レミリア・スカーレットの挑戦   作:Amur

31 / 39
第三十一話 『天界一武道会(後編)』

 

 大盛り上がりの天界一武道会は順調に試合を消化していた。

 

 一回戦で博麗霊夢に勝利したレミリア・スカーレットは準決勝も藤原妹紅との激戦で観客を沸かせる。

 そして蓬莱人との激戦を制し、決勝に駒を進めた。

 

「くっそー! 負けたかー」

 

 悔しがる妹紅に近づくレミリア。

 

「今回も私の勝ちね、妹紅」

 

「今回もって肝試しのときは8対1だったろーが。まあ、もう怒ってないけどさ」

 

「そういやそうだったわね」

 

「当然、優勝する気なんだろ?」

 

「言うまでもないことね」

 

「お前なら大丈夫そうだけど、油断すんなよ。他にも厄介なやつはいるぞ」

 

「ええ、わかっているわ。その上で、優勝はこのレミリアと宣言しておきましょう」

 

 

ーーーー

 

 

 そして試合は進み、優勝候補筆頭(自称)の比那名居天子は地底の太陽こと霊烏路空の核融合攻撃を根性で耐えきり、見事勝利を収めた。

 

 しかし、準決勝ではそう予定通りにいかなかった。

 天子の相手は幻想郷でも古参の妖怪で、特殊な能力はないが、純粋に高い妖力や身体能力を駆使して戦う強敵だった。

 

 正面からぶつかる両者は一歩も引かずに戦ったが、妖怪の放った天界をも飲み込むかのような超巨大レーザーの直撃を受けて、ついに天子は武舞台に倒れた。

 

 

「天人敗れる! 天界一武道会の主催者の片割れである天子選手が準決勝にて敗退しましたー!」

 

「あの天人も腕は立つのですが、今回の相手は闘いの年季が違いましたね」

 

 

 その戦いをレミリアは腕を組んでじっと見つめていた。

 表情からは内心を伺えないが、直接戦った天子の実力を知っているだけに彼女の敗北に少なからず驚いているのかもしれない。

 

「……ぐ……この私が……ただの妖怪に……」

 

 倒れ伏す比那名居天子。

 敗れたことが信じられないといった顔だが、彼女の中でレミリアは「ただの妖怪」枠ではないか、ノーカウントになっているらしい。

 

 天子を打ち倒した妖怪は一見すると普通の人間の女性に見えた。

 羽が生えているわけでもなく、剣や刀といった武器を持っているわけでもない。

 しかし、全身から感じられる妖力は間違いなく強力な妖怪のそれだった。

 

 緑の髪に赤い瞳。チェック入りのロングスカートも瞳と同じ赤色だ。

 四季のフラワーマスターと呼ばれる大妖怪――風見幽香。

 

 審判の勝利宣言を確認した幽香は穏やかにレミリアの方に微笑みながら、武舞台を後にした。

 服こそ切り刻まれて激戦だったことが伺えるが、余力は残しているようだ。

 

 ――風見幽香は本当にただの妖怪かしら? 少なくとも長寿の妖怪の中でも閻魔に長く生きすぎたと言われるほど別格の存在ではあるが……。

 

「くっそ、あのアマ……。最後はレミリアの方しか向いてなかった。私は眼中にないっての――!」

 

 武舞台の上に上がり、天子の方に近づいていくレミリア。

 

「安心しなさい、天子。あんたとの決勝はなくなったけど、優勝は変わらずこのレミリアよ」

 

「――! レミリアぁぁ……!」

 

 天子に肩を貸して起き上がらせるレミリア。

 敗者に慰めは不要とばかりに、多くは言わないが、改めて天人の友に自身の優勝宣言をするのだった。

 

 

ーーーー

 

 

「さあー、この射命丸の名実況のおかげもあり、盛り上がった天界一武道会もとうとう決勝です! 解説の紫さん、決勝戦はレミリアさんと幽香さんになりましたが、予想通りでしょうか?」

 

「まあ妥当なところでしょう」

 

「大暴れのイメージがあるレミリアさんと違って、幽香さんが決勝まで来れたことを意外に思っている方も多いようですね」

 

「そうですね。若い方々の中だと幽香はたまに人里に花を買いに来る妖怪……くらいのイメージしかないかもしれませんが、彼女も昔はヤンチャでした。最近はまだ大人しめですが、かつては鬼に匹敵するほどの暴れっぷりでしたよ」

 

「若き吸血鬼の女王と古参の大妖怪……これは面白い試合になりそうです!」

 

 

ーーーー

 

 

「あなたが幻想郷に来た日からこのときを待っていたわ」

 

