守矢神社の中で皆は食卓を囲んでいた。
弾幕ごっこをしてお腹もすいたので、箸も進んでいるようだ。
ちなみに前世の影響もあり、レミリアは箸を問題なく使えている。
「こら、もんぺ女。いつか決着つけてやるからね」
「上等だ。いつでもかかってこい、カエル女」
「くうう~。さすがは隠しボスのレミリアさんですね。霊夢さんや魔理沙さんに敗北後は修業をしたのですが、及びませんでした」
「まだ弾幕ごっこを始めて1年も経ってないんでしょ。それであれなら上出来よ」
「隠しボス? 何のことだ、早苗?」
そう問いかけたのはこれまた変わった恰好をした女性だ。
青紫の髪にアクセサリーのように注連縄を乗せ、腰にも大きな注連縄を背負うように付けている。赤い服の胸元には首から吊り下げた黒い鏡が存在を主張する。
彼女こそ守矢神社の祭神――八坂神奈子。
「レミリアさんは幻想郷の隠しボスで普段は表に出てこないそうですよ!」
「え……そういう設定なの?」
怪訝な諏訪子に対してレミリアは適当に返す。
「普段は紅魔館地下の玉座の間で挑戦者が来るのを待っているのよ」
「おおー! やはり! まさに勇者を待つ魔王って感じですね!」
早苗は目を輝かせるが、諏訪子や神奈子は困惑気味だ。
「お二方、レミリアさんの話は半分くらいに聞いておいた方がよいかと」
さすがに文にツッコミを入れられていた。
「そういえば、レミリアさんは月に行ったんですよね」
「そうよ。我が紅魔館のチカラを結集したロケットでね」
「いいなー! 次は私も連れて行ってくださいよ!」
「ま、機会があればね。何なら文と妹紅も来るかしら? 月に興味あるでしょ」
「おお! 是非お願いしますよ!」
「ふん、別にあんなところに興味なんてないさ」
「とか言って私たちが月に行くときは輝夜が一緒に帰るんじゃないかって、やきもきしたんじゃない?」
「な、何故それを!?」
「妹紅さん、そうなんですか? 普段はあんなに嫌っている風なのに……ほほう~、これは良いネタを手に入れましたね」
「あ……いや、違う! 勘違いするな!」
慌てる妹紅にニヤニヤする文とレミリア。
それを見てますます顔を赤くする妹紅。
「やめなよ、早苗。月なんてお高くとまった奴らの巣窟だよ」
「え、そうなんですか」
「あ~、まあ諏訪子と月の神々はあまり仲が良くないからね」
神奈子の発言を聞いてレミリアがふむと考えを述べる。
「月にはいわゆる天津神系の連中が多いから、土着神とは反りが合わないのかしら?」
「そういうことだね。私はまあ微妙なところだけど」
「――ところでレミリアさん」
「ん?」
「弾幕ごっこが強くなるにはどうしたらいいですか?」
「んー、そうねえ。やっぱり場数を踏むのがいいと思うわよ。異変時の霊夢や魔理沙なんて少しでも怪しいと思ったら、いえ怪しくなくても目に付いた妖怪は片っ端から退治してるからね」
「いやいや、怪しくなくても退治するとか……。魔法使いも問題だが、それより博麗の巫女がそんなんで大丈夫なのかい?」
神としてエキセントリックなこともするが、祟り神の諏訪子よりはまだ穏やかな神奈子が霊夢の行動に疑問を唱える。
「むしろ霊夢さんの方がひどいですよ。妖怪からしたら通り魔に近いと思います」
「私からしたら霊夢もお前も通り魔だったが……」
霊夢への流れ弾で妹紅がレミリアをチラリと見るが、本人はあさっての方を向いてとぼけている。
「なるほど……。私も幻想郷のことを学んだと思いましたが、まだまだ自身の常識に縛られていたようです」
「ちょ、ちょっと、早苗? 常識は持っていていいんだよ。あの連中の色に染まらなくても」
「うむ、諏訪子の言うとおりだ。そう焦らずともよいだろう」
