レミリア・スカーレットの挑戦   作:Amur

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第五話 『紅霧異変(前編)』

「じゃあこれから異変を起こすわよ。皆、スペルカードの用意はいいわね?」

 

 レミリアが紅魔館の主要メンバーに語り掛ける。

 

「はい。抜かりありません」

 

「バッチリです! お嬢様」

 

「この日のために練習したからその成果を見せるわ!」

 

「ま、一応ね」

 

 咲夜、美鈴、フランはやる気十分だったが、パチュリーはいつも通りテンション低めだった。

 

「けど私は使わないでしょうね」

 

「なんでよ、パチェ」

 

「私の大図書館に侵入者が来ても、すぐにレミィの居場所を教えるからよ」

 

「そこは形だけでも侵入者と戦ってくれよ、親友……」

 

 レミリアがやや呆れて言うが、すぐにニヤリと笑った。

 

「ふふふ……けどそう思い通りにいくかな?」

 

「なによその笑みは。気味が悪いわね」

 

 

 妖怪たちが博麗霊夢に相談して誕生した『スペルカードルール』は幻想郷における新しい決闘法である。

 このルールでは遊び感覚に近い決闘が出来るため、妖怪の無気力化を防ぐ効果があった。その上で人間と妖怪のパワーバランスを調整できるので、異変を起こした妖怪を人間が退治しやすくもなっていた。

 レミリアはスペルカードルールを用いた初の異変を起こすことを八雲紫から依頼され、これを受諾した。

 

「さあ、始めるわよ」

 

 レミリアの体から魔力が放たれ、それは紅い霧となって幻想郷の空を覆い始めた。

 

 ───いよいよこの転生レミリアによる紅霧異変の幕開けよ!

 

 

ーーーー

 

 

 幻想郷が紅い霧で覆われ始めて数日後、その発信源である紅魔館を目指して二つの人影が飛んでいた。

 

「いったいどこの誰よ。こんなふざけたことをしてくれたのは」

 

 怒りながら飛ぶのは紅白の少女。一見、巫女のようにも見えるがその服には袖が無く、腋は丸出し、後頭部には大きな赤いリボンと独特の服装をしている。

 彼女こそ幻想郷になくてはならない存在───博麗の巫女、博麗霊夢である。

 

「私はわくわくしているぜ。ちょっとした妖怪退治でなく、ついに本物の異変でスペルカードを使えそうだからな」

 

 楽しそうに飛ぶのは白黒の少女。黒い帽子を被り、箒にまたがって空を飛ぶという魔女としか言いようのない格好をしていた。

 彼女は霊夢の友人にして幻想郷でも珍しい人間の魔法使い、霧雨魔理沙。

 

「ならあんた一人で解決してきてよ、魔理沙。私は帰って寝るから」

 

「いいぜー、霊夢。ただし、その場合は博麗の巫女は役立たずだったと天狗の新聞に載るかもな? 情報源は私」

 

「一人で行く気ないじゃない」

 

「まあ、せっかくの異変だ。二人で解決したほうが楽しいだろ?」

 

「はあ……まあいいわ。このイライラは異変の元凶をぶっ飛ばして晴らすことにするから」

 

「ふっふ……じゃあ競争だな?」

 

「はあ?」

 

「お先に失礼!」

 

 言うが否や魔理沙は猛烈な速度で飛び去った。

 

「こらーーー! 魔理沙ーーー!」

 

 慌てて追いかける霊夢だが、圧倒的な速度で飛び去った魔理沙はすでに見えなくなっていた。

 

 

ーーーー

 

 

「邪魔するぜーーーっ!!!」

 

 爆音とともに紅魔館の裏口を吹き飛ばして白黒の魔女が突入した。

 

「侵入者! 侵入者よ!」

 

「食い止めたらメイド長からご褒美がもらえるわ!」

 

 侵入者に気が付いた妖精メイドたちが慌てて集まってくるが、魔理沙は容赦なく弾幕の雨を浴びせた。

 

「どけどけーーーっ!」

 

「ああああああーーーーーー!!!」

 

 妖精メイドたちはしょせんは数合わせであり、人間とはいえ魔法使いが相手では碌な抵抗もできず、簡単に蹴散らされていった。

 

 

 魔理沙が無人の野を往くが如く進撃していると、廊下の先に大きな扉を見つけた。

 

「お、こりゃ怪しいな」

 

 躊躇なく扉を開くと地下への階段があるようだった。

 

