「鬼滅の刃」世界のあの世が「鬼灯の冷徹」世界だったら   作:淵深 真夜

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今年の内に更新したかったので、いつも以上に誤字とかがヤバかったらごめんなさい。
あと上陸兄妹のコソコソ噂話追記はさすがに無理だったので、もう少しお待ちを。

それでは皆さん、今年の締めくくりのストレス発散になれば幸いです。
よいお年を。



無惨様の地獄じゃないけど巡ってもらう番外編

「さて本日も、『逃げるは恥だが役に立つ』、『定時退社』、『奈落の後継者』、『ザラキを打って来る、経験値のないはぐれメタル』でおなじみの無惨に小地獄巡りをしてもらう……と言いたいところですが、無惨が巡る地獄も残り2つ。

 それらが終わったらどうするのか? 他に企画はあるのか? 続編はあるのか? という問い合わせが最近よく届くので、今回は試しの番外編です」

「試すな! 今すぐにやめろ!! あと地味に産屋敷の希望に応えた汚名大喜利をするな!!」

 

 いつものように真顔のバリトンボイスで汚名大喜利を並べながら、鬼灯はいつもとは少し違う前口上を述べると、いつも通り簀巻きで地面に転がされていた無惨がビチビチ跳ねて、お前以外が言うなら割と真っ当な抗議をする。

 

 それを諦めたような遠い目で眺める狛治もまた、いつもの光景だ。

 いつもと違うのは、鬼灯の「番外編」発言以外にもう一つ。

 

「私はこいつが唯一、本当に唯一と言えた長所を捨てた瞬間の大喜利が好きですね。

『遊星からの物体X』はカッコよく思えてしまうのが癪ですが、『クリオネ』は見事に特徴をそのまま表していて秀逸ですし、『アジの開き』は本当にはしたないくらいに笑ってしまいました」

 

 クスクスと可憐さと妖艶さを違和感なく調和させた笑みをこぼしながら、無惨の頭を踏みつけてしゃべれなくさせている珠世が、本日のゲストである。

 前回のゲストに産屋敷 耀哉を招聘したことで、事情は理解しているが非常に羨ましがっていたとしのぶから聞いた鬼灯が誘ったら、「ぜひ!!」と食い気味の即答だったそう。

 

 その時の珠世は、愈史郎が見たら口から魂吐いて、またその魂の口からも魂を吐いて……を永遠繰り返す(タマ)リョーシカが完成しそうな程、嬉しそうで幸せそうな輝く笑顔を浮かべていた。

 

 そんな珠世なので、無惨の頭をグリグリゲシゲシと踏みつけまくりつつも、うきうき笑いながら鬼灯と無惨の無限かと疑うほどにある汚名大喜利で盛り上がっていたので、流石に狛治が遠くにやっていた意識と目を戻して突っ込む。

 

「お二人とも、カメラ既に回ってます。そこら辺にして、鬼灯様はそろそろ今回は何をするのか教えてください」

 

 どうやらいつものように、鬼灯はわりとその場のノリと勢いで企画を立てて実行に移したらしく、狛治も今回の「番外編」とやらで何をするのかを知らないようだ。

 

「そうですね。

 今回は、こいつの汚名大喜利ネタを見返してみて思いついた企画です」

「……何で思いついてるんですか、鬼灯様」

「それは実に楽しみですね!!」

 

 時間を無駄にするのが嫌いな鬼灯は、素直に狛治の言葉に頷いて進行しようとするが、相変わらず発想が鬼だということ以外全く予測がつかないので、狛治はもう既に疲れ果てたような声音で突っ込み、珠世は更にテンションが上がる。

 前回以上に今回の動画撮影、狛治の胃は大丈夫だろうか?

 

「こいつの汚名大喜利に、『平安のダーウィン賞』というのがあったんですよ。なので、それにちなもうと思います」

「ダーウィン賞? こいつ、嫌いなものは変化だと言いつつ、逃げる為なら姿は変わりまくるくせに、頭の中は千年無変過ぎたバカですよ? そんな進化論を説いた方の名を関する賞を取れるような生き物じゃありません」

「おい! 断言するな!! 私が好きなのも求めていたのも、『完璧』や『完全』なのだから、その為に『進化』し続けた私こそ相応しいだろうが!!」

 

 鬼灯が今回の企画を思いついたきっかけの汚名を出すと、「ダーウィン」がどのような功績を遺した人物なのかは知っていても、「ダーウィン賞」が何なのかを知らなかったらしい珠世が、困ったように小首を傾げて否定すると、同程度の知識はあったらしい無惨が無理やり頭を上げて、見事に自爆した。

 その自爆を、無惨が頭を上げた事で踏んでいた珠世が転ばぬように後ろから支えた狛治は、本気で憐れむような目で見つめていたので、その視線に気付いた無惨が不愉快そうに顔を歪めた。

 

「何だ、その眼は? 何か言いたいことがあるのなら言ってみろ、猗窩座!!」

 

 挙句、余計なことを言わなければいいのに、墓穴の底で更に自爆した。

 なので狛治は遠慮なく告げる。

 

「……無惨様と珠世さん。ダーウィン賞というのは、ブラックジョークの意味合いが強い賞で、権威があるものではありません。

 これ、『後世に愚かな遺伝子を残さない者を讃える』という意味で進化論を説いたダーウィンの名を冠しているだけで、受賞資格者は『愚かな自らの行いで自分の命、または生殖能力を失った者』ですよ」

「「………………」」

 

 しばし二人は沈黙。

 その沈黙が破れた後の反応は、爆笑と「笑うなーーっ!!」と叫ぶガチギレという正反対のものだった。

 

「無惨がようやく自分の頭無惨さを自覚したのは良いことですが、ここで残念なお知らせを。

 ダーウィン賞の受賞資格は、『子孫(直系であって、兄妹の子などは問題なし)を残していない事』、『死に方が愚か極まりないこと(ダーウィン賞受賞目当ての自殺は含まれない)』、『自らの意思で行ったこと』だけではなく、『他者を巻き込むなどで傷つけていない事』と『正常であること』……、つまりはまともな判断力があると思える知能や精神状態であることも含まれますので、結局こいつは受賞しません」

