レミリア・スカーレットの挑戦   作:Amur

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第七話 『紅霧異変(後編)』

 ───いよいよ主人公との対決ね。スペルカード戦だから紫と戦った時のような殺意高めの能力や魔法は控えるとして───よし、決めた。原作のスペルカードに加えてオリジナルの美しい弾幕も披露するとしましょう!

 

 

「初にお目にかかる、博麗の巫女。我が名はレミリア・スカーレット。言うまでもないかもしれないが、紅い霧を生み出しているのはこの私だ」

 

「そう……話が早くて助かるわ。私に退治される準備は出来てるってわけね?」

 

「ふっふ───準備は出来ているが、残念ながら内容が違う。出来ているのは博麗の巫女を屈服させ、幻想郷の支配を行うことだけだ」

 

「あっそう。もういいわよね? そろそろ退治するわよ」

 

「せっかちなやつだな。では一つ忠告をしてやろう」

 

「なによ?」

 

「こんなに月も紅いから……私もお前を本気で殺すわよ───!」

 

 レミリアと霊夢が予備動作なく飛び上がり、速攻で弾幕を放った。先頭集団が激突し、すり抜けた多数の弾幕が襲い掛かる。これを難なく避けながら、互いに次の攻撃を準備していた。

 

 レミリアはナイフ形の弾幕を大量にばらまいた。ナイフ弾の軌道は不規則でありながら、霊夢を狙って動いているようだ。

 霊夢は焦らずに最小限の動きでこれを避け切った。

 

「さっきのメイドだけじゃなく、ご主人様もナイフっぽいのを使うのね」

 

「嗜み程度で咲夜ほどじゃない。あいつは遠くにいる頭にリンゴを乗せた妖精の額に命中させる程の腕前だからな」

 

「リンゴは───どうしたのよ!」

 

 霊夢が針を拡散させて投げつける。

 

「リンゴはただの飾りだ!」

 

 レミリアはナイフ弾をばら撒き、針を迎撃する。いくつかは命中コースを辿るが、数本程度なら苦もなく躱す。

 すべての針を避けたレミリアは霊夢の正面に停止し、無言で腕を組んでいた。

 

「……?」

 

 レミリアは弾幕を放つ様子がないが、霊夢は嫌な予感がした為、やや後退した。

 

 ───なにかヤバい。腕を組んでいるだけなのに、私の勘が警鐘を鳴らしているわ。

 

 霊夢が様子をうかがっていると、レミリアがゆっくりと口を開いた。何か話すのかと考えた瞬間、その口から凍りつく息が吐き出された。

 

「はっ!?」

 

 意表を突かれた霊夢だが、油断はしていなかったことと、距離をとっていたことで何とか冷気のブレスを避けることができた。

 

「あ、あんたそれあり!?」

 

「もちろん。私の冷気の弾幕に何か文句でもあるのかな?」

 

「あれのどこが弾幕よ」

 

「手から出そうが、口から出そうが同じこと。そら、おかわりだ!」

 

 ───息符「凍える吹雪」

 

 レミリアの口から先程よりも強力な冷気のブレスが吐き出された。それは紅霧と混ざり合い、禍々しい色合いとなって霊夢へと迫る。

 

「紅い雪だなんて趣味が悪いわね───!」

 

 広範囲に広がる吹雪だが、霊夢は大きく弧を描くようにして回避する。

 レミリアと霊夢、互いの距離が離れたことで一旦、仕切り直しとなった。

 

 

「どうだ? 私の紅い吹雪は。弾幕の美しさでも私の勝ちだろう」

 

「だから趣味が悪いって言ってるのよ。まったく人をイライラさせるのがうまいやつね」

 

「おやおや、先程の冷気を浴びていたほうが良かったんじゃないか? 頭が冷えるぞ」

 

「───ぶっ潰す!」

 

 ───夢符「封魔陣」

 

 お札による結界がレミリアを取り囲む。

 結界が完成する前に逃れようとするが、博麗の霊力が込められたお札は直接触れずとも退魔のチカラを放ち、レミリアの動きを阻害する。

 

「ちっ、厄介ね。逃れようとすればお札が邪魔をして、この場で留まれば結界が完成して更にひどいことになる───か」

 

「降参するかしら? いまならボコボコにするだけで許してあげるわよ」

 

「ふふふ……お断りよ!」

 

レミリアの身体が発光すると、無数の蝙蝠に分かれて飛び立った。

 

「!?」

 

「キキキキキッ!」

 

 どこからともなく紅い弾幕が発射される。密度はそれほどでもない為、霊夢は余裕をもって避ける。

 結界が完成したが肝心のレミリアは姿がなく、封印は不発に終わった。

 封魔陣の発動時間が終わるころ、蝙蝠が集まりレミリアの姿になった。

 

「蝙蝠にはスペルカードも無効なのに攻撃も出来るって反則じゃない?」

 

「なあに。吸血鬼業界では普通のことだ」

 

「そう……ならこっちも同じようなことをしましょうか」

 

 ───「夢想天生」

 

 霊夢がスペルカードを発動させると、彼女の存在が希薄となり、周囲に八つの陰陽玉が展開された。

 

 ───きたー! 『ありとあらゆるものから浮く』無敵の能力!