諏訪子と神奈子が心配してブレーキをかけようとするがレミリアは更に煽る。
「私が見たところ早苗は才能があるわ。強くなりたいなら常識の檻は壊さないとね」
「はい!」
「はいじゃないよ!? ちょっと、あんた! 早苗が真っ赤に染まったらどうしてくれるのさ!」
「ふふふ……どうするもなにも朱に交わるのは確定事項だ。私にはその運命が見えるのだから」
「運命? なに言ってるのさ」
「そういえばレミリアさんはそんな能力でしたね。ある程度、その人の未来やら運命やらが見えるとか」
「まあね」
「ええ!? じゃあ今のは比喩じゃなくて、実際に早苗がそうなるってこと!?」
「そういうことだな」
「!?」
ーーーー
レミリアたちが守矢神社に行った翌月――幻想郷の各地で異常気象が発生していた。
梅雨に入ったにも関わらず、博麗神社周辺では殆ど雨が降らなかったのだ。かと思えば魔法の森では霧雨や季節外れの雹が降ったりと、異常気象――いや、ここまで来ればそれは異変の予兆と言っても過言ではない。
「おかしいわね。人里では普通に雨が降っているのね」
日照り続きで不機嫌な博麗霊夢は買い物をしに人里に来ていた。
「こんなところでサボってないで早いとこ解決してよね、博麗の巫女様?」
人間に化けたレミリアが霊夢と並んで歩きながら異変の解決を催促する。すっかり里に慣れた感じでのんびりと団子を食べていた。
その隣には文もいて、新しいネタ集めをしているようだ。
「天気の異変……やはりここは前科持ちを締め上げるのがいいかしら。前に広範囲に紅い霧を出したバカがいたわよね? いまもなんか霧っぽいし」
「おやおや、巫女様はまさかこんな小さな子供に手を上げるのかしら?」
ピク!
霊夢の額に青筋が浮き立っていた。
「うわあ……。レミリアさん、後が怖くないんですか?」
「ふふふ……この私に怖いものなどあるはずがないだろ?」
人里では人間の子供の姿でまぎれているレミリアなので、霊夢もなかなか手を出せない。
「あんた、覚えてなさいよ」
「ふっふっふ……」
「先月はレミリアさんや妹紅さんのおかげで良いネタが入りましたが、今月は微妙ですねえ。この異常気象だけだとパンチが弱いですし」
「そのうち面白い事件が起こるわよ」
「お、レミリアさんがそう言うということは。期待していいんですか?」
「事件って例えばどんなよ?」
「巫女が嵐に飛ばされたり、神社が倒壊したりとか?」
「なるほど。やはり喧嘩を売ってるのね」
ーーーー
その後、博麗神社に帰宅した霊夢とついてきたレミリアに文はそれを目撃した。
突如発生した大地震により激しく揺れ動く博麗神社。
だが、遠くを見れば何も起こっていないので、この地震は局所的に発生しているようだ。
「ゆ、揺れてる! こんな地震は滅多にないわよ!」
「オンボロ神社は大丈夫かしら」
「なにがオンボロですって! この幻想郷のシンボルでもある博麗神社がそう簡単に――」
ズゴゴゴゴ――!
「あああああー!?」
「危ないですよ、霊夢さん! もう少し離れましょう!」
――ゴゴゴ…………
博麗神社はあっけなく倒壊した。
無事なのは屋根だけで、それ以外は見事に押しつぶされてペシャンコになっていた。
「私の神社が……」
「あーあ」
「れ、霊夢さん。気を落とさずに……」
「……レ」
俯いていた霊夢が何かをぽつりと呟いた。
「「レ?」」
「レミリアアアアアア! あんたやったわねえ!?」
「いやいや、なんでそうなる!?」
「さっき人里で神社を倒壊させるって言ったじゃない!」
「違うだろう。面白い事件が起こると言っただけで――」
「やっぱりあんたが犯人か! 退治いいいいいいい!」
「あああああああーーー!」
このまま緋想天本編に繋がります。