ロストエンパイア創造記 作:メアリィ・スーザン・ふ美雄
どんどん文字数が増えていく不具合。これはな、みーんなそうなるんや。
ピーターはとても永い刻を生きていましたが、実際のところは生まれて一週間でいまの身体になって、まだ一回も誕生日を迎えたことがありません。これからもないでしょう。
幼児洗礼を受ける前に神の御名の元から逃れ、翼もなしに空を飛ぶことを覚え、自分が元は人として生まれてきたことなど知らず、老ソロモン某氏に自分が何者に変容したのかを指摘されるまでは、彼は自分が鳥の仲間だと思って生きてきました。むかしむかしの……ええ、むかしむかしのお話です。
そう――――むかしむかし、幼いうちに親とはぐれた者たちが迷い込む、親の愛と嘆きと悲しみとが入り混じった感情で保護された、特別な箱庭世界がありました。
今は混沌の坩堝と化しているその場所はいま、空前の侵略戦争を仕掛けられていました。
魔獣【不幸の蒼い鳥】が、空を自由に飛びまわり、あまたの魔法……ソウルの連射やソウルの放射*1などを雨あられのように撒き散らし、魂の迷子たちを次々と蹂躙していました。みんなのヒーロー、ピーター・パンは、カットラスを手に逃げ回る不幸の蒼い鳥に追いすがり、なんとか斬りつけようとしますが、チルチルとミチルがあっちこっちそっちと回避の指示を出してしまい、捕らえきることができません。
『ピーター! 上っ!』
「わかってるっ!」
ピーター・パンの回りを飛ぶ光り輝く妖精、ティンカー・ベルもまた、触れたものに理不尽なる安寧を与える絶死の光弾の存在を教えたり、妖精のスキルで援護しています。そのおかげでピーター・パンはサッとかわすことができました。ですがこんな退き撃ちされては、周囲に被害は広がるばかりです。
「なんなんだよオマエっ! 気味が悪い化け物めっ!
なんでこんなことするんだよっ! なんでこんなことできるんだよっ!」
「すべては神の望まれるままに。
ありとあらゆる者に不幸あれ。不幸を以て幸せあれ」
「くっそーっ! さっきから意味わかんねー!
ちょっとはこっちにも分かるように喋ってくれ!
畜生! このままじゃ……どうすりゃいいんだ!」
嘆きながらも戦いを続けようとしたまさにその時、海上からドカンと一発、大砲の音がしました。黒い球弾は両者の近くを通って、けれど的外れなところに飛んでいき、そのままどこかに落ちました。
両者の意識が海上に向くと、片腕が鉤爪の男、キャプテン・フックが部下に当り散らしています。
「バカモン! なにを外していやがる!
怨敵ピーターパンを撃つチャンスをみすみす逃しやがって!」
「(海賊船で対空砲火なんて)いやーキツイッス!」
「ええいっ! まだまだ! 撃てえっ! 撃たんかあっ! 次弾装填!」
キャプテン・フックは鉤爪の腕を振り回し、部下を鼓舞して次弾の準備をさせました。ピーター・パンは海賊船に近づいて、そんなキャプテン・フックを非難します。
「フック! いまネバーランドの人たち同士が争ってる場合じゃないんだっ!」
「ばっかもーん! 貴様を倒すのはこの俺だ!
そんな奴に負けるんじゃないぞっ!
お前の背中は俺に任せておけっ! 次はちゃーんと狙って撃ってやる!」
「……バカ! これだから大人ってやつは!」
ピーター・パンの永遠の子供心に浮かんだ冴えた閃き――突然現れたネバーランドの敵を、この狡賢いライバルと力を合わせて倒そう――はあっさり砕け散りました。二人がそうしている間にも、蒼い鳥は恵まれない子供たちを無慈悲にもどんどん幸せにしていきます。個人の勇者を相手にするよりも、その他大勢を襲うことを優先しているのです。
ピーター・パンは、この挟み撃ちを受け入れるしかありませんでした。
ぐっと奥歯を咬んで空を飛ぼうとすると、キャプテン・フックは言いました。
「……まあ待て、ピーターパン。
まだ大砲の装填が終わっとらんわ。
こいつを使え。
ソリッドフレーム装填式、シングルアクションタイプの六連発リボルバーだ。
あの大きさで、剣を振る距離なら下手糞でも当てられよう」
キャプテン・フックは以外にも、怨敵に『海賊の拳銃』を渡しました。その言葉どおり、大砲の装填を待っているのでしょう。ピーター・パンはその以外さに、目を白黒させました。
「えっ? いや、でも、俺、銃なんか使ったことないし……」
「フン。よく見てろよ、こうして撃鉄を起こして……こう引き金を引いて撃つのだっ!」
