擬態する生き物って知ってるか?
擬態ってのはそもそも他の物に様子を似せる事。自然界では虫や爬虫類、鳥や魚など、挙げ始めたらキリがないくらい似せる事に特化した生き物達がたくさんいる。
その形は多岐に渡って、生き物達が生存競争をする中で考え身に着け勝ち取ってきた闘う姿なのだと、小さい頃に見た分厚い図鑑を見て思っていた。
なんとなくそれが自分の個性と似ているとも。
それが生き物として正しい色を持てなかったり本物に成りきる事が出来なかったりするような出来損ないであるとしても。
……まあ、自分の色が白いのはしょうがないし、変身してどれだけ性質が動物に寄ろうと中身が人間であるならばどうしようもない事なのだけど。
結局、何が言いたいかといえば。
「変身したら服が消えたり衣装チェンジしたりするのはお約束じゃないの????」
美少女アニメとか〇〇ライダー系とか、そういうの、あるジャン??
元オタクの思考回路に頼るべきではない。
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入学試験から1週間。
合否の通知が届いた。
『すまん。間違って開けた』
他の郵便物と一緒に届いていたのをじいちゃんが間違って開けたらしい。
いやいや、そういうのって私が一番に開ける奴だろ!!?と思いつつ自室に引っ込んで中身を取り出す。
中には数枚の紙と小さな丸い機械。
とりあえず明かりに翳して見てみても何もわからず、先に書面から読もうと机に置くと、機械音。
『私が!!投影された!!!』
「は?オールマイト?」
小さな機械から現れたオールマイトが映るホログラム映像。
置けばよかったんかいこれ………。
『“なんでオールマイトが!?”って思うだろう?実は来年度から雄英に勤めることになってね!合否通知の担当になったんだ』
『それでは試験結果をお知らせしよう!筆記は合格!でも数学がギリギリだったね……。予習復習を怠らない事!それが必ず君の力になる!!』
やっぱり数学ヤバかったか……。
わかっていた事だけど落ち込むわ……。
『そして実技!46Pと高得点!!かなりの数の仮想敵に囲まれながらも状況を打破したその強さは素晴らしい!
更にここに+で審査制のP、救助活動Pが加算される!敵を倒すだけではヒーローとは言えない。人救けをすることもとても大事なヒーローの仕事さ!
君は危機的状況に晒されながらも人を救け、厳しい状況だと理解すると瞬時に自分を囮とし、敵の目を要救助者から逸らさせた!』
空中に広げられた映像、オールマイトの後ろの画面に映される耳郎さん救助劇からの対ギミック戦ダイジェスト。
って何で今〆に人2人抱えて撤収してるシーン入れた…?もうそこ試験終わってるじゃん??
『それ故に、救助活動P31P!2つの得点を合わせて合計77Pで、1位での合格だ!!!』
「1位……?」
まじで?直前の映像のせいで頭に情報がはいってこないんだけど。
『ちなみに、今年の実技試験の1位は君だけじゃなくてな。同率1位で2人の首位がいる!来年度は特別措置として毎年40名で設けているヒーロー科の定員を1人増やすことになった!!これから君は40名の仲間と共に夢を目指していくことになる!』
『未来ある君に私が言おう!!』
『君は、ヒーローになれる!!!』
「合格した………っ」
雄英で待ってるぞ!、とフェードアウトしていくオールマイトの姿を見送って、私はやっと掴み取った可能性を実感した。
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「被服控除、ねぇ」
届いた書類を整理していく中で出てきた書類。
ヒーロー科に在席するにあたって、要望を出せばそれに合ったコスチュームを作ってもらえるらしい。
とんでもねー制度だな。太っ腹かよ。
「うーーんんん……」
要望、要望………。めっちゃお願いしたいポイントあるんだけどそれが1番ネックな奴なんだよな〜〜。
ズバリ、変身時の服問題。
入試の時はすんごいダルダルな格好で実技受けたけど、あの姿は正直不本意なのだ。
服が脱げたり破れたりしないのならばもっと別の格好ができるのに…!
一時期はホントーにこんな事どーーでもよかったんだんだけどなぁ!!
