レミリア・スカーレットの挑戦   作:Amur

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第十二話 『鬼の異変(エピローグ)』

 レミリアと萃香は正座させられていた。

 

「ついカッとなってやった、今は反省している」

「ごめ~ん」

 

 ピク……ピクッ!

 

 二人のミニマムほどしか反省が感じられない言葉に紫は無言で青筋を立てていた。

 

───キレゆか! 怒ってる……これは怒ってるわよ……。

 

 どこから持ってきたのかギプスをつけて巻き込まれアピールをしている紫。

 戦っていた二人の方はすでに目に見える負傷はなくなっており、さすがの回復力であった。

 

「ま……まあそう怒るな、紫。たしかに多少、羽目を外しすぎたが……」

 

「は? 多少? 周囲の惨状を見て言っていますか?」

 

 紫が張った結界の中は見るに堪えないことになっていた。

 草木はすべてチリと化し、いまだ消えぬ炎と冷気が荒れ狂う地獄。

 そして最後にレミリアと萃香が奥義をぶつけ合った中心付近には底が見えない大穴が開いていた。

 

「これを元に戻すのにどれほどの時間と労力がかかるとお思いで……?」

 

「う……ぐ……」

 

「まあまあ、紫。結界の外は被害がないんだから……」

 

「それは私が死ぬ気で結界を維持したからです。おかげでこのありさまですが」(ギプスアピール)

 

「悪かったと思うが、宴会の準備があってな。そろそろ行かねば───」

 

「あ?」ビキビキ!

 

 ───ひいい!

 

 その後、レミリアが紅魔館の総力(主にパチュリー)で復旧を手伝うと約束して何とか紫を宥めることができた。

 

 

 

ーーーー

 

 

 その日の博麗神社の宴会には多くの人妖が集まり、盛り上がっていた。

 常連の紅魔館勢だけでなく、アリス・マーガトロイドなど個人での参加や春雪異変後から博麗神社に来るようになった白玉楼の主従───西行寺幽々子に魂魄妖夢の姿も見られた。

 

「拒否」

 

 レミリアから喧嘩の後始末の話を聞いたパチュリーは秒速で断った。

 

「待ってくれ、パチェ! 紅魔館の総力でと約束したんだ。私の名に懸けて反故にするわけにはいかない」

 

「知らないわよ。勝手に喧嘩してその後始末は任せる? ふざけてるの?」

 

「い、いや……もちろん任せきりにはしないが」

 

「総力って言っても大地の復旧なんてほぼ私頼りでしょうが」

 

「う……そこをなんとか」

 

「いや。大体、あなたはいつもいつも……」

 

「うう……」

 

 レミリアがパチュリーに怒られていると、宴会に新たな参加者が現れた。

 

「やあやあ、みんな。伊吹萃香だよ」

 

「おや……見ない顔だな。知ってるか? フラン」

 

「知らないわ。というか顔の広い魔理沙が知らないなら私が知るわけないでしょ」

 

「それもそうか」

 

「おお、萃香! 待っていたぞ」

 

 パチュリーの説教から逃れられて嬉しそうなレミリアが近づく。

 

「やっほー、レミリア。宴会が待ち遠しかったよ」

 

「うむ。今日は古今東西の酒を用意してある。大いに楽しんでいってくれ」

 

「いいね、いいね。浴びるほど飲むぞ~」

 

「そいつは誰だ? レミリアの友達か?」

 

「その通りだ、魔理沙。皆に紹介しよう。我が友、伊吹萃香だ」

 

「昔は幻想郷にいたんだけど、しばらく離れていてね。最近帰って来たんだ。よろしく~」

 

「おう、よろしく。私は霧雨魔理沙だ」

 

「フランドールよ。お姉様はいつの間に友達になったのよ」

 

「まあ、ちょっとな」

 

 

「号外―! 号外ですよーーー!」

 

 文が宴会場に号外記事をばら撒きながら現れた。

 神社に記事を散らされた霊夢は不満そうだ。

 

「ゴミを巻き散らかさないで」

 

「ゴミとは失礼ですね! とっておきの記事なんですよ!」

 

「とっておきとは……どれどれ」

 

 興味をひかれた妖夢が記事を読み出した。

 

 『地底世界から大怪獣現る!』

 

 その光景を見たとき、この射命丸文───心底震えた。

 

 霧の湖から少し離れたところにある草原が荒野へと変わっていたのだ。

 しかもただの荒野ではない、消えない炎と吹雪が荒れ狂う死の荒野だ。

 