「どういう意味だ!? 私を精神異常者呼ばわりする前に、鏡見て自覚しろ!!」

「いえ、私が何より条件に合わない部分は知能だと思ってますので、あなたの精神異常はどうでもいいです」

「なおさらどういう意味だーーっ!!」

 

 無惨の勘違いをわかっていながら大真面目に受け取って煽る鬼灯に、更にキレながらやっぱりお前が言うな案件だが、割とどころか完全に正論で突っ込んで来た。

 だが当然、鬼灯は異常者呼ばわりを一切合切気にせず完全スルーして、「お前の頭が受賞できないぐらいにバカだと思ってる」と、破れまくったオブラートに包んで言い放つ。

 もはやこれ投げつけてるから、オブラートがもう破けてるとか溶けてるとかすら関係ない。

 

「……ほ、鬼灯様……、こ、今回の企画は……、そ、その受賞者と同じ……死に方をこいつにさせるということでしょうか?」

 

 腹を抱えて笑っていた珠世が、未だに息絶え絶えな状態で企画の内容を確認する。

 笑い過ぎで出た涙に濡れる瞳は、明らかに涙以外のもの、期待という感情で煌めいていた。

 

「そのつもりですが、先ほども言った通りこいつはダーウィン賞の資格が正確にはないので、ダーウィン賞に限らず私が世界各国のあの世で見聞きした、もはや笑ってやるのが供養な死に方を紹介していこうと思っています。

 っていうか、ダーウィン賞に限定すると、むしろやりにくいんですよね。

 井戸に落ちた鶏を助ける為に、井戸に飛び込んで亡くなった6人とか、他人が見聞きする分にはコント染みていますが、笑いのネタとして使うにはあまりに不謹慎ですし、保険金目当てで友人に頼み、自分が中に入った車を燃やしてもらったら、間違えてナイフで自分の首を切って死んだ者なんて、本当にバカとしか言いようがありませんが、これは再現しにく……、生前の下弦解体とかがほぼそれか。なら別の意味で、やはりする意味ないな」

「おい! 役立たずの一斉処分と、どうやったらそんな間違いを犯すんだと言いたくなるようなアホと一緒にするな!!」

 

 珠世の質問に肯定してから補足を加え、その補足の理由を説明していたら、途中で「再現しにくい」と思っていた事例とほぼ同じアホさ加減のやらかしを無惨がしていたことを思い出し、意見を少し訂正。

 もちろん、鬼灯の訂正に無惨はキレて怒鳴り散らすが、鬼灯と珠世どころか、狛治にも「一緒ですよ」と即答されて、またキレた。

 

 

 

 * * *

 

 

 

「そういう訳で、本日は一か所で様々な拷問を行う唐悕望処で、『無惨がやらかしそうな死に方』を再現してゆきます。

 さて、今回は番外編かつ移動する必要はほぼなしなので、このようなものを用意しました」

 

 いつものように無惨の喚きは無視して、鬼灯は現在地を告げてから狛治が持っていた箱を受け取って掲げる。

 その箱は上部に穴が開いており、振るとかさかさと紙らしきものが擦れる音がした。

 

 どう見ても、くじ引き用の箱である。

 狛治は持っている間、これをどう使うのかを気にしていたが、内容を説明されていなくても大体予想していた通りの使い道なのだろう。

 そして珠世も狛治と同じ予想をしているのか、そわそわと体を小さくだが上下に揺らすように、弾む心が抑え切れないという様子で彼女は、鬼灯に訊いた。

 

「鬼灯様! それ、もしかして私が……」

「はい。もちろん珠世さんが引いてください。中に書かれている通りの死に方を無惨にさせます」

「するか!!」

 

 鬼灯が珠世の質問にも期待にもこたえると、無惨の突っ込みと同時に珠世が勢いよく箱の中に手を突っ込み、一枚の紙を引き抜く。

 そして、そこに書かれている内容を読み上げた。

 

「はい! それでは初めはこれです!

 えーと、『体中に牛糞を塗りたくり、それを寝転がって乾かすことで身動きが取れなくなった所で野犬に襲われて死亡』」

「するか!! してたまるか!!

 というか、それは一体どのような状況と発想でそうなったんだ!? 肥溜めに落ちたとかそういう事故の結果ではなく、自分の意思で塗りたくったのか!?」

 

 珠世が引いた内容に、無惨が全力拒否しつつも素で気になったのか、思わず後半は拒否ではなく盛大に元ネタの人物に引いて突っ込んでいる。

 この反応に関しては、狛治だけではなく引いて読み上げた珠世本人も、「俺・私もそれ知りたい!!」と心から同意した。

 

「あぁ、さっそくダーウィン賞と無関係のものを引きましたね。

 それ、紀元前が4世紀とか5世紀ぐらいの話なので、あなた方が思うほど訳のわからない発想ではないんですよ。一応は水腫の治療の一環、体の水分を蒸発させようとしてたので、変な趣味の一環ではないです。

 だから無惨も、治療の一環だと思ってさぁレッツトライ!」

「そうか。なら納得すると思ってるのか!?」

 

 話を聞いても訳のわからない発想だったが、無惨すらも生まれていない頃の話なので、訳のわからない部分は当時の文化だろうで、納得というか理解を諦めて放り投げることは出来た。

 だがもちろん、これをやれと言われてやる奴は相当レベルの高い変態でもそうはいないだろう。

 

 当然、感性は腹立つことにまともと言える無惨が、何故かノリ突っ込みを披露してブチ切れ拒否するが、鬼灯は「安心してください」と告げる。

 カメラに。

 無惨は金棒で踏みつけている。

 

「もちろん、汚物を塗りたくる作業は一般獄卒にはさせません。

 フンコロガシ課のエリートたちが、全身痒くなる成分と速乾性の成分を配合した汚物を調合して用意し、塗りたくる準備は万全です。

 そして最期に汚物痔無惨を食い殺す野犬も当然、不喜処の犬獄卒ではありません。

 閻魔庁の技術課と変成庁のからくりオタク達が作り上げた、ロボット犬が行います。地獄にいる鋼鉄の犬ではなく、完全にロボットです。生き物ではありません。

 

