獣は死して皮を留め英雄は死して名を残す   作:篠江菴

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読み専でうん年生きてきた奴が最近のヒロアカ熱に押されて初投稿。漫画もアニメも映画も最高。
至らない所がたくさんあると思いますが、お手柔らかにお願いします。


始まり
虎視眈々と


 

動物園に行ったことはあるだろうか?

 

家族や友達と行ったり学校の遠足なんかでも行ったりして、一度は行ったがある人が大多数だと思う。

世界の色んなところにいる動物が一度に見れて大人も子どもも皆楽しめる素敵な場所である。

 

もちろん、動物が閉じ込められているのが可哀想だと思う人もいるだろうしそのあり方が嫌いだって人もいるかもしれない。それでもその施設を作ったり動物達の世話をさたりしている人達は大切に動物達を慈しんでたくさんの人々にその良さを知ってもらいたいと思って毎日頑張ってると思うんだ。

動物達がすごす檻だって特別なガラスの水槽だって動物達や見に来る人々のことを考えて作ってある。

 

 

ここまでつらつら動物園について語ってきたけど私が言いたいことは一つ。

 

 

 

「いっぱんかていにちょうおおがたのおりってひかえめにいっていみわからないな???」

 

 

 

人は檻に入れるものではないって事だ。

 

 

 

*******

 

私は所謂転生者である。

私が前世のことを思い出したのは檻の中の私に両親がニッコニコの笑顔でごっつい首輪を着けている時だった。

首にかかったずっしりくる重みにびっくりすると同時に頭の中に人一人分の記憶が丸々落っこちてきて当時は頭がおかしくなるかと思った。

でも目の前に両親が期待に満ちた目でこっちを見ているのが目に入って色んなことを飲み込んでニッコリ笑ってお礼を言ったのを覚えてる。

 

檻に入れられてて首輪つけられて着けた本人にお礼言うってメチャメチャ頭沸いてんな~~~~??意味わかんねーな~~~???って思うだろ?私もそう思う。

 

 

そもそもなんで檻に入れられてるのかって?それは私の個性のせいである。

 

まず私の前世には個性なんてものはなかった。平々凡々な大学生だった私は日々勉強に勤しみバイトに追われ漫画やゲームで徹夜をしまくる日常を送っていた。

後半おかしいって??オタクなんてそんなもんだ。

そういや死因は?多分徹夜やらなんやらの無理が祟って過労死だ。睡眠って大事だね…。

 

前世のオタク生活の中で少年雑誌やらラノベなんかの色んなジャンルに漂っていた私からしてみたら個性についての理解なんて朝飯前だった。あっこれ進○ゼミでやった奴~~!!

 

なんで自分が転生してるのかさっぱりわからなかったがそんなことよりも自分が個性なんてスーパーな能力を持っていることの方が気になり過ぎてそんなことどーーーーでもよかった!

 

だって言うなれば超能力じゃん!? あんな漫画やこんなゲームに出てきたような一度は夢見るスーパーパゥワーじゃん??!??!そりゃ興奮するよね!!!現在それのせいで檻に入ってるんですが!!!!

 

 

閑話休題。

 

 

私の個性の話である。

私の個性は四本足の動物になれる個性だ。3歳の時に当時動物が大好きでビデオに映った動物に大興奮して上がったテンションのままにその動物そっくりに変身して見せたのが私の個性の発現だった。

まだ前世を思い出してなかった私は自分の姿を見てメチャメチャ喜んだらしいが、両親は私とは違う方向に喜んだらしい。

 

「家じゃ飼えない生き物をこっそり飼えるんじゃないか?」と。

 

娘の個性が発現したのに喜ぶ前にそれってどうなん??

 

後から知ったが両親は大の動物好きらしい。それがきっかけで結婚した程。夢は外国のお家みたいに(偏見)家の中で大型動物を買うことだったそうだ。

 

私の個性は物を変形させる父の個性と好きな動物一種類だけに変身できる母の個性のハイブリッドだ。

母の一種類だけという縛りが父の変形で無くなったのか四本足の歩く動物にならなんにでもなれるのだ。爬虫類系なんかもいけるか?と思ったが獣って感じの動物だけらしい。地味な縛りである。

 

とにかくそんな夢を抱いていた両親の元にお誂え向きな個性が転がり込んできたのである。どうするかって?当然利用するよね!!倫理観とは???

 

最初はよかった。動物の映像や図鑑等をたくさん見せられて「○○になってみせて~」と言われて上手にできたら誉めてもらえる。

これで純粋な幼女が喜ばない訳がないだろう?

