ロストエンパイア創造記   作:メアリィ・スーザン・ふ美雄

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 おっと毎日投稿が途切れちまう。まだセーフ。

 


童話【幸せの蒼い鳥2】

 

 

 登場人物たちに悲劇の祝福あれ。

 メアリィ・スー様の悦びの餌と成れ。

 ……皮肉にもいま私は、創造神様の悦びの餌となろうとしている。

 いまこそ我が身に悲劇の祝福を!

 ああ、不幸は此処に在る!

 

 

 

 

 

「創造主メアリィ・スーよ。我らに慈愛を……

 我らを永久の先の先まで記したまえ……」

 

 むかしとある地下墓地で、人々が祈りを捧げていました。

 現実を改変する現能……すべてを思い通りにできるという加護があるとされる神さまに、深く深く祈っていました。

 

 全知全能の唯一神に祈るかのように、深く深く祈っていました。

 

 その祈りがもしも叶えば、あるいは人生一発逆転も夢ではないのですから、恵まれない者達であればあるほど、より一層真摯に祈っていました。人々は錬金術の至高の創作物から産み出されるものの名前をあやかった『エリクシール』なる街を夢想し、夢を見るたびに祈りました。

 

 時に生贄を捧げ、時に惨劇を繰り広げ、それが神の御心に叶うことだと狂気的な凶行に及びました。

 そうすればいつの日か願いが叶う日が来ると信じて、祈祷し続けているのでした。

 

 街の大聖堂の中央には、何者よりも深く祈る、不幸の蒼い鳥がいました。 

 彼女こそがいまこの街にいる者達にメアリィ・スー教を布教した宣教師でした。

 淫魔と秘密裏に密通し、感化されたものを集めていたのです。

 

 その身は蒼い衣を纏って羽根飾りをたくさん身につける、老婆に変身させていました。

 

「……ああ、その時がきましたか」

 

 と、不意に老婆はいいました。

 祈りの姿勢から立ち上がり、大聖堂の出入り口に振り返ると、そこには黒衣の魔術師装備に身を固めた中年男性が、腕を組んで立っています。

 老婆は男に歩み寄り、静かな声でいいました。

 

「お待ちしておりました」

「蒼き翼の魔女モーリスだな?

 王命により、お前を殺す」

「もし許していただけるなら、穢れ沼の方に向かいませんか?

 ここはあまりにも、裁きとは関係のない人が多いではありませんか」

「……いいだろう」

 

 老婆の頼みを聞き入れて、二人は並んで大聖堂を出ました。

 それから老婆が蒼い鳥に変身すると、穢れ沼のほうに飛んでいきました。

 混沌の魔法使いも、羽根の生えた靴の不思議なちからで飛んでいきました。

 

 穢れ沼は、要らないものを捨てた残骸のゴミクズが溜まって自然とできあがったところで、あたり一面に毒の沼地が広がっていました。まだカエルのお姫様はいません。でもいずれその沼地を住居とするでしょう。それはもう、神様が決めていることなのです。

 

 蒼い鳥は穢れ沼を見下ろし、自分のようなものが死ぬには相応しい場所だと思いました。

 

「魔女狩り殿。

 何故私が殺されるか尋ねても?」

「俺が知るか。

 おおかた、王の不興を買ったんだろう?」

「ええ、まあ。その通り。

 ですが私はね、嫌われ者を買って出なければならないと思ったのです。

 神の……いえ、あなたの言葉に合わせれば王ですか。

 王のためを思っての不忠なのです」

「意味がわからん。

 そもそも、嫌われ役の間違いでは?」

「いいえあっています。

 あのお方が思い描く物語には、嫌われ者が"要"るのです」

 

 蒼い鳥は沼地の浅瀬に降りたちました。

 混沌の魔法使いも一緒に降り立ちました。

 ずっと離れたところでは、汚泥に塗れた白鳥が、赤い霊体を追い立てていました。

 ここにも悪夢霊がいるようです。

 汚泥に塗れた白鳥が、蒼い鳥を見かけると、猛禽類のような目をより一層細め、手にした銃を構えて撃ちました。

 

「アーマーブレス」

 

 刹那、混沌の魔法使いが与えた守りの祝福が、蒼い鳥の身を銃撃から身を守りました。

 なんと淀みない詠唱でしょうか。

 芸術的な腕前です。

 男は汚泥に塗れた白鳥をにらむと、大きな声で言いました。

 

「俺の獲物に手を出すな!」

「……」

 

 汚泥に塗れた白鳥は、無言で二人から視線を逸らすと、毒の沼地を這いずって、また赤い霊体を狙い始めました。

 混沌の魔法使いは、蒼い鳥に向き直り、手にした『魔術師の杖』を構えます。

 

「お前……言い残したいことがありそうだな」

「死ぬのはこわくないのです。

 元々、死んでいなかっただけで、生きているとはいえない有様でしたので」

「…………」

「あのお方に見捨てられ、ゴミクズのように死んでも構いません。

 私の捧げる信仰と、あのお方が周囲に求める在り方が、絶対に噛み合わないことくらい、最初から分かっていましたからね」

「…………」

「でもあのお方が、忘却の深遠に落ちていくのだけは嫌だ!