 なので、さっそく皆さんどうぞ。

 そしてもし、汚物の調合・配合に興味のあるフンコロガシさん。そしてロボットという単語に浪漫を感じる方々は、ぜひとも一度は地獄に見学でもしてみてください」

 

 当たり前だが無惨ではなく、視聴者が「やりたくないな」「やらせるなよ、そんなこと!」と思いそうな所を、平気で行える者が行っていると説明しつつ、鬼灯はナチュラルに勧誘しだした。

 どうやら今回の番外編は、あまりスポットが当たらない部署を紹介して、興味を持ってその部署の未来の獄卒を獲得しようと目論んだようだ。

 

 しかもその目論みに、珠世の「ぜひ、お願いします」と笑顔で言わせて利用しているので、狛治は愈史郎が来ちゃったらどうしようとちょっと心配になった。

 

 

 

 * * *

 

 

 

「はい、お次の死に方は『バンジージャンプ失敗』です。なので、アイキャンフライどうぞ」

「失敗するとわかってるバンジージャンプはただの投身自殺だろうが!!」

 

 さすがに汚物まみれのままおバカ死を続行させるのは、無惨本人が不快なのは本人以外大歓迎なのだが、付き合う獄卒達の方が嫌すぎるので、ロボット犬に食い散らかされたあと、クレンザーと便所ブラシで丸洗いされてから、無惨は既に珠世が引いていた死に方を告げられ、盛大に「せやな」としか言えない突っ込みを入れる。

 

「いえ、これはゴム紐やその土地に問題があったから起こった事故ではなく、流石にひもなしバンジーを決行での死でもないので、もしかしたらただのバンジーで終わる可能性はありますよ」

 

 しかし意外なことに鬼灯は、「それをわからずやるのがダーウィン賞受賞者で、お前だ」と暴論同然な正論を吐くでもなく、むしろバンジーに使うゴム紐を見せつつ、無惨に渡して触らせて不良品ではないことを確認させ、飛び降りる場所もアイドルを罰ゲームでバンジーさせようとした場所なので、地獄の中では比較的安全であることまで告げる。

 

 さすがの無惨も地獄に来て約100年、本来なら「地獄の刑場という時点で安全なバンジーが出来る所がある訳ないだろ! って言うか、アイドルに何をさせてる!?」と突っ込むべきなのだろうが、そこに関しては「あぁ、確かにあそこなら安全だな」と完全に地獄に毒された安心と納得をしてしまった。

 

 だが、鬼灯がそこまで安全性を考慮などする訳がないこともよく知っていたので、「一体何を企んでる?」と彼を睨み付けて訊く。

 もちろん無惨が思っている通り、鬼灯は安全性など皆無に「良いから飛べ」と無惨を蹴り落とした。

 

 そしてそのまま、無惨は崖下の火の海まで墜ちて、地面に顔から激突という死因が焼死なのか脳挫傷なのか不明な死に方をした。

 

「……何であいつ、鬼灯様にあそこまで言われて、しかも全然信用してないのに、バンジー失敗の理由が『ゴム紐が長すぎたから』って気付かないのかしら?」

 

 しゃがみこんで耐火性のゴム紐がびょんびょん伸び縮みしながら、火の海の中で無惨が地面に顔面スタンプしているのを、あきれ果てた目で眺めながら珠世は言った。

 

「……そういう細かい所に気付ける人ではないからこそ、『平安のダーウィン賞』と呼ばれる所以でしょうね」

 

 珠世の疑問に狛治はわかり切っていた答えを返しつつ、ゴム紐を引っ張って無惨を回収。

 そして珠世は「そうですよねぇ……」と苦笑しながら、また勢いよく次のおバカ死決定くじ引きを引いていた。

 

 

 

 * * *

 

 

 

「次は……、これ、ちょっとやりにくそうですね。

『SNSのプロフィール画像撮影のため、滑走路で自撮りして着陸しようとした航空機に翼で頭を強打されて死亡』です」

「地獄というかあの世に飛行機はありませんしね」

「そもそもそんな所にそんな理由で入り込むか!!」

 

 次に引き抜いた内容に、愈史郎が見たら悶絶死しそうな程に艶やかな悩まし顔をして珠世が読み上げると、狛治も「どうすんだこれ?」と言いたげな顔をしてその理由を口に出し、そして復活した無惨が根本的なことに突っ込む。

 

「「「産屋敷家に無意味なレスバトルしに行って、ボンバーされたのと何が違う?」」」

 

 しかし生前に本気でほぼ同じ愚行を犯していたことを、三人から真顔で突っ込まれる。

 こいつ本当に自爆が大得意だな。

 

「狛治さんの言う通り、あの世に飛行機はありません。なので代りに、こちらの閻婆叵度処(えんばはどしょ)の獄卒が飛行機代りになってくれるそうです。

 無惨、特別に選ばせてやりましょう。さぁ、閻婆(地獄のバカでかい怪鳥)とプテラノドン、どちらがいい?」

「! ……どれも嫌に決まってるだろ!!」

 

 無惨がビチビチ跳ねながら、「あれは向こうが異常者極まりなかっただけで、私が愚かだったから起こったことではない!!」と、愚かはともかくまぁ起こった原因自体は無惨の馬鹿さ加減ではなく、耀哉の闇深さ故だというのは否定できない事実を喚いていたが、当然それらは無視して、鬼灯は飛行機の代わりはどうするかを説明する。

 

 飛行機代りに滑空してもらう鳥が翼で首捥ぎラリアットをかましやすいように、無惨を張りつけにしながら鬼灯は、そのラリアットをかます相手を選ばせた。

 無惨はどっちも嫌だと至極当然のことを言うが、一瞬言葉が詰まったのはなんかちょっとだけ少年心が疼いて、反射的にプテラノドンを選びそうになったのだろう。

 