人型じゃなかったらなんとでもなるのに、本来人間である事によって発生する、自分の感覚と社会の常識と前世の自分との板挟みどころか三つ巴による内面の矛盾……。ついでに年齢的に所謂思春期の範囲内だからか体に引っ張られて不安定さマシマシィ!
………よっし、相澤さんに相談だ!
ヘイ相澤さんカモーン!
とゴキゲンに家電から電話してみたけども、はよ携帯買ってくれないかなぁ………。将来的に障子とか、あとこの間連絡先聞き忘れた耳郎さんとも連絡取ってみたいんだけどなぁ…。まずもって2人が受かったかも知らないんだけど……。
「はい、相澤です。」
「こんばんわ相澤さん、今大丈夫ですか?」
「あ?お前か。爺さん達かと…。要件はなんだ?」
「実は相談したい事がありまして……」
カクカク云々。
被服控除を利用する上で悩んでいる事を並べて説明すると、「今の2年に似たような事で困ってる奴がいたな…」と少し考えながらもアドバイスをくれた。
とりあえず材料として髪の毛を少量、要望と一緒に提出する事になった。
そういやこの人最近コスチュームで来ないけど、ダルダル系っつーかダウナー系っつーか元祖小汚い系だったな?
色々と話し込んでいると時間が経つのが早い。就業後かなってタイミングで電話してみたわけだけど、忙しい人だからあんまり長く拘束していたら申し訳ない。
「今日はありがとうございました。助かりました」
「書類関連は早めに送れよ」
「わかってますよ」
信用ねーなと思いつつ、電話を切ろうとする。
「合格おめでとう」
下ろしかけた受話器から聞こえた声に若干口元がニヤけながらも、しっかりお礼を告げてから会話を終えた。
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雄英高校から電車で2駅。駅からしばらく歩いた所にあるマンションの一部屋が新しい私の部屋だ。
家の隣に山があるようなド田舎に10年近くいたもんだから、こっちの発展具合に圧倒され気味だ。
何せ、こんなにミチミチに建物が乱立しているような所に来るのは前世以来だから、都会ってこんなんだっけ…?と思わず考えてしまう程。
入試の時にも来たけれど目がチカチカして仕方がない。
とにかく入学までには家周辺を探索したり自主練したりさながら慣らすしかないなぁ。
部屋の中を見回すと、今回の引っ越しに合わせて買ったベッドと机と衣類を入れるチェストくらいしか目立った物が無くって、面白みも何もない部屋である。家から持ってきた物は片付けてしまって、机の周りに参考書や動物の図鑑、勉強道具用のカラーボックスを置いてもまだまだ場所は余っている。
前はあれだけ2次元に入れ込んで収集物もたくさんあったんだけど。今はそういう文化に殆ど触れていなくて、それどころじゃない日常もあったからか。
でも、それだけ物欲がないような私でも何も持っていないわけじゃない。
本を立てたカラーボックスの上、蓋がついたシンプルな小物入れの中。
中途半端な長さは邪魔くさいからと伸ばすに任せて結っている髪を、たまには可愛くしてみなさいとばあちゃんや道場にくる人がくれた髪留めや結紐。
それから、仕切られたケースの中に入れられた、私には勿体無いようなたくさんの色の中に一際目立つ色の1本。
あの日に貰った赤色のリボン。
月日が経っても未だに色褪せないリボンは、高いお菓子の箱のラッピングだったのか、滑らかな肌触りで端が解れないように模様が入ったシルバーの金具で縁取られていた。
そこそこ長さがあってお洒落な代物だったから出来心で編んだ毛先にゴム代わりに結んで見ると案外様になっていてびっくりしたのが数ヶ月前。
自分キモチワルイナーとか思いながらも、見ると個人的に落ち着く色なので気が向いた時に着けている始末。
完全にライナスの毛布状態で乾いた笑いしか出ない。
これ以上に大切な物はこの道を進めば増えていくのだろうか。
脳裏にちらりと過った最近友達になった女の子。やっと携帯を手に入れて、卒業式で会った時に連絡先を交換した、散々世話になった背の高い友人。
そうだといいなと思いながら、もうすぐそこに迫った新しい日常に思いを馳せた。
それは憧憬か執着か、それとも。
次から新章(予定)