誉められるままに練習してなれる動物が増えてきて、4歳の誕生日がくると「今日からあなただけの部屋があるのよ~」と連れてこられた部屋は全体のほとんどが檻に締められた部屋だった。

それが私の檻生活の始まりである。

 

 

*******

 

 

「七伽、今日は鹿になって見せて?この間買った絵本にのってたでしょう?」

 

「はい、ママ」

 

 

とろけそうな笑顔で私にオネガイをしてくる母親の言葉に従って白毛の鹿に姿を変える。

 

 

「今日も上手に出来たわね!素敵だわ!!でも本物の色になれたらもっともっと素敵なのに…!!!」

 

「ありがとうママ。でもこの白い毛並みも綺麗でしょう?」

 

「そうね…!この白い色が美しいんだものね……!!今日も素敵よ七伽!!!」

 

 

たっぷり一時間檻越しに私を眺め回した母親は満足したのか部屋の入り口に鍵をかけて退出していった。

その姿を見てソッと息を吐いて変身を解いた。

 

 

 

 

ハァイ!私檻暮らしのシチカッティ!!

今、今日の日課を迫られてたの!!!

 

……語呂悪いな?

 

 

前世はオタクの大学生、今世は動物七変化な個性有りの幼女、四葦七伽。現在7歳である。

名前は前世と漢字は違うけど響きは一緒なのですぐ慣れた。

 

檻と言う名のマイルームを与えられてから早3年。

幼いなりにヤバいと思った私は頑張った。記憶が戻った後の私からしても頑張ってた。最初は状況のわからなさにギャン泣きしていたがだんだん笑ってごまかすことを覚えた。笑って言うとおりにしていれば今まで通りに誉めて貰える、檻から出して貰えるかも!と思って頑張っていた。

 

けれど、頑張ったって所詮個性が発現したての幼女である。変身は安定せずに要望通りに変身できないことは多々あった。

 

幸いなことに我が両親は上手くできないからといって暴力に走る人ではなかった。

ただできないとできるまでご飯抜きの罰が待っていた。立派な虐待です。本当にありがとうございました!

 

最長で3日水だけしか与えられず意識が朦朧とする中でどうにか変身をやりとげた後は状況は改善したけれど、度々ご飯抜きは実行されていた。

 

それから私がなる動物は全部体の色が白っぽくなってしまう。これは私の髪が白いからじゃないかと思うんだけど、他の色になれるか何度も何度も挑戦して、それでもできなくって両親にはとっても惜しまれてそこのところは諦めてもらえた。やっぱりできない間はご飯抜きでした。

恨むなら遺伝したと思われる白っぽい自分の髪を恨めよ父よ。

未だに未練があるのか日課の度に毛色について言われるのはうんざりする。

 

 

 

やっぱりさ、これって事案では???

こんな家、絶対脱走してやるからな!!!!

 

 

 

幼女の中に元大学生の私がINしてからは固い意思を胸に、日々の親から出されるオネガイをクリアしつつ体を鍛え知識を溜め込みイメトレをしまくった。

 

体力がないと脱走してもすぐに捕まっちゃうし、そもそも力がないと部屋の檻を破って逃げられない。

この部屋の檻は棒の隙間を抜けられないように目が細かい金網が張ってあるから逃げるときはこれをぶち破って逃げるつもりだ。

その為に与えられる色んな動物の図鑑から使えそうな動物を探し、変身するためのイメージトレーニングを重ねてる。

 

 

「もんだいはなにになってとっぱするか……」

 

 

力自慢の動物を考えるのが難しい。だってなれる動物にも縛りがあるのだ。

腕力で檻の棒を曲げられそうなゴリラには変身ができないし、犬猫系の動物だと突進力が足りなさそう…。ゾウなんかは流石に重すぎて逃げる前に床が抜けそうだし……。

人の姿に戻って図鑑をパラパラ捲って候補を探す。

この部屋にはたくさん与えられている図鑑や絵本の他には動物の映像を見るためだけのテレビしか情報源はない。

字を自分で読めるように平仮名と片仮名は教えてもらったが、それだけだ。

今の体は7歳だ。檻暮らしで学校には行ってないからそれ以上のことはわからないのだ。

多分両親は私に情報を与えたくないんだと思う。両親の中では私は「娘」じゃなくて「ペット」だから。

ペットは話さないし人間みたいに考えない。

でも自分で図鑑が読めてもらわないと困るから最低限の文字だけは教える、そんな感じなのだろう。

だけど、体は7歳でも中身は大学生だ。

前を思い出した私は漢字だって外国語だって読めるし、親の思い通りにはならないのである。

何度も読んだ図鑑の1ページで手を止める。

 

 

「あっこれはいけるかも……!」

 

 

少しずつ作戦を練りながら虎視眈々と脱走できる機会を窺っている。




配分がわからず無駄にミチミチ…。
テンポよく行きたいところです(汗)

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