レミリア・スカーレットの挑戦   作:Amur

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第十七話 『花の異変』

「私の扱い悪くありませんか?」

 

 烏天狗がレミリアに何か言い始めた。

 

「悪くないわよ」

 

「いや、悪い! 悪いですね! この前だって新聞を執筆している最中に襲い掛かってきて――私の傑作はどこにやったんですか!?」

 

「夜雀にもゴミ扱いされたから燃やしておいたぞ」

 

「人の新聞に何てことしてくれるんですか! 言論弾圧は許されませんよ!」

 

 二人がいるのは人里の団子屋。

 余計な騒ぎを起こさないため、レミリアは羽を隠して人間のふりをしている。

 文の方は人里にもそれなりに馴染んでいるので烏天狗の姿そのままだった。

 

「ふざけたことを書いているから、お灸を据えただけだ。お前ももう少し節度を持ってだな――」

 

「チカラに屈して書かされた記事に何の価値がありましょう。私は常に心のまま書きたいものを書くのです!」

 

「その心意気には同意するけどね」

 

「そうでしょう。流石に分かっていらっしゃる」

 

「まあ、ムカつく記事を見つけたら燃やすけど」

 

「ひどい! 私の心意気を買ってくれたはずでは!?」

 

「それはそれ、これはこれよ」

 

 レミ文がギャーギャーと団子屋で騒いでいると、暴力巫女の声が聞こえた。

 

「見つけたわ、妖怪! さあ、さっさと私に退治されなさい!」

 

「え、なんですか?」

 

「なんで妖怪退治モードになってるの? 霊夢」

 

「決まってるでしょ、異変解決よ。幻想郷中に四季すべての花が咲き誇る異変が起こっているのよ」

 

「ほほお、花の異変!? これは取材しなければ!」

 

「だからこっちはいつも通り、目についた妖怪を退治していってるのよ」

 

 ――ああ、もうそんな時期か。六十年目の東京裁判、いや東方裁判か。

 

「こうしてはいられません! では皆さん、ごきげんよう!」

 

 文は目にも止まらぬ速さで飛び去ってしまった。

 

「こらあっ! 退治されてからいきなさい!」

 

 颯爽と離脱した文に怒りをぶつける霊夢だが、追い付けないと考えたのか、レミリアの方をキッと睨みつけてきた。

 

「あんたは逃がさないわよ。さあ、表に出なさい!」

 

「……(もぐもぐ)」

 

「……? ちょっと、食べてないで早くしなさいよ」

 

「いやよ。見てわかるでしょ、お団子を食べるのに忙しいのよ」

 

「店の中にいられたら退治できないでしょ! ほら、さっさと出・な・さ・い!」

 

「いやああああ! 博麗の巫女が無理矢理-っ!」

 

「ちょっ、あんた!?」

 

 レミリアが悲鳴を上げていると、団子屋の店主が奥から飛び出してきた。

 

「霊夢さん! そんな小さい子に何をしてるんですか!?」

 

「いや、だってこいつは……」

 

「里の自警団に通報しますよ。それにもし店で暴れて備品を壊したら、その分を神社に請求させてもらいますからね」

 

「!?」

 

神社に請求と聞いて戦慄する霊夢を、店主の後ろに隠れながらレミリアがニヤニヤ見ていた。

 

「こ、こいつ――!」

 

「ほら、何も買わないんなら帰った、帰った」

 

「ぐ……お、覚えてなさいよ! レミリア!」

 

「怖ーい♪」

 

「このガキィ……!」

 

 閻魔も怯みそうな形相でレミリアを睨みつけた霊夢は渋々と団子屋を立ち去った。

 

「ふ、虚しい勝利ね……。あ、おっちゃん。お土産用にそれぞれ包んでちょうだい」

 

「あいよ」

 

 

ーーーー

 

 

「パッチェさん、お土産の団子です」

 

「そこに置いといて」

 

「はい……」

 

 妙に下手に出ているレミリアの方を向きもせず、パチュリーは何か調べ物をしていた。

 

「と、ところで、パチェ。例の件の進捗は……」

 

 ギロッ!

