唐突だが自己紹介をしよう。
私の名はレミリア・スカーレット。
かの名高き吸血鬼ヴラド・ツェペシュの孫だ(自称)
世界中の吸血鬼ハンターが私に血眼。ところが、これが捕まらないんだなぁ(ルパン)
ま、自分で言うのもなんだけど、西洋諸国に名を轟かす紅魔館の当主。
それがこの私、レミリア・スカーレットだ。
そしてもう一つ、私を表わすなら言わなければならないことがある。
それはこのレミリアには前世の記憶があるということだ。
前世で読んだ小説の言い方を借りるなら転生者、もしくは憑依者と言ったところか。
転生者のよくあるパターンで、トラックに引かれて神様に転生させてもらうという流れがあるが、私は神に会った記憶なんてない。
そもそも前世での死因もよく覚えていない。ごく普通の日本人だったようだが……。
物心が付くにつれて前世の記憶が蘇っていったが、事態を把握した時は驚き、歓喜に震えた。落ち着くまで傍から見たら情緒不安定すぎる吸血鬼だったと思う。
そりゃあ色々なライトノベルや二次創作を読んできて、自分も転生したらなんて妄想したことはあるけど、実際なってみるとすぐに対応できるわけもない。しかも、まさか自分があのレミリアになるとは。
そう、私はレミリア・スカーレットという人物を知っている。彼女が登場した東方Projectというシューティングゲームも知っている。
知っているどころか原作ゲームはやり込んだし、書籍も一通り読んでいた程度にはファンだった。中でも可愛さとカリスマを兼ね備えたレミリアは一押しのキャラだった。
なぜ前世のゲームの登場人物に自分がなっているのかは分からないが、せっかくあのレミリア・スカーレットになれたのだ。やることは決まっている、この世界をこころゆくまで楽しんでやる! そして、来るべき日には“あの野望”も達成してみせる!
私が今世での決意を新たにしていると、誰もいなかったところに急に人影が現れた。
「お嬢様」
この瀟洒な女性は十六夜咲夜。我が紅魔館のメイド長。
かつては私に血眼の吸血鬼ハンターだったけど、このレミリアのカリスマに心酔して今では忠実な従者ってわけよ。
初対面の時は有名キャラに会えて感動している間に、無数のナイフに囲まれてあわや殺されそうになったわ。本当にDIO様と同じことができるのね。
彼女の『時間を操る程度の能力』は文字通り自分以外の時間を止めたり、特定の物体の時間の流れを速めたり出来るというこの私でもブルってしまうほどの性能を誇っている。
咲夜にはその能力を使って紅魔館の家事のほぼ全てを任せているんだけど、過労で倒れないか心配になるわ。けど、飄々としてあまり疲れたところを見せないのよね。
「どうしたのかしら? 咲夜」
「パチュリー様より転移の準備が出来たとのことです」
「わかったわ。ふふ……いよいよね。世界からは多くの神秘が失われ、張り合いのある相手もいなくなった。けれどあそこにはその神秘が多く現存している……楽しみだわ」
「はい。お嬢様」
ーーーー
「待ち焦がれたわよ! パチェ!」
「ちょっと、壊さないでよ。レミィ」
扉を吹き飛ばす勢いで図書館に入った私を出迎えるのはパチュリー・ノーレッジ。
紅魔館の頭脳にして私の親友。紫もやしとも揶揄されるほど色白でひ弱な魔女。
能力はそのまま『魔法を使う程度の能力』。主に精霊魔法を得意として、私の無茶ぶりにも完璧に対応してくれるわ。
「紅魔館で困ったことがあるなら、まずパチュリーを頼れと言われるわ」
「いや、誰に言っているの。それに本当にやめてよね、私の時間をなくすのは」
「パチェと親友の私の間に遠慮なんてものはないはずよ」
「あまり度が過ぎると何も協力してあげなくなるわよ」
「───ま、まあ、それはともかく。準備が出来たそうね? パチェ」
「……ええ、出来たわよ。いつでも行けるわ。忘れ去られたモノたちの楽園、『幻想郷』へ」
「この紅魔館ごと行けるのよね?」
「ええ、勿論」
「ふふふ……。流石よ、パチェ。 フランに美鈴も用意はいいかしら?」
「オーケーよ。お姉様」
私とお揃いのドアノブカバー(に似た帽子)を被った少女が答える。
この可愛すぎる吸血鬼は妹のフランドール・スカーレット。
フランドールの持つ『ありとあらゆるものを破壊する程度の能力』は全ての物に存在する「目」を砕くことで対象を粉々に破壊することができるというこの私でもブルってしまうほどの性能を誇っている(2回目)
前世の記憶では実際に使ったのは隕石を破壊したときくらいだけど、鍛え上げて概念すら破壊できるようになれば恐ろしいことになりそうね。
その能力や狂気のせいで、地下に幽閉されていたという説もあったけど私はやらないわよ。
こんな可愛い妹を閉じ込めるなんてとんでもない!