汚い大人のキャプテン・フックは、銃の撃ち方を教えるフリをして、ピーター・パンの頭を狙って引き金を引きました。人ならざる反射神経で避けるピーター・パンは、ムカッときたのでフックの手から銃を盗んでしまいました。
「ふざけんなバーカ! こいつは没収だっ!」
「ああ! 使って欲しいのだ! あとでちゃんと返せよっ!」
ピーター・パンは片手にカットラス、片手に『海賊の拳銃』を持って、目も眩むような速さで飛び上がり、再び不幸の蒼い鳥の元を目指しました。その間にティンカー・ベルは、彼に妖精スキルを掛けなおしていきます。
「おばあちゃん。また来たよ」
「また来た、また来た。無駄なのに」
「ふぇっふぇっふぇ。
あやつこそがこの箱庭世界の"主要登場人物"に相違あるまい。
この箱庭世界ごと、我らが神に献上しなければ」
不幸の蒼い鳥を構成する意思たちは口々にそう言って、地上への蹂躙をそこそこに、回避を優先する立ち回りに変えました。ピーター・パンは拳銃を上手く隠して、先ほどまでと同じようにカットラスで斬りつけました。もちろんかすりもしませんでした。
『お願いっ! 当たって!』
「耳元で怒鳴るな! 一撃で仕留めてみせる!」
そうしてほかに打つ手がないと見せかけておいて、何度目かの斬りつけのときに、避ける先を上手く狙って拳銃を撃ちました。
「ギャアアアアァァァアアアアアッ!」
ミチルは悲鳴をあげました。ピーター・パンは、人ならざる学習速度で拳銃の扱い方を理解し、初使用にして飛び回る魔獣相手に、あっさり弾丸を当てました。音と衝撃で怯んだ隙に、カットラスでザクザク斬りました。次はチルチルが悲鳴をあげました。
でも、魔法使いのおばあちゃんは悲鳴をあげませんでした。
そのとき初めて不幸の蒼い鳥に、ピーター・パンへの憎悪が浮かびました。
「遊びに付き合ってやれば、このクソガキがあっ!」
「うっせーもう喋るな! お前なんか死んじまえっ!」
不幸の蒼い鳥はピーター・パン目掛けてソウルの連射を撃ちました。
ティンカー・ベルの『妖精の舞』が機能して、まるでソウル弾の方からそれていくかのようにピーターは避けました。
ピーター・パンは不幸の蒼い鳥を斬りつけました。
もう回避の指示がないために、カットラスは一撃はついに不幸の蒼い鳥の急所を捕らえました。
「ギャアアァアアァアァアアァァアアアア!」
魔法使いのおばあちゃんは悲鳴をあげました。
そこでようやく不幸の蒼い鳥は、空に溶けるようにして、冒涜的な姿を消したのでした。
「や、やったぞっ! やっつけた!」
「いまだーっ! 撃てぇー!」
ドカンと一発、また大砲の音が響きました。黒い球弾はピーター・パンの背中めがけて飛んできて、けれどサッと動けば当たることなく、そのまま地上に落ちました。ピーター・パンは船上に戻って、カットラスを振ったり銃を撃ったりと海賊連中を黙らせました。
途中で弾切れになった拳銃を「つかえねー!」と叫んでポイッと船上に放り捨てて、その後ようやく、みんなのところへ戻ることにしました。
「……こりゃあひどいや。こんなのって無いよ」
空の帰り道からは、恐ろしい風景が見えました。港町の方も、インディアンキャンプの方も、妖精の谷も、人魚の泉の方も、ワニの棲む湿地帯も、どこもかしこもひどいことになっていました。あの蒼くて醜い鳥の化け物の他にもなにかがいて、そいつが暴れていたのかもしれません。生きているものより、死んでいるもののほうがよっぽど多くて、ピーター・パンが住む島には嘆きと悲しみの声が溢れていました。
では彼の隠れ処がある森林の奥地はというと、スライトリー、カビー、ツインズ、ニブス、トゥートルズ……地上を任せていた仲間たちはみんな死んでしまっていました。ピーター・パンは深く悲しみました。せっかく仲良くなったのに。
「ふーん可愛いじゃん。そいつの身体もいただくか」
「えっ?」
『えっ?』
後ろから、そんな声がしました。
いつの間に、と思ったピーターパンが振り向くと、そこには妖精がいました。
どこかで見覚えがあるようで、まったく見たことのない妖精でした。
見たこともないほどの邪悪さでした。
まるで妖精の皮を被った別のナニカのよう。
その手には、白紙の本がありました。
ティンカー・ベルはいなくなっていました。
「えっ?」
「いやーアイツ大言壮語叩いといてなっさけないよねー。
我が神よぉ、おまかせくだされぇ~。とか言っといてコレだよ?
あんまりにも惨めでダサくて恥ずかしくてみっともなくて面白かったから助けてあげちゃった。
ボクってやっさしい! ふつーの悪役とかなら即ぶっ殺しちゃってるところだよっ!
