レミリア・スカーレットの挑戦   作:Amur

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第二十八話 『地底異変』

 その日、紅魔館は魔界からの来客を迎えていた。

 レミリアと仲良くなった魅魔が遊びに来たのだ。

 

「ようこそ紅魔館へ。歓迎いたします、魅魔様」

 

「よく来てくれたわね、魅魔」

 

「世話になるよ」

 

「咲夜、私たちは大図書館に行くわ」

 

「かしこまりました」

 

 

「しかし、ちょうどいいときに来たものね」

 

「ん? 何か厄介ごとでも起こっているのかい?」

 

「まあそうね。地底から間欠泉と一緒に地霊が湧き出す異変が起きてね。霊夢と魔理沙が解決に向かっているわ」

 

「地底か。相も変わらず色んなところに飛び込むやつらだね」

 

 

 間欠泉が湧き出す異変が起こった当初、異変解決者である霊夢や魔理沙は楽観的だった。温泉と一緒に現れた地霊達は大人しく、特に影響がなかったからだ。

 

 それに対して、地底には厄介な力が眠っていることを知るパチュリー・ノーレッジは地霊の他にそういった者たちが地上に出てくることを警戒した。

 事実、そのことを相談した八雲紫は地霊に混じって怨霊まで湧き出していると指摘する。

 

 だが、地底世界には地上の妖怪は踏み入ってはならない約束がある。

 そこで人間である霊夢と魔理沙を地底へ向かわせ、妖怪たちは地上からサポート(テレワーク)することとなったのだ。

 

 

「二人の調子はどうかしら?」

 

 大図書館で魔理沙のサポートをしているパチュリー、アリスにレミリアが異変解決の進捗を確認する。

 

「旧都中心にある地霊殿とやらに入ったところよ、レミィ」

 

「ん? レミリア、そちらは誰――!?」

 

「困ったメイドだね。ご主人様の顔を忘れたのかい?」

 

 魅魔の姿を見たアリスは驚愕で目を見開いた。

 幼き頃にメイドをやらされていた記憶が呼び起こされたのか、心なしか震えているようにも見える。

 どうやら成長した今でもこの悪霊に頭が上がらないようだ。

 

「あ、あんた……なんでここに……?」

 

「なんだい、私が幻想郷に遊びに来ちゃあいけないか?」

 

「前に魅魔がそのうち遊びに来るって言ったでしょ。感動の再会というわけね」

 

「全然、違う! 別に会いたくもなかったわ」

 

 

『どうかしたのか? パチュリー。何か騒がしいが』

 

「いや、ちょっと来客がね……」

 

『? そうか』

 

『気を引き締めなさい、魔理沙』

 

 紅魔館組の騒がしさに気を取られている魔理沙を霊夢が諫める。

 

『おっと、親玉のお出ましか』

 

 

ーーーー

 

 

 ――地底

 

「……来客とは珍しい」

 

 地霊殿に突入した二人の前に現れたのは薄紫の髪をした小柄な少女。

 人間にも見えるが、一つだけだけ妖怪だとわかる特徴がある。

 複数の触手を生やした第三の目が胸元に浮いているのだ。

 

「まさか人間が二人もこんなところまで来ることが出来るなんて」

 

「あいにく只者じゃないんでな」

 

『魔理沙、まずは間欠泉の情報を収集して』

 

「個人的にはせっかくの温泉を止めたくはないんだがな」

 

 アリスに言われてしぶしぶ、間欠泉の話を聞こうとする魔理沙。

 

「間欠泉を止める方法はないのか?」

 

「間欠泉ねえ……。私のペットにそんな事も出来るのもいるわ」

 

「ほう、ペットがね……」

 

「……“さっきの鬼は霊夢が相手をしたから、こいつは私に譲ってもらうぜ” ですか。ずいぶんと好戦的ですね」

 

「お? なんでバレたんだ。初対面だろ?」

 

