地底から間欠泉と共に怨霊が湧き出す異変は解決した。
博麗神社では異変解決を祝って、恒例の宴会をしているのだった。
「で、地上の神様があんたに八咫烏の力を与えたのね。けど旧地獄にいる鴉にそんなことをして何の得をするわけ?」
「うにゅ?」
「もぐもぐ」
霊夢が問いかけるも、間欠泉で茹でた卵を頬張っている霊烏路空と火焔猫燐。
お空は地獄鴉、お燐は火車という地底の妖怪で、二人とも古明地さとりのペットでもある。
彼女たちこそ今回の異変の元凶。
神から力を貰ったお空が暴走した為、困ったお燐が地上に怨霊を送ることで止めてくれる者を呼んだというのが真相だ。
「私が得をしたわ。強い力を貰ってね」
「その神様はどんなやつだったんだ?」
「うーん。もうあんまり覚えてないねー」
「自分に力を与えた神をそんなすぐ忘れるものなの……?」
お空のあまりの記憶力の無さに呆れるアリス。
「無駄よ。さとり様がお空の心を読んだけど、何も判らなかったわ。もうすっかり心から抜け落ちてるってさ」
「まさに鳥頭だぜ」
「確か山から来た神様だとは言っていたかな……二人組で」
お空が非常に重要なポイントをうろ覚えで話す。
「山の二人組の神様? いやいや、それでだいぶ絞れるだろ」
「そうね。妖怪の山で二人組の神様といえば……秋姉妹」
「いや、そっちじゃないだろ」
「冗談よ」
ピピピ……ピーッ
「警戒信号が、近いぞ! どこだ!?」
にとりが顔に付けている
妖力の数値化や索敵機能を備えたこの高性能マシンは、レミリアがにとりに提案して開発されたものだ。
「やっほー! 異変解決おめでとー」
ご機嫌でやってきたのは萃香。
すでにどこかで飲んできたのか、酒の匂いを漂わせている。
「地底に行ったと聞いたときはちょっとだけ心配したけど、無事でなにより。流石は霊夢と魔理沙だね~」
「まあ何とかな。灼熱地獄はあやうく溶けるほどの熱さだったぜ」
「そりゃ多くの罪人が二度と行きたくない地獄って呼んだほどだからね。あれ? そういえばレミリアは来てないの?」
「……そろそろ来るわよ。たぶん連れも一緒にね」
「連れ? パチュリーのことか? アリス」
「違うわ。けど、あんたもよく知ってるやつよ」
「ふ~ん?」
「ところでにとり、警戒がどうとか言ってたけど、まさかその機械で私を……?」
「……故障かな」
※ スカウターのイメージ
ーーーー
「待たせたわね、皆の者」
「別に待ってないわよ」
遅れてやって来たレミリアに平常通りに冷たく返す霊夢。
「今日は皆に紹介する者がいる。とはいっても顔見知りも何人かいるらしいが」
「紅魔館で誰か雇ったの?」
「いや、普段は魔界にいる。今日はこっちに遊びに来ているだけだ」
「魔界……」
過去の色々を思い出すのか、あまり嬉しくなさそうな霊夢。
「どうした? 霊夢。魔界に嫌な思い出もあるのかい?」
レミリアの後ろからゆっくりと宴会場に現れたのは魅魔。
いつもながら妖艶な笑みを浮かべている。
「なっ、あんた!?」
「何よ、霊夢。そんな幽霊でも見たような顔をして」
「実際、そいつは悪霊でしょ」
「まあそうね」
レミリアがチラリと魅魔を見れば彼女はある方向を向いていた。
そこには白黒の魔女の姿。
「……」
魔理沙はあまりの驚愕に目を見開き、声が出ないようだった。
「……」
そんな魔理沙に魅魔も無言で対峙する。
彼女の方はしばらく放置していた弟子に対する後ろめたさや照れくささなどで、すぐに声をかけられないらしく、レミリアが背中を押す。
「ほら、魅魔。ここは師匠から何か言いなさいよ」
「そ、そうだね。……久しぶりだね、魔理沙。地底での活躍は見ていたよ」
「……」
「しばらく会わないうちになかなか出来るようになった。ちゃんと修行を――」
「……ま」
「ん?」
「魅魔さまあああああああああああ!!!」
「ぐほおぁっ!?」
ブレイジングスター並の勢いで突っ込んできた魔理沙の直撃を受け、魅魔は吹き飛ばされた。
ーーーー
それからは大変だった。
師との再会に泣きは喚くは大騒ぎの魔理沙。
その師は最初に吹き飛ばされた後も弟子に抱き着かれて立ち上がれないが、邪険にも出来ずに動けない。