ま、それはそれとして、キミも貰っていくね?」
ピーター・パンの全身が、淡い虹色の光に包まれました。
訳がわかりませんでしたが、なんかよくわからんが喰らえとばかりにその妖精? をカットラスで斬りつけようとしました。
『やめてピーターっ!』
「えっ!? なんでっ!?」
突然、目の前の邪悪存在からティンカー・ベルの声がしました。咄嗟に手を止めた頃には、ピーター・パンは彼女の手にあった白紙の本の中に閉じ込められてしまいました。
なんだかよくわからないけれど、とにかく本の中から出ようとすると『ピーター・パンは許可無く異世界に渡れない』という文字がどこかの何かに書き加えられて、本の世界からネバーランドに出ることができなくなりました。
機転を利かせて『機転が利かなくなる』どうにかしようと考えて『小さくて可愛い子どものこと以外考えられなくなる』助けを呼ぼうと『誰もお前を助けようする奴なんていない』やめてくれっ『やっめっませぇぇぇえええええええんん!!! きゃひひひひあははあはあはっ!!!』
……
…………
……………………
妖精の皮を被った……もとい、外見を偽装するべく数々の妖精をアバターとして取りこんだ創造神メアリィ・スーは、その見た目を自分好みに改変しつつ、ピーター・パンという存在を一冊の本にして、書いたり、消したり、書きなおしたり、書き換えたりして、こんな童話にしてしまいましたとさ。
夜更かししている子供にはピーター・パンが来るよ。
彼は子供を連れ去って一生牢獄の国に閉じ込めるんだ。
ほら、今にも窓の外に……
ボクハ キミガ スキ
アイシテル アイシテル アイシテル
アイシテル アイシテル アイシテル アイシテル
アイシテル アイシテル アイシテル アイシテル アイシテル
「ちっ。手こずらせやがって。
ボクは キミガ キライ、っと。
あーあ。ぶっ壊れちゃった。
必死に抵抗するからついやりすぎちゃったよっ。
やめてよね。ボクが本気になったら君なんかが勝てるわけないだろ」
彼女は童話【ピーターパン】となった白紙の本に"改変後の外見"を書き加えていきました。ピーター・パンは、元の緑単色のコーディネートから、色とりどりのスカーフをたなびかせる全く別の何かに変わっていました。その手にカットラスは無く、顔は真っ白、目の周辺を赤く尖った十字に塗られて、まるで道化のようでした。それほどまでに書き換えなければ、支配しきれそうになかったからです。
それから彼女は"敵対するものに見つからない"属性を内包する隠れ処『首吊り人の木』の特性を読み解いて、そこを聖域に……いえ、聖森一帯をロストエンパイア構想に取り込むことにしました。
『首吊り人の木』の付近はメアリィ・スーに敵対する者には見つけられず、また、森林部のあり方を改変して『捨てられの森』に、つまりメアリィ・スーの趣味趣向に叶いそうな者たちが自然と集まる領域としました。
あと、妖精の谷と人魚の泉も何かと使い勝手が良さそうなのでキープすることにしました。
メアリィはかんぺきすけじゅーる帳を取り出して、その内容を書き換えました。書き換えるならかんぺきじゃないと思うかもしれませんが、後期クイーン問題の解決方法の一例を述べるならば、作者が一番最後に書き込んだ情報が一番正しいものと見做せば、これは完全で完璧なすけじゅーるなのです。
聖域⇒聖森(首吊り人の木)
聖域周辺の森⇒捨てられの森に改変(入居者急募! 夢を持っている方、ここならその夢、叶えられますよっ! 優しい妖精が丁寧に夢を叶えてくれる、アットホームな森だよっ♪)
キープ↓
人魚の泉・海の代わりに使う? 考えちゅー。とりあえず聖森の南において、先住民は皆殺しにしとこうっと。
妖精の谷・今まで通りソウル集めしてくれる妖精には手をつけない。拾ってきた死体も使いまわすかもだから残しといてもらう。逆らうやつとか可愛いやつはみーんなアバターとして収集。予備生命。そのうち構造改革して残機無限の不死化する予定。場所はいったんそのままで、名前は牢獄の国に改変。
それで、メアリィはそのようにするべく、あたかも天地創造、あるいは天地崩壊のようにネバーランドから森林部と妖精の泉をごっそりと消し、そしてヨーロッパのようでヨーロッパで無い、ほんの少しの地域の違いで人生が千差万別に変わり、個々に思い描く夢を神の名の下に漠然とまとめる、あやふやな概念渦巻く箱庭世界にドーンと追加させました。その森は彼女に害異のある者には見つけられませんから、行き場を無くした者だけにしか目にする機会はありませんでした。
クマのぬいぐるみ「タディ」は、『首吊り人の木』の部屋の奥、ベッドに一人寝かされたまま、改変の結果取り除かれるその日まで、いつまでもいつまでも主人達の帰りを待っていましたとさ。
第一回、なぜなにロストエンパイア創造記
Q1.ピーター・パンはどうしてこうなった?
A1.ブラソ1時点で原型が無くなるくらい片言キチガイになってたので、原型がなくなるくらい弄られたんだなと想定し、このように二次創作しました。たぶんグニキもこんな目に近いことにあってそう。早く彼女を愛さなければ。
Q2.ティンカー・ベルはどうしてこうなった?
A2.ブラソ2助言より彼女の近くに「奴じゃない。」とあります。つまり、ティンカー・ベルには『奴』を連想させる要素があったということ。また、ブラソ2の『奴』は無印ブラソの第一形態とは別の姿にさせられていたことから、アバターはとっかえひっかえできるものと仮定してこのように二次創作しました。