 

 試しにレミリアが霊夢に弾幕を放つが、当たっているのに何故かすり抜けた。そして周囲の陰陽玉からお札形の弾幕が発射され、レミリアを襲う。

 

「ふふふ……そっちの方がよほど反則じゃないか?」

 

 本人は無敵状態で攻撃は自動という鬼畜仕様にさすがのレミリアも苦笑いをした。

 

 ───さて、どうするか。実のところ、霊夢の意思で解除できる時点で、厳密には真にすべてから浮いているわけじゃない。正面から夢想天生を突破するなら、その点が隙だが───まあここは順当に時間切れを待つか。

 

 考えながらお札形の弾幕を回避するレミリアだが、やり過ごしたはずの弾幕が反転して追ってくる。

 

「むうっ!」

 

 弾幕の速度はそれほどでもなく、躱すことは難しくない。だが、それ自体が意思を持っているかのように追尾してくるので、レミリアも気が抜けない。

 

 ───私を舐めるなよ! 耐久スペルなら前世でいくらでも突破してきた!

 

 反転して追尾してくる弾幕に備えていたレミリアだが、陰陽玉からも追加の弾幕が発射され、挟み撃ちとなっていた。

 

「これ初見だと完全回避は無理でしょ!」

 

 前世も含めれば初見ではないレミリアは紙一重で躱していく。そしてようやく夢想天生の発動時間が過ぎた。

 

「やるわね。夢想天生を初見で凌いだのはあんたが初めてよ」

 

「当然だ。この私を凡百の妖怪と一緒にするなよ───さあ次はこちらの番だ!」

 

 再びレミリアが無数の蝙蝠になり、姿を消した。先程と同じく、どこからともなく紅い弾幕が発射される。それに加えてレーザーも照射され、逃げ場をふさぐ。

 

「ちょっとこれスペルカードじゃないの!?」

 

 スペルカード宣言も無しに、明らかに通常弾幕ではないレミリアの攻撃に霊夢が非難の声を上げる。

 

 ───魔符「全世界ナイトメア」

 

 ようやくのスペルカード宣言と共に、蝙蝠が集まってレミリアが姿を現す。

 

「遅いわよ!」

 

 霊夢の弾幕が次々と直撃するが、レミリアは止まらない。いや、止まらないどころか弾幕が命中するたびに「全世界ナイトメア」は激しさを増していく。

 紅弾とレーザーはさながら世界を埋め尽くさんばかりの物量となって、霊夢に襲い掛かる。

 本来、避ける余地を残しておかなければならないスペルカードルールだが、時折このような不可能弾幕に近いものが発生したりもする。

 

「ふはははは! 嵌ったな博麗の巫女! このスペルカードは無暗に反撃すればこのような回避不能の状況に陥る! 突破するには機をうかがうしかなかったわけだ!」

 

 勝利を確信したレミリアは撃墜しているであろう霊夢を探して視線を巡らせると───逃げ場を塞ぐように周囲をお札で囲まれた。

 

「!?」

 

「───あいにくだけど待ってられないの」

 

「は───!?」

 

 まさかの声が聞こえた方を向けば霊夢が悠然と佇んでいた。

 

「な……ばかな! いまのをどうやって躱したんだ!?」

 

「ゆっくりと動いただけよ」

 

「!??」

 

 ───時間停止だとか超スピードだとか、そんなチャチなもんじゃあ断じてない。私はもっと恐ろしいものの片鱗を味わっている───!

 

 ───霊符「夢想封印」

 

 霊夢が最後のスペルカードを宣言した。

 光弾の雨がレミリアに向かって放たれる。回避しようにも先手を取ってお札の結界で逃げ道を塞がれ、次々と弾幕が命中する。

 

「ぐっ、がああああああっ───!」

 

 再び蝙蝠に分裂して逃れようとするレミリアだが、妖怪を滅する博麗のチカラを食らい過ぎた影響か、うまく妖力が集まらない。

 そして最後に一際巨大な光弾が炸裂し、眩い光が溢れた。

 

 

 ───これが博麗の巫女───これが博麗霊夢か……

 

 

 夢想封印により撃墜され、霊夢のチカラを実感したレミリアは満足げに笑いながら落ちていった。

 

 

 




転生レミリアのバタフライ効果で他のキャラが使うスペルカードが微妙に原作と異なったり、登場時期が変わったりしています。


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