 

「う……」

 

「月に行くなんて突拍子もないことが、すぐどうにかなると思っているの?」

 

「いえ、思ってないです」

 

 最近のパチュリーはレミリアの月に行くという野望を叶えるために、ロケットの研究に時間を取られていた。

 

「ほ、ほら、肩でも揉むから」

 

 もみもみ……

 

「……ふう。問題は推進力ね。現状だと決め手に欠けるわ」

 

「魔理沙で代用するという手はどうかしら?」

 

「ある程度の距離ならそれも可能でしょうけど、さすがに魔力も体力も持たないわよ」

 

 ――魔理沙ロケット……。冗談だったんだけど、パチェの計算だと魔理沙が複数いたら月に行けるのか。

 

「……そういえば霊夢が言ってたけど、また異変が起こってるみたいね」

 

「へえ……レミィたちが解決した月の異変みたいな大掛かりなやつ?」

 

「あそこまでのはそうないでしょ。なんでも四季の花が一斉に咲く異変だそうよ」

 

「たしかに異常なことだけど、それで誰か困るの?」

 

「いや、特別誰かが困ってるわけじゃない……かな」

 

「なら放っておいていいんじゃない?」

 

「そうね。霊夢は怠け巫女の名で呼ばれないように、積極的に動いてるみたいだけど」

 

「ふ~ん」

 

 今回の異変は時間が経てば勝手に解決する。それを知っているレミリアとしては率先して何かする気はなかった。

 

「さて、私は修行のために出かけてくるわ」

 

「また? 鬼とも五分で渡り合ったんだし、すでに十分強いでしょ」

 

「いや、まだまださ。月の民と戦って自分の未熟さを痛感したよ。そういう意味でも永夜異変はよい経験になった」

 

「月の民……それほどの存在なのね」

 

「ああ。だから月に行く前に更なる地力の向上をしてくる」

 

「そう……。まあ、せいぜい頑張って」

 

「ええ」

 

 

ーーーー

 

 

 文は花の異変を記事にするために、ネタ集めに奔走していた。

 

「ネーター、ネーター、どこですかー?」

 

 

「わかっているなら実行しなさい!」

「すみません! すみません!」

 

 

「おや、あのガミガミ叱ってるのと叱られてるのは……閻魔様と死神?」

 

 

「……小町への説教はこれくらいにしておきましょう。私の説教を必要としている者はまだ大勢いるのです」

 

 

「閻魔様に捕まったらネタ集めの時間がなくなります。ここは今のうちに……あ、死神と目があった――」

 

 ヒュンッ

 

「おっと、どこに行くんだい?」

 

「速い!? 幻想郷最速の私の前を塞ぐとは!」

 

「単純な速度ならあんただろうけど、あたいに距離は関係ないからね」

 

「そこにいるのは烏天狗の新聞記者。ちょうどよかった、探していたのです。貴方にも説教が必要ですからね」

 

「ちょっと、何てことしてくれるんですか!」

 

「ふふん、あんたも四季様のありがたい説教を受ければいいさ」

 

「では早速始めますよ」

 

「私などより閻魔様の説教が必要な方はたくさんいますよ! 例えば紅魔館のレミリアさんとか!」

 

「そう、貴方の言う通り。彼女は少し暴れ過ぎている。この後は紅魔館に行くつもりです」

 

「やっぱりそうですよね!」

 

「けど、まずは貴方から。そう、貴方は少し好奇心が旺盛すぎる――」

 

「あああああ」

 

 

ーーーー

 

 

 魔界――

 

 

「なるほどね。それでまたこっちに来たのかい」

 

「そうよ、魅魔。ここなら大暴れしても大丈夫だからね」

 

 確かに魔界規模で見れば、そう簡単には壊れないが、それでもレミリアや魅魔のような実力者が戦闘をすれば周囲の被害は甚大なことになる。

 もっとも二人はそこまで気にしていないようだが。

 

「そうだ。アリスにあんたのことを話したけど、メイド契約はもう無効とか言ってたわよ」

 

「困った娘だねえ。いまでもあいつは私のメイドだってのに」

 

「それとやっぱり魔理沙はあんたのことを気にしてたわよ」

 

「う……私としては黙って離れたこともあって気まずいんだけどね」

 

「まあ、そのうち会ってやりなさいよ」

 

「……そうだね」

 

「さてと、修行を始めようかな」

 

「何かに絞ってやるのかい?」

 

「地力の向上は今まで通りだけど、それに加えて太陽の光への対策ね」

 

「太陽の光?今のお前さんなら並の吸血鬼と比べて、ほとんど弱点にもなってないだろう」

 

「それでも多少は火傷もするし、光系統の術はやっぱり痛いわ」

 

「ふむ。手は考えているのかい?」

 

「ええ。私に相応しいのをね――」

 

 

 

 レミリアは着々と月に向けての準備を整えつつあった。

 紅い吸血鬼が月の地を踏む日は近い――。

 

 




レミリア、魔界に行くことで閻魔(四季映姫)の説教を回避。


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