ロストエンパイア創造記   作:メアリィ・スーザン・ふ美雄

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 本日三本目。

 


童話【星の王子様】

「位置が、来るっ!

 よーし童話【星の王子様】っ! キミに決めたっ!」

 

 創造神メアリィ・スーは、次元の狭間で召喚魔道書を開き何事かを唱えました。すると、割と地球に近い宇宙のどこかが煌いて、名状しがたい流線型を描くシルバーのようなものを呼び出しました。

 

 

 

 むかしむかし、銀河の彼方に心優しい王子様がいました。彼はたった一つの友達である薔薇を誰よりも輝かせる為に、他の惑星に薔薇があれば星ごと滅ぼしてあげようと、小隕石となって夜空を旅していました。

 

 王様の星、うぬぼれやの星、酔っ払いの星、ビジネスマンの星、点灯夫の星、地理学者の星。他にも他にもいろいろと。星の王子様は、薔薇のある惑星にはメテオタックルを仕掛けて滅ぼしにかかり、薔薇のない惑星には普通に降り立って様々な話を聞きました。やがれ彼は人々の夢と神々への祈りが形作る箱庭世界、神話群からなる地球にやってきました。

 

 宇宙(そら)から見た地球は星の王子様の母星とは比べものにならないほど大きく、数え切れないほどの薔薇がありました。それを見た星の王子様は、この箱庭世界は滅ぼそうと決めました。ですが、ちいさな隕石である自分ひとりでは、滅ぼしきれそうにありません。

 

 星の王子様は、なにかないかと夜空に視界を巡らせて、遠からず地球の近くに流星群が通りかかることに気付きました。あわよくばと思った星の王子様は、流星群のほうに行きました。

 

「こいつ……うごくぞっ!」

 

 なんかこう、いい感じにわちゃわちゃっとやって、星の王子様は流星群を操ることに成功しました。そして星の王子様は、地球に流星群が通り過ぎる少し前に進路を変えて、箱庭世界にメテオタックルを仕掛けました。先行する流星群が天から降り注ぎ世界を滅ぼさんとしました。

 

 箱庭世界に顕現する神々はそれぞれ、自らの現能を振り絞って流星群を食い止めました。けれど何故か予言の一つもされていない、あまりにも突然おこった出来事ですから、神々の多くは隕石が頭に当たって次々と死んでいきました。

 

 もちろん流星群如きでは死なない、あるいはそもそも不死性を持つ神もいるのですが、汚いことにメアリィ・スーは、箱庭世界の法則を極僅かに弄り、無敵チートON/OFF機能を勝手に創造して、スイッチを切り替えていました。そうして、たかが隕石如きで死ぬわけないとたかをくくっていた連中は死んでしまいました。これはひどい。

 

 神々が食い止めきれない隕石は、地上を荒廃させました。海に落ちた隕石は津波を生み出し、沿岸部はおおよそ壊滅しました。でぇじょうぶだ。起きて寝直したら元に戻る。人が悪夢から覚めてすべては元に戻るというような夢を見られれば。

 

 さて、大本命である星の王子様自身のメテオタックルはというと、脳裏に駆け巡る閃きに従い、北風に乗って飛んできた北風の騎士ボレアスに止められました。

 

「キサマ! 何故こんなものを箱庭世界に落とす!

 こんなもの落として氷河期になったら人が寝るとき、なんかこう寒気を感じて夢見ようとしなくなっちゃうだろ!」

「きらきら。煌めく夜空が見えるかい?

 あの中の一つに、僕の友達の薔薇がいる。

 それにくらべてこの世界ときたら、あまりにも薔薇が多すぎる。

 だから滅ぼす。それだけだよ?」

「戯言を! このエゴイストの狂人め!」

 

 やがて北風の騎士ボレアスはメテオタックルに耐え切れず吹っ飛ばされました。

 

YOU DIED

 

 次に太陽の騎士アポロンが、背面からプロミネンスブースターを噴出しながら飛んできました。コロナ輝く太陽の騎士の姿に、星の王子様は目が眩みました。

 

「眩しぃぃぃっ!」

「ふざけたことをぬかしてくれたな!

 たかが石ころ一つ!

 俺の力で押し出してやる!」

「だいじょうぶ? 煌めきが足りないよ?

 星に向かって笑ってみせてよ。

 そうすれば、星の一つ一つが君に向かって微笑むはずだよ」

 

 やがて太陽の騎士アポロンはメテオタックルに耐え切れず吹っ飛ばされました。

 

YOU DIED

 

 バイト乙。二人の騎士は、その現能の大半を封じられて、本当の実力を発揮できなかったのです。

 

 ああ、もう駄目か。

 この箱庭世界はおしまいだ。

 

 そう思われたつぎの瞬間、再び北風の騎士ボレアスが飛んできました。義兄弟の契りをかわしていた北風と太陽は、どちらかがYOU DIEDして復元待ちの期間にはいったとしても、どちらかが生きていれば、すぐさま復活できる性質になっていたのでした。

 

「北風の騎士の名は伊達じゃない!」

「また来た? ええい、何が起こっているんだ」

「俺は絶対に死なん! この世をお前の思い通りになどさせるものかっ!」

 

 流星群が降り注ぎ、地上に滅びの風が吹く最中、上手いこと立ち回り生き残っていた東風と南風と西風は、死風に抗うことを諦め、せめて異変の元凶を追い払うため次々と北風の騎士に助力しました。また、神格の低い者たちも、その風に乗って助太刀しました。自然の摂理と重力に逆らうその風は、徐々に星の王子様を押し返しました。

 

「やめてくれ皆、こんな事に付き合う必要はない。

 下がれ、来るんじゃない。

 神々が自然の摂理に反すれば死んでしまうんだぞ!

