レミリア・スカーレットの挑戦   作:Amur

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第二十一話 『月の異変(エピローグA 月の都)』

「ちょ、ちょっと待ってください! 用もないのに部外者を月の都にいれるわけにはいきませんよ」

 

 自分も月の都に行くと言い出したレミリアに依姫が慌てる。

 

「用はあるわよ。スペルカード戦の戦利品としてお土産をもらいに行くというね」

 

「う……あ、そうです。そのスペルカード戦の前に言ったはずです。私に勝っても都には入らせないと」

 

「そのつもりだったけどね。でも霊夢は入るんでしょ?」

 

「それはそうですが……」

 

「ならついでに私が行っても問題ないわよね」

 

「いえ、問題はあります。多量の穢れを持つ者は月の都に入ってはいけないのです。種族差別をするつもりはありませんが、決まりですので……」

 

「ああ、そこは大丈夫。永琳に許可をもらってるし」

 

「八意様が!? そ、そんなウソは通じませんよ! あの方の名を出して私を騙そうとしても――」

 

「咲夜、あの薬出して」

 

「はい、お嬢様」

 

「薬……?」

 

 咲夜が取り出したのは薬瓶。

 瓶にはひっくり返した湯呑に顔をつけて永琳の帽子を被らせた珍妙なキャラクターが描かれている。

 

「む……そのヤゴコロ印は確かに八意様お手製の証」

 

 

「お、おい霊夢。あの変なキャラはそんな権威あるやつなのか?」

 

「知らないわよ」

 

 

「これを月の都に入るために永琳にもらったのよ。どんな薬だと思う?」

 

「貴方が月の都に入るための薬……まさか!?」

 

「察しがいいわね。ずばり“穢れを消す薬”よ」

 

「――!」

 

「ま、あくまで一時的にだけどね」

 

「なんと……」

 

「これでわかったでしょ? 永琳がこれをくれたってことは、穢れを抑制したら月の都に入ってもいいということよ」

 

「むう……確かにそのようですね。まさか、八意様がそのようなものまで渡しているとは」

 

「まあ、これは私から永琳に頼んだんだけどね。月の民は穢れを嫌うって聞いたから」

 

「……わかりました。そこまで考えているのであれば良いでしょう。貴方も月の都までご案内します」

 

「そうこなくっちゃ!」

 

 ――永琳の許可が出てると知れば即Ok。それを利用してる私が言うのもなんだけど、私情入りまくりよね。

 

「よーし、よっちゃんの許可も出たことだし、月の都で観光よ、()()()!」

 

「おう! 月の都に入れるとはついてるな!」

 

「お嬢様に感謝しなさいよ、魔理沙」

 

「やれやれ。高いお酒でもお土産にもらわないとやってられないわ」

 

「え……みんな? え……え??」

 

 その後、上手いこと言いくるめられた依姫はしぶしぶ全員を月の都に案内することとなった。

 

 

ーーーー

 

 

 月の都は遥かな昔から月の裏側に存在する大都市である。

 建物は1000年ほど昔の中国大陸で見られたような様式だが、その合間に現代でも再現不可能な構造をした高層ビルが並んでいる。

 その月の都に幻想郷よりやって来た吸血鬼+三馬鹿トリオが足を踏み入れた。

 

「いいですか、皆さん。ここでは私の指示をよく聞いて、勝手な行動は――」

 

「ひゃっほう! 探検よー!」

 

「お宝が私を呼んでるぜー!」

 

 レミリアと魔理沙がさっそく勝手な行動を始めた。

 

「言ってるそばから!? こらあああああっ! 人の話を聞きなさい!!」

 

 

 バカ二人は依姫からめちゃくちゃ叱られていた。

 

「まったく貴方たちは団体行動というものをですね――!」

 

 ガミガミガミ!

 

「ついカッとなってやった、今は反省している(次はどこに行こうかしら)」

「ついカッとなってやった、今は反省している(お宝が見つからなかった)」

 

「本当に反省していますか!?」

 

「「もちろんだ」」

 

「私たちは何日くらい滞在する予定なの?」

 

 二人のフリーダムはいつものことなので、自然に流した霊夢が依姫に問いかける。

 

「ん……そうですね。おおよそ10日といったところでしょうか」

 

「微妙に長いわね」

 

「幻想郷まで帰りは一瞬と聞いてますが、それでも行きの日数と合わせると約一か月。これだけ紅魔館を空けると何だか不安になりますね」

 

「10日! その間に行けるところはすべて行くわよ!」

 

「10日か~。お宝をゲットするには十分すぎる時間だぜ」

 

「貴方たち本当に、本当に反省してるんでしょうね!?」

 

「「もちろんだ」」

 

 

ーーーー

 

 ――綿月姉妹の家

 

「まさか依姫がお友達をこんなに連れてくるなんて思わなかったわね。驚いたけど、姉として嬉しいわ」

 

 海と山を繋ぐ月の姫にして依姫の姉――綿月豊姫はうんうんと頷いていた。

 

「いえお姉さま、私としてもこんな予定では……」

 

「そう! このレミリアとよっちゃんは激闘を繰り広げた好敵手(とも)として友誼を結んだのよ!」

 

