはカメに言いました。
「おんやあ、カメだ。のろまのカメだ。
カメさんカメさん聞いて良いかい?
テメーはどうしてノロいんだ?」
「貴殿はなにをおっしゃるのやら。
もしも拙者が本当にノロマと思うなら、一つ競争しましょうぞ」
そうしてウサギとカメの二人は、競争することになりました。
時は明日のこの時間。
場所はこの池がスタート地点。
雑木林を抜けた先にある小高い丘がゴールです。
狡賢いカメはその日の夜、池の中の仲間を集めて言いました。
「おぬしら、明日はウサギを騙すぞ。
雑木林から丘までの道に、それぞれ潜んでおくがいい。
ウサギがこちらを煽ってきたら、適当に煽り返すが良い」
イケメンカメを騙して寝取った美人妻カメや、当のイケメンカメ本人。その他様々な詐欺によって狡賢いカメに逆らえなくなったカメたちは、その命令に逆らえません。
それで、カメは美人妻に、明日の競争のスタート地点での代返を頼むと、一足先にゴールを目指し、夜中のうちにのっそのっそと歩きました。
カメはのほほんとした顔をしていましたが、内心ウサギを嗤いました。
一方その頃ウサギのほうは、雑木林のどこかに穴を掘って、仮のねぐらに寝そべりながらニヤニヤと笑っていました。
「足の速さでカメがウサギに敵わねえ。
大亀に毛が生えたり、兎に角が生えたりするよりありえねえ。
なのにカメはウサギに競争を挑んだ。
それはなーぜーか?
ヒヒヒッ……一目見て分かった……アンタ俺に惚れてる。
ああ、わかるぜ。
駆け足自慢のウサギってやつを、足の速さで勝ったと語って、笑い者にしたいんだろう?
バレバレなんだよ
翌朝ウサギは直感的に、競争の時間よりずっと前に、ゴールの丘へ静かに駆けて行きました。
それで、雑木林の切れ目をまんまるおめめで索敵すると、潜んでいたイケメンカメをあっさり見つけてしまいました。
「やっぱりな♂」
ウサギはぴょおんと高く跳ね、真上からカメを強襲しました。
「ぐわっ! な、なにをする!」
「テメーあのクソ野郎の仲間だな?
いや、違うな……もしかして、弱みを握られて逆らえないんじゃあないか?
ここはひとつ俺と一緒に、あの悪党をやっつけてやろうじゃないか」
甲羅に篭ったイケメンカメは、ウサギにそう誘われると、喜んで協力しようと思いました。
狡賢いカメの片棒を、もう担ぎたくなかったからです。
イケメンカメは、ウサギに聞かれて狡賢いカメの計画を教えると、ウサギはふむふむ頷いて、あとは俺に任せろと言いました。
それで、スタート地点めざしてこっそり走りました。
次に見つけたカメにも似たようなことをして、どんどんカメたちを寝返らせました。
やがてスタート地点につくと、そろそろ競争の時間でした。
ウサギはそこにいるカメの、見分けがつかないかのように言いました。
「ようクソ野郎。吠え面かかせてやるからな。よーいドンでスタートだ」
「それではそろそろ始めましょうか」
「ああ、いくぜ?
位置について、よーいドン!」
ウサギはバッと走り出し、代返した美人妻カメは家の住処に帰っていきました。
これで、あのカメにとっては、レースは始まったということになりました。
ウサギは道沿いに隠れるカメたちに、俺はあっという間に駆け抜けたと証言しろ、と言ってまわって、イケメンカメのところまでたどり着くと、ゴールの丘には走らずに、そのまま仮のねぐらへもぐって熟睡しました。
「フハハッ……これでスタート地点にいた奴はオレのスタートを証言するし、道中の連中もあっという間に駆けぬけたとだけ言う。勝てない勝負を挑んだカメは、良い笑い者になるだろうさ」
その日の夜。
いつまでたってもこないウサギを待ってゴールで待ちぼうけするハメになったカメは、うっかりうとうと眠ってしまい、その次の日に、のっそり住処に帰りました。
なんだかみんな、自分を笑い者にしています。
(なるほどそういうことですか。
ですが巧遅は拙速に勝るもの。
昔から仕込みをしていた拙者がこの程度で落ちぶれることはないですぞ)
狡賢いカメはイケメンカメのところに行って、あのことを皆にバラしますぞ? と脅すと、イケメンカメはあっさりウサギを裏切り、本当のところを全部話してしまいました。
それで、狡賢いウサギの企みを知った狡賢いカメは、イケメンカメを言葉巧みに池からあがらせ、こんなこともあろうかと仕込んでいた罠のところまで誘導し、始末してしまいました。
仲間のカメは、狡賢いカメの狡猾さを思い出し、身震いする思いでした。
そのまた翌日、ウサギが池に水浴びをしにいくと、大きな石に甲羅を割られたイケメンカメが、無惨に殺され晒しものになっていました。
ウサギは何が起こったかを容易に想像し、ニヤニヤ笑いが止まりません。
池から狡賢いカメが、内心隠しきれぬ様子で笑って出てきました。
「おや貴殿、おそようですぞ。
ゴールについたは良いものの、いつまでたっても来ないものですから、ゴールから帰ってきてしまいましたぞ」
「ああん? なんだと? そりゃこっちの台詞だ。
秒速で丘についたんだがよ、テメーがちっともこねーから、帰って糞して寝ちまったよ」
「くくくっ……」
「ヒヒヒッ……」
ウサギとカメ。
二人の間に奇妙な友情が芽生えました。
お互いがお互いを同類だと、目と目を合わせて改めて確かめあったのです。
「はっはっはっ。お互いが勝ったと思っていては、勝敗がつきませんぞ?
ここは一つ、再走と行きませんかなウサギさん?」
「ああ、いいぜぇ?
……次はどっちの足が速いかじゃなくて、別の競争にしようじゃないか」
「構いませんぞ。くっくっく」
そんなわけで、決着がつかなかったので、次の競争の始まりです。
池の支配者と挑戦者。
ウサギとカメは物言わずともにそんな二役に分かれていき、趣味趣向のまま一帯に住む者達を騙しに騙して挙句の果てにはみんな殺してしまいましたとさ。
創造神メアリィ・スーは、そんな二人を童話に書きつつ、まだまだ在野にはいろんな人材が転がっているんだなァと関心することしきりでしたので、蒼い鳥に"素材"を回収させましたとさ。
エルマの家の本棚の端っこにある、いかがわしい童話【カメ×ウサギ】好き(唐突な性癖暴露)
……グニキがホモになったのはエルマが原因では?