レミリア・スカーレットの挑戦   作:Amur

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第十五話 『永夜異変(底編)』

 扉が完全に封印されたことで、周囲の景色も変わっていった。

 

 先程までは室内にいたはずだが、周囲は広大な星空になっている。

 彼方には地球を模した天体が、対面には巨大な満月が浮かぶ。

 レミリアたちは地球を背に、永琳は月を背に対峙する。

 

「見たことのない景色になったぜ。ここは宇宙……?」

 

「宇宙を模した空間ね。地上とあの偽の月の間にある狭間の世界ってところか」

 

「凄いことをしますね。私も空間を操りますが、ここまでのことは出来ません」

 

「確かにすごいけど、それでもあれは偽物の月。懲らしめて本物を取り返すわよ。戦闘準備よ、私の人形たち――!」

 

 アリスが6体の剣を持った人形――リトルレギオンを呼び出す。

 

「不埒者が四人も姫のところへ行ってしまった。こいつらをすぐに排除して後を追わないと……」

 

「余裕ね。私のレギオンを気にもしないなんて」

 

「こっちは眼中にないってか? ずいぶんと舐められたもんだな」

 

「……」

 

「だんまりか。なら私たちの実力を思い知らせて――」

 

 魔理沙がミニ八卦炉を向けて魔法を放とうとするが、それより早く永琳は光の矢を放った。

 

「え?」

 

 いつの間にか発射された矢は魔理沙の眉間目掛け高速で飛来する。

 矢が到達するまで一瞬の出来事だが、彼女はまるで走馬灯のようにその動きを感じていた。

 あっけなく魔理沙が命を失う寸前で、矢はナイフによって切り払われた。

 

 バシュッ!

 

「集中しなさい。いまので一回死んでいたわよ」

 

「――っ! すまん。助かったぜ、咲夜」

 

「……」

 

 命を拾った魔理沙、矢を弾いた咲夜、その二人を永琳はまるで路傍の石でも見るように眺めていた。

 

 ――マジかよ、こいつ。確かに弾幕ごっこは運が悪いと死者も出る。けれど、いきなり殺しに来るのは普通じゃないぜ。

 

 今までいくつもの異変に関わってきた霧雨魔理沙。その中で命を落とす可能性もあっただろう。だが、ここまで無造作に殺されかけたのは今回が初めてだった。

 

 ――ちょっと甘く見てたかな。これが月の民か。地上人のことなんざ何とも思ってないってか。

 

「気に入らないな……」

 

 明確な“死”を感じた魔理沙だが、それで委縮することはなかった。

 それどころか逆に、自分たちを見下す月の民に一泡吹かせるという気持ちが燃え上がっていた。

 

「気合い入ったぜ! 目に物見せてやる、月の頭脳さんよ!」

 

「……決戦用の人形を持ってきてよかったわ」

 

「ナイスフォローよ、咲夜。引き続き頼むわね」

 

「お任せください、お嬢様」

 

 

 

「行きなさい!」

 

 アリスがレギオンを差し向ける。

 

「たかが人形に何ができるのです」

 

 永琳が光の矢を放つと、一本だったそれは無数の矢に分裂して降り注いだ。次々と人形は粉砕される。

 相手に触れることもなく全滅したレギオンだが、アリスはその前に次の人形を繰り出していた。

 

「レミングスパレード!」

 

 先程の3倍もの数の人形が永琳に突撃する。

 

「無駄です」

 

 再び矢の雨で人形たちを撃墜すると――貫かれた人形が爆発した。

 その威力は大きく、距離のあった永琳にも爆風は及んでいた。

 

 「いまだ!――マスタースパーク!」

 

 隙ありと見た魔理沙はいきなり切り札である極大レーザーを放った。

 先程、殺されかけたことでやはり頭に来ているようだ。

 

 タイミング的に回避は難しく、魔理沙は命中を確信した。

 

 永琳は慌てず掌を上に向けると、こぶし大の光球を生み出した。

 軽く手を前に振ると、ゆっくりと光球が進んでいく。

 

 ズオッ!

