ロストエンパイア創造記   作:メアリィ・スーザン・ふ美雄

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 ちょおっと長め。


童話【白雪姫】

 むかしむかし、冬のさなかのことでした。

 一つの愛の結晶が、可愛い赤ん坊となり世に産まれました。

 庭に新雪が一面に広がるところを見た母親は、その赤ん坊に"シュネーヴィトヒェン"と名付けました。

 

 シュネーヴィトヒェンは肌が雪のように白く、ほおは血のように赤く、髪の毛は黒檀のように黒くつやがありました。

 

 けれどシュネーヴィトヒェンは、雪よりもなお白く、血の赤さよりなお紅く、漆黒のように吸い込まれそうな黒髪の、自由奔で生命力溢れる、まるで神に祝福されているかのように美しい母親に対し、幼心に嫉妬しました。その自由奔なお母さんの心を捉えて離さない、父の求心力にも嫉妬しました。

 

 彼女は美しい幼女でありながら、とてもうぬぼれが強く、わがままで、自分よりもすこしでも美しいものがあると、じっとしてはいられない性格に育っていました。両親は二人とも、娘を愛するよりもお互いを愛していましたから、ずっと育てられてはいても、まるでのけものにされているみたいに感じ続けて、心根がこじれてしまいました。

 

 シュネーヴィトヒェンが六歳のころ、お母さんからものを教わるのがいやで、ライ麦畑で遊んでいると、不思議な手鏡を拾いました。この手鏡は、なんとひとりでに喋るのです。しかもそのうえ正直者で、彼女の問いかけにはどんなことも正直に答えてくれました。

 

「かがみよかがみ、かがみさん、世界で一番美しいのは誰?」

「それはもちろん、あなたの母君でございます」

「よしんばお母さんがいなかったとしたら?」

「それはもちろん、シュネーヴィトヒェン、あなた様でございます」

 

 鏡はそう答えましたから、シュネーヴィトヒェンはその日から、お母さんを殺して世界で一番美しくなろうと夢見ていました。もしも地元に学校があったなら、将来の夢に『お母さんを殺すこと』と書いたことでしょう。

 

 夢の中でお母さんを何回殺しても、現実のお母さんは死にませんし、ミサの日にどれだけお母さんの死を願っても、お母さんは死にませんから、どうにかこうにか、ちゃんと手ずから殺そうと思いました。

 

 しかしそれから一年後。シュネーヴィトヒェンはますます美しく成長し、七歳の誕生日を向かえる頃には、きっとお母さんより美しくなっていました。シュネーヴィトヒェンは、手鏡を拾ったその日と同じように、魔法の手鏡に問いました。

 

「かがみよかがみ、かがみさん、世界でで一番美しいのは誰?」

「それはもちろん、シュネーヴィトヒェン、あなた様でございます」

「……! あははっ……良い気味!

 私はこの世で誰よりも美しいんだ……っ!」

 

 シュネーヴィトヒェンはそれこそ有頂天になって、自分の脳内でずっと自分より美しい罪で死刑を求刑していたお母さんを、逆転無罪として許してあげようと思いました。それくらい嬉しかったのです。

 

 その日の夕方、シュネーヴィトヒェンはお父さんが町から持って帰ってきたくさったリンゴを食べて死にましたとさ。

 

 

 

 次に目覚めたとき、シュネーヴィトヒェンは、小さな小屋で目覚めました。

 

「ややっ! 白雪姫様が目覚めましたぞっ!」

「やはり蘇生には『不死鳥の羽根』が一番ですなっ!」

「ロストエンパイア中を駆け巡ったかいがありましたぞっ!」

「白雪姫様は美しい!」

「死んでいるより、生きているほうが美しい!」

「白雪ちゃんは可愛いなあ!」

「ばっか可愛いわけないだろ美しいんだよ言葉に気をつけろバーカ!」

 

