ロストエンパイア創造記   作:メアリィ・スーザン・ふ美雄

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ネコ一匹目




童話【ネコとキツネ】

 

 

 むかしむかし、とある森で、ネコとキツネが出会いました。

 二人は何かと意気投合して、色々な話をしていました。

 その中で、キツネはこんなことを聞きました。

 

「猫さん、猫さん」

「なんだい狐さん」

「もしいまここに敵が現れたら、君はいったいどうするね?」

 

 するとネコはしおらしくなり、パッと逃げると言いました。

 

「なるほどなるほど。

 三十六計逃げるに如かず。

 それで今まで生き延びてこれたのだから、そいつは一つの立派な特技だ」

「狐さんならどうするの?」

「私には幾つものやりかたがあるから……どれ、ちょっと見ていなさい」

 

 キツネが言い終わらないうちに、どこからか五六ひきの猟犬が、バウワウ吠えて走ってきました。

 ビックリとしたネコは咄嗟に、パッと木の上に逃げました。

 キツネはというと尾を揺らし、ポツりポツりと狐火を浮かべると、迫り来る猟犬たちを、見事に惑わし翻弄し、時には火炎で焼き払い、みんなやっつけてしまいました。

 

「ウワッ猟犬死んだ」

 

 猟犬たちを従えていた狩人は、尋常ならざるキツネの姿に恐れをなして逃げました。

 

「ほらごらん?

 人間だって、勝てないとみるや逃げだすんだ。

ネコさんのパッと逃げる特技は、生半可な兵法よりも、よっぽど賢いわざなのさ」

 

 キツネを置いて逃げてバツが悪いと思っていたネコは、キツネにそう諭されて、逃げ足ばかりなのも悪いことではないのだと、ちょっぴり自信がつきました。

 

「キツネさんは強くて賢いから、実にうらやましいよ。ぼくだって、強くなりたい」

「逃げてもいいのに、強くなりたいの?」

「にゃんにゃんにゃん。

 キツネさん、どうか笑わないで聞いてほしい。

 僕はいつか大きくなったら、騎士様になりたいんだ」

「ほう。それはまた、どうして?」

「騎士様は、強くて、かっこよくて、弱きを助け、強きを挫き、正々堂々対決するし、卑怯卑劣を許さない。西に東に縦横無尽、北に南に隙は無し。雨にも負けず風にも負けず、強い日の光にも負けない。だから僕は、そういう騎士に、いつかはなりたい」

 

 キツネはネコの身の丈に合わぬ夢に、めまいがしてしまいそうでした。

 ヘタに戦うわざを覚えれば、きっとこのネコは過信して、勝てない相手と相対しても、戦ってしまうかもしれません。

 

 逃げるというただ一つの術を迷わず選べば生き残れるかもしれないというのに、できることを増やすことで、選択して決断するという隙が生まれて、やられてしまうかもしれません。

 

 キツネはどう言いくるめてやろうかと考えましたが、あんまりにもネコの目がキラキラしているので、眩しくて眩しくて言い出すことができません。

 そこでキツネはドロンと化けて、ネコの姿になりました。

 

「もしもネコさんが望むなら、私が鍛えてやっても良い。

 ネコさんは逃げることを恥だと思って、自信がなさそうにしているけれど、恥じることはない。逃げなさい。逃げることが誰かを守ることに繋がるような、そういう騎士になりなさい」

 

 ネコは化けたキツネの言葉を聞いて、本物のネコはにゃんと一鳴き、決意を新たにすると、キツネに弟子入りしましたとさ。

 

 

 

 

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