俺には使命があった。
それは生まれ育った村を滅ぼした魔物達の元凶を倒すことだ。
元凶の名はデスピサロ。世界各地で人々に被害を与える魔物達の親玉であり、魔王と呼ばれる男だ。
デスピサロに恨みを持つのは自分だけではない。共に旅をする仲間達の中にもデスピサロに恨みを持つ者はいた。
アリーナ、クリフト、ブライの3人はデスピサロの手によって王国の人々を消され、帰る場所である城すらも魔物達の手に奪われた。
マーニャ、ミネアの2人はデスピサロの部下によって実の父親を殺された。
デスピサロだけは必ず倒さなければならない。どれだけ苦しい道のりになるかは分からない。
だが・・・それでも構わない。
必ず成し遂げてみせる。
その為にも彼らは今日も旅を続けていた。全ては魔物達の元凶デスピサロを倒す為に・・・
「この旅の扉を抜ければデスピサロのいるデスパレスに行けるんだなミネア?」
「その筈ですソロさん。私の占いにもそう出てますし、リバーサイドで得た情報にも当てはまります」
「よし。みんな準備は出来てるな?ここを抜ければ敵の本拠地だぞ」
「そんなの分かってるわよ!!心の準備ならとっくに出来てるわ!!」
「武器や防具も今手に入る1番の物を用意しましたしね」
アリーナとトルネコの2人は準備万端のようだ。
それに呼応して他の仲間達も同じように首を縦に振る。
全員気持ちは同じのようだ。今は1秒でも早くデスピサロを倒す。それしか頭になかった。
「・・・行くぞみんな!!今日こそ因縁のデスピサロを倒してこの世界の平和を取り戻す!!」
「「「「「おう!!」」」」」
「だが勘違いしないでくれよ?いくらデスピサロを倒してもこの7人の内1人でも欠けたら意味がない。全員生きてこの戦いを切り抜けろ!!」
「「「「「おう!!」」」」」
みんなを鼓舞し、ソロは旅の扉に足を踏み入れる。そんな俺に続いて他の仲間達も同じように旅の扉へ飛び込んだ。
(待っていろデスピサロ・・・今日こそお前を倒す・・・!!)
旅の扉特有の独特な空間転移が始まる。
正直この感覚は何度味わっても慣れないだろう。
特に乗り物が弱いという訳じゃない。船や気球にはすぐ順応出来た。
だがこの旅の扉は乗り物とは全く違う。今にも旅の扉酔いになりそうだ。
(出口が見えてきたな。ようやく敵の根城に・・・ん?)
出口らしき所は見えてきたが、何か変だった。
本来旅の扉と言うのは入口も出口も青く光っている物。
にも関わらず、今見えてきた出口は不気味なくらい赤黒く、淡い光を放っていた。
今まで何度も旅の扉を潜って来た故に分かるのか、はたまた勇者としての本能かは分からないが、何か嫌な予感がする。
(迷っていても仕方ない!どうせ他に出口らしき物は見えないんだ!突っ込むしかない!!)