「私は古明地さとり。この地霊殿の主です。私に隠し事は出来ませんよ」

 

『……さとり!? 心を読むことが出来る危険な妖怪よ! 気を付けて!』

 

「心を読むだか何だか知らないけど、紫が地底の妖怪は出会い頭に倒せって言ってたでしょ。さっさと片付けて間欠泉を操れるやつのところに行くわよ」

 

「……白黒の魔女もそうですが、紅白の巫女も平和的解決という心を持っていないようですね」

 

「当たり前でしょ。異変時の妖怪はとりあえず倒すことにしているのよ」

 

「まあその方が早いからな」

 

「……ま、いいでしょう。たまには妖怪として人間を襲ってみましょうか」

 

「おっと、やる気になったか」

 

「……貴方の心の中には数々の美しい弾幕があるわね。まさに百戦錬磨……けれどその経験があるからこそ、過去の弾幕によって地上へ逃げ帰ることになる」

 

「なにを言ってるんだ? お前は」

 

「ふふふ……。すぐに身をもって理解する――わ!」

 

 ───想起「恐怖催眠術」

 

 挨拶代わりにさとりが先制のスペルカードを切った。

 その名の通り、恐怖を呼び起こすような妖しい光が照射される。

 だが、光自体には当たり判定がないようで、魔理沙は拍子抜けした。

 

「……“虚仮威しか?” ですか。もちろん違いますよ」

 

 心を読んださとりが律儀に教えてあげると同時に、光が通った跡をなぞる様にレーザーと大小の弾幕が襲い掛かる。

 

「ちっ、そういうことか!」

 

 弾幕は魔理沙の位置を正確に狙ってくるが、彼女にとってノーミスで避けるのは造作もないレベルだった。

 

「ラストダンジョンのボスの割には大したことないな。少々、眩しい程度だぜ」

 

スペルカードが意外と簡単に凌げたので、若干拍子抜けする魔理沙。

 

「ふふふ、期待外れでしたか? それは申し訳ありません。では本番といきましょうか」

 

「そうかい、それは期待するぜっ!」

 

 魔理沙が強力な星形の弾幕をばら撒いて撃ち落とそうとするが、さとりは妖しく笑いながら新たなスペルカードで応える。

 

「さあ、眠りを覚ます恐怖の記憶(トラウマ)で眠りなさい!」

 

「なに?」

 

 ───想起「レーヴァテイン」

 

 突如としてさとりは巨大過ぎる炎の剣を呼び出した。

 それは魔理沙が以前に紅魔館で見たスペルカードに酷似している。

 

「あれはフランの!?」

 

「それっ!」

 

 レーヴァテインから火弾が発射され、魔理沙の弾幕を飲み込みながら迫りくる。

 

「! ここまでフランのスペカと同じかよ!」

 

 まさかの好敵手と同じスペルカードの登場に動揺する魔理沙だが、フランドールが四人に分身した状態ですら突破した彼女にとって、避けることは難しくなかった。

 

「お次はこれです!」

 

 ───想起「しゃくねつ」

 

 さとりが口を開けると前方にすべてを焼き尽くす灼熱の炎が放たれた。

 

「うひゃあああ!?」

 

 必死に距離を取って躱す魔理沙だが、服の一部が焦げてしまった。

 

「あれはレミリアのやつか!? よく吐けるなそんなもん」

 

「私の弾幕は疑似的に再現しているだけですから、実際に炎を吐いているわけではありません」

 

「ふーん……」

 

「……“あれは奇襲にもってこいでズルいぜ。今度教えてもらおうかな” ですか。無茶なことを言いますね。人間が炎なんて吐いたら口が大やけどしますよ」

 

「そこは私流にアレンジするさ。今度はこちらからいくぜ! スターダストレヴァリエ!」

 

 それは魔理沙お得意のスペルカード。

 食べると甘い星形弾幕が逃げ場をなくすようにさとりを取り囲む。

 

「ではこちらで迎撃」

 

 ───想起「我思う故に我在り(あたしゃここにいるよ)

 

 ゴウッ!