 自分の寝顔を覗きこんでいた七人の小人が、一斉に騒ぎ出しました。

 シュネーヴィトヒェンには、なにがなにやらわかりません。

 お母さんから名付けられた名前も満足に思い出せませんでした。

 だから彼女は、自分が"白雪姫"なんだなぁ、と漠然と受け入れました。もしもこの世がゲームのようで、ステータス画面が見れるなら、きっと彼女は職業が"白雪姫"で、名前も"白雪姫"になっているでしょうね。

 

「あなたたちは誰……ここはどこ……」

「ここは私達の家ですぞ。見ての通り、小人ですな」

 

 白雪姫の誰何に、七人いる小人の一人が答えました。

 

「何も思い出せない……頭痛い……」

「ああ白雪姫様、おいたわしや……姫様は、王妃様の放った刺客、ロビン・フッドに射殺され、死姦されていたのです。

「そこへ私達が通りかかり、なんとか助けただしたのです」

 

 白雪姫の嘆きに、七人いる小人の二人が答えました。白雪姫には、誰が誰だかさっぱり区別がつかないくらい、七人は同じ姿形でした。

 

「……ロビン・フッド?」

「あいつ絶対頭おかしいよ。死姦は白人に限るってちょー興奮してたもん」

「追っ払うだけで精一杯だったなあ。

 でもあんな好色漢、そのうち女に刺されるだろうさ」

「それよりもまず、あの王妃を何とかしないと」

 

 白雪姫の疑問に、七人いる小人の三人が答えました。

 

「……王妃様って……だれ……?」

「アンドール城の美に狂う王妃」

「狂乱の王が死んで幾星霜、美貌の王妃はこのロストエンパイアに目覚められました」

「王妃は自分より美しいものを許せないお方」

「白雪姫様は王妃より美しく育ったために、ついに殺意を向けられてしまったのです」

 

 白雪姫の問いかけに、七人いる小人の四人が答えました。

 

 王妃様……お母さん?

 違う……役割(キャスト)は変わったんだ……

 私のお母さんはお母さんじゃない。

 継母だよ。

 お母さんは死んだんだ。

 私を生んでからすぐに死んだんだ。

 それで、お父さんはお母さんが死んでからあいつと再婚して……

 あれ? そうだっけ?

 何かが食い違う。

 何かがおかしい。

 ……何がおかしいか、わからない……

 でも関係ない。

 継母さんを殺して、世界で一番美しくならなくちゃ。

 

 白雪姫は数々の疑念を一旦脇に置くと、ベッドから起き上がり、当たり前のように普段着の着替え、七人の小人達にいいました。

 

「そうだったんだ……呆れた……

 もはや生かしてはおけぬ……王妃を殺さなければ」

「当然の決断ですな!」

「我々も応援しますぞ!」

「アイテムを御入用でしたらすぐに手配しますぞ!」

「この『氷結の魔弾』をお使いくだされ!」

「やっちゃえ白雪姫様!」

 

 白雪姫の決意に、七人いる小人の五人が答えました。

 小人の一人は白雪姫に『魔書【氷結の魔弾】』(耐性のない対象を100%氷結させる超強力な魔法)を献上し、小人の一人は白雪姫に『包丁・乙女丸』(即死率80%の超強力な武器)を献上しました。

 

 創造神メアリィ・スーは、この白雪姫のストーリー部分にかなり注力していましたが、遊びの部分はまだあんまり作りこんでいないので、かなりの部分が『赤ずきんの森』のシステムを流用していました。

 

「ありがとう……頑張る」

 

 そうして、白雪姫は七人の小人のサポートを受けて、記憶にないアンドール城なる地を目指して、旅に出ることになりましたとさ。

 

 

 

 一方その頃……

 

 

 

「鏡よ鏡、鏡さん、世界で一番美しいのは誰?」

「私に見えるうちではあなたが一番美しい。

 だが森の中にある、七人の小人が住むところに、白雪姫はまだ元気に生きている。

 白雪姫ほど美しい人は誰もいない」

「――――ッ!!!」

 

 改装されたアンドール城の地下一階、鏡の間。

 魔法の壁掛け鏡の前で、王妃様は奇声をあげていました。

 その美しいかんばせを嫉妬で大いに歪ませて、ありえないと喚き散らしました。

 

 白雪姫は、毒リンゴを食べて死んだはずでした。

 なのにまだ生きているのです。

 

 腰紐で首を絞めても、毒を仕込んだ櫛で頭を刺しても、白雪姫は死にませんでした。

 一体どうすれば彼女を殺しきれるのでしょう?