「地下か。まあ悪の親玉ってのは最上階か地下最奥にいるもんだけどな」

 

 魔理沙は立ち止まってどうするか思案していた。

 

「私の経験上、強力なやつほど隠れたがるもの……となるとこの先が当たりか!」

 

 意気揚々と地下への階段を進む魔女。果たしてその先に待っているものは───。

 

 

ーーーー

 

 

「さて、通らせてもらいましょうか」

 

「くうぅ~。すみません、お嬢様~」

 

 紅魔館の正門では霊夢が美鈴を撃破していた。

 美鈴は格闘戦が得意な反面、スペルカードルールの弾幕戦はあまり得意でないようで、霊夢にはあっさりと負けてしまった。

 

 

「無駄に広いわ、お金持ってるのね。これなら迷惑料をもらっても良いかも……いえ、逆に懲らしめる意味でも是非もらうべきね」

 

 勝手に迷惑料を徴収することを決めた巫女は幾分か機嫌がよくなって紅魔館の廊下を進んでいく。

 

「!」

 

 霊夢が巫女的直観に従って異変の元凶のもとに向かっていると、突然目の前に人影が現れた。

 

 ───いつ現れたのか見えなかった。こいつの能力かしら。

 

「ようこそ紅魔館へ。歓迎いたします」

 

 霊夢の前に時間を止めて出現した咲夜は優雅に礼をして言った。

 

「……あんたはここの主人じゃなさそうね」

 

「はい。私は紅魔館のメイド長、十六夜咲夜です」

 

「この館の誰かが幻想郷中に広がるように紅い霧を出してるのよ。メイド長なら誰がやってるか知ってるんじゃない?」

 

「はい。それは我が主であるレミリア・スカーレット様が邪魔な日光を遮るために発生させています」

 

「さっさとやめさせて。迷惑なのよ」

 

「それは私の一存では出来かねます」

 

「なら主とやらに直接言うわ」

 

「それも出来ません。何故ならあなたはお嬢様には会うことができないのだから……」

 

 音もなく咲夜の両手にナイフが現れた。

 

「やる気ね。上等よ」

 

 霊夢もお祓い棒とお札を構えて咲夜に相対する。

 

 

ーーーー

 

 

 魔理沙は地下を進み、紅魔館の大図書館にたどり着いていた。

 

「おお……すごい数の魔導書だ。私のために用意してくれたのか」

 

 白黒魔女が訳の分からないことを言いながら大図書館内を物色していると、声をかけるものがあった。

 

「……はあ。本当に来たのね」

 

「お、誰だ?」

 

 ゆっくりと本棚の奥から姿を現したのはパチュリー・ノーレッジ。

 

「私はパチュリー・ノーレッジ。この大図書館の主よ」

 

「ほう、そうか。私は霧雨魔理沙だ」

 

 ───雰囲気が人間じゃないな。アリスと同じように種族としての魔法使いか。

 

「あなたは紅い霧の元凶を退治しに来たのよね?」

 

「そういうことだ」

 

「それならここはハズレよ。元凶のいる玉座の間への行き方を教えてあげるから、そっちへ行ってちょうだい」

 

「そりゃあ助かるぜ」

 

 そう言いながら魔理沙は棚の本を自分の風呂敷に入れ始めた。

 

「??? ちょっと、待ちなさい。なにを勝手に本を持っていこうとしてるのかしら?」

 

「安心しろよ。いつか返すぜ、いつかな」

 

「異変を解決しに来たんでしょ? 本を盗んでいる場合かしら」

 

「それはそれ、これはこれだ」

 

「こ、この人間……はっ!?」

 

 そのとき、パチュリーは親友(レミリア)の憎たらしい笑みを思い出した。

 

「まさかレミィがニヤニヤしていたのはこれを予知して……?」

 

 パチュリーがぶつぶつ言っている間にも魔理沙は大量の本をいただいていた。

 

「ふい~。とりあえずこれくらいにしておくか」

 

「待ちなさい! 勝負よ、ドロボウ魔女! 叩きのめして二度と本を盗もうなんて考えないようにしてあげるわ」

 

「ふふふ……出来るかな? ムラサキ魔女。私は幻想郷最速を自称する女だぜ」

 

 種族魔法使い(パチュリー)職業魔法使い(魔理沙)が紅魔館地下でスペルカード戦を開始した───。

 

 

 




 ついにレイマリが登場しました!

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