レミリアたちが宥めすかして、ようやく魔理沙が落ち着いたときには魅魔は見たことがないくらいげっそりとしていた。
「……しっかし、しばらく見ないからてっきり成仏したのかと思ったわ」
「魅魔様がそんな殊勝なタマかよ。かつては全人類への復讐を目論んだ大悪霊だぜ」
魅魔にしがみついて離れないが、一応、復活した魔理沙が反論する。
「……今更だけど、どう考えてもヤバイやつね」
「まあ今はそんな気もないから安心しなさい、霊夢」
「とても安心できないわね」
「さて、魔理沙も落ち着いたことだし、そろそろ今回の異変の話に行きましょうか。紅魔館から二人の活躍は見てたけど、その鴉にチカラを与えたのは誰かわかったのかしら?」
「おお! そうだ、レミリア。それなんだが多分――」
地獄烏に強大な力を与えた存在――おそらくそれは守矢神社の二柱。お空の頼りない記憶からも、なんとかそう当たりを付けた一行は理由を聞き出すため、妖怪の山に向かった。
ーーーー
守矢神社――
「おらおら! ネタはあがってるんだ、さっさと犯人を出しやがれ!」
「な、なんですか、貴方たち!? 犯人って何のことですか!」
唐突に大人数に取り囲まれた早苗が慌てる。
流石の常識に囚われない風祝も、この多勢に無勢では弾幕ごっこを仕掛けようとはしないらしい。
ちなみに魔理沙は魅魔から離れて、いまは先頭で早苗を尋問している。
「そこの鴉が吐いたんだよ。守矢の神様その1とその2に力をもらったってな」
「鴉……? ああ、地獄鴉に八咫烏のチカラを与える件ですね。それなら確かに神奈子様と諏訪子様がやったことです」
「おやおや、ずいぶんとあっさり白状したな。さすがに怖気づいたか? 軍勢を引き連れてきて正解だったぜ」
「別にあんたに引き連れられたわけじゃないんだけど」
レミリアが突っ込むが魔理沙は気にせずに続ける。
「ではまず地底まで行かされた私への迷惑料の話をしようか」
「博麗神社の周辺を間欠泉で穴だらけにしてくれた賠償金もね」
「え? え??」
魔理沙も霊夢も地霊殿のさとりからそれなりのお詫びをせしめているが、それはそれとして守矢神社からも取れるだけ取ろうとしていた。
「こんなに金にうるさい子だったかね……」
「まあ一人で生きていく上でお金は必要だし、多少はね?」
「……そうだね。あの年で後ろ盾がないなら仕方ないか」
「あんたと違って人間には食事やらなんやらが必要ってのもあるしね」
魔理沙の意外な姿に若干呆れ気味の魅魔だが、レミリアがフォローしてあげる。
ピピピッ
「ん? 高い妖力を感知?」
「おかしい……誰もいない?」
「その機械、欠陥品なんじゃないの? いっそ壊す?」
自分に警戒信号を出したスカウターにイラっときていた萃香がここぞとばかりに廃棄処分を提案する。
「そんなはずは……」
――あ、これはたぶんアレね。
心当たりのあったレミリアが周囲を注意深く探ると
「みーつけた」
「うわっ」
レミリアが誰もいないところから一人の少女を引っ張り出した。
胸元には古明地さとりにもあったサードアイが浮かんでいるが、その目は固く閉ざされている。
「あれー? 私のこと見えてた?」
「ふふふ……まあ、私くらいになればね」
「あれ、レミリア。その子って古明地んとこのこいしちゃんじゃない?」
レミリアに吊り下げられる少女を見た萃香が寄ってくる。
「お姉ちゃんのことを知ってるの?」
「私は地底に住んでたからね」
「ふむ、さとりの妹か。なぜ守矢神社に来たのかしら?」
「お姉ちゃんのペットのお空が神様にパワーアップしてもらったのが羨ましくて。私のペットも同じように強くしてもらおうと思ってね」
「なるほどね」
「はっは。こいしちゃんらしい理由だね」
「話はわかったわ。なら私たちと一緒に行きましょうか」
「いいの? ありがとー」
「まずは
次回予告
「ついに開催!天界一武道会!優勝賞金50万円!」
賞金目当ての巫女たちが天界に集結する――。
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