 ですがちょっと待ってください。

 王妃様は自らの手で三度白雪姫を殺した記憶がありますが、どのようにして事をなしたか覚えていません。あたかも"そういう設定になっている"と脳髄に直接仕込まれたかのように、過程が空っぽなのでした。

 

「森の狩人ロビン・フッド、ここに。

 お呼びですか王妃様」

「今度こそ、今度こそ白雪姫を殺しなさい。

 この鏡の間で白雪姫が死んだことを確認できたら、あなたに寵愛を与えましょう」

「やれやれ、美しすぎるというのも罪なことだね……

 もちろんいいとも。

 むちむち色白美女王妃から愛されるなら、人一人容易く射抜いてみせよう」

 

 王妃様は結局、一番最初に白雪姫を殺した方法を試みることにしました。

 森の狩人ロビン・フッドは鏡の間を出て行き、王妃様は、鏡の間にとどまりました。

 だって、真実のみを語る魔法の鏡の前から決して離れたくありませんからね。

 

 死ね……白雪姫は死ねばいい……

 

 創造神の手で黒く穢された彼女のソウルは、お腹を痛めて産んだ子どもの死を切実に願っていました。産んだときの記憶は改ざんされていますから、王妃様が思い出すことはありませんでしたとさ。きゃひひっ。

 

 

 

 さて、白雪姫の視点に戻ります。

 彼女はかなりサクサクと、雪の森を歩いていました。

 なにせ道中の雑魚敵は包丁・乙女丸でだいたい一撃ですし、即死無効の相手には『氷結の魔弾』による氷結ハメをすればいいですから、苦戦する要素がありませんでした。

 

 雑魚戦? 氷結ハメ?

 はたして童話【白雪姫】とはそのような物語でしたでしょうか?

 もちろん違います。

 ですが創造神に改変された後でした。

 だから、そういう要素があったとしても、どこもおかしくはありませんね?

 

 白雪姫は探索の過程で見つけた装飾品ウィングブーツ(敏捷性が大幅に上昇する超強力な装飾品)と光のタリスマン(すべてのステータスが微上昇し、自然再生力が身につく超強力な装飾品)とを身につけて、彼女の快進撃は続……くかと思われましたが、ぴゅーんと飛んできた弓矢に、足止めを喰らうことになりました。

 

 文字通り『脚撃ち』されてしまって、機敏に動くことができなくなってしまったのです。

 

「これは驚いた。

 王妃様も嫉妬する美少女と聞いていたが、こんなにも美しいとは思わなかった」

 

 白雪姫の前には、美しき森の狩人ロビン・フッドが立ちふさがっていました。()()()()()()()()()()()()()()、その目は驚愕に見開いていました。一発ヤラせろ、を合い言葉に数々の美女の依頼はこなしてきた彼は、その日初めて、受けた依頼を完遂したくないと思いました。

 

「森の狩人……ロビン・フッド……ッ!」

「フッ……名前を知っていただけているようで光栄だ。

 いかにも私はロビン・フッド。

 王妃様たってのお願いでね。

 お嬢さんには死んでもらわねればならない」

 

 その言葉に、白雪姫はますますお母さんに嫉妬しました。手にした包丁・乙女丸を構えて、えいやと斬りかかりましたが、足を痛めてのその突撃を、ロビン・フッドはひょいと回避しました。美しくなければ生きていけない。美しくなければ生きている資格はない。白雪姫の心の奥から、そんな言葉が滲み出てきます。

 

「でもねお嬢さん。

 君を見て気が変わったよ。

 一発ヤラせろ。

 そうしたら見逃してやってもいい」

 

