レミリア・スカーレットの挑戦   作:Amur

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お待たせして申し訳ありません。


第三十八話 『人里の異変』

 

 紅魔館――

 

 

「――ということがあったのよ」

 

 レミリアは仙界での出来事を紅魔館ファミリーに語っていた。

 

「お姉様、ちょっと出掛けたと思ったら、やっぱり無茶苦茶暴れてるね」

 

「ちょっと挨拶が丁寧になり過ぎたかしらね」

 

「挨拶で済むレベルなんですか? 聞いていると地形が変わるような戦いなんですが」

 

 冷や汗を垂らしながら美鈴がもっともなことを言う。

 

「いや~。幻想郷内だとそうそう派手に暴れられないじゃない? つい、羽目を外しちゃってね」

 

「……その仙人は怒ってないんでしょうね?」

 

 パチュリーがジト目で聞いてくる。

 

「うん? それはもちろん。なにせ神子のやつもノリノリだったから」

 

「それならいいけど」

 

 ふうーっと息を吐く動かない大図書館。

 

「パチェもたまには暴れてストレスを発散させたら? ため込み過ぎるのはよくないわ」

 

「ストレスを溜めてるのは誰のせいだと思ってるの?」

 

「うぐっ!?」

 

 直球で攻めてくる魔女に固まるレミリア。

 

「パチェ……。前から思ってたけど、幻想郷に来てから当たりがキツくないか? いや、たしかに私が悪いのもあるんだけど」

 

「……その通りよ。外にいたときより厳しめにしているわ」

 

「ええ! な、なんでよ!?」

 

 親友のまさかの発言に狼狽える吸血鬼の女王。

 

「ここでは紅魔館は外様だからね。羽目を外しすぎると追い出される可能性もある。それに――」

 

「それに?」

 

 それ以外にあるのか、と首をかしげるレミリア。

 

「気を引き締めないと、私はレミィにはどこまでも甘くなってしまうから……」

 

「え、それって……」

 

「あーあ、見せつけちゃって」

 

 フランドールが呆れたようにぼやく。

 

 

「パチェー!」

 

 ガバッ

 

「ちょ、レミ――あっ」

 

 抱き着かれて倒れるパチュリー。

 

 

「このあと滅茶苦茶イチャイチャした」

 

「妹様!? 何を言って――!?」

 

 大宇宙の意思によりフランドールは訳の分からないことを口走った。

 狼狽える美鈴の横ではメイド長が真剣な顔をして一部始終を撮影していた。

 

 

ーーーー

 

 人里――

 

 

「力こそが正義。いい時代になったものだ」

 

 ザッ

 

「強者は心おきなく好きなものを自分のものにできる」

 

 世紀末のような台詞を言いながら現れたのは人間代表の魔法使い――霧雨魔理沙。

 

「その通り。手始めに私は人間から漁業権を奪って占有する。これでぼろ儲けさ」

 

 ヘリコプターのようにプロペラを回転させながら降下してきた河の便利屋さん――河城にとり。

 今日は気合いが入っているようで全身を超兵器で武装している。

 

 

「オラオラオラオラー!」

 

「お得意の高速弾幕も完全武装の私には当たらないよ!」

 

 光弾の連射で攻め立てる魔理沙だが、にとりは頭上のプロペラを高速回転させて緊急回避する。

 

「生憎だけど、さっさと墜ちてもらうよ!」

 

 にとりのリュックから巨大な砲塔が出現する。

 一体、どこに入っていたのかは不明である。

 

「くらえ! 荷電粒子砲!」

 

 科学技術の粋を結集した最新兵器が唸りを上げる。

 砲塔から発射された眩いビームは一直線に魔法使いに迫る。

 

「火力で私が負けるかよ!」

 

 回避ではなく、迎撃を選択する魔理沙。

 月面の戦いでは光速を超えたとも言われる彼女にとって、後の先を取ることは容易かった。

 

「マスタースパーク!」

 

 お得意の極太レーザーが発射され、河童のビームと激しくぶつかり合う。

 

 それを見て沸きあがる人里。

 これだけの戦いであっても周囲の観客や家屋には何の被害も出ないように調整されている。

 

 

「荷電粒子砲……想定以上の技術ね。他にも明らかにこの時代に合わない兵器を持っているわ」

 

 にとりの持つ超兵器に唸る永琳。

 その中のいくつかはレミリアが悪乗りして教えたら実現してしまったものだ。恐るべきはフィクションを現実に変える河童の技術力か。

 

「威力は凄いけど、優雅さに欠けるわ。兵器にも遊び心がなくっちゃね」

 

 兵器に優雅さなど相容れなさそうだが、謎のこだわりを語る輝夜。これが月人全般の意見なのか、彼女個人の嗜好なのかは不明である。

 

 

「うずうず」

 

「そんなわざとらしく口に出してもダメよ、レミィ」

 

 見るからに参戦したそうなレミリアにパチュリーがぴしゃりと言う。

 