 

 光球がマスタースパークに飲み込まれた――かに見えたが、それは消えていなかった。

 いや、消えないどころか、マスタースパークをその場に押しとどめている。

 

「な!? 私のマスタースパークが!」

 

「うそでしょ!?」

 

 自慢の魔砲が小さな光球と互角という現実に、術者とそれを食らったことがある人形使いが驚きの声を上げる。

 

「ぐ……ぐぐぐぐ――!」

 

 しばらく拮抗していたが、ついにその均衡が崩れる。光球が徐々にマスタースパークを押しのけながら、魔理沙の方に向かい始めた。

 

「ふ、ふざけるな! 私の魔砲は妖怪も人間も吹き飛ばす! それが……」

 

 光球がとうとうマスタースパークの大半を消し去って、ゆっくりと魔理沙に迫る。

 

「くっ――!」

 

 ドオン!

 

 レミリアが横から魔力弾をぶつける。

 軌道を逸らされた光球は彼方へと飛んで行った。

 

 ――さすがは月の頭脳。なんなのあれ、デスボール? 私が永琳の情報を知っているのに対して、向こうはこちらが何をできるか知らない。その点を活かした奇襲しかないわね。

 

「……レミリア」

 

「いまので分かったわね、魔理沙、アリス、咲夜。あの月の頭脳とやらは一人で挑むには荷が重い相手よ」

 

「……ああ、わかったぜ。私はまだまだ甘く見ていたようだ」

 

悔し気に唇を噛み、手を握り締める魔理沙だが、目から戦意は消えていなかった。

 

「あの怪物の魔力は異常よ。私以外だと一発食らっただけでアウトね。距離をとって攻めなさい」

 

「了解だ」

 

「ええ、わかったわ」

 

「承知いたしました、お嬢様」

 

 

 

「では、いくぞ!」

 

 レミリアが高速で飛翔し、突撃する。

 

 対して永琳は上空に向かって光の矢を放つ。

 一本の矢は分裂して、無数の矢の雨となる。

 それはまるで天が与える罰かのようにレミリアに襲い掛かった。

 

「!」

 

 ――食らわなくてもわかるわ。この矢は吸血鬼の私にも十分にダメージになる!

 必死に回避しながら、永琳との距離を詰めるレミリア。

 

 ――覚神「神代の記憶」

 

 矢の雨が降り注ぐ中、永琳がレーザーによる攻撃も追加する。

 このレーザーも一本が二本、二本が四本に拡散していく。

 

 あまりにも広範囲に渡るレーザーを前に、レミリアはついに被弾してしまった。

 

「ぐあっ!」

 

 動きが止まったことで、矢の雨にも身体を貫かれる。

 そこで一旦、永琳への接近を諦めて距離をとった。

 

 

「ちいっ……!」

 

 レミリアが全身から血を流しながら、永琳を睨みつける。

 

「お嬢様!」

 

「おい、大丈夫かよ!?」

 

「問題ない。この程度ならすぐに元通りよ」

 

 その言葉に嘘はなく、レミリアの傷は音を立てながら目に見えてわかる速度で治っていく。

 

「……さすがにお前も化け物だな」

 

「これじゃあ近づけないわね。どうする? レミリア」

 

「やることは変わらん。私が同じように突っ込むから、お前らもその隙に攻めろ」

 

「それでいいの?」

 

「ああ。あいつの魔力も無尽蔵じゃない。間断なく攻めることに勝機がある」

 

「……わかったわ」

 

「気をつけろよ、レミリア。いくらお前が頑丈でも限度がある」

 

「誰に言っている。私は不死身と名高い吸血鬼の女王だぞ」

 

 そう言うとレミリアは咲夜にチラリと目線をやった。

 それを受けてハッとした彼女はこくりと頷いた。

 

 

 

 再び、光矢の雨の中を突き進んでいくレミリア。

 術も用いて撃墜しようとする永琳だが、二方向からレーザーが飛来した。

 

「ちっ!」

 

 魔理沙とアリス(の人形)によるレーザーを結界で防いだが、瞬く間にレミリアが近づいてくる。

 どちらを優先するか瞬時に決断した永琳は、結界を維持しながらレミリアを滅すべく、術を行使する。

 

「いい加減に消えなさい、吸血鬼」

 

 ――神符「天人の系譜」

 

 先程のものを超える規模のレーザーが照射される。

 それは延々と増え続け、無限に広がるが如き勢いだった。

 

 その間も魔理沙とアリスの攻撃は結界を打ち続けている。

 純粋な魔力では自身に及ばないとはいえ、火力はなかなかのもので、このままでは突破されそうだった。

 ならばその前に吸血鬼を堕とす、と永琳の攻撃は激しさを増す。

 

 無謀にも正面からレーザーの雨を突破しようとするレミリアはいくつもの直撃を受ける。

 