 なので、鬼灯はプテラノドンに首捥ぎラリアットを決行してもらった。

 わかっているが、無惨への無意味すぎるサービスではなく、そもそも初めからプテラノドンにしてもらう予定だった。

 

「はい、これを見てわかるように、恐竜は現在、刑場で獄卒として活躍しています。プテラノドンだけではなく、大焦熱地獄の悲苦吼処(ひくくしょ)なら首長竜が、焦熱地獄の龍旋処(りゅうせんじょ)ならティラノサウルスが活躍してますので、恐竜に興味がある方はぜひこちらの小地獄の獄卒をお勧めします。

 転生というシステム上、恐竜は数が減り続けていますので、本物を間近で見るのも交流するのも今の内ですよ」

 

 その理由である恐竜をアピールして少年心を刺激し、獄卒に勧誘する鬼灯は、相変わらずの人材ハンターだった。

 

 ちなみに、プテラノドンによる首捥ぎラリアットは本当に本人無認可SNSのプロフィール写真になり、即刻垢BANされた。当たり前だ。

 

 

 

 * * *

 

 

 

「今度は、『ロシアンルーレット失敗』? ずいぶんシンプルですね」

 

 珠世の言う通り、今度はシンプル極まりない内容だった。

 

「何だ? ロシアンルーレットの主旨を理解できず、弾が出るまで撃ち続けたアホの話か? する訳ないだろそんなこと!!」

「お前の虎の尾タップダンスに逆鱗DJは、ほぼほぼそれですけどね」

「似たような事例は確かにあったと思いますが、これは違いますよ」

 

 無惨がその内容から想像できるおバカ死を口にして否定するが、やっぱり鬼灯に自爆を指摘され、もう無惨の自爆は産屋敷家に嫌だが連なる血筋だと思うことにして、狛治がその予測内容を否定した。

 一発だけ弾が装填されたセミオート拳銃を手にして。

 

「ロシアンルーレットの意味がまるでないだろ!!」

「ですよねー。拳銃ならどれでも出来ると思ったんですかね?」

 

 どうやら無惨はリボルバーではないとロシアンルーレットは出来ないことを知っていたようで、見て即座に突っ込み、狛治も遠い目で同意している。

 

「その通り。これ一発撃ってもただの銃殺で、ロシアンルーレットが成立していないので、今回は少し内容を変えて、弾詰まりす(ジャム)るまでひたすら銃を替えて撃ちまくります」

「少しどころじゃないだろ! 結局それもロシアンルーレットじゃない!!」

 

 鬼灯も同意したかと思ったら、もう本当に無惨の方に同意しかない突っ込みが入る改定案を提示して、様々な銃火器をその場に用意する。

 狛治もさすがに突っ込もうかと思ったが、セミオート拳銃だけではなくショットガンやら対戦車用バズーカーまで用意されているわ、珠世が可愛らしいアクセサリーや美味しそうなスイーツを前にした乙女のような、愈史郎がスケッチブック10冊秒殺で使い果たしそうな実に可憐すぎる笑みを浮かべ、「鬼灯様! 私でも使えそうなものはありますか?」と訊いていたら、もはや突っ込むのも疲労がたまるだけ。

 

 なので狛治は諦めて、ただ黙々と獄卒や珠世に武器を渡して、ジャムるまで終わりません、無惨射撃逆ロシアンルーレットをチベスナ顔で眺めていた。

 

「地獄では昔ながらの金棒や(まさかり)なども未だ現役の武器ですが、このような現世の近代兵器も取り入れていますので、こちらに興味がある方、使ってみたいと思っている方は是非、獄卒を目指してみませんか?」

 

 そしてやはりここでも、鬼灯はがっつり獄卒募集の宣伝をかけた。

 

 

 

 * * *

 

 

 

「……鬼灯様、これはさすがにこの地獄では……」

「はい? ……あぁ、これは確かに八寒の部類ですね。けれど大丈夫です。改定してやらすつもりだったので」

 

 またしても珠世は、自分が引いた紙の内容に小首を傾げ、鬼灯に躊躇いがちに中を見せた。

 その内容を読み、彼女が何に困っているのかがすぐにわかったので、鬼灯は彼女の不安を否定する答えを返して、狛治にノーパソからある動画を再生するように命じる。

 

「おい、今度は何を見せる気だ?」

 

 先程のほぼほぼ銃の点検作業みたいなノリで、ひたすら撃たれまくってミンチだったのが再生した途端、相変わらず自分の罪に何の自覚もない無惨が、警戒心を露わに尋ねる。

 

「安心してください。呪いのビデオでとかではないですよ」

 

 今度はカメラだけではなく、無惨にもちゃんと「大丈夫」と告げて動画を再生するが、無惨はもちろん、他の獄卒も狛治も、なんなら珠世も鬼灯の「大丈夫」は信用していない。

 だが今回は実際に、ブラクラと言えるような内容でも、無惨の黒歴史だけを映した悶絶死目的な動画でもなかった。

 ……普通の動画でもなかったが。

 

 初めに映ったのは、一面の白。

 カメラの前でチラチラキラキラ光って舞うものと、ビュービューという環境音からして、それは一面の銀世界を映している事が理解できた。

 そんな静謐とも言えた光景は、10秒も続かない。

 

 初めは風の音に混じってくらいの音量だったので、気のせいかたまたま風の音がそのように聞こえたか程度にしか思えなかったが、徐々に音量が上がり、ついには「人の悲鳴」だと気付けるようになって、動画内でもそれは視認出来るようになる。

 

《ぎゃあああああぁぁぁぁぁぁぁっっ!!》

 

 まさしく雪だるま状態になって、はるか向こうからこちらに転がり続ける亡者と……

 

《ひゅ~、今日は結構あったかいから、服脱いでて正解だったな!》

《お前はほぼいつでも服脱いでるだろ!!》

 

 シロクマに並走されながら突っ込まれている、かろうじてパンツ(モラル)は履いたブナピーみたいな頭の雪鬼、春一が巨大な鉞の刃の部分に裸足で乗り、見事に転がる雪だるま亡者という障害をスルスルよけながらスノボーの要領で滑って来る光景だった。

