レミリア・スカーレットの挑戦   作:Amur

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第三十話 『天界一武道会(前編)』

 天界にある紅魔館別荘にてレミリアと天子はいかに自分たちの威光を幻想郷民に知らしめるかの策を練っていた。

 

「なるほど、武道会か。地上の民が好みそうな野蛮な催しだけど、それだけに分かりやすいわね」

 

「でしょ。場所も私とあんたが戦った跡地を整備すればすぐに用意できるしね」

 

「そこで華々しく優勝することで、この比那名居天子の名が轟くわけか。いいじゃない、いいじゃない」

 

「あいにく優勝は私だけどね。あんたは準優勝で我慢しなさい」

 

「は? ちょっと、一回勝ったからって調子に乗らないでよね。次はガツンとリベンジをしてみせるわ」

 

「ふふふ、それは楽しみね」

 

「……それで参加選手はどうやって集めるの?」

 

「あんまり大人数が集まっても試合数が増えて大変だし、こっちで選んだ候補者に招待状を送るわ。定員の8名になったらそこで締め切り」

 

「なんで8名なの?」

 

「そりゃあんた、天下一武道会といえば8名って決まってるのよ」

 

「天界一でしょ? ……しかし、8名か。私としてはもっと大規模にやりたいところだけど」

 

「観客として人間から妖怪、神様まで大勢呼ぶつもりだから、心配せずとも派手な催しになるわ」

 

「へえ? うふふ……悪くないわね」

 

 初対面では挨拶代わりに激突した二人だが、意外と気が合うのか、天子は紅魔館別荘にちょくちょく遊びに来ていた。建設するときに約束した通り、別荘には天子の部屋もある。

 

「次に空を飛べない連中を天界まで連れてくる方法だけど――」

 

 

ーーーー

 

 

 そして時間は武道会の開催日まで進む。

 

 会場はレミリアの紅魔玉が吹き飛ばした跡地を利用している。

 高速で飛行する少女たちが戦う武舞台はかなり広く作られ、会場全体の大きさとしては東京ドームよりも広かった。

 

「さあー始まりました! 第一回天界一武道会! 実況はもちろん幻想郷ナンバー1記者、射命丸文! 解説は八雲紫さんです。紫さん、今日はよろしくお願いします」

 

「ええ。こちらこそよろしくお願いします」

 

「しかし、多忙な賢者である紫さんがよく解説を引き受けましたね?」

 

「ええ……。目を離すと何をしでかすかわからないメンバーが揃いましたので、それならばいっそ近くにいた方が対処もしやすいと考えまして」

 

「ああ、なるほど……。心中お察しします」

 

「さて、一回戦は早くも注目のカードのようね?」

 

「ええ、そうですね。初戦はレミリア・スカーレット選手と博麗霊夢選手の試合です。いきなり決勝戦みたいな組み合わせですが、紫さんはこの試合をどう見ますか?」

 

「純粋なスペルカード戦では無類の強さを発揮する霊夢ですが、決められた武舞台での戦いとなると勝手も違います。そこがどう影響するかといったところですね」

 

「なるほどー。あ、ルールのおさらいですが、選手が武舞台から落ちた場合や倒れた場合にカウントを取り、10カウントで負けとなります。武器の使用はあり、相手を殺すのは失格となります」

 

「おや、早くも二人が中央で睨み合っていますね」

 

「さすがに血の気の多い方々です」

 

 

ーーーー

 

 

 レミリアと霊夢は互いに目の前まで近寄り、火花を散らしていた。

 

「賞金は私がもらってあげるから、あんたはとっとと降参しなさい」

 

「ふふふ……あいにくだけど、それは出来ないわ。ここまで来たことに対するお駄賃はあげるからそれで我慢するのね」

 

「ギタギタにするわよ」

 

「面白い……出来るものならやってみろ」

 

 

「二人とも少し離れてください。試合を開始できません」

 

 審判の四季映姫・ヤマザナドゥが二人を下がらせる。

 なぜ閻魔がこんなことをしているかといえば、レミリアが断られること前提で審判を要請したらまさかのOKだったためだ。

 本人曰く非番だったとのことだが、説教好きの彼女もまたお祭りは好きなのだろう。

 

「……」

「……」

 

 二人が開始地点まで移動したことを確認した映姫は武舞台の外に出る。

 観客席には弾幕から守るための結界が張られているので、そちら側に避難したのだ。

 

「では……一回戦はじめーーー!」

 

 ゴウッ!

 

「そらあっ!」

 

「はっ!」

 

 開始の合図と共に飛び上がったレミリアが空中から強襲するも、霊夢はサマーソルトで応戦してツメの一撃を弾いた。

 

「吸血鬼の攻撃を蹴りで迎撃するなんて、巫女というより武道家――いや、武闘家ね!」

 

「これくらい博麗の巫女にとっては基本技能よ!」

 

 ガアアアン!