「ぬっ――ぐうああああああ!」

 

 決死の突撃を続けるが、永琳に到達するまでに無数のレーザーに覆いつくされてしまった。

 

「ようやく仕留めたかしら……?」

 

 光に飲み込まれたレミリアの身体は靄となり、やがて消えていった。

 

「レミリア!?」

 

「余所見をしてる場合じゃないわ、魔理沙! また殺されかけるわよ!」

 

「くっ……!」

 

 魔理沙は切り替えて再び永琳へと攻撃を仕掛ける。

 

 焦る魔理沙とは対照的に、意外にも咲夜は冷静だった。

 彼女は永琳たちから離れたところに立ち、自らの服に手を当てて能力を行使した。

 

「時は加速する」

 

 咲夜の服の中で、何かが動いたとき――彼女の姿は永琳の傍にあった。

 

「いつの間に!?」

 

「ひゃっほおおおおおおお!」

 

「なっ――ぐああああ!」

 

 永琳の驚きは二度。

 一度目は気が付いたら人間のメイドがすぐ近くにいたこと。

 二度目は倒したと思った吸血鬼が、メイドの服の中から飛び出してきたこと。

 

 奇襲を仕掛けたレミリアはグングニルを投擲する。

 それは魔理沙たちの砲撃で崩壊寸前だった結界を貫き、見事に永琳の右腕を切断した。

 

 

「おお、レミリア! 無事だったか!」

 

「なんであれで平気なのよ」

 

「これが月の血か……。神の系譜とはいえ、地上の民と同じように血は赤いのね」

 

 もぎ取った腕の血を味見するレミリア。

 

 

「……!? あれだけ打ち据えた吸血鬼が完全に回復している?」

 

 ――上位の吸血鬼は自身の魔力を込めた棺桶や邪な土(アンホーリーソイル)で休めば一晩で復活するというが……いくら何でも速すぎる。

 

 

「……舐めた血から記憶を探ってみたが、あいつはただの月の民じゃない」

 

「どういうことだ?」

 

「おそらく噂に聞く“蓬莱人”というやつよ」

 

「蓬莱人? なんだそりゃ」

 

「飲むと不死になる禁忌の薬を飲んだ者たちのことよ」

 

「不死……つまりあいつは死なないのか?」

 

「普通の手段ではまず無理ね」

 

「ますます反則だろ」

 

「……レミリア。その不死というのはどの程度のものなの?」

 

「文字通りだ。仮に肉体が消滅しても魂を核に復活する」

 

「……そう。なら、私の切り札を使うわ」

 

「ほう?」

 

「あまりにも威力があるから、人形たちの前面には出ないようにして。巻き込まれるわよ」

 

「オーケーだ」

 

「アリスの切り札か、何だろうな」

 

「私は同じように全体のフォローをします」

 

 

 レミリアたちが作戦を立てている間に、永琳は自身に術をかけて右腕を再生させていた。

 

「せっかくお嬢様が奪った片腕が、治ってしまいましたね」

 

「まあいい。与えたダメージ、減らした魔力に意味はある。少しずつ追い詰めていけばいいだけだ」

 

「見せてくれよ、アリス。その切り札ってのを」

 

「ええ、任せて」

 

 

ーーーー

 

 

 その人形は変わっていた。

 

 大きさはアリスの他の人形と同じだが、見た目は可愛らしい少女ではなく、黒い燕尾服を身に着けた道化師のような姿、その顔には笑みを浮かべた仮面があった。

 

 不気味な道化師は爆発する人形軍団の中にひっそりと紛れていた。

 

 人形の爆発は並の妖怪には脅威になるが、永琳にとってはさほど警戒に値しない。それよりは自身の腕をもぎ取った吸血鬼の方を注視して、人形たちは適当な距離で迎撃するだけにしていた。

 

 その中で道化師人形も矢で貫かれた。

 

『KILL YOU‥‥』

 

 宇宙を覆うほどの閃光がほとばしると、永琳の肉体は消滅した。

 

 

ーーーー

 

 

 ありえないほどの巨大な爆発が起こり、その側にいた永琳は一溜まりもなかった。

 

「……な……なんだよ、あれ?」

 

 あまりの驚愕に魔理沙は呆然としていた。

 何が起こるか知っていたアリスは淡々という。

 

「私の切り札。死神人形よ」

 

「いや、下手すれば私たちもチリになる威力だぞ!?」

 

「威力は極大だけど、規模は抑えるように調整しているから大丈夫よ」

 