 ロビン・フッドは、正面から下種な台詞を吐きました。

 彼は褐色肌の女はそんなに好みではありませんでしたが、裏を返せば色白のおなごが好みでした。その観点から見て、白雪姫の雪にように白い肌は、新雪を踏みぬきたくなるかのごとく、彼の心を誘惑していたのでした。なんなら新雪親子丼としゃれ込みたいところでしたが、それは高望みというもの。

 気持ちの悪い狩人の笑顔に、白雪姫は顔を歪ませて言いました。

 

「冗談は顔だけにして……

 私よりも美しいかもしれないやつは全員死ね!」

 

 叫びとともに彼女が放った氷結の魔弾がロビン・フッドに襲いました。

 一発、二発と回避しましたが、三発目の魔弾がついにロビン・フッドに当たりました。

 

eingefroren zu sein!(氷 漬 け に な る が い い !)

「ぐっ! 性交渉は決裂か!

 ならばせめて君を美しく射抜いたあとに、その亡骸を楽しむとしようか!」

 

 半身を凍らされたロビン・フッドは、以外と余裕そうでした。軽くもがけばこの程度の状態異常、容易く取り除くことができると思ったのでしょう。ですが致命的な隙でした。彼が自由に動けるようになったその時には、ロビン・フッドの美しさに嫉妬した白雪姫の包丁・乙女丸が、彼を補足していたのです。

 

 ズブリ! 白雪姫は白無垢乙女を大勢食い散らかした大股ロビンフッドを即死させてしまいました。ロビンよぉどうしてお前はそう、即死に堪え性がねえんだ。

 

「おッぐぇ……おぉぉッ……」

「醜い死に顔……よく見たら全然美しくない……私の勝ち……ふふっ」

 

 醜い顔で死んだロビン・フッドを見て、白雪姫は満足しました。森の狩人の死骸からは、名状しがたい青白い粒子のようなものが噴き出して、白雪姫に吸い込まれていきました。その血肉や魂は、白雪姫の礎となりました。

 

「それにしても……ああ……魔法の手鏡が欲しい……」

 

 白雪姫はいつもの習慣で、手鏡に向かって世界で一番美しい者は何者かと問いかけたくなりました。

 しかしそれは敵いません。

 今手元にある手鏡は『帰還の手鏡』といって、七人の小人がいる拠点に帰るためだけにしか使えないものなのです。

 

 ともあれ白雪姫は雪の森を超え、忘却の街を超え、不自然な位置にある鏡に入り込むと、そこは粉雪の舞うアンドール城の庭でした。メタ的なことを言えば、無印ブラックソウルでいうところの『冬の贈り物』を入手する場所です。

 

 白雪姫はアンドール城を仰ぎ見て、最終決戦の時は近いと感じました。

 

 少しでも力を増そうと、白雪姫はアンドール城の庭にいる雑魚敵を狩りました。敵はいずれも強敵ばかりでしたが、即死耐性がないようなので、包丁・乙女丸を振り回せば楽勝でした。そうして幾らかレベルアップを図ると、城門前の篝火で休みながら、道中で手に入ったさまざまな色の木の実をモッキュモッキュと食べました。

 

 その木の実は、食べると各種ステータスが上昇するすごい木の実でした。

 前作からの使い回しで、在庫処分品でした。

 白雪姫は赤い色の木の実は、くさったリンゴのことを思い出してしまうので、決して食べませんでした。

 

 一服を終え、白雪姫はアンドール城を目指しました。

 城の出入り口には、二人の騎士が待ち構えていました。

 角の生えた兎の騎士と、剛毛の生えた亀の騎士でした。

 

「ヒヒヒッ……。俺は兎騎士、ルミラージだ」

「はっはっはっ。拙者は亀騎士、アダマンですな」

「「ここを通りたければ我々を殺してからにしろ」」

「と、言いたいところだが」

「拙者らはもう王妃にはついていけないのですな」

「ここは通してやるから、王妃様を殺しちまえよ」

「然り。暴虐邪知なる者は、いつか討たれねばなりますまい」

「「どーぞ、どーぞ」」

 

 ……白々しい。と、白雪姫は思いました。

 この醜い二匹の騎士は、どうもどうもと間を通ったら、横合いから殺しにかかるだろうということは、体感するまでもなく感じ取れました。

 だから白雪姫は、素早そうなルミラージに乙女丸を突きつけました。

 

「ほう。この俺に刃向かうつもりか……?

