ロストエンパイア創造記   作:メアリィ・スーザン・ふ美雄

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 難産回。


童話re:IF【紅ずきんは紅の惨劇の夢を見るか?】後編

 

 

 むかしむかしあるところに、どんなえっちなことをしても許される、夢の街がありました。

 認識改変チートのお手本みたいなその街は、淫腐街と呼ばれていました。

 性的に腐り果てるほどに淫らであり続けられる場所でした。

 一般の人々が知る事無く不浄なる性交渉が大々的に行われている冒涜的な場所ともいえました。

 

 この街のことを夢見た人たちは、そのうちだんだん寝ても覚めてもドスケベのことばかり考えてしまうようになって、抜け出せなくなってしまうという仕掛けです。

 

 さて、紅ずきんは、そんな世界の空気なんてまるで読まずに、夢魔のお姉さんにつれられてやってきました。街につくと夢魔はニヤリと笑い、ひらひらと手を振って、

 

「それじゃ、がんばってね~♪」

 

 とだけ言って別れ、自分のハンティングに行きましたとさ。

 

 

 

 一人になった紅ずきんの元へ、全身モザイク状のおじさんたちが何人も何人もやってきました。人体には本来存在しない部位にある未知の突起物Xが、モザイクの向こう側で脈動していました。存在自体が冒涜的ですから、とても見れたものではありません。それどころか、この街にいる人たちの姿はたいてい紅ずきんにはモザイク状に見えました。著しく性的感情を刺激する行動描写に該当してしまいますから、お見せすることはできません。

 

「お嬢ちゃん、見ない顔だね」

「こんなちっちゃいのにえっちな夢みちゃってぇ……教育的指導が必要そうだなぁ」

「おじさんたちと一緒にリンカーン・センターにトリップ&エキサイト! イこう!」

 

「あ、すみません。私、こういうものなんですけど」

 

 紅ずきんは、血の染み込んだほうちょうを出して、プライバシー配慮のため声色がおかしくなっているモザイクおじさんたちに見せつけました。

 モザイクおじさんたちは後ずさりしました。

 そういう性癖は持っていなかったからです。

 紅ずきんは言いました。

 

「私に殺されたい人はいますか?」

「いやーおじさん、グロはちょっと……」

「私に殺されたさそうな人はどこにいそうですか?」

「……少なくとも大通りにはいないと思うよ」

 

 しりごみするモザイクおじさんたちは、完全に腰が引けていました。

 そのとき、どこからか「狼がでたぞおおおぉぉぉおおお!」という叫び声が聞こえました。

 

「あっ! 狼少年だ! 

 彼は淫腐街の名物少年だよ。

 あの声の出所の方に君の性癖にあう人がいるかもしれないね?」

「そうですか。ありがとうございます」

 

 声の主に心当たりのあったモザイクおじさんがそう言うと、紅ずきんは礼儀正しくみんなに頭を下げて、狼が出たと騒ぐ声が聞こえる、裏通りのほうに行きました。その声色は、紅ずきんにはプライバシー保護のため音声を変えているようには聞こえませんでした。

 

 その相手になら、なにかといろいろ聞けそうです。

 

 紅ずきんが裏通りに入ると、ロリータレイプ願望を抱く糞のような変態モザイクが襲いかかってきました。

 紅ずきんは素早く変態の背後に回って後ろからほうちょうで刺しました。

 手馴れた犯行でした。

 

「があああ! 痛っイイ! 死ぬぅぅぅうううう」

「うるさいわね。

 挿入()して良いのは刺される覚悟がある奴だけよ」

 

 無表情から繰り出される、あまりにも堂々としたその台詞に、レイプ魔はたちまち退散しました。刺されたレイプ魔から、名状しがたい青白い粒子のようなものが噴き出すと、たちまち紅ずきんに吸い込まれていきました。

 

 紅ずきんはレイプ魔を道具袋に仕舞うと、また裏通りを進みました。

 人一人入れれば相応に膨らむでしょうに、道具袋はレイプ魔を呑み込んでも醜く膨れ上がったりしませんでした。

 

 そうこうしているうちに狼が来たという叫び声は聞こえなくなりましたが、しばらく進むと、建物の一つから狼のポロが食事中に出す咀嚼音によく似た音が聞こえてきましたから、紅ずきんがその建物の出入り口へ行きました。

 扉をノックをすると、咀嚼音は止みました。

 

「すみません、こんにちわ」

「ヒッ……あ、ああ、だ、だれですか……」

「紅ずきんというものですけど。

 中に入っていいですか?」

「えっ、あっ、ちょっ……待って……」

 

 紅ずきんは、待ちました。

 待っている間に、中ではごそごそ音がして、鍵を開ける音もしました。

 紅ずきんはまだまだ待っていると、内側から扉が開きました。

 そこにはいかにも感じやすそうな男の子が、おどおどした様子で立っていました。

 

「な、なな、なんですかぁ……?」

「狼が出たって聞こえたから、気になって」

「えっ、あっ、あああっ、そう、そうだッ!