「なあ、アリス。私は魔界で聞いたことがあるんだが、あれはまさか……」

 

「そう。魔界でのみ採れる、魔力を無尽蔵に吸収する黒魔晶という石。それを加工した超爆弾――『黒の核晶(コア)』よ」

 

「やはりか。とんでもないものを持ち出してきたな」

 

 ――黒の核晶は込める魔力によって威力が変わる。あの人形に仕込めるサイズでも核兵器すら凌駕できる。その気になれば日本列島くらい吹き飛ぶな。アリスは怒らせない方が良さそうだ……。

 

「なあ……。いくら月の民でも、ああなっちゃあ流石に終わり――」

 

 そのとき、魔理沙はある地点で何かが発光しているのを見つけた。

 

「おい、あれは……」

 

 その光は段々と人間の形を成していき、最後には一人の女性――八意永琳の姿となった。

 

「うおお!? 復活しやがった!」

 

「本当に不死身なのね」

 

「だから言っただろう。あれが蓬莱人だ」

 

 

「はあっ、はあっ……! やってくれますね!」

 

 

「一発目はいいが、次からは向こうも警戒している。そうそう死神人形を近寄らせてはくれんぞ」

 

「ええ、それも想定通りよ」

 

「……そうか、なるほど。賢い手を考える」

 

「お褒めに預かり恐悦至極」

 

 

 

 レミリアの言う通り、永琳は死神人形を警戒して、それ以降はすべての人形を遠距離で迎撃し出した。

 

「! 二度目はありません! はあああああ!」

 

 近寄る人形軍団の中に死神人形を見つけた永琳は巨大な光球を投げつけて、一網打尽にした。

 

「……爆発が小さい? 不発だったの?」

 

 訝しむ永琳だが、再び人形軍団が迫る。その中には当然のように死神人形もいる。その数は3体。

 

「さっ……む、無駄です!」

 

 永琳の放った光球が人形たちを飲み込む。爆発が巻き起こるが、それは普通の爆弾人形の規模だった。

 

「……また小規模の爆発」

 

「隙あり!」

 

「がふっ!?」

 

 死神人形に気を取られていた永琳に別方向から迫ったレミリアのグングニルが突き刺さる。

 

「こ、の……!」

 

 反撃に術を行使しようとする永琳だが、すぐにレミリアは反転して遠ざかっていった。

 そして入れ替わるように死神を擁する人形たちがやってくる。

 

「こ、これが狙いですか……! 私を死神人形への疑心暗鬼に……!」

 

 いまだかつて一瞬で肉体を吹き飛ばされた経験などなかった永琳。

 たとえ死なないとわかっていても、先程の一発は永琳にトラウマを植え付けていた。

 

 ――あの大爆発を起こす人形はさっきの一体だけ? いや、そんな保証はない。それに普通の見た目でも大爆発を起こすやつがいるかもしれない。やはり全ての人形を近寄らせずに粉砕しなければ……!

 

 限りなく不滅に近い蓬莱人だが、短期的に見ればその復活には限界がある。滅びはしなくとも、無力化することは可能。それを永琳は誰よりもわかっていた。

 

 ――最も警戒するのは人形使いの爆弾。そして個のチカラが最も高い吸血鬼。こいつらを要注意とし、それ以外の連中――特に人間の魔法使いは軽視して問題ない。

 

 永琳が冷静に戦力分析をした結果、魔理沙への注意を疎かにした。

 その瞬間――

 

「ほらよっ! お届け物だぜ!」

 

『KILL YOU‥‥』

 

「!?」

 

 本日、二度目の黒の核晶が炸裂した。

 

 

ーーーー

 

 

 一度目は人形軍団の中に紛れて爆発。

 二度目は人間の魔法使いが配達して爆発。

 三度目はいつの間にか傍に置かれていて爆発。(おそらくメイドの仕業)

 

 一日に三発の黒の核晶を受けた存在など、魔界を含めて初めてかもしれない。

 流石の永琳もこれにより大幅に消耗をさせられていた。

 

「はあっ、はあっ、はあっ……!」

 

 消耗も問題だが、人間の魔法使いとメイドの動きにも注意を払わないといけないのが厄介だった。

 正面からは変わらず吸血鬼が攻めてくるが、他の三人を放置することは死神人形への警戒を解くということ。それは出来なかった。

 

「そろそろ心が折れそうになっているんじゃない? えーりん?」

 

「私の心が折れる時は姫様がいなくなった時のみ!」

 