「それはそれは……お待たせして申し訳ないわね」

 

 レミリアと幽香は武舞台の上でかつての吸血鬼異変を振り返っていた。

 

「妹のフランちゃんも良かったけど、私としてはあなたにもとっても興味があるのよ」

 

「おかげさまでこの武道会は大成功となったわ。その感謝として今日はこのレミリアのチカラを存分にお見せしましょう」

 

「それは楽しみね」

 

 

「さあ、お二人とも。決勝にふさわしい力強く美しい試合をお願いします。私も審判として最後まできっちりと白黒つけさせていただきます」

 

「ふ……当然だ。このレミリアの華麗な勝利を最も間近で見せてやる」

 

「あら、ウソはついちゃあダメよ? 貴方の負けるところをでしょ?」

 

 互いに笑いながら言葉を交わしているが、目に見えない圧力は凄まじく、並の人間や妖怪では近くにいるだけで気絶していたかもしれない。その点、審判が閻魔でよかったといえる。

 

「では位置についてください」

 

 それ以上の言葉は無用と二人とも試合開始地点まで移動する。

 

 

「……天界一武道会、決勝戦はじめーーー!」

 

 

「……」

 

 審判により開始の合図が出されたが、動きを見せない幽香。

 対してレミリアは今回も速攻で先制攻撃を仕掛けていた。

 

「まずは挨拶代わりよ! ハートブレイク!」

 

 レミリアが紅い槍を高速で投げつける。

 それでもその場から動かない幽香は右手を前に出す。

 

 グシャリ!

 

 目の前まで迫った紅い槍を力任せに握りつぶしてしまった。

 

「槍で遊ぶならフランちゃんの方が刺激的だったわよ?」

 

「なるほど、つまらない挨拶となってしまい悪かった――な!」

 

 レミリアは灼熱の炎を吐いた。

 

「!」

 

 業火に飲み込まれる幽香。

 しかし、レミリアは油断せずにじっと炎を見つめている。

 

 やはりと言うべきか、燃え盛る炎の中から幽香が飛び出してきた。

 その拳はすでに攻撃のために振りかぶられている。

 

「そらあっ!」

 

 身構えていたレミリアは両手を前に組んで受け止めたが、勢いは止まらずに吹き飛ばされた。

 

「――ッ! まるで鬼みたいなパワーね」

 

「あんなガサツな連中と一緒にしないでちょうだい。貴方こそ口から火を吐くなんて、鬼みたいよ」

 

「まあ吸血“鬼”だからね」

 

 ――しかし、ハートブレイクを片手で握りつぶすとはな。攻撃力、防御力共に尋常じゃないレベルだ。ここは一度、搦め手も試してみるか。

 

 次の手を決めたレミリアはふわりと浮き上がり、幽香の周囲をゆっくりと回り始めた。

 

「次は何を見せてくれるのかしら?」

 

「ふふふ……。これだ――ライトニング・バインド!」

 

 電撃をほとばしらせる魔力の網がフラワーマスターを捕らえにかかる。

 おそらくハートブレイクのように、払いのけようとするだろうと考えていたレミリアだが、幽香は抵抗せずに電撃網で拘束された。

 

「――どういうつもりだ?」

 

 電撃の網が捕らえた幽香にダメージを与えていく。

 

「どんな技かは見た瞬間に理解したわ。けど、あいにく私はあまり回避は得意じゃないのよね。だから……罠は嵌って踏みつぶすのが主義よ――!」

 

 幽香が全身の妖力を高め、両腕に力をこめると電撃の網が限界まで引っ張られていく。

 

「ぬん!」

 

 ブチリと音を立てるように電撃網が引きちぎられてしまった。

 だが、その前に行動を起こしていたレミリアはグングニルを突き出す。

 

 ガン!!!

 

「――いい一撃よ!」

 

 グングニルを腹に受けたにもかかわらず、右手で掴み、叩きつける幽香。

 

「ぐっ!」

 

 レミリアが起き上がる前に幽香が猛烈な勢いで上空に蹴り上げる。

 

「さあ、絶好の的よ」

 

 幽香の右手から巨大なレーザーが放たれる。

 体勢が崩れたまま吹き飛ぶレミリアは回避行動が間に合わない。

 そこで彼女は回避ではなく攻撃を選んだ。

 

 ───夜王「ドラキュラクレイドル」

 

 赤いオーラを身に纏い、回転するレミリア。

 巨大レーザーに飲み込まれるが、大半は弾き飛ばすことに成功する。

 それどころか、勢いをそのままに体当たりを仕掛けた。

 

 今度の攻撃も避けようとはしない幽香。

 高速体当たりを先程のレミリアのように両腕でガードして受け止める。

 