こうしてソロは赤黒く光る旅の扉を潜った。
空間の歪みが治まったので目を開けると、そこは大きな海の上だった。
「ここが・・・デスパレスなのか・・・?」
「ちょっと!?誰よアンタ!!」
突然女性らしき声が聞こえてくる。その声のする方向に顔を向けると、綺麗なオレンジ色の髪をショートカットにした女性が驚いた表情で向かってくる。
「魔物の気配を感じない・・・って事はアナタは人間・・・?」
「そうに決まってるじゃない!!それより私の質問に答えなさい!!アンタは誰!?どっから現れたの!?」
「俺は旅の扉を潜ってここに・・・」
「旅の扉?何よそれ?」
「(旅の扉を知らないのか?)失礼ですがここはデスパレスじゃないのですか?」
「デスパレス?ここは私達の海賊船よ。見て分からないの?」
辺りを見渡してみると確かに船の上だった。
目の前の女性以外にも何人かの乗組員らしき人物達が不思議そうにこちらを見ている。
「おいナミ?誰だよそいつ?」
「ウソップ!!コイツ勝手に乗り込んできたみたいなのよ!!もしかしたらバロックワークスの人間かも!!」
「バロッ・・・え?」
今度はウソップと呼ばれる男の人が現れた。どうやらこのナミという女性の知り合いらしい。
にしても奇妙な鼻だ。今までの人生色んな人を見てきたが、ここまで鼻の長い人を見たのは初めてだ。
「おいおいそりゃ本当かよ!?まさかまたビビを狙ってきたのか!?ついこの間Mr.3とMr.5のペアを倒したばかりだぞ!?」
「ちょっと待ってください!!何か勘違いをしているようですが俺はそのバロックワークス?とは無関係です!!」
「そんなの信じられないわ!!ゾロ!!サンジ君!!とりあえず捕まえて!!」
「本当に無関係の人間だったらどうすんだよお前は・・・」
「まぁナミさんからのお願いなら聞くしかねぇよな。おいアンタ?とりあえず大人しく捕まってもらうぜ?バロックワークスの関係者って証拠が出るまでは悪いようにしねぇからよ?」
またしても2人の男性が現れる。
緑髪の男性は既に2本の刀を抜刀していた。
どうやら話し合いじゃ解決しないようだ。
「仕方ないな・・・っ!!」
このまま黙って捕まる訳にもいかず、臨戦態勢に入ろうとした矢先、緑髪の男性が抜刀した2本の刀で襲いかかってきた。
あまりにも速い動きだったのでソロは防ぐのが精一杯だった。
「安心しろよ?殺しゃしねぇからよ?」
「そんな殺気の篭もった目をしていてよく言えるね・・・!!」
「そりゃ生まれつきだ・・・それよりその刀、相当な業物みたいだな?」
「まぁね。デスピサロを倒す為に手に入れた天空の剣だよ。まだ本来の力は取り戻してないけどね・・・!!」
「天空の剣か・・・面白ぇ!!その刀俺が使ってやるよ!!」
ソロの刀を酷く気に入ったのか、鍔迫り合いをする刀により一層力を込めてくる。
この力はマズい。一瞬でも気を緩めようものならこのまま押し切られそうだ。
「おいアンタ?俺がいる事を忘れちゃいないか?」
「おっと!!」
後ろから襲ってくるもう1人の男性をすっかり忘れていた。
あと少し話しかけられるのが遅かったら完全にやられていただろう。
「おい糞コック?コイツは俺の獲物だぞ?一緒に斬られたくなきゃ引っ込んでろ」
「ナミさんに頼まれたのは俺だ。お前こそ引っ込んでろマリモ剣士」
(糞コック?マリモ剣士?)
お互いの呼び方には多少違和感を感じるが、今の攻防である程度相手の特徴は分かった。
ゾロと呼ばれる男は力自慢の剣士。腰にまだ1本の刀を差している所を見るに、本来は二刀流ではなく三刀流の剣士なのかもしれない。
サンジと呼ばれる男は蹴り技を主体とする格闘家って所かな。パワーもありそうだが何より脅威なのはスピードだ。1発で仕留めると言うより手数で押すタイプだろう。
「バイキルト、ピオリム」
「おい糞コック?今アイツの指先が一瞬光らなかったか?」
「確かにそう見えたなマリモ剣士。それに何か言っていた。何だったんだいったい?」
(このレベルの相手2人と同時に戦うのは面倒だ。どちらか片方を早い段階で終わらせる!!)
どちらも強敵だ。殺すつもりは無いが、油断するつもりも無い。
「しっぷう突き!!」
「まずは俺から倒そうってか?」
「刀は蹴りに比べて殺傷能力が高いからね。わざわざ後回しにする理由が無いよ」
「そうかい。なら後悔させてやるよ。俺から先に仕留めようとしたその考え方をな!!鬼斬り!!」
「はやぶさ斬り!!」
先程は押され気味だったが、バイキルトをかけたおかげで互角の鍔迫り合いが行われる。
むしろ今の状態ならソロの方が上だ。その証拠に相手は両腕なのに対しソロは片腕で対処出来ている。
「どうしたんだい?さっきまでのはまさか強がりだったのかな?」
「調子に乗ってんじゃねぇぞテメェ・・・お前ら下がってろ!!」
分が悪いと思ったのか、ゾロという男は1度大きく距離を取った。
そして懐から取り出したバンダナを頭に巻き付け、今まで以上の殺気を纏い始めた。
「三刀流奥義・・・三千世界!!」
「(この迫力・・・普通の技じゃ打ち負けそうだな)まじん斬り!!」
ゾロは手に持った2本の刀を回転させながら突進してくる。
それに対しソロは天空の剣を高々と上げ、そのまま真っ直ぐに振り下ろした。
(ガキンッ!!!!)