 

 この光景に、無惨だけではなく珠世も、動画を再生させた狛治も目が点。

 幸いと言えるのかはわからないが、動画はそこで終わり、鬼灯がこの動画を見せた訳というか目的を語り出す。

 

「これ、最近はやりの雪山から早く降りる方法だそうです」

「「「どっちが!?」」」

 

 三人の突っ込みは、狙ったかのように一致した。

 そりゃ訊きたくなるだろう。っていうか、全員が「あのブナピーは嫌だ」と思ってないとやってられない。

 

「もちろん亡者の方です。別に春一さんの真似をしたければ止めませんが、やるなら八寒でやってくださいよ。あれ、雪鬼以外がやると絶対に金属に皮と肉が張り付いて、熱湯をかけるか肉ごと脱皮を試みないと取れませんから」

「そのポイントで八寒を勧めるのはおかしいだろうが! っていうか、亡者でも普通に嫌だ! 流行りって嘘だろ!!」

 

 鬼灯は三人の突っ込みに、安心させる答えを返すが、やはり罪人に対しての容赦は皆無だった。

 より酷くなる変態の方を勧められて無惨が切れている横で、なんとなく鬼灯がやりたいことを察した珠世は今更だが今回のおバカ死にの死に方をカメラの前で教えてくれた。

 

「え~と、今回は『雪山を滑落する仲間を見て、あれが早く降りる方法だと勘違いしてマネして死亡』です」

「ですが、八寒にまで行くのは時間がかかるため、今回はあの針の山を雪山の代わりにします」

「代わりになるか!!」

 

 珠世の説明に、いつもと違ってほぼ移動する気がない鬼灯が、先ほどのロシアンルーレットと同じく代替案を提示すると、やっぱり無惨からされて当然の突っ込みを入れられた。

 だが先ほどのロシアンよりは代わりになっていたからと、相手が無惨なのでその訴えは「あーはいはい、わがままはダメですよー」と子供相手のように流され、無惨は針山から転がり落とされた。

 ……動画を見せた意味はあるのだろうか、これは?

 

「この方のフリーダムさは雪鬼という特性というのもありますが、同じくらいフリーダムな方々も数多く獄卒として働いているので、『公務員は堅苦しい職場』というイメージはまず捨てて、興味がありましたら見学だけでもどうぞ」

 

 一応あった。春一の自由さを見せつけ、獄卒を勧誘するという鬼灯の人材ハントの為という。

 ……むしろ希望者減らないか、これ?

 

 

 

 * * *

 

 

 

 今度は無惨が針山から転がり落とされて、雪だるまならぬ血まみれ針だるま状態のまま、ちょっとした塔の上まで連れて来られてから蘇生された。

 

「くそっ! 本当にお前らは頭のおかしい異常者だな! 今度は何だ!? どこだ!? 何をさせる気だ!?」

「今度はこの塔の中、その窓から脱出してください」

 

 蘇生された途端に喚き散らす無惨へ、鬼灯は淡々と指示を飛ばし、無惨はいぶかし気な顔をして、部屋の様子と指示された窓を見る。

 部屋の中には小さなベッドが一つだけで、窓の外の高さは5階ほど、地面を見る限り見張りなどの獄卒はいないが、窓ははめ殺しで開かない作りだった。

 

 しかしこんこんと軽く叩いて確認した限り、特に分厚い強化ガラスという訳でもないので、普通に割ることは可能だ。

 高さも人間の無惨が飛び降りたら大怪我必至だが、ベッドのシーツとカーテンを使ってロープを作れば、例え地面にまでの長さには足りなくても、怪我は精々軽傷で済む高さまで降りることが出来る。

 

 まさしく逃げるにはふさわしい条件が揃っているのだが、本当に逃がす為にやる訳がないことくらい無惨もわかっているので、疑わし気な顔で「一体珠世は何を引いたんだ?」と振り返って訊けば、鬼灯がチェーンソーのエンジンを入れていた。

 

「5分以内に脱出しなければ、私がお前の内臓でロープ作って消防隊員のように降りる」

「ホラーの猟奇殺人鬼の間違いだろうが!!」

 

 とんでもなさ過ぎる脅し文句で制限時間をつけられ、無惨はひとまず窓ガラスを割り、カーテンとシーツを引っぺがして硬く結びつけ、ロープを作ってベッドにくくりつけて初めに想定したようにそのまま窓の外へ脱出。

 

 それを見ていた珠世と狛治は、バンジージャンプの時と同じような顔をしていた。

 

「……今度は鬼灯様が脅しているからというのもあるでしょうけど、……やっぱり先のことが全然想像できない奴よね、あのバカは」

「……まぁ、今回は本当に鬼灯様の脅しがその想像力を焦りで無くしてますから」

 

 別にしたくはないが、流石に自分も同じような状況だと同じ事をしてしまいそうだからという理由で、狛治は一応無惨をフォローした。

 しかし割った窓ガラスの処理が甘く、窓枠に嵌ったままのガラスの破片が無惨の重みで、ロープになっている布を突き破って破き、千切れてそのまま落下する無惨の「こういうことか陰険闇鬼神がああぁぁぁ!!」という負け惜しみの声で、だいぶ台無しになった。

 

 

 

 * * *

 

 7回目でも珠世は明日もこれからも美しいと確信できる笑みでおバカ死くじを引くのだが、今回は内容を見た瞬間に何とも複雑な顔をした。

 あえて表現するなら、「して欲しいが見たくない」と言いたげな顔だった。

 

 そんな顔になった理由は、読み上げた内容で狛治も無惨も他の獄卒達も即理解できた。

 

「……『ゴキブリを食べ過ぎて死亡』」

『ぎゃああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっっっ!!!!』

 

 鬼灯と読み上げた珠世以外の全員が、想像をしてしまって絶叫。狛治も顔面蒼白で絶叫していた。

 

「そいつもダーウィン賞の資格ないだろ!! 異常者だろどう考えても!!」

「そこはわりと同感ですが、なんか爬虫類ショップのイベントだったそうです。4分間でどれだけのゴキブリを踊り喰い出来るかという大会だったそうですよ」

『大会!? しかも踊り食い!?』

 