「ぬうっ――!」

 

 グングニルを身体で受け止めた幽香もその一撃は多少は効いたようで、激しく後ろに吹き飛んだ。だが、それでも膝をつくことはなく、両の足でしっかりと立っている。

 

 

「……やるわね。けれど、全力の体当たりであの程度じゃあ私は倒せないわ。どうする? 逃げ回りながら遠くからチマチマ攻撃するかしら?」

 

「遠距離からチマチマ削る? ふはは、馬鹿を言うな。このレミリアが主催した武道会でそんなつまらない決着は許されない。お前こそ、ご自慢のレーザーがあの程度では私には勝てんぞ」

 

「あら、誰があれが全力だと言ったの? ほんの肩慣らしの一撃よ」

 

「私も先程のはフルパワーじゃない。ウォーミングアップといったところだ」

 

 

「おおーっと! 挑発! 二人とも挑発し合っています! どちらも全く引こうとしません!」

 

「二人とも負けず嫌いですからね。だからこそ次の一撃は互いに全力になるでしょう」

 

 

「真っ向勝負だ! いくぞ! 幽香」

 

「ふふ……そうこなくっちゃあね!」

 

 魔力を練り上げ、全身から紅いオーラを立ち昇らせるレミリア。

 対する幽香もこれまでになく妖力を高める。すると、その背に光り輝く羽のようなものが現れた。

 

 両者の魔力と妖力のぶつかり合いは凄まじい圧となって、観客席を守る結界を振動させる。

 

 

「さあ! 受けてみなさいレミリア!」

 

 ドオオオオオンッ!

 

 幽香の両手から超巨大レーザーが放たれた。

 見た目は魔理沙のマスタースパークにそっくりだが、さとりを吹き飛ばしたときのそれと比べても更に上と感じさせる迫力だ。

 

「いくぞ!!!」

 

 レミリアは宣言通り、幽香のマスタースパークに正面から立ち向かう。

 超巨大レーザーに向けて猛烈な速度で突撃をかける吸血鬼の女王。

 

 すぐに両者は空中にて激突する。

 だが、明らかにマスタースパークの威力の方が上回っている。

 

「ぐ……ぬ……あああああああ!」

 

 ――さあ、ここが勝負どころ! 紅魔拳!!!

 

 レミリアの全身を包む紅いオーラが爆発的に増加する。

 先程まで押されていたマスタースパークを徐々に押し返し始めた。

 

「!?――まだまだ!」

 

 ズンッ!

 

 武舞台を両の足で踏みしだき、さらにマスタースパークの出力を上げる幽香。

 

「――っ……ああああああああ!」

 

 対抗するレミリアも限界までオーラを高めて極太レーザーを押し返す。

 

 紅魔拳は魔力や体力を引き換えにパワー、スピード共に何倍にも強化する奥義。元になったのはもちろん界王拳である。

 レミリアは一回戦でもこの技による圧倒的な速度を利用して霊夢に勝利していた。

 

 ついに紅い吸血鬼の突撃がレーザーを左右に引き裂いた。

 

「ずりゃああああああああ!」

 

 遮るものがなくなったレミリアの突進は一瞬で幽香との距離を詰め、その体に突き刺さる。

 

「――ぐはっ!!!」

 

 身体がくの字形になり、激しく場外に吹き飛ぶ花の妖怪。

 

 ガアアアアアアンッ!!!

 

 幽香を吹き飛ばしたレミリアだが、本人にもその勢いを制御しきれず、観客席を守る結界に衝突してしまった。

 

「いけません! 結界が!」

 

 あらゆる攻撃を抑え込んできた結界だが、幽香のマスタースパークすら押しのける超ド級の体当たりを受けて、とうとう限界を迎える。

 だが、解説席にいた紫が観客を守るため、即座にレミリアの前にスキマを開く。

 

「――うおっ!」

 

 スキマを通って武舞台の中央に戻されるレミリア。

 急いで辺りを見渡すと、場外で倒れている幽香を見つけた。

 わずかに動いているが、さすがにダメージが大きく、すぐには立ち上がれないようだ。

 

 ここで10カウントにより、審判による決着が宣言される。

 

「勝者! レミリア・スカーレット!」

 

 

「優勝! 優勝です! 第一回天界一武道会の優勝者は紅魔館のレミリア・スカーレット選手だあああああああっ!!!」

 

 

 わあああああああああ!

 




主催側の独断と偏見で選ばれた参加者。

1回戦 レミリアVS霊夢
2回戦 妖夢VS妹紅
3回戦 幽香VS魔理沙
4回戦 天子VSお空

萃香「私は??」


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。