 狼が来たんだ! 狼が来たんだよっ!

 それで、あの人が、あの人が襲われてッ!?」

 

 男の子が指差す方向を見ると、全身に噛み傷のあるおじさんがいました。

 おじさんはピクリとも動かず死んだように眠っていました。

 男の子の口元は血に汚れていました。

 

「ぼ、ぼくじゃない……ぼくじゃない! 

 狼だ! 狼がやったんだ!

 急に居なくなったけど……さっきまでホントに狼が居たんだよっ!」

「あなたがそう言うならそうなんでしょうね。

 その死体、持って帰っていいですか?」

「狼が……えっ? いま、なんて?」

「私の友達に狼がいるんですけど、その子に食べさせてあげようと思って」

 

 紅ずきんは終始無表情で、でも相手の顔をちゃんと見つめて、誠心誠意頼みました。

 狼少年はというと、そんなことを言われたのは初めてなものですから、少しもじもじした後、一言どうぞと言いました。

 

 紅ずきんは「ありがとう」と短く言って、そのおじさんを道具袋に仕舞いました。

 

「もしまた狼さんが来たら……いえ、いいわ。

 見かけたら、直接言うから」

「えっ? あ、うん……」

「ああ、それと、もうひとつ聞きたいことがあるのだけれど」

「……なに?」

 

「あなたはどうしてそんなに口元が血だらけなの?」

「──っ!」

 

 果たして狼少年は、腕で口元をごしごし擦って、紅ずきんを建物から追い出しました。それで、バタンと扉を閉じると、鍵をかけてしまいました。彼女は選ぶ言葉を間違えました。きっともう今日は会話にならないでしょう。紅ずきんは肩をすくめると、帰り道になりそうな鏡を探しに街の中を歩きました。鏡に入れば、自宅に帰れる。常識です。え? 違う? でも、紅ずきんの常識はそうされていますから、紅ずきんにとっては、そういうことになるのです。

 

 裏通りで繰り広げられるモザイク状の痴態やプライバシー保護のための罅割れた嬌声の数々を、紅ずきんは雨の中お盛んなことで、と軽く流して通りすぎました。紅ずきんの視界には、淫腐街でも雨が降っていました。

 

 途中、何人かが紅ずきんに向かって、首を絞めて殺してほしい、なんて頼むものですから、紅ずきんは3000ソウルくれたら良いですよ? と言いました。その様はまるで夜鷹の売春婦のようでした。

 

 はて、ソウルってなんだっけか……ふと紅ずきんは、何気なく口にした単語に疑問を覚えました。

 

 知るはずのない単語でした。

 認識が改変されたがゆえの単語でした。

 お金と言う概念をソウルというのだと、書き換えられていたのです。

 

 ともあれ、なんとかかんとか鏡を見つけた紅ずきんは、鏡に入って自宅へと帰りました。

 狩ってきた餌を台所に置いて、一食分を切り分けて、それからポロにあげました。

 ご飯の前に、ポロは紅ずきんの臭いを嗅ぎました。

 

「くんくん……狼と会ったの? 僕以外の奴と」

「会ってないけど」

「でも、狼の臭いがする。なんか、やだ」

「別の狼さんの食べ残しらしいから、その臭いが移ったかも」

「そんなの食べたくない。やだやだやだっ!」

「わがまま言わない。ご飯抜きにするわよ」

「それもやだ。なら食べる」

「うん、食べて」

 

 紅ずきんはポロの背中を優しく撫でてあげました。

 ポロは気持ち良さそうに身を震えさせながら、お肉をもぐもぐ食べました。

 ポロの声は、普通に聞こえました。

 紅ずきんは少しずつ、言語化しづらい何かが分かりかけてきました。

 

 それから紅ずきんは、家の前の川で身を清めて、その日はもう寝ました。ほうちょうを盗んでからまた返しに来た犯人は突き止められませんでした。彼女は悪夢に眠り、悪夢に目覚め、餌狩りの雨夜は終わりませんでしたとさ。

 

 

 

 そんな生活がしばらく続きました。

 紅ずきんは情報を集めようと淫腐街をうろついて、たまに狼少年のところへ行ってお肉を貰って、襲ってくる変態を刺し殺して糊口を凌ぎました。ポロはよその狼に紅ずきんが食べられるかもしれないストレスが溜まってきますし、狼少年は自分の言うことを信じてくれる優しい女の子に心惹かれ始めていましたが、紅ずきんはいままでどおりでした。

 

 そろそろかな。

 と、妖精の皮を被ったメアリィ・スーは思いました。あとは狼少年が、紅ずきんの気を引くために嘘をつけば、それが引き金となって様々な愉悦成分が滲み出てくるでしょう。

 

 紅ずきんは顔色を変えるでしょうか?