 無惨の同意しかない突っ込みに、鬼灯もさすがに深く頷きながら補足を加えると、今度は珠世も叫んだ。

 そりゃなおさらに信じられないだろう。一人なら承認欲求が酷いアホが何かやらかしたで済むが、大会となるとおそらく複数人が挑んだということになる。更に追い打ちで踊り食い……。

 ゴキブリを異常に毛嫌いするのは日本人だけらしいが、それでも生きた虫を食べる文化圏はそう多くないので、これは大概の国では絶叫案件だと思いたい。

 

「なので本家リスペクトで踊り食いさせたいのですが、それだと食べさせにくい為、残念ながら今回はこちらの死んだものを使います」

『ぎゃああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっ!!!!!!』

 

 そんな風に思っていた所、鬼灯が用意したものを見てまた一同絶叫。

 ……鬼灯が用意したのは、90リットルのごみ袋にパンパンつまったGの死骸だった。

 

「どうやって用意したんだそれ!? というか、本家もそれだけ食ったのか!?」

「用意はEU地獄に協力してもらいました。本家の方はというと、数十匹程度だったそうですが……、死因はどうやらゴキブリが持っていた細菌などによる感染症などではなく、ゴキブリアレルギーだったからのようでして……」

「………………おい、まさか……」

 

 日光克服のために一応は研究をしていたからか、無惨はアレルギーに関しての知識があったようだ。あったがゆえに、あんなにバンジーや先ほどの脱出では察しが悪かったのに、今回に限っては察してしまった。

 

「アレルギーを発症するまで食べさせます」

「貴様はもはや鬼ですらない!! 鬼を超えた異常と恐怖の体現そのものだ!!」

「ありがとうございます」

「鬼灯様! さすがに褒められたと認識しないでください!!」

 

 箸でゴキをつまんで阿鼻地獄を超えた「あーん」の準備万端にしながら、無惨が察してしまったことを宣言するので、もはや無惨は半泣きで負け惜しみではなく心からの感想というか、鬼灯への評価を口にしたら、鬼灯は素で礼を言う。

 なので狛治は腰が引けながらも、「その評価を喜んだらアウトだ」と説得するのは部下の鑑過ぎた。

 

 あと、これで確実にこの動画は鬼灯の目的である獄卒勧誘の成果が果たせないことも鬼灯以外の全員が確信した。

 鬼灯様、マジで加減して。

 

 

 

 * * *

 

 

 

「こ、今度は可愛いです! 某夢の国の映画みたいです!!」

 

 まだ先ほどの絶叫案件バカ死から回復しきれていない顔色のままだが、それでも無惨を苦しませることをやめる気皆無は珠世が、次に引いた内容の感想を叫ぶ。

 だが、先ほどよりはどれを引いてもたぶんマシになるだろうが、可愛いとは一体どういうことかと思ったら、読み上げられた内容は「慈善事業として1000個の風船で空を飛び、ロサンゼルスまで向かおうとしたら遭難して死亡」だった。

 

 なるほど。確かに可愛い。

 だが、一つ問題があった。

 

「……鬼灯様。この状態で蘇生された場合って……食べたものはどうなるんですか?」

 

 無惨にとって不幸極まりないことに、結局アレルギーを発症しなかったので、胸糞で名高い七つの大罪をモチーフにした某サイコサスペンス映画の「暴食」被害者のように、胃どころか食道の限界まで詰め込まれて死亡した無惨を眺めて狛治は鬼灯に尋ねる。

 鬼灯も同じく無惨を見下ろしながら、眉間に皺を寄せて答えた。

 

「…………私もさすがに経験なければ、想定外ですね。消化された状態で蘇生されたら一番ですが、満腹状態で浮かび上がって重力でリバースされたらこちらが最悪ですし、もしGも腹の中で蘇生されたとしたら……」

『やめてやめてやめてやめてください!!』

 

 そして鬼灯の方も、やってから「これ、蘇生させた場合はGどうなるの?」問題に気付いたらしく、最悪を想定しながら答えたので、またしても一同が全身に立った鳥肌を撫でながら絶叫。

 

 結局、無惨の死体は一回適当な刑場の炎で焼かれてから蘇生となった。Gごと燃やして分離させることで、無惨だけ生き返らせるという理屈だ。

 その後は普通に飛ばされた。

 あえて水素ガスを使っての浮遊だったので、飛んでる最中に地獄の業火で引火して空中で無惨は爆発炎上。何度燃やされるんだろうこいつと、狛治はまさしく汚い花火を眺めながら思ったとか。

 

 

 

 * * *

 

 

 

「次は……、王道って感じですね。『オートバイのヘルメット着用義務化に対する抗議のため、ノーヘルでオートバイを走行させ、途中で事故死』です」

 

 言っちゃなんだが、まさしくアホの自業自得。他者を巻き込まなくて本当に良かった、ダーウィン賞のお手本のような死に方をお出しされた。

 

「私はむしろ、ヘルメット着用義務は賛成派だ!」

 

 Gを満腹超過しても、空中爆発炎上しても、相変わらずブレない無惨がなんか今度はマジで真っ当な主張をし出すので、獄卒達は困惑。

 まぁ、彼の生き汚さと詰めは激アマだが臆病者ゆえの用心深さなら、確かにノーヘルはむしろしない、着用義務賛成派は納得だ。

 

「そうですか。なら良かったです。では、予定通り無惨は巻き込まれる被害者役でどうぞ」

「は?」

 

 そして鬼灯は何故か無惨の主張を「良かった」と言って、訳のわからない予定を口にしながら簀巻きの無惨をポイっと前に投げ出した。

 その行動に無惨はもちろん、狛治や珠世も困惑していたが、数秒後に爆音と共に火車が改造して趣味全開のヤンキー仕様の火車バイクにまたがって、無惨をぱっかーんと軽やかに跳ねて参上。

 