 ならば望みどおり殺してくれるわッ!」

 

 ルミラージは素早い動きで高く飛び上がりました。

 その横合いからアダマンが、パルチザンを手に鋭い『鎧抜き』を放ちました。

 白雪姫はその突きを、危ういところで回避しました。

 

「かわされましたな。どうします兄弟?

 こやつ拙者らに騙されるつもりはないようですぞ?」

「ああ? 決まってんだろ!

 どっちが先に殺すか競争だっ!」

「構いませんぞルミラージ。

 貴殿よ、悪いのだが拙者の為に殺されてくれませんかな?

 くくっ……」

「性根の腐った醜い獣は死ねっ!」

 

 白雪姫は飛び上がったルミラージを無視して、正面でどっしり構えたアダマンに『妖精の燐粉』をかけました。

 

「ぐっ……これは……ぐぅzzz」

「妖精の眠り粉か。っひひ、参ったねどーも」

 

 ルミラージは虚仮脅しの跳躍から着地して、ダマシの陽動が失敗したことを悟ると、細く鋭い騎士の剣、レイピアをひゅんひゅん振り回し、白雪姫にけん制しました。

 

 二対一はつかの間、一対一になりました。

 

 ルミラージは次にバックラーを構え、素早い動きから一転して慎重に間合いを計り始めました。眠ったアダマンが起きるまでのらりくらりと待つつもりでしょう。対して白雪姫は『白くべたつく何か』を飲み込むと、その魔力を大幅に増幅し、ルミラージに向かって『ソウルの太矢連射』を放ちました。

 

「なんだとぉー!?」

 

 彼女が手にした包丁を『パリィ』して致命の一撃を狙っていたルミラージは、まさかの大技に完全に虚を突かれました。容赦なき青白の極太四連打が、吸い込まれるようにしてルミラージへとボコボコに撃ち込まれまれます。

 

「クソったれ……っ」

 

 ルミラージは死にました。

 白雪姫は次に眠っているアダマンに近づき、手にした包丁で『メッタ刺し』にしました。

 

「がはっ……。

 貴殿も狂人であったか……」

 

 メッタ刺しの途中に目覚めたアダマンは、そんな言葉を遺して死にました。たとえ元々がなんであれ、いずれも敗者の戯言です。

 

 二人の死骸からは、名状しがたい青白い粒子のようなものが噴き出して、白雪姫に吸い込まれていきました。二人の血肉や魂は、白雪姫の礎となりました。

 

 でも大丈夫! コアのほうは無事だからね! どうでもいい外殻の上澄み部分だけが相手に吸い取られちゃってるだけで、存在の核はボクがちゃああんと回収してるから!

 

 だから故の知らぬどうでもいいソウルがたくさん必要だったんですね(メガトン構文)

 

 それはともあれ白雪姫は、アンドール城に入りました。

 場内はもうボロボロで、けれど誰もいませんでした。

 白雪姫は頭が覚えていなくともソウルが覚えている最短ルートで鏡の間に行こうとしましたが、途中でビクッとして足を止めました。

 通路と部屋の境目には、ピアノ線が張ってあり、通ると体が切断されて死にそうだったのです。

 これは危ないと思った白雪姫は、大回りする別のルートから行きました。

 

 こうして白雪姫は、毒のリンゴから蘇り、自分を殺しに来る猟師を乗り越え、自分を騙しに来るものたちを踏み超え、鏡の間にたどり着きました。原作の影も形もないですが、けれど原作でおきた数々の悲劇を彼女は自力で突破したのです。

 

 それは二次創作の結果に他ならない。

 

