ロストエンパイア創造記 作:メアリィ・スーザン・ふ美雄
本日二話目。
ネコ二匹目。
むかしむかしあるところに、ネコとヒョウが一緒に住んでいました。
ネコはとっても賢くて、ヒョウに向かって色々教えてあげていました。
ヒョウはというと、ネコよりよっぽど力も強いし素早いですから、獲物を狩るのはヒョウが代わりにやっていました。
ある日ネコが言いました。
「人間っていうのは、火というものがあつかえるらしい。
火で肉を煮たり焼いたりするとよっぽど美味しくなるんだって。
ぼくたちもちょっと、火をもらってこようじゃないか」
「そりゃあいい。オレだって、美味しい肉を食べたいな」
そうして二匹はお昼の前に、人間の村に行きました。
人間はヒョウに恐れをなして、みんな閉じ籠ってしまいました。
ネコは白昼堂々と、一軒の家を訪ねました。
「とんとことん。
こんにちわ。
もしよかったら、ぼくらに火をわけてくれないか?
そしたらきっと私もヒョウも、居なくなってしまうから」
戸の向こう側の人間は、ヒョウがいなくなるならと、鍋の下にある竈の火を、即席松明にうつすと、窓からポイッと投げました。
「おお、これこそ火に違いない!
あっつい、あっつい。ありがとう。
それではみなさん、さようなら」
ネコは松明を両手でもって、ヒョウと一緒に喜びました。
ところで鼻はくんくんくん。
ネコとヒョウは、匂いをかぎつつ、そろって窓を覗きました。
窓からは、竈の上で煮込まれる、鍋の美味しそうな匂いが漂ってきます。
「美味そうな匂いだ。食べたいな」
「豹君もそう思うかい? ぼくもそう思ったところだ」
ネコとヒョウは、よそのおうちの前に行き、とんとことんとノックしました。
「こんにちわ。
もしよかったら、おひるご飯を一口、わけてくれないか?
そしたらきっと私もヒョウも、居なくなってしまうから」
戸の向こう側の人間は、ヒョウがいなくなるならと、鍋の中にあるリゾットを、一掬いすると、窓からポイッと投げました。
「おお、これこそお昼ご飯に違いない!
あっつい、あっつい、ありがとう!」
「こら、猫くん、オレにも食わせろ。
あっつい、あっつい、ありがとう!」
「「それではみなさん、さようなら」」
ネコとヒョウは、そろってそう言い、住処に帰っていきました。
でもネコとヒョウは、はじめてリゾットをたべたのです。
そのおいしいことおいしいこと。
二匹はすみかへの帰り道、舌に残ったひりつく味わいを思い思いに語りました。
それで、すみかに松明を持って帰ると、ネコはため息をつきながら言いました。
「ああ、人間はえらいなあ。
火をつかって、あんなおいしいものを煮て、いっつも食べてるんだもの」
「あの舌を焼きつけるような味わい……美味すぎる。
もっと食わせろ。
ネコにはあれが作れんのか?」
「ううんどうだろう。
むつかしそうだ。
それでもいっぺん、やってみよう。
豹くんにも、手伝ってもらうぜ」
「どうすればいい?」
「いつもみたいに、豹くんが美味そうだと思うものを狩ってきてくれ。
ぼくはこの火の使い方を調べるから」
「おう! 分かった!」
ネコとヒョウは二手に分かれて、頭を使う仕事と、獲物を狩る仕事に別れました。
ネコは火が木を燃やしていることや、枯れ草だって燃やせるものだと知りました。
一方ヒョウは、小ぶりな猪を狩りました。
「おうい、猫くん。帰ったぞ」
「お帰り豹くん。さっそくそいつを焼いてみようぜ」
ネコは火を別の木に移して、猪にまるで押し付けるみたいに、じゅうじゅうと焼きました。
でも、加減なんかちっともわからないものですから、真っ黒コゲになりました。
「ぐええ、ぺっぺっ。食えたもんじゃない」
「おい猫くん! 焼いたら美味くなるんじゃないのか!」
「ごめんよ豹くん、どうやらぼくには、火を使いこなせないみたいなんだ」
「そりゃないぜ。きっときみなら、美味くやれると思ったのにさ」
賢いつもりでいたネコは、すっかりしょぼくれてしまいました。
とっても悔しくなってきて、居ても立ってもいられなくなると、ヒョウにこう言いました。
「ぼく、人間の世界に修行してくるぜ。
ちゃんと火を使えるようになったら、君の狩ってきたお肉を焼いて、きっと美味いって言わせるよ。
きみとはしばらく、おわかれだ」
「なんだって!? そんなのいやだ!」
「ヒョウくん、どうか止めないでくれ。
きみだって、山に篭って特訓したりするだろう?
ぼくの頭は山では鍛えられないから、人間の世界に向かうんだ」
「むむむむむ。
きみには口じゃ勝てないや。
そんなに行きたきゃ、いっちまえ」
ネコはヒョウとお別れし、人の世を目指して旅に出ました。
強いつもりでいたヒョウは、すっかりさみしくなってしまいました。
寂しさがこらえきれないものですから、ヒョウは旅人を襲っては、人肉を噛み締めてネコのことを思うようになりましたとさ。