 その後、思いきり棒読みで「うわー」とか言いながらわざとコーナーを曲がり切れず転ぶが、本人は猫の俊敏さを生かしてもちろん無事。

 バイクから投げ出されたが、地面に軽やかに着地して顔の毛づくろいをしだした。

 

「はい。こんな感じで、あの世は基本的に意思を持った乗り物ばかりですが、現世に視察する機会のある獄卒の皆さん、ノーヘルはもちろん運転は一歩間違えば自分はもちろん他人も巻き込む危険なものなので、運転する側もしない側も気を付けましょう」

「鬼灯様、結論が取ってつけすぎて説得力が皆無です」

 

 どうやらあの世の乗り物事情でバイクの調達が難しかったので火車に協力を頼んだが、そのバイクは彼女の趣味のたまものなので無惨を乗せて壊すこと前提のこの企画には、マジギレで却下されたからこその妥協案。火車が無惨を轢くという形で何とかこのおバカ死再現をしたようだ。

 再現できてないよ、鬼灯様。狛治の言う通り、取ってつけた教訓も説得力はマジでなかったので、無惨が良い感じで飛んで行ったところしか見どころがない動画になってしまった。

 

 ……それで十分に需要があるのは、無惨が凄いのか、喜ぶ皆様方の恨みの深さが凄いのかは、考えない方がいいだろう。

 

 

 

 * * *

 

 

 

「えっと……今度も再現できますか?

『山道を走行していた車のブレーキが利かなくなり、ドライバーが同乗者達に何も告げずに一人だけ脱出。同乗者達は何とか車を停車させ、怪我人ゼロ。一人だけ脱出したドライバーは頭を強打して死亡』なんですが……」

 

 先程と似たような、あの世にはない乗り物関連が出たため、珠世は愈史郎が見たら「珠世様は何も悪くありません! そのような顔をさせる要因は全て滅殺してきます!!」と本気で宣言する申し訳なさそうな顔で尋ねる。

 

「あぁ、大丈夫ですよ。これは技術課と変成庁の方々で作ってもらってますから」

「無駄に凝るな!!」

 

 しかし何故か、バイク以上にあの世では普及してない自動車を鬼灯は再現して用意していた。

 そして内容再現の為か、車には無惨だけではなく助手席に鬼灯、後部座席には珠世と狛治が乗り込む。

 狛治は、流石に珠世は危険ではないかと反対したが、珠世本人が強く望んだのと、鬼灯がエアバッグ代わりにでかいぬいぐるみを渡していたので、それを膝に乗せて抱きかかえる形で乗り込み、安全性を高めたことで狛治は渋々納得。

 

 結果、むしろ隣に座る狛治が危なくなった。愈史郎の嫉妬という意味で。

 狛治が既婚者でなければ、間違いなく滅殺対象確定だろう。

 

「おい、事故るとわかっている車を何故私が運転すると思っている?」

「良いじゃないですか。上手くいけば、本家とは逆の成果が出るかもしれませんよ」

 

 運転席に乗せた無惨が不満そのものな顔で突っ込むが、鬼灯はいつも通り余裕で煽って来る。

 さすがに無惨も彼の発言を「そうかも」と鵜呑みすることはしなかったが、逆に自分が脱出しようとせず、わざと更にスピードを上げて暴走させれば、自分も死ぬが他の3人も巻き込めるのではないかと考えた。

 

 その場合、狛治と珠世は大怪我しようが死のうが蘇生することが出来るが、鬼である鬼灯は丈夫な代わりに死んだらそれっきりだ。

 そこまで思い付き、久々に余裕を携えた色気のある笑みを浮かべて、「そうだな。もしくは、お前こそが一人で逃げて本家を再現するかもな」と煽り返して、アクセルを踏む。

 

 だが、アクセルにほぼ全体重をかけて踏みつけた瞬間、無惨の座っていた運転席がビョン! 車の屋根を突き破って上空に跳ね上がった。

 

「「は?」」

 

 後ろでそれを見ていた狛治と珠世は唖然。

 そして横にいた鬼灯は、「まさか、流石に発進すらせずにこうなるとは……」と呆れていた。

 

 どうやら無惨が自爆覚悟の嫌がらせを思いつくことを、鬼灯の方も予測していたらしく、初めからこの車は一定以上の強い踏み込みをしてスピードを上げようとしたら、運転席に仕込んであった巨大発条(バネ)が作動して、漫画のように運転席が上空に吹っ飛ばされるという仕様だったらしい。

 どうりで、わざわざ技術課や変成庁協力の元、作らせた訳だ。

 

 結果として、見事に「一人だけ逃げたが、残された3人は無傷で、逃げた当人は頭を強く打って死亡」を再現した無惨の芸術点は割と高いと思う。

 

 

 

 * * *

 

 

 

「『捕まえた亀の甲羅を割ろうとした鷲が、彼の光る頭を岩だと勘違いして、彼目がけて亀を落として死亡』。

 あ、これ本家知ってます。紀元前の詩人ですよね、確か」

 

 今度は割と有名な笑える逸話なので、珠世は読み上げてすぐに元ネタを看破した。

 

「正解です。紀元前5世紀の悲劇詩人として知られる、アイスキュロスさんです。彼は『落下物によって死亡する』と予言されていたらしく、その予言通りの死を迎えました」

「……おい、その死に方とお前が手に持っている剃刀は何の関係がある?」

 

 鬼灯が珠世の答えにさらに補足を加えるが、無惨にとってはそこはどうでもいい。

 それより気になるのは、イギリスの都市伝説系殺人理髪店兼ミートパイ屋が持ってそうな、極悪な剃刀だ。

 あと鬼灯よりマシだが、狛治が何とも言えない困り果てた顔で、靴やらフローリング用やら各種のツヤ出し用ワックスを持っているのも気になる。

 

 しかし鬼灯は、無惨が疑問に思うことが理解できないのか、割とマジで不思議そうな顔をして小首を傾げながら答えた。

 