 白雪姫は鏡の間にたどり着きました。そこには、雪よりもなお白く、血の赤さよりなお紅く、漆黒のように吸い込まれそうな黒髪の、アンドール城の王妃という役割(キャスト)が割り振られた者が待ち構えていました。

 白雪姫は、包丁・乙女丸を構えて、いつでも準備万端です。

 

「お母さん……」

「あの日を覚えている? 白雪姫。

 あなたが勝手に腐ったリンゴを食べて勝手に死んだ日……

 本当に、清々したわ」

「――ッ!?」

「だってあなた、どんどん私よりキレイになってしまうんだもの。

 村の皆だって、いっつも私に鼻の下を伸ばしてたのに、どんどんあなたのことばっかり話すようになったわ。私に似て将来は……なんてくだらない。私より美しい者は、この世に存在してはならないのよッ!」

 

 彼女の言葉は本心でしょうか?

 記憶改ざんされた結果でしょうか?

 それは創造神メアリィ・スーにしかわかりません。

 少なくとも彼女は、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 それだけは間違いありません。

 

「私はこの世で最も強く、そして誰よりも美しい。

 だから……」

「王妃さま、確かに私に見えるうちではあなたが一番強く、美しい。

 でもこの部屋の階段の下にいる、白雪姫は元気に生きている。

 白雪姫ほど美しい人は誰もいない」

「黙れえええぇぇぇええええええ! 私の方が美しいに決まっているでしょおおおおおがああぁぁぁぁあああああぁぁぁあああぁぁあぁあぁあぁああぁぁあああああ!!!」

 

 そんな鏡の声を聞いて、王妃様は絶叫しました。

 白雪姫は、そこに魔法の鏡があるのかと興奮しました。

 もう二人は、止まりません。

 白雪姫は階下から駆け出して、王妃様……ステップ・マザーに乙女丸を突き出しました。

 

「甘いわね」

 

 ステップ・マザーはどこからか凍てつく盾をとりだすと、乙女丸を鮮やかにはじいてしまいました。

 白雪姫のその手から、乙女丸が零れ落ちてしまいました。

 盾を持たないステップ・マザーのもう片手に、凍れる黒き虚ろの刃を呼び出しました。

 ステップ・マザーは白雪姫を殺すために、ここで超強力な魔法を編み出していた……という設定です。

 ともあれ、隙だらけになってしまった白雪姫が、そんな名前からしてヤバそうな武器の致命攻撃を受けてしまえば、絶命は避けられません。

 

「白雪姫様、危ない!」

 

 そのときです。

 ドンと彼女を突き飛ばして、七人の小人のうちの一人が、身代わりになりました。

 

「ええい! 邪魔をするな!」

「ぬわーっ!」

 

 ステップ・マザーは七人の小人を撫で斬り捨ててしまいました。

 白雪姫は義憤を覚えませんでしたが、その瞬間を隙とみて氷結の魔弾を撃ちました。

 けれどその弾丸は、凍てつく盾に受け止められてしまいます。

 

「その程度?」

 

 ステップ・マザーはつかつかと、白雪姫に歩み寄ります。

 そこには絶対的な優位性を感じる、傲慢にも似た余裕がありました。

 片や完全武装の王妃様。

 片や手から武器を失った白雪姫。

 優劣は明らかです。

 

 それから白雪姫は、ステップ・マザーの猛攻から、必死に逃げ回りました。

 どこからか駆けつけてきた七人だった小人たちが、次々と身代わりになりました。

 どうすれば、と考えて、白雪姫は恥をしのんで骨を断つことを思いつきました。

 

「お母さんは殺す……っ!

 私より強くて美しい罪で死刑!」

「っは。ついに私の方が美しいと認めたわね?

 あー負け犬の遠吠えは気分が良いわぁ~♪

 ……よく言えたわねぇ偉いねえ?

