光り輝く呪いの歌 作:光子大爆発
残念ながらアレに法則性はないんだ。奇数話だからあるわけじゃあない。ポエミーモードに入ってただけだ。
ただ、無理にそれっぽいことを言ってみるとするならば、どんな人にだって物語がある。かな?
無論、彼女もその例には漏れない。
ただ、一つだけ彼女の物語には他の人にない特徴がある。
それは、自身の物語の存在を自覚していたこと。そして、盛大に飾り付けを施そうとしたことだ。
話を聞けば聞くほど、私はここまで自分を客観視した青春を送った人は知らない。
それは、出来心でした。
私たちのバンド名がRoseliaに決まった日の練習のことです。
この日の練習はとても熱を入れていました。そのためか、今井さんも宇田川さんも私もひどく疲れていました。日陰さんもその例には漏れず、疲れながらも日記に何かを書いていました。
はじめ、疲れていながらも演奏についての改善点を記入するなんて熱心な人だと関心しました。しかし、その一方で私にはその日記を見たいという感情が首にもたげていました。
独特な感性でその場の雰囲気を掴める。それをいとも容易いように出来る天才。私の知る限りで最も日菜に近い人物。
その日記を見たい。見れば、もっと日菜に近づけるかもしれない。
ちょうどフェスの選考会が近かったこともあって焦っていた私は日陰さんが存在を忘れ、置いていってしまったその日記帳を開いてしまいました。
開いた時、自分の浅ましさを恨みました。
やりきれない感情が渦を巻きます。
なぜなら、そこには。
「どうして……ッ、どうして、そんなことに……」
不条理な現実が記されていたのだから。
********************
枕元に置いてあるスマホがバイブを響かせる。
日記に追記してそろそろ寝ようかという時に一体誰なのだろうか。
訝しんでスマホを見るとそこに氷川紗夜とあった。
紗夜のことだから無駄話ではないのだろう。スマホを耳に向けて電話に出た。
『……っ!』
しかし、紗夜は中々話を切り出さない。どこか声が震えている。まあ、理由はわかる。言い出せないようなら先に言おうか。
『紗夜、さては私の日記帳を見たな?』
『……』
『沈黙は肯定と見なすよ? それでどこまで見たのかな?』
『最初から10ページほど……』
ああ、だからか。よりにもよってそこを見ちゃうなんてね。
思わず、私はスマホを耳から離し、天を仰いだ。
『もうここまで来たら単刀直入に聞きます。日陰さん、あなたは……夏までは生きられないというのは本当ですか?』
『うん、死ぬよ』
そう答えてからはもう紗夜は言葉にならなかったみたいでずっと泣いていた。
これだから、嫌だった。
私の境遇は万民からみて不遇なものだ。それこそよくあるお涙頂戴物語と変わらない。まず、同情される。そして、腫れ物を扱うような日々が始まるのだ。
ぜいたくだってわかってるけどね、私の場合はそんな環境で生きるなんて死んでるようなものな気がする。
残されるパパやママ、友希那たちも大事だけど、何よりも最後まで日常を、迷惑をかけようと好き勝手に生きたいなんて異端にもほどがあるけど。
『もう紗夜にはバレたから仕方ないけど私が死ぬってこと、他の誰にも言わないでね。言って友希那たちをかき乱したくない。なにより、Roseliaは音楽に私情を持ち込まない、でしょ?』
言っているうちに矛盾してるなって思う。
私は常に私情を持ち込んで音楽をして来たから。
美しいものが見たい。永遠を示したい。なんてその極地だ。
『……わかりました』
半ば脅しと化した私の言葉に、紗夜は震わせながら答える。
『あと、最後に一つだけ言っておくよ。私はね、もう死ぬことは怖くないの。ただ、死んだ後に忘れられることが怖い。死んでも誰かの心に我が物顔で住み着きたいんだよ。……だから、薄命を憐んで、私の夢を邪魔することだけはやめて』
言ってみたはいいものの、多分受け入れてはくれないだろう。私の願いと倫理観はおそらく反する。
だから、紗夜の返事を聞くことはせずに通話を切った。