 それともピクリとも動かないでしょうか?

 メアリィはだらしなく嗤い、わくわくどきどきしながら事態が動くのを待ちました。

 

 特定の状況下に特定のキャラクターを置いて、彼らが勝手に動きだせば、そこにはきっと素敵な童話ができあがるのですから。

 

 そんなメアリィの思惑は、横合いからぶっ壊されてしまいました。

 ある日紅ずきんは、淫腐街の教会である、淫魔教会へと行ったのです。

 その場所は、神父さんとのプレイやシスターさんとのプレイがあるばかりの、この街ではありふれたドスケベ施設に過ぎません。

 

 ですが紅ずきんは、今日はこの教会に何かあると思いました。

 理由は勘です。

 勘がここに何かあると告げていました。

 

 果たして大聖堂には、偉大なる創造神への感謝の祈りを捧げ、深く信仰を布教するドスケベシスター服を着た淫魔の権威が説教していました。

 

「創造神メアリィ・スー様は素晴らしい! 個々人で異なるドスケベ願望を一つの世界観にまとめて統合し、人種差別なく、性的嗜好差別なく、欲望のままに振る舞うことをお許しになられました! 

 かつて旧神は言いました! 産めよ増えよ地に満ちよと! やってやろうじゃありませんか! ぱこぱこぽこぽこ増えようじゃありませんか! 現実でも、やっちゃいましょう! でも男同士や女同士が非生産的という愚かな意見に耳を貸さないでください! それもまたヨシです! 最終的にアソコが気持ちよければそれでいいんです! どうぞご自由にまぐわってください! 

 この考えに賛同するかたはどうぞメアリィ・スー教へご入信ください!

 メアリィ・スー教は、いつでも新規加入者を募集していますよー!」

 

 メアリィは、なにやってんだとキレそうになりました。狼少年と紅ずきんと狼のポロのすっぱい葡萄が三角関係になって、最後にはぐっちゃんぐっちゃんに潰れたトマトになるような、三者三様に騙し騙される爛れた展開がすぐそこに待っているというのに、何もかもが台無しです。

 

 これだから興が乗ったところに水を注す狂信者は使えない! 

 

 ところで紅ずきんは、その淫魔の声が普通に聞こえましたから、彼女に歩み寄って聞きました。

 

「こんにちわ。ちょっといいですか?」

「あら、入信希望ですか?」

「どうして淫魔なのに服を着ているの?」

「それは、神様にお祈りするための仮装だからですよ」

「どうしてそんなに目を見開いてるの?」

「それは、私達を見守ってくださっている神様を見つけるためですよ」

「どうしてそんなに大口を叩いているの?」

「これは大口でもなんでもなく、事実だからですよ」

「もうひとつだけ聞いてもいいですか?」

「入信希望ですか? いいですよ」

 

 次に訪れる瞬間を、淫魔の目は捉えられませんでした。

 空を自由に飛んでいないのに、おそらがぐるぐるまわるのです。

 廻る廻る視界の先には、首を無くした自分の体がありました。

 

「例えばこんな風に首を刎ねたとして……神とやらは助けてくれますか?」

 

 紅ずきんは、迫真の無表情で、宙舞う首へと問いました。

 

「あた……あたりまえですっ! 

 神よ! 不届き者です! かの者に裁きを!

 いあ! いあ! めありい!」

 

 神様は助けてくれませんでした。

 またしても紅ずきんが想定とは異なるエンディングにたどり着いてしまったメアリィは、腹いせに紅ずきんがベッドに入ったら毎回おじいさんのことを回想するように改変しましたとさ。

 

 

 

 きっと後日、夢魔の代表は馬鹿な真似をした淫魔の責任をとらされて、それはもうかわいそうなことになるでしょうね。

 




 
 書いててふと思ったこと。

『いかにも感じやすそうな男の子』ってどんな感じですかね?
 ヘンゼル君タイプのショタか、ビル君タイプの男の娘か……まあでも、狼少年がフレンズ化したらきっと破壊力高いはず(SEN+30)
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