 ご褒美にここで殺してあげる!」

 

 言葉をかわしている間に、白雪姫はどこからか"マシンガン"を取り出しました。

 それは雪の森を探索中に手に入れた、包丁とは別次元の、超強力な武器でした。

 白雪姫の武器は、包丁・乙女丸だけではなかったのです。

 

「はあ? なにそれ?」

「死ね」

 

 ドパパパパパ、と機関銃は弾をばら撒きました。

 ステップ・マザーはさっと盾を構えましたが、あまりに連続した衝撃に、盾を構え続けることができず、スタミナをなくして隙を晒してしまいました。

 白雪姫はつぎにアンドール城の庭に雑に置いてあった"肉断ち大斧"を取り出して『ギガスギロチン』を大上段から振り下ろしました。ぐちゃりという生々しい音が、ステップ・マザーから飛び出ました。

 今度はこの城内で手に入れた、創造神メアリィ・スーの強力な祝福がほどこされた上質の武器"アンドールの剣"を取り出して『オーラブレード』と『レディアントブレード』の二連撃を叩きこみました。光の剣閃がステップ・マザーをズタズタにしました。

 それから狩人ロビン・フッドの死体から奪ったハンターボウを取り出して『トリプルショット』を撃ち込みました。致死を求める三連射は、ステップ・マザーの頭と首と心臓を、間違いなくとらえました。

 トドメとばかりに白雪姫は『ソウルの太矢連射』を撃ち込みました。

 もう止めて! ステップ・マザーのライフはとっくにゼロよ!

 

「……死んでる……あはっ……死んだよ……!

 美しいやつ……死んでる……!

 この世界は私の夢だ……おまえなんかのものじゃない……っ!」

 

 こうして魔姫・白雪姫は、アンドール城の主の地位を簒奪し、その名を白雪城と改名しましたとさ。めでたしめでたし。

 

 

 

「――――ひーっ、ひーっ……ふぅ。あー面白かったー♪

 武器スキル制は良い感じ。このまま採用しよっと。

 でも戦闘中の武器交換は強すぎだからダメにしてぇ。

 スタミナ制度はなんかメンドくさそうだからナシにしよっと。

『ほうちょう』は強すぎるから禁止。

『凍れる黒き虚ろの刃』もきーんし。

 ソウルの太矢連射は……入手方法を厳しくすればいいかなー。

 新しい武器どうしよっかなー。失敗作の倍以上にはしたいんだけど」

 

 創造神メアリィ・スーは、自分の作品を激しく自画自賛すると、さっそく"遊び"の部分を調整し始めました。筋書きには直接影響することはないですが"主人公"に楽しんでもらうためには、妥協できない部分です。

 世界の法則をなんかこう、良い感じにわちゃわちゃっと弄くると、ひとまず満足しましたとさ。

 

 

 

 

 




 
 第三回、なぜなにロストエンパイア創造記

Q1.三人家族はどうしてこうなった?
A1.リンゴ関連の童話探してたら【くさったリンゴ】を知る⇒海外版【わらしべ長者】やん! と思いつつ採用⇒神話系の側面も持ってたので改変込みでおいしいとこどり⇒両親は娘さんが死んで絶望してるところをロストエンパイアにご招待され改変される。
 お父さんは差した童話を差し替えて【王様の耳はロバの耳】の王様役に、奥さんは実母なのに継母に改変され殺される王妃役に、死んだ娘さんは【白雪姫】に改変されました。
 内心の自由はないのか! ちょっとだけ想像力が豊かなだけの一般人がここまでされる謂れはない! 早く彼女を愛さなければ。

Q2.ロビン・フッドと兎と亀おるやん! ナンデ?
A2.ロビン・フッドは猟師役代わりに。ブラソ2で「褐色肌は~」というような台詞があったし、童話【白雪姫】の配役へと良い感じに収まった感。作者の脳内考察によると、茸村でハンターボウ持ってる死体は森の狩人アレンではないかと思っているがこの作品とは特に関係ない。

 兎と亀は無印ブラソでアンドール城がどうのこうのという台詞がありましたし、原作白雪姫で何度も騙されて殺される描写があるので、騙し描写の代わりということで採用。でぇじょうぶだ。メアリィ・スー様が生きておられれば何度でも蘇れる。


2020/1/29改定
シンデレラの名前に誤字が混ざってたので修正
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