 

 赤青緑紫、四色の巨大なビットがスターダストレヴァリエを相殺する。

 

「あのビットは……!」

 

 非常に見覚えのある攻撃に、スペルカードが防がれたこと以上に驚愕する魔理沙。

 なにしろ、先程の弾幕は彼女の師匠が得意とする物だったのだから。

 

「私には見えるのです。貴方の中に眠る数々の弾幕の記憶が。その経験があればこそ、私はそこから効果的な技を持ってくることができる」

 

「――っ」

 

 本来、さとりが読める心は表層部分のみ。ただし、最初に放った“恐怖催眠術”を経ることでそれは変わる。相手のトラウマを呼び覚まし、過去に体験した弾幕を再現することが出来るのだ。

 

「どうやら先程の技は貴方の師匠の物のようですね」

 

「……それがどうかしたのか?」

 

「貴方の心にはいまだに師匠への畏怖がある。そして私が次に選ぶのも再びその方の技。過去に刻んだ畏れというものはそう簡単に乗り越えられるものではない――ということです」

 

「そうかい……なら――試してみるか!」

 

 ――もし魅魔様が今の私を見れば言うはずだ。“がっかりさせないでくれよ” ってな。

 

「――へへっ……なら乗り越えるしかないよな! いくぜ、古明地さとり!」

 

 魔理沙がミニ八卦炉を構え、彼女が最も頼りとするスペルカードの発動にかかる。

 対してさとりも魔理沙の奥底に眠る畏怖を形として再現する。

 

 ───想起「Reincarnation(リーインカーネイション)

 

 緑の長髪と黒翼を持った悪霊の幻が現れ、同時に巨大な赤いレーザーが魔理沙目掛けて一直線に放たれた。

 それはかつて、魔界神すら降した恐怖の霊撃。

 

「これが……今の私の――」

 

 直撃すればただではすまない一撃が迫りくるが、魔理沙は落ち着いて限界まで魔力を高める。

 

「!?」

 

 凄まじい魔力の蠢動に顔を引きつらせるさとり。

 魔理沙の大魔砲を前にその場に留まるのは悪手だが、スペルカード発動中により咄嗟の回避ができない。

 

「マスタースパークだあああああああー!」

 

 特大のレーザーがさとりの弾幕を飲み込んで尚、威力が衰えずに直進する。

 それはフランドール、永琳、依姫の誰に放った時よりも苛烈で力強かった。

 

 特に月人の二人には完全に防がれたマスタースパーク。

 しかし魔理沙はそれに腐らず、日々進歩を続けていた。

 

 ゴオオアアアアア!

 

「う……あああっ――!」

 

 閃光に飲み込まれるさとり。

 

 マスタースパークは地霊殿を貫通して飛び出した。

 おそらく、外では騒ぎになっているだろう。

 

 

「また威力上がってる……弾幕ごっこでここまでの火力はいらないでしょ。どこを目指してるのよ、あいつは……」

 

 ひたすら火力特化の道を進む魔理沙に呆れる霊夢だが、長い付き合いの彼女には白黒魔女がまだまだ満足していないことはよく分かっていた。

 

 

ーーーー

 

 

「……」

 

「嬉しそうね? 魅魔」

 

 レミリアがにやりとしながら話しかける。

 

「……ふん。どうやら弟子は精進を続けていたようだね」

 

「声でも掛けてあげるかと思ったけど」

 

「今、私がちょっかい掛けると邪魔になるからね」

 

「ま、それもそうか」

 

 ――しかし、予想外だったのはさとりね。想起で使ってくるスペルカードはLunaticだろうとサポートキャラの技だけだったはず。相手が過去に体験したあらゆる弾幕を再現出来るなら想定よりだいぶ強いわ。流石は地底の顔ってところか。この分だとExtraボスの妹も手強いでしょうね。

 

 

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