「あなたをハゲにしなくてはいけないのだから、関係あるに決まっているでしょう」

「する必要ないだろ!!」

「何言ってるんですか。鷲が亀を落とした理由は、『光る頭を岩と間違えたから』ですよ。必要に決まっているでしょう。

 毛抜きで一本ずつ抜いて、痛みと長いお友達とお別れしてゆく様を見せつけたかったのですが、流石に時間がかかりすぎるので剃刀にしてやったのに、なんと贅沢な」

「私が贅沢なら、それをしたがる貴様は異常者の暇人だろうが!!」

 

 かなり陰険なことをやりたがっていた鬼灯に、無惨は的確に突っ込みを入れる。本当に、鬼灯相手だと無惨が常識人に見えてしまうのが困る。

 

「むしろお前のせいで暇がないんですよこっちは!!」

 

 しかし突っ込みは的確だが、相変わらず無惨の特技は自爆だった。

 暇人からほど遠い鬼灯が、今は別に無惨案件で忙しいことなどないのに、討伐前の日々を思い出したのか剃刀を放り投げて無惨の髪を毟りながらキレた。

 そして楽し気に珠世が参戦しに行ったのを、狛治は死んだ目でただ眺めていた。

 

 結果、毟った所為でむしろ頭部は全然光らなかったので、特に意味もなくただ苦痛が増幅しそうだからという理由でワックスを一回塗ってから、無惨を再生させて今度こそ剃刀で剃った。

 

 珠世曰く、「顔だけは本当に整っているから、ハゲてもそんなに情けなくならないのが不快」とのことだった。

 

 

 

 * * * 

 

「……何故、そこにもぐりこんだの?

 次は、『妻と喧嘩をし、家を飛び出してどこか落ち着ける場所を探していた男が、教会裏の大型ごみ容器の中にもぐりこんで一晩を過ごし、寝過ごした所為でゴミ収集車にゴミと一緒に放り込まれ、水圧圧縮機に挟まれながら死亡』です」

 

 またしてもお手本のようなおバカ死に、珠世は本家の人というか、彼の奥さんやゴミ収集車の運転手に同情を懐いて読み上げた。

 

 そしてもはや芸の域に達している無惨は、ここでも盛大に自爆した。

 

「私が妻に追い出されることがあると思ってるのか!? むしろ私が追い出し、なんならゴミ箱に詰めて……「終式、青銀乱残光」

 

 見事に狛治の地雷をぶち抜く発言をかまし、無惨はその場でミンチになった。

 そしてそのミンチになった無惨を狛治は淡々と集めてゴミ箱に詰め、鬼灯に言う。

 

「鬼灯様、ごみの蘇生をお願いします」

 

 狛治にすら「ごみ」と言い切られた無惨は、蘇生させてすぐに本家どおり生ごみと一緒に水圧圧縮機に放り込まれる。

 説明はされていなかったが、本家通り圧死するまで壁をガンガン叩いていた生き汚さを見事に自分から発揮して再現してくれた。

 

 そして狛治は珠世に、「何て素敵……」と言わんばかりの視線を向けられたので、しばらく彼はマジで愈史郎に会わない方がいいだろう。

 

 

 

 * * *

 

 

 

「そろそろ動画的にもいい時間なので、これで最後にしますか」

「そうですね、残念ですけど。

 では、最後のバカ死を引きます。……これです!」

 

 くじの中身がなくなるまで続きそうだったが、流石に鬼灯がストップをかけ、珠世もある程度の満足は得れたので、素直に納得して最後のくじを引く。

 その最後の無惨の無様な最期はというと……。

 

「『バンを無免許運転しつつ屋根の上にマットレスを敷いて寝ていた女だが、バンは縁石に乗り上げてその反動で落下して死亡』。

 どうやったんですか、これ!?」

 

 思わず読み上げた珠世が突っ込む。最後のバカ死は、今までとは方向性の違うバカだった。

 

「これは本気で私というかその女以外、どうしろと言うんだ!?」

 

 これには無惨も逆ギレではなく、本気で困惑して突っ込むし、珠世も癪だが同意だった。

 まずどうやって無惨にやらすかではなく、どうやってこの女がやったのかを真剣に知りたい。

 

「変化は嫌いですが、進化はし続けてきたんでしょう?」

 

 だが鬼灯は、無惨はもちろん珠世や他の獄卒達のガチな疑問に答えず、最初の無惨のダーウィン賞に関する勘違いで発したセリフを取り上げて、ロープを構えて言った。

 

「どうしろと? やるんですよ。出来るまで」

「……車の屋根に寝ながら運転ということは、腕か足がもっと長くないとむずかしいですね。

 関節を外して引っ張れば、1メートルくらいは伸びますかね?」

 

 無惨の突っ込み兼ガチ疑問に、「雨が降るまで雨乞いの踊りを踊り続ける」みたいな理屈で答える鬼灯。

 それを止めるどころか、かなり怖いことを言って協力体制を取る狛治。

 どうやら先程の、「妻を追い出しどころか、ゴミ箱に詰める」発言でまだキレているようだ。

 

 そんな補佐官コンビに無惨と獄卒は本気でビビるのだが、珠世は「そうか! その通りだわ!」と斜め上の納得をして、彼女もしのぶが開発した累の兄の毒で短くなった手足を回復させるための薬を思い出し、それを応用しようと言い出した。

 こうなったら、もう誰も止められない。

 

 結果、流石に一日では無理だったが鬼灯の調教と、狛治と珠世の協力により手足を伸ばしたことで無惨は見事、「バンを運転しつつ屋根の上にマットレスを敷いて寝る」といういらなすぎる高度なテクニックを三日で身に着け、そしてそのまま事故った。

 

 そしてさすがに我に返った狛治は改めて、この動画は何の意味があるんだろうと思った。

 もうゴキブリの時点で鬼灯もたぶん獄卒募集は諦めていたので、これはマジで珠世へのサービス回兼、輝哉あたりのボーナスにしかならないと思う。

 





さすがに実際の人物の死をネタにしているので、紀元前とかの真偽が不明な人の逸話はともかく、真偽がハッキリしているダーウィン賞受賞者などは、いつどこの話かなどはあえて書きませんでした。

それでも、不愉快になられた方がいましたらごめんなさい。
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