 いったい何者の仕業かと周囲を探索したところ、底が見えない大穴を発見することができた。間違いなく、この惨状を生み出した元凶はここから出現したのだ。

 穴の大きさと周囲の惨状から、出現した者は極めて大きな巨躯を持ち、炎と吹雪を吐く大怪獣だと推測できる。

 付近で大型の飛行生物の目撃情報はなく、荒野の外に移動する足跡もない。おそらく大怪獣は上半身を穴から出した状態で暴れ、その後地下へと戻ったのだろう。

 

 穴の先には旧地獄か、それとも未知の大洞窟が広がっているのか興味は尽きない。

 残念ながらあまりにも危険すぎるため、そこで調査は打ち切った。

 突如として幻想郷に現れた未知の大怪獣。その姿を見れなかったことは逆に幸運だったかもしれない。もし出会ってしまえば命はないであろうから───。

 

 

「地底からの大怪獣ですって、幽々子様! 恐ろしいですね~」

 

「そうね、妖夢。近づかないようにしなきゃね」

 

「大怪獣だってよ! どうする!? 霊夢!」

 

「どうもしないわよ」

 

「なんだよ、ノリが悪いなあ。お前たちは興味あるよな?」

 

「え? そ、そうね。興味あるわよ。ねえ、萃香?」

 

「うん!?……そ、そうだな。興味があるよ、レミリア」

 

「だよな~」

 

 同意が得られて嬉し気な魔理沙だが、横にいるフランドールは何かに気が付いたのか胡乱げな目でレミリアと萃香を見ていた。

 

「ど、どうしたのかしら、フラン? 何か言いたいことでもあるの?」

 

「別に~? ただ、お姉様に買ってほしいものがあるかな~ってね」

 

「うぐ……い、いいわよ。可愛い妹のおねだりだしね」

 

「ふふふ……さっすが、お姉さま♪」

 

 フランドールのおねだりにレミリアは快く(?)頷いた。

 

「ちゃっかりしてるね、レミリアの妹……」

 

 それを見た萃香が呆れて呟いていた。

 

「どうですか、皆さん! この記事は!」

 

「珍しく面白い記事だぜ。怪獣の写真とかないのか?」

 

「残念ながらありません。しかし、私としては旧地獄で飼っていた巨大生物が逃げ出したのではと睨んでいます」

 

「なるほど。ありえる話ですね」

 

 追加の料理を並べていた咲夜も少し興味を持って新聞を見ていた。

 

「この草原だと紅魔館から結構近いですね。怪獣が来ないか心配です」

 

「私も美鈴に加勢するとして、ナイフが通用する相手なのかしら」

 

 この状況で犯人は自分たちと白状すれば、興醒めすることは確実。怪獣の話題で盛り上がる皆をレミリアと萃香は冷や汗をかきながら眺めるしかなかった。

 

「盛り上がっていますね」

 

 スキマから現れたのは八雲紫。ギプスは外していた。

 

「珍しいわね、紫。あんたが来るなんて」

 

「今日が一番盛り上がる宴会でしょうし、たまにはね」

 

「ちょうどいいわ。片付けも手伝っていってね」

 

「……」

 

「ちょっと、なんで無言なのよ!」

 

 片付けを手伝う気がない紫に霊夢が怒りだすが───

 

「まあまあ、霊夢。紫も疲れているんだろう。片付けなら、私が手伝ってやるから」

 

「は? あんたが? 熱でもあるんじゃないの、レミリア」

 

「失礼なやつだな」

 

「ささ、紫。この萃香が酌をしようじゃないか。たっぷりと飲んでくれ」

 

「これはどうも」

 

 

「なんかあいつら妙に紫に優しくないか?」

 

「あやしいわね。というかレミリアが片付けを手伝うなんて異変よ、異変」

 

「お姉様もたまには片付けくらい……やらないかな」

 

 

 この日を境に博麗神社での三日置きの宴会は終わった。

 幹事のレミリアが用意した古今東西の酒や珍味もあり、皆も大いに盛り上がって今年最後の花見を楽しむのだった。

 

 

 

ーーーー

 

 

 

 文句を言いつつも復旧現場に来てくれたパチュリーだが───

 

「ロイヤルフレアッ!」

 

「ぐわああああああ!」

 

 予想より5倍はひどい惨状を見て、まずレミリアにお仕置きを食らわせた。

 

 

 




紅魔館の維持管理、掃除・洗濯・料理など家事全般……十六夜咲夜
紅魔館の謎の資金源、レミリアの無茶ぶりへの対応……パチュリー・ノーレッジ

紅魔館は二人がいないと成り立たない

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