「私も準備は万端です。レミリアお嬢様」
中華風の衣装を着た麗人も答える。彼女は紅美鈴。
『気を使う程度の能力』を持ち、エネルギー波みたいなやつを飛ばすことができる。
普段は門番として招かれざる者を撃退してくれている。彼女のような信頼のおける強者が守りについていれば、ザコの番人は不要よ。まあ、居眠りが玉に瑕だけどね。
咲夜、パチュリー、フランドール、美鈴にこのレミリアを加えた五人が紅魔館最高戦力よ。
「さあ、ここから始まるのよ。このレミリア・スカーレットの伝説がね」
実はこの転生レミリア・スカーレットにはある野望がある。
そう、東方儚月抄でよっちゃん(綿月依姫)に勝つという野望が!
東方儚月抄を読んだ人には無謀だと思われるかもしれないが、せっかく大好きなレミリアに転生したんだし、それくらい大きな目標は持ちたいってものよ。
我が心のライバル綿月依姫は強敵よ。強者だらけの月人でも戦闘力は随一。変なTシャツ(ヘカーティア・ラピスラズリ)が登場するまでは東方勢で敵なしとも言われていたくらいに。
原作のレミリアも依姫相手にバシュッゴオオオオオオオと飛んだと思ったら天照大御神の光で倒されていたわ。
ちなみに私の能力は『運命を操る程度の能力』で、ちょっとした未来への干渉が出来るわ。けど、戦闘ではあまり使えないのよね。
出来ればルーミアの『闇を操る程度の能力』が良かったかな。どう考えてもあれって大魔王ゾーマ様や黒ひげみたいなラスボスの能力じゃない。
ほほう、我が闇の衣を外すすべを知っていたか、よっちゃん───とか言ってみたいわ。うん、やっぱり闇のチカラって私向きよね(中二病)
ーーーー
「圧倒的じゃないか、我が紅魔館は」
いかにもダメそうな台詞を言いながら、私はパチェの転移魔法の発動を待っていた。発動が完了したら、そこはもう幻想郷ってことよ。
基本的に私は原作に沿った行動を心掛けている。目標とする月での戦いはともかく、作品のファンとして大筋の歴史は変えたくないからだ。
原作のレミリアは紅魔館と共に幻想郷にやってきたとき、現地の妖怪を相手に無双するも、最終的に最も力を持った妖怪に敗北している。
このときの異変を吸血鬼異変と呼ぶが、この転生レミリアの最初に超えるべき壁がこの異変よ。
レミリアを鎮圧した妖怪は不明だが、幻想郷の管理者である八雲紫かそれに近い実力を持つ大妖怪だろう。
私のアドバンテージは原作知識を含む前世の記憶。それを活用して様々な作品の能力を参考にして自らを鍛えたわ。
その甲斐あって、現時点で原作以上のチカラを身に着けたと自負している。とはいえ齢500歳程度では幻想郷のBB…古参連中に比べれば若輩もいいところ。
まずはこの吸血鬼異変で今の自分がどこまでやれるのか試してみるとしましょうか。
ーーーー
それに最初に気が付いたのはやはり八雲紫とその式の八雲藍だった。
「紫様」
「ええ、お客様よ。 見たところ、館ごとこの幻想郷に転移してきたようね」
「館ごとであれば、計画的な行動ですね。侵略の可能性も考えられますが、そうなればそこらの妖怪では分が悪いかと」
「そうね」
今の幻想郷の妖怪は人間を襲わなくなって弱体化しているわ。あの館の住人が外の世界で名を馳せたような存在だとしたら、藍や私が行く必要があるかもしれない。
「私が警告に行きましょうか?」
「……それはまだいいわ。まずは相手の出方を伺います。この幻想郷は全てを受け入れる。それがどんな種族であれね」
「承知いたしました」
ーーーー
おおおお! ここが憧れの幻想郷か!