「よっちゃん!? なにその呼び方! 姉である私を差し置いてそんな愛称を許すなんてずるいわよ、依姫!」

 

「いや、許したというか、許させられたというか……」

 

「まあまあ、そのあたりの話は酒でも飲みながら話そうじゃないか。まずは乾杯といこうぜ」

 

「なんであんたが仕切ってんのよ」

 

 魔理沙と霊夢は勧められる前に勝手に席に座っていた。

 

「あんたたちはどこでも平常運転ね」

 

「咲夜の主には負けるぜ」

 

「魔法使いさんの言う通りね。まずはこの出会いに乾杯といきましょう」

 

「うむうむ。話せるわね、豊姫。さあ、我が紅魔館からヴィンテージ物(咲夜製)のワインを出すわよ」

 

 

「ええ! 依姫負けちゃったの!?」

 

「う……悔しいですが、不覚を取りました」

 

「とはいえ戦績で言えば一勝二敗で私たちの負け越しだがな。三戦目でようやく1勝といったところだ」

 

「それでも凄いわよ。てっきり侵入者を全員叩きのめしたのかと思ってたから」

 

「ぐぬぬ……。そのうち借りは返しに行きますからね」

 

「え!? ……う、うん。いつでも歓迎するわ」

 

「それはいいわね。私も八意様に会いたいし、そのときは一緒に行くわ」

 

「永琳は地上に逃亡中で追われる身なんでしょ? 気軽に会いに来ていいの?」

 

「もちろん、本当はよくありません。八意様の討伐は月の使者のリーダーである私たちの仕事の一つでもありますので」

 

「ま、しょせん建前で、そんな日は永遠に来ないけどね。バレなければいいのよ」

 

「そう……」

 

 意外とゆるゆるな月の姫たちにやや呆れ気味のレミリア。

 

 

「そういえば魔理沙は?」

 

 霊夢がきょろきょろと見渡すが、白黒魔女はいつの間にか姿を消していた。

 

「この館を宝探し(探検)してくるって出ていったわよ」

 

 何でもないように咲夜が報告する。

 

「初対面の相手の家でもこれか。あんたも止めなさいよ。家主を怒らせて月から帰れなくなっても知らないわよ」

 

「まあ流石の魔理沙も限度は弁えてるでしょ」

 

「弁えてると思う?」

 

「……」

 

 

 皆で気分よく酒を飲んでいる間に外はすっかり暗くなっていた。

 ぼおっと窓の外を見ていたレミリアが、唐突にひらひらと手を振る。

 まるでそこに知り合いでも見つけたかのように。

 

 

ーーーー

 

 ――綿月姉妹の家に滞在二日目

 

 レミリアと魔理沙は月の都を探検。

 咲夜はお土産になりそうなものを探して出歩いていた。

 

 その間、霊夢は依姫と共に各地で神降ろしを披露していたが、一人だけ仕事をさせられてかなり不満そうだ。

 

「中華風の建物が多いけど、たまに惑星フリーザにあるような未来的な建造物があるのが面白いわね」

 

 適当に探索しているようで、実は運命を操る程度の能力を使って、面白そうな道を選んでいたレミリアは、いつしか人気のない場所に入り込んでいた。

 

 やがて辿り着いたのは大きな建物。

 入り口には門番の姿もあったが、透明化魔法(レムオル)を駆使して難なく突破している。

 

「ずいぶんと緩い警備ねえ。まあ、侵入者なんていないんだろうけど」

 

 実際、この建物が建造されてから侵入者は元より関係者以外で近づこうとする者すら一人もいなかった。門番の配置もほぼ形式的なものと誰もが考えていたくらいだ。

 

 建物の中に入ると、横幅の広い廊下が続いている。

 左右にドアもなく、奥まで一本道のようだ。

 

「変な建物ね。けどちょっと永遠亭に似てるかも?」

 

 レミリアが長い廊下を進んでいくと、最奥に一つだけ大きな部屋を見つけた。豪華な作りだが、入口が鉄格子で封じられていることから牢屋だと思われる。

 

「この建物にある部屋がこの牢屋一つ?」

 

「……玉兎以外がここに来るとは珍しいな」

 

 その声は牢屋の奥から聞こえた。目を向けると人影が見えるが、御簾のようなもので遮られて姿はわからない。ただ、声色からすると女性のようだ。

 

「月の都にも罪人はいるのね」

 

「私ほどの罪人は珍しいがね。そのようなことを言う貴方はもしや地上の民なのか?」

 

「そうよ」

 

「地上の民がここまで入り込むとは驚いた。いったいどうやって私のもとまで辿り着いたのだ?」

 

「運命の導くままに」

 

「詩人だな、地上の者よ」

 

「私はレミリア・スカーレットよ。レミリアでいいわ」

 

「レミリアか。私は××」

 

「ふむ?」

 

「レミリアには慣れない発音だったかな。地上の者からはこう呼ばれることもある――――――“嫦娥”と」

 

 




幻想郷一行はボケばっかりでツッコミ役がかろうじて咲夜くらいな為、よっちゃんの心労は10日ほど続く。

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