「うー……厳しい。この前はあんなに甘々だったのにー」

 

「なっ!?」

 

 レミリアの呟きにボッと顔を真っ赤に染めるパチュリー。

 

「だ、だ、黙りなさい! お仕置きするわよ!」

 

 

 度重なる異変により、人里には厭世観が溢れていた。

 それにより、もたらされたものは絶望感ではなく、刹那的な心。

 人心は乱れ、秩序はなくなっていった。

 

 大騒ぎして派手に目立った者こそが正義という末法の世界。

 

 この状況に目を付けたのが巫女や僧侶、道士などの宗教家と、連中にだけ甘い汁を吸わせまいと、率先して行動に出た魔理沙たちのような輩。

 彼女らは "力も方便" とばかり派手な闘いを繰り広げていた。

 

 

「お嬢様。今回の騒動には参戦しないと約束したからには仕方ないのでは」

 

 冷静に諫めるのはメイド長の咲夜。

 出来る従者のような雰囲気を出しながら、実はこっそり、わちゃわちゃするレミリアたちを撮影している。後で鑑賞するのだろう。

 

「そうなのよねー。悪魔として約束は破れないからねー」

 

 派手に目立って人気を集めたものが勝ちというレミリア向きなお祭りだが、やり過ぎることが目に見えていたので、事前にパチュリーや紫に不参加を約束させられていた。スキマ妖怪の胃は守られたのだ。

 

「さて、うちの屋台の様子でも見てこようかしら」

 

 紅魔館は戦いにこそ不参加だが、お祭り騒ぎに便乗して人里に屋台を出していた。

 調理担当は主に美鈴と咲夜である。

 

 

「お待たせしました! 激辛紅魔麺です!」

 

「おお! これこれ! こいつを食えば世界が終わるという恐怖も忘れられる!」

 

 血のように真っ赤な麺料理を出す美鈴。皿の上で紅くない箇所はわずかもなかった。明らかに身体に悪いが、美味いものはすべからく身体に悪いもの。この危なさが逆に病みつきになり、かなりの常連客を獲得していた。

 

「いつもながら見事な味だ……ああ、見える。世界の外側が見えるぞ……」

 

 紅魔麺のあまりの辛さに意識を異界に飛ばす常連客の易者。

 

「ご苦労様。美鈴」

 

「今日も好評ですよ! お嬢様」

 

「うふふふ。それは良かったわ」

 

「しかし、ここまで売れるとは思わなかったわ。私なんて、一口食べただけで死にそうになったのよ」

 

 激辛麺の味を思い出して苦い顔をするパチュリー。

 

「辛いもの好きってどこにでもいるしね」

 

 最初は一般的な西洋風や中華風の料理を出す案もあった。

 しかし――

 

『咲夜や美鈴の料理は絶品よ。普通に屋台で出しても人気は間違いないでしょう。けど、紅魔館の名で出す料理にはそれでは足りない。どんな料理よりも紅く! 紅く紅く紅く熱く紅く紅い料理が必要なのよ!!!』

 

 ……という当主の意向により激辛紅魔麺でいくことになったのであった。

 

 

「これはレミリア殿。紅魔館もこのお祭り騒ぎに参戦するのですか?」

 

 神子が布都と屠自古を引き連れて屋台までやって来た。

 

「残念だけど紅魔館は不参加よ。代わりと言っては何だけど、見ての通り屋台を出してるからよかったら食べていってちょうだい。一回目はサービスにしとくわ」

 

「ふむ……紅魔麺? これはどのような食べ物なのですか?」

 

「ふふふ……。その名の通り紅い麺類よ。美鈴、三人前よろしくね」

 

「はーい、お嬢様」

 

 美鈴が軽快に調理を始める。

 

 

「さあ、遠慮なく食べて頂戴」

 

 目の前に出された紅一色の麺料理。

 神子一行はそれを見て固まっていた。

 

「……レミリア殿。これは本当に食べ物なのでしょうか」

 

「失礼ね。ファンも結構ついてるのよ」

 

 他の席に目を向ければ美味しそうに紅魔麺をすする人里の皆さん。

 

「……たしかにそのようですね」

 

「身体に悪いものこそ美味いともいいますが……」

 

「美味いなら食べてみるかの」

 

 神子が認めたことで、屠自古と布都もゆっくりと箸を構えだす。

 

「まあ騙されたと思って食べてみなさい」

 

「では……」

 

 

 神霊廟組、体調を崩して全員一回休み。

 

 

 ――そういえばこの騒動って心綺楼よね。となると、そろそろ輝針城か。正邪……鬼人正邪。あの何者にも屈さない生き様、大好きなのよねえ。会いたいけど、あいつからしたら支配者側の私は目の敵……どうするか悩むわね。

 

 

 大げさに倒れる神子たちを介抱しながら、レミリアは今後の異変について考えを巡らせていた。

 

 

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