待ちきれない、すぐに外を見に行くわよ!
「まずは私が一当てしてくるわ」
「お嬢様がですか? 当主のお嬢様が行かなくとも、私か美鈴が行ってきますが」
咲夜が止めてくるけど、そうはいかない。一番乗りはこの私よ!
「幻想郷への挨拶代わりに派手に一発食らわせて、離脱してくるには私が行くのが最適よ」
「それはそうですが……」
「はあ……わざわざ喧嘩を売らなくてもいいのに」
「何を言っているのパチェ。このレミリアが下手に出て幻想郷に入れてくださいと言うとでも? まずはどちらが格上か、平和ボケした妖怪たちに思い知らせてやるのは当然よ」
「勝手にして。私は幻想郷への転移で疲れてるから手伝わないわよ」
「まあそれは仕方ないわね。お疲れ様、パチェ」
「お姉様だけずるい! 太陽は隠れているんだし、私も行くよ!」
「え、いや……フランは紅魔館で待機───」
「じい~」
頬を膨らませて私を睨んでくる妹が可愛すぎた。何これ、反則じゃない?
フランの(可愛い)威圧に負け、結局二人で幻想郷への宣戦布告を行うことになった。
「いい? フラン。宣戦布告と言ってもやり過ぎちゃだめよ。」
「分かってるわよ。壊したりはしないわ」
「それならいいわ。じゃあ───行くわよ!」
「オーケー!」
ーーーー
「いったい何があった!?」
妖怪の山の中間管理職、大天狗が吠えると配下の天狗が答える。
「依然として正体は不明です! 見たことのない妖怪が山を縦横無尽に飛び回り、哨戒天狗は大混乱です! 報告では九天の滝まで突破したとのことです!」
「ふざけおって……そいつは我ら天狗を敵に回してただですむと思っているのか! 迎撃の人員を増やせ! 遊びまわっている射命丸も呼び戻せ! ああ見えて腕は立つ!」
「はっ!」
「ふふっ……残念だけど私はもう山にはいないわよ。しかし、これが幻想郷でも最大勢力の妖怪の山か。本当に平和ボケしているのね。さて、帰って戦利品の天狗酒の味でも確かめましょうか…」
私が勝利の美酒の味を想像していると、愛しの妹が戻ってくるのが見えた。よしよし、怪我も無いようでなによりね。
「お姉さま」
「ちょうどいいタイミングね、フラン。首尾はどうかしら?」
「森から里の方まで飛んできたけど、強そうな妖怪とは会わなかったわ」
「フランが妖気をまき散らして飛ぶだけで、木っ端妖怪や人間は面白いように狼狽えてたでしょうね」
「ああ、でも里を過ぎたあたりで大きな妖気を感じたわ」
「へえ? 大きな妖気ねえ」
この時期に人里の方で大きな妖気って誰かしら。八雲藍あたりが買い物にでも来ていたとか?
「妖気を辿っていくと家があったから突撃したの。けど、誰もいなかったから紅魔館への招待状だけ置いてきたわ。目の前に一面のひまわりが咲いててね、綺麗だったな~」
「ファッ!?」
た、たた太陽の畑? じゃあその家って暴虐の大妖怪、風見幽香の家じゃない? それに突撃したの? ヤバいわ、ヤバいわ───いえ、落ち着くのよレミリア。私は風見幽香や八雲紫どころか月人にすら挑む超吸血鬼。元々、古参の妖怪相手に実力を試すつもりだったのよ。むしろちょうどいい機会と考えるべき!
「どうしたの? お姉様」
「……いえ、何でもないわ。ご苦労様、フラン。私も妖怪の山をはじめ、目についたところで適当に招待状を置いてきたわ」
「じゃあ後は紅魔館で待ってれば向こうから来てくれるってことだね」
「ふふ……連中が臆病者でなければね」
カラダが震える……これが武者震いというやつか……。
はじめまして。
初投稿になります。
ゆるゆる書いていきますが、
読んでいただければ幸いです。
それではこれからよろしくお願いいたします。