 だが、永琳は焦っていた。心こそ折れてはいないが、自分がこの連中に手こずっているという事実が彼女から余裕を失わせていた。

 永琳の主である姫は強い。そこらの地上の民になど負けはしない。だが、目の前の四人を見ていると、姫が不覚を取る可能性も考えずにはいられなかった。そのことが思考を鈍らせ、動きも精彩を欠くという悪循環に陥っていた。

 

 精神を攻める。

 これは再生力の高い妖怪に有効な戦法だが、不死の蓬莱人にも効果的だった。

 

 

 再びレミリアが高速で突撃を仕掛ける。

 対して永琳は大秘術を行使する。

 

 この一撃で決めると決断したのか、永琳からは今まで以上に強大な魔力が感じられる。

 それは天に刃向かう愚か者を滅する光の裁き。

 いかなレミリアとてまともに食らえば、消滅も覚悟しなければならないほどの魔力が込められていた。

 

 しかし、吸血鬼は止まらずに一直線に月の頭脳に迫る。

 レミリアの手からは魔力が発せられている。弾幕で突破しようというのだろうか。

 

 自分の大秘術をそれで打ち破れるはずもないと、冷笑した永琳は天の裁きを解き放った。

 

「――天網蜘網捕蝶の法!」

 

 逃れようもない光の網がレミリアに襲い掛かる。

 速度を落とさず高速飛行していた彼女に回避する術はなかった――が、レミリアが溜めていた魔力を自身にかざすと、輝く光の壁があらわれた。

 

石凝姥命(いしこりどめのみこと)の八咫の鏡――!?」

 

 光の壁が永琳の秘術をはね返した。

 

「覚えておくのね、これが魔法反射(マホカンタ)だ……!」

 

「――ぐっああああああ!」

 

 永琳が反射された大秘術に飲み込まれた。

 強大過ぎる魔力が、それを放った術者に襲い掛かる。

 

「これで――終わりよっ!」

 

「がっ!」

 

 満を持してレミリアのツメが腹部に突き刺さり、エナジードレインが存在のすべてを吸収にかかる。

 

「おおおおおお!」

 

「ぎぃっ――あああああああああああ!!!」

 

 幻想郷にて初めて全力で行使された紅い悪魔のエナジードレイン。

 永琳の悲鳴が段々と小さくなっていく。

 

「――ああああああぁぁぁ………」

 

 

 

「ふううぅ……何とか勝てたか」

 

 永琳が完全に沈黙したことを見届けたレミリアはエナジードレインをやめて、彼女を解放した。

 

「……あれだけ消耗させても吸収できた量が半端じゃない。万全の状態だと明らかに許容量オーバーね。ふふふ、私もまだまだ鍛えないと。さて――咲夜!」

 

「はっ、お嬢様」

 

「こいつが気絶している間に拘束しておきなさい」

 

「かしこまりました」

 

 咲夜が永琳を無力化していると、魔理沙とアリスもやってきた。

 

「やったんだなレミリア!」

 

「うむ。みんなの勝利というやつだ。誰かが欠けてもこの結果はなかっただろう」

 

「なんだよ、なんだよ。ずいぶん素直じゃないか」

 

「……それほどの相手だったからね。そんな気分にもなるさ」

 

「正直、大赤字だわ」

 

「お前、無茶苦茶するな。黒の核晶なんて一日に何度も使うものじゃないだろうに」

 

「その通りよ……。ああ、これが知られたらお母さんに怒られる」

 

 

 ゴゴ……!

 

 

「おい、この変な宇宙が歪んでいってるぞ」

 

「術者が倒れたことで狭間の世界が崩壊していくか。脱出して霊夢たちと合流するぞ」

 

「オーケーだ」

 

 

 序盤は落ち着き払って隙が無かった永琳だが、戦いが長引くにつれて焦りが生まれていった。

 それはすべて自らの存在意義と決めた主――姫を想うからこそ。

 だが、それにより先の行動が読みやすくなり、レミリアたちは勝利を手繰り寄せることが出来た。

 それが彼女の真のチカラ――運命を操る程度の能力だったのか、それは本人にしか分からないことだった。

 

 

 




月の頭脳の敗因の一つ。

アリス「てめーは私を怒らせた」

初手で魔理沙が殺されそうになって、実は誰よりもブチ切れていたアリスさん。
魔界神にも止められていた最終兵器(黒の核晶(キルバーン))を容赦なく使う。

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