刀と刀がぶつかり合う巨大な金属音の後、お互いの持つ刀が遠くへと弾き飛ばされた。
「クソっ・・・三千世界が破られるなんて鷹の目以来だぜ・・・!!」
「鷹の目って言うのが誰なのかは知らないけど、相当強い剣士みたいだね。今の技を破るなんてさ」
とにかく刀が無ければ戦えない筈だ。これで残るはサンジと呼ばれる男のみ。
「次はキミの番だね?どうする?まだ戦うのかい?」
「戦うんじゃねぇ。捕らえるだけだ」
「それはほとんど同じ意味合いだと思うけどね」
どうやら戦う意思は変わらないらしい。それならこちらも抵抗するまでだ。
「回し蹴り!!」
「パーティーテーブルキックコース!!」
「飛び膝蹴り!!」
「バースコート!!」
相手に合わせて足技を使ってみるが、正直相手の方が格上だ。このままだとジリ貧になって負けるかもしれない。
「どうした?こんなんじゃ俺は倒せねぇぜ?」
「そうみたいだね。でもこれならどうかな?」
ソロは左足を軸に片足で立つ。前に興味本位で仲間のアリーナから教えて貰った足技を試してみようと思ったからだ。
「すぅ・・・爆裂脚!!」
「うおっ!?」
「サンジ君!!」
「おいおい!?サンジまで押され始めたぞ!?」
「ルフィを探してきてウソップ!!今すぐ!!」
「分かった!!」
向こうの2人が妙な動きをしているようだが今は関係ない。
何かしてくるならその時に対処すれば良い。
今この瞬間だけは目の前の敵に集中するべきだ。
「はぁぁぁぁぁっ!!!!」
「く・・・そがっ!!」
反撃の隙は与えない。このまま押し切る。だが人生というのはそう簡単には進まないらしい。
「ゴムゴムの・・・!!」
(誰だ?まさか新手の敵?)
「ブレット!!」
「っぐ・・・!!」
横腹に鋭い痛みが走る。片足という不安定な体制で立っていたソロはそのまま後方へと吹き飛ばされた。
(攻撃ばかりに集中して守りが疎かになっていた・・・こんな事ならスクルトもかけておくべきだった)
まさかあの状況で攻撃されるなんて微塵も思っていなかった。
まぁ少し慢心していた自分にも非はあったのだが。
「おいお前!!俺の仲間に何やってんだ!!」
「・・・・・・キミか・・・俺を殴り飛ばしたのは・・・」
「文句あんのか!?俺の仲間を殺っといて!!」
「「殺られてねぇよ!!」」
さっきまでソロの立っていた場所にいるのは、麦わら帽子を被った不思議な少年だった。
身体も細いし、とても自分を殴り飛ばせるほどの力があるとは思えない。
「それは誤解だよ。俺はただ正当防衛を
「嘘つけ!!ウソップが言ってたぞ!!変な男がゾロやサンジと戦ってるって!!」
「・・・いや・・・確かに間違ってはいないけど・・・」
「ルフィ!!そいつは敵よ!!早く倒して捕まえちゃって!!」
「またそれか・・・だから俺は
「任せとけ!!ゴムゴムの〜!!」
「手が伸びた!?」
ルフィという少年の腕はどんどん後ろへと伸びていく。
ある程度伸びると、そのまま勢いを付けてソロへと向かってきた。
「バズーカ!!」
「スクルト!!」
(ドゴォォォォォンッ!!!!)
攻撃を受けると同時にソロの表情が歪む。その表情からダメージはかなり深刻なのが伺える。
あまりのダメージにソロは立っていられず、この戦いが始まって初めて膝を着いた。
(スクルトで守備力を上げたのにこのダメージか・・・まともに喰らっていればヤバかったな・・・!!)
「ゴムゴムの〜!!」
「何度も喰らわないよ!!正拳突き!!」
ソロは咄