 

 再び激突する両者。

 確かに霊夢はそこらの木っ端妖怪なら術もお札も使わずにお祓い棒だけで退治が出来る。それでも、吸血鬼と接近戦が出来るだけの身体能力があるとは、博麗の巫女も常識には囚われないらしい。

 

「デーモンキングクレイドル!」

 

 レミリアが高速回転しつつ、体当たりを仕掛けた。

 霊夢が身構え、迎え撃つのかと思われたが、接触する寸前に姿が消えた。

 

「!?」

 

 ――空中昇天脚

 

「ぐうっ!」

 

 体当たりをワープで躱し、レミリアのやや下方に転移した霊夢はその勢いのまま、強力なサマーソルトキックを食らわせた。

 

「やってくれるなあ! ―― 紅魔玉っ!」

 

 蹴りを食らった衝撃を利用して上空へと高速飛行したレミリアは紅球を投げつけた。

 天子と戦ったときとは違い、今回の紅魔玉は数メートル程度のものだ。

 溜めを最小限にして発射までの速度を重視している。

 

「陰陽飛鳥井!」

 

 迫る紅球を見た霊夢は人を飲み込めるほど大きな陰陽玉を出現させ、上空目掛けて蹴り飛ばした。

 空中で激突する紅魔玉と陰陽玉。

 

 

 うひゃあああーっ!

 

 

 武舞台を中心に魔力と霊力の嵐が吹き荒れ、悲鳴が木霊するが、観客席を守る結界はビクともしない。

 

 態勢を立て直したレミリアは黒く輝く闇の炎を吐いた。

 迫りくるブレスを結界を張り、押しとどめる霊夢。

 

 ドウッ

 

 闇の炎が消え去る前に中を突っ切ったレミリアが急襲をかける。

 

「レミリアァァストレッチッ!」

 

「ぐっ!」

 

 レミリアの強力なツメが結界の上から殴りつける。

 苦し気に後ろに吹き飛ぶ霊夢。

 それをチャンスと見て距離を詰めるレミリアだが、その一瞬、霊夢の周囲に8枚のお札が浮いているのを見た。

 

 ――あれは!?

 

 幾多の戦いを経たことによる直観か、猛烈に嫌な予感がしたレミリアは急停止した。

 

「気付いたか、けど……遅いわ!」

 

 ───神技「八方龍殺陣」

 

 逃れようもない超速度のスペルカードが発動する。

 霊夢の周囲に強力な結界が展開された。

 

 この技は超速度で無敵状態に移行という高性能に加え、射程内の相手に大ダメージも与える攻防一体のスペルカードだ。

 

「でたー! 霊夢選手の龍殺陣! タイミング的にレミリア選手は飲み込まれてしまった模様! これは勝負が決まってしまったかー!?」

 

 八方龍殺陣の発動時間が終わる。

 このスペルカードの弱点は技終了時に一瞬だけ術者が動けなくなる点にある。

 周囲から見れば刹那の硬直だが、実力者にとっては十分な隙だ。

 そこで霊夢は躱せない距離までレミリアを引き付けて発動したのだった。

 

 そう――本来ならこのスペルカードで終わっていただろう。

 だが、レミリアにもいまだ見せていない奥の手があった。

 

 ドオオオン!

 

 轟音を響かせて霊夢の背後からレミリアが迫る。

 

「なっ!? あのタイミングで脱出できたっていうの!」

 

 紅いオーラを噴出させ、弾丸のごとき体当たりが炸裂する。

 辛うじて体の前にお祓い棒を出して直撃こそ避けたが、勢いを殺すことはできず、地面に向かって吹き飛ぶ霊夢。

 

「がっ――っ!」

 

人間が食らったら無事では済まない速度でぶつかられた霊夢は、受け身をとることも出来ず舞台に激突した。

 

「っ――……」

 

「おおっと! 霊夢選手、立てません! ……ここで審判による10カウント! 試合終了だー! かつての紅霧異変では霊夢選手に敗北を喫したレミリア選手、しかし今回は見事に雪辱を果たしましたー!」

 

 

 わあああああ!!!

 

 

「最後のはレミリアが月での戦いで使った技に似てますね。そのときは紅霧を背後に噴射することで凄まじいスピードを出していました。あんなものを食らった霊夢は無事かしら……?」

 

「普通の人間ならコナゴナですが、霊夢さんなら大丈夫でしょう。あ、レミリアさんが回復魔法らしきものをかけたら起きましたね」

 

「ふう……心配させてくれますね。しかし、最後のレミリアはとてつもない速度でした。あなたより速いのでは? 文さん」

 

「え? い、いやですねえ。私のスピードは幻想郷一ですよ? そんな私より速いわけが……」

 

「ふふ……まあ、深くは突っ込まないでおきましょう」

 

 

ーーーー

 

 

「あーあ、負けたか。私の賞金が……」

 

「ふっふっふ。今日は私の勝ちだな、霊夢」

 

「なによあの速度。あれって依姫と戦った時のやつ?」

 

「見た目は似ているが、また別の技だな。私の切り札だぞ?」

 

「ちぇっ、ここでそんなもんを出すとはやってくれるわ」

 

「ふふふ、お前だからこそとっておきを見せてやったわけだ」

 

「ふん……。私に勝ったんだから優勝しないと怒るわよ」

 

「当然だ。安心して見ているがいい」

 

 

 




全試合をやると長いので、かなりダイジェストにする予定です。


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