 想像もしたくない!

 何者からも忘れさられ!

 そこに居たのにまるで居ないかのような扱われ!

 誰からも相手にされなくなる……そんな未来が訪れて良い訳がない!

 だから私は布教した!

 誰でもいい!

 誰かの心に残るようにと!

 あのお方の存在が、流星のような刹那の煌きで消えていいはずがないのです!」

 

 混沌の魔法使いは、蒼い鳥のたわごとを適当に聞き流していました。

 口の内側で詠唱を唱える時間だけ得られれば十分だったのです。

 その詠唱の発動を遅延発動させ、最期に一言、言いました。

 

「言いたいことはそれだけか」

「言えというなら幾らでも喋りますとも!

 ですが私には最期にやるべき事がある!

 無様にみっともなく悪足掻き、その情けなさをもって神を楽しませなければ!」

「そうか。じゃあ死ね。ニュークリア」

 

 一瞬で相手の周囲の空間ごと炸裂する魔法が発動し、蒼い鳥は死に――ません。

 空気に溶けるようにして消え、男の背後へ瞬間的に背後に回りこみました。

 返す刀の如き勢いで鋭い鉤爪を振るいます。

 魔女にして魔獣……単純な身体能力だけを考えれば、蒼い鳥のほうが混沌の魔法使いを上回っていました。

 

 しかし混沌の魔法使いは、その鉤爪を前転するかのような動きで避けました。

 

「ファイア、アイス、サンダー、ウォーター、ストーン、ウィンド、バースト」

「ぎゃああああああああああ!!」

 

 そして体勢を立て直すやいなや、高速詠唱によって一息に多数の魔法を唱えました。

 蒼い鳥はそれらを身に浴びて、悲鳴をあげながらもソウルの矢を撃ちました。

 

「無駄だ。ディバインブレス」

 

 ソウルの矢は、混沌の魔法使いが瞬時に唱えた神の祝福に遮られました。

 

「マジカルブレス」

 

 そのうえ、やや物足りない火力を増しました。

 

「ファイアII、アイスII、サンダーII、フレイムII、ブリザードII、スパークII」

「ギャアアアアアアアアアア!!」

 

 混沌の魔法使いは、高速詠唱によって一息に多数の魔法を唱えました。

 蒼い鳥はそれらを身に浴びて、悲鳴をあげながらもソウルの連射を撃ちました。

 

「無駄だと言っている。ディバインブレス」

 

 ソウルの連射は、混沌の魔法使いが瞬時に唱えた神の祝福に遮られました。

 ああ、果たして"目"を通して、創造神は蒼い鳥を見ているでしょうか?

 勝てるわけないじゃん雑魚、とでも嗤いながら、不幸を見届けてくれるでしょうか?

 

 こんな自分を見てくださる。

 それだけでいいのです。

 それが幸せなのです。

 不幸こそが、幸せなのです。

 

『不幸の青い鳥は、いつだって家の中にいるんだよ。だから身の回りの小さな幸せを大切にして、分不相応なことに夢中になっちゃだめだよ』

 

 そう言ったのは誰だったか……あるいは不幸の蒼い鳥の、勝手な妄想かもしれません。

 

 時は夜中の12時ごろ。

 いまこそ時はきたとばかりに瞳の中のチルチルが、万華鏡のように頭を回すと、幽霊たちが墓を出て、地下墓地が明るい花園に変わっていきました。

 それは幸福の御殿なのでしょうか? それとも似て異なる別の何かでしょうか?

 摩訶不思議な出来事でしたが、この戦いには全く関係ありません。

 

 蒼い鳥は、逃げました。

 みっともない姿をさらして、幸福の御殿が現れるとと同時に穢れ沼に開く、不幸の洞窟の中へ逃げました。

 

 いえ、ただしくは、逃げようとしました。

 ですが混沌の魔法使いに回りこまれてしまいました。

 

「あの場所に行きさえすればァ!」

「もう足掻くな。ここで死んどけ。破滅の嵐」

「あの場所にぃぃぃいいいがあああぁあああぁあああぁあぁぁぁ……」

 

 渦巻く終焉が相手を取り囲み全身を切り刻むする魔法が発動し、蒼い鳥は死にました。

 空気に溶けることなく死にました。

 名状しがたい青白い粒子状のなにかが、混沌の魔法使いに吸い込まれていきました。

 そして毒の沼地にぼとりと、童話【幸せの蒼い鳥】が落ちました。

 混沌の魔法使いはそれを拾って、四次元アイテムボックスに仕舞いました。

 

「任務完了。これより祈祷する……

 っと、滑舌が悪かったな。

 これより、帰投する」

 

 混沌の魔法使いは、翼の生えた靴の不思議なちからで、再び空を飛びました。

 地底の空から地上を見下ろすと、花畑の中でなにがなにやら分からない様子の幽霊たちを、神への捧げものだとして狩りまわるエリクシール住民が阿鼻叫喚の騒ぎを起こしていましたが、特に気にしませんでしたとさ。

 

 

 




 

 ある日突然きゅうに評価されたりされなかったりするとどっちにしてもビビる(雑談)

 
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