ロストエンパイア創造記   作:メアリィ・スーザン・ふ美雄

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 本日二話目。
 ネコ四匹目。

 


童話【ネコと三人の軍医さん】

 

 

 むかしむかし、腕の良い、ある外科が得意な三人の軍医さんが、世直しの旅をしていました。自分たちの腕前は完璧だと思っている三人は、ほんとうに腕が良いものですから、頭がおかしくなった人たちを、たちまち直してしまいました。でも治してはいませんでした。

 

「やはりロボトミー手術こそがこの狂った世界を救う唯一のオペに違いない」

「間違いない」

「キチガイはどんどん手術しようぜ」

 

 こんな調子で三人は、患者たちを直していきました。でも治してはいませんでした。

 三人が移動がてら、とある宿屋に泊まろうとしました。

 すると宿屋の亭主が言いました。

 

「どこからきなすった。この村に何のようだね」

「私たちは世の中を歩き回って腕試しをしているのです」

「へえ? どんなことがおできになるのか一度見せてくださいよ」

 

 すると軍医の一人は自らの腕を一本切り落としました。

 

「良いですよ。では、こうして切り落とした腕を、明日には繋げて見せましょう」

 

 別の軍医が目玉を片方抉り出しました。

 

「構いません。では、こうして抉り出した目玉を、明日には繋げて見せましょう」

 

 また別の軍医が肺をひとつ取り出しました。

 

「ご覧なさい。こうして取り出した肺を、明日には繋げて見せましょう」

 

 三人は大きなお皿に腕と目玉と肺を置くと、心底ビックリした亭主に向かって差し出しながら言いました。

 

「さあ、明日の朝まで預かってください」

「誰かに奪われないように」

「鍵のかかる戸棚へしっかりとね」

 

 そうして、三人はそれぞれ個室に入っていきました。

 

「……揃いも揃ってイカれてやがる。

 医者の不養生ってのは、いやだねえ」

 

 という亭主の呟きは、さいわい軍医には届きませんでした。手術の腕は嫌というほど分かりましたが、こんなお皿を野晒しには出来ませんから、亭主は奥さんに事の次第を伝えると、台所の戸棚の奥に仕舞ってもらって、キッチリ鍵をかけました。

 

 その日の夜中、亭主の奥さんの不倫相手がこっそり宿屋にやってきました。

 

 男は小腹が空いていたので、奥さんは戸棚の鍵を開けて食べ物を持っていきました。その時ちゃんと鍵をかければ良かったのですが、刺激的な一夜にウキウキしている奥さんは、戸棚に鍵をかけないまま、部屋に帰ってしまいました。

 奥さんが部屋に戻ったあとに、泥棒猫が台所にやってきて、ピョンとペシペシ戸棚を開けて、腕と目玉と肺をペロリ! みんな食べてしまいました。

 

「ウンマイなぁ! 

 こいつはあちきの大好きな味わいにゃ!」

 

 飼いネコは人肉の味の虜になりました。

 しばらく不倫相手と遊んで、鍵をかけ忘れた事に気付いた奥さんが、慌てて戸棚の鍵を確認すると、あんのじょう戸が開いていて、その中には、生々しい血肉の滴る骨が盛り付けられた、冒頭的なお皿を見つけました。

 

「きゃあ! なんてことっ! 腕も目玉も肺もぜんぶ食べられてる!

 明日の朝、私はどうなるの?」

「落ち着けよ」

 

 台所にやってきた不倫相手はいいました。

 それで、奥さんは事の次第を全部伝えると、不倫相手は彼女にいいところを見せたいですから、知恵を絞ってこういいました。

 

「おれがなんとかしてやるよ」

「ほんとう? うれしい……」

 

 それで男は泥棒の猫を見つけると、目玉を抉り出そうとしました。

 

「フシャーっ!」

「ぎゃあっ! 目がっ!」

 

 男は目玉を抉られました。パニックになってめちゃくちゃに腕を振り回しましたが、ネコには隙だらけに見えましたから、男の急所をがぶりと食べると、男は激痛のあまり死にました。

 奥さんはもう、怖くて仕方ないですから、部屋に逃げ帰ってしまいました。

 

「にゃんにゃん。

 人間の生肉ゲットだにゃ」

 

 ネコは男を食べられるだけ食べてしまって、おなかいっぱいになったところで、スタコラサッサと宿屋から逃げていきました。

 

 次の日、三人の軍医は、宿屋の主人に謝られました。

 夜中に泥棒に入られて、片目と片腕と片肺が盗まれてしまったそうです。

 その泥棒はというと、体のあちこちを食べられて死んでいました。

 

「なにか謝るようなことがあるかね?」

 

 軍医の一人は、男の死体から片腕を斬って自分につけながら言いました。

 

「大丈夫だ。問題ないね」

 

 べつの軍医は、男の死体から片目を抉り出し自分につけながら言いました。

 

「このとおり。我々は不可能はないわけだが」

 

 またべつの軍医は、男の死体から片肺をとりだした自分につけながら言いました。

 三人はそれぞれ、見るからに危なそうなクスリを駆使して、別人のパーツを自身に馴染ませました。

 宿屋の主人は心底ビックリして腰を抜かしました。

 彼らは主人を抱き起こし、ではお大事に、といって宿代を払い、宿を出ようとしましたが、ふと奥さんを見かけると、揃って足を止めました。

 

「おや、頭の病気かな?」

「まずはオペをして症状を調べよう」

「頭に孔を開けないとな」

「なっ!? や、やめろ!

 あいつはおかしくなんかない!」

「呼吸、瞳孔、挙動……ああ、失礼。症例をあげれば切がないですが、我々ほどとなると、一目見ればそうとわかるのです」

「主人の奥様は頭がメルヘエンに侵されておられる様子」

「脳味噌がお花畑だ。早く摘出しなければ。

 早めになんとかしないと後が大変ですよ?」

 

 軍医の一人は止める主人を押さえつけ、軍医の一人は暴れる奥さんを押さえつけ、軍医の一人は奥さんにロボトミー手術を処方しました。そのおかげで、あんなにもおかしくなっていた奥さんは、今はもう、大人しい。

 

 ものすごいオペの力で、問題はすっかり直っていました。でも治してはいませんでした。

 

「さあ、世直しの旅を続けよう」

「直そう、直そう、全部やり直そう」

「たった一つの冴えたやりかたを続けよう」

 

 軍医たちの旅は続きますが、ロストエンパイアのほうには来ませんから、彼らのお話はここでおしまい!

 

 

 






 こういう話見るにつけグリム童話っておっかねーなーと改めて思う(雑談)
 精神病棟にいるドクターは多分この童話から来てるんじゃないかと妄想しとります。あいつら童話なんか欠片ひとつ落とさねえけどさ!

 
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