 それもこれだけの数がいっぺんに……息を吹き返すのに、どれだけの祈りと信仰が必要なことか!」

『もう遅い。数多の神々は死んでいる。既に箱庭世界の法則は乱れ始めている』

『ならば我ら三柱の力を束ね、せめてこの世界の明日を守護らん』

『北風よ、太陽よ、後のことは頼んだぞ』

 

 一つ我が身で隕石を押し、二つ友との絆を感じ、三つの風にその背を押され、四つの風が一つになって……北風の騎士ボレアスは、神風の騎士ボレアスへと一時的にパワーアップしました。

 

 再び飛び上がる機会を窺っていた太陽の騎士アポロンは、みなのカムイを一身に受ける相棒へと太陽風を送って、更にその背を後押しました。平等な視点からこの瞬間を描写するならば、彼は神々の背後へと超高温プラズマを放って不意討ちしていました。ですがアポロンの主観ではあくまでも、みなへの助太刀のつもりで太陽風を送り続けました。

 

 数々の神に連なる風圧の力によって、星の王子様は更に押し返されました。しかしそれでも、そこは既に重力の井戸の中。地球の引力にひかれる星の王子様を、押し返しきる事はできません。平等な視点からこの瞬間を描写するならば、神風の騎士は始めに強く当たって後は流れに身を任せていました。ですがボレアスの主観ではあくまでも、全身全霊をかけているつもりで星の王子様を押し返すそぶりを見せていました。

 

「きらきら。結局、遅かれ早かれこんな哀しみだけが広がって、どんな世界も押し潰すんだ。

 だったら勝手に潰れるのと、僕がこうして押し潰すのと、一体何が違うんだい?

 何が違うか、ぜんぜんちっとも分からない。

 北風君って言ったっけ? ちょっと僕に教えてくれよ」

「この馬鹿野郎ぉおおおおおおおおおお!!

 人に迷惑かけちゃいけませんって母星で教わらなかったのか!!

 ウソでもいいから少しは反省しろぉぉぉぉおおおおおおおおおお!!!」

 

 神風の騎士ボレアスは雄たけびをあげて力いっぱい押しました。押したつもりになりました。けれどその背に感じるカムイが、どんどん失われていくのを感じました。やがて強化状態を失って、ただの北風の騎士に戻ってしまうと、引力に招かれるメテオタックルに耐え切れず吹っ飛ばされました。

 

YOU DIED

 

 そのとき、不思議なことが起こりました。

 突如として淡い虹色の光が星の王子様の全身を覆い、光の中に消え去ったのです。

 

「やっばやりすぎた。キャラクターが勝手に動くと大変だねっ♪

 はい童話【星の王子様】お疲れサマー。きみの出番はお終いだよー」

 

 自分だけは無敵チートでうまいこと流星群をやりすごした創造神メアリィ・スーが呟きましたが誰も聞いてませんでした。その手には、時と場合と条件が重なれば、世界を滅ぼしかねない魔獣を呼び出せる、童話の本がありました。

 

 こうして星の王子様のスペースファンタジー童話の幕は閉じました。星の王子様の消息は、一切不明とされています。

 

 現実世界では、世界中の信心深い人が、地球に接近している『しし座流星群』が地表に降り注ぐと思い込み、にわか予言者が世界の破滅を予言しだして大変な騒ぎとなりました。あまりにも皆が同じようなことを言うので、特に信心深くない人もすっかり真に受けて、地下壕を掘ったり、息を止める訓練をしたり、詐欺まがいの怪しい商品が売られたりすることが散見されました。

 

 そういった騒ぎの中には、神は死んだ、などと唱える不届き者まで出る始末でしたが、不思議とそれは咎められませんでした。なんとなく、みんなその言葉は的を得ているような気がしたのです。

 

 結局のところ、現実世界において、しし座流星群が地球に直撃することなどありませんでした。よかったですね。

 

 現実世界のことはともかくとして、そのうち復活した北風の騎士ボレアスは、とある海岸沿いで、一人静かに震えていました。風は凪いでいました。さざなみの音だけが聞こえ、南風も西風も東風も感じられませんでした。太陽の騎士アポロンは、無言で北風の騎士ボレアスの肩を抱き、心細く冷たさに震えるその体を静かに暖め、慰めましたとさ。

 

 

 

 ……しかし、太陽の騎士の心にはしこりのような疑念が残ります。ここ最近、自分達も含めておかしなことばかり起こっている。まさか、事態の裏で手を引く、黒幕のような者がいるのでは? と。

 

 けれどそのたびに心の奥底から『見事な仕事だと感心はするがどこもおかしくはないな』『素晴らしいナイトだすばらしい』というような声が滲み出てきますから、そのうち太陽の騎士はそういうものかと素直に納得しました。太陽の騎士アポロンは、自分が童話の一部として組み込まれていることに、自覚症状はありませんでした。

 

 

 

 






 汚いなメアリィ・スー……流石メアリィ・スーきたない。ナイトをヒキョウ者あつかいするとかあもりにもヒキョウすぎるでしょう? 冒涜的だからやめといたほうがいいと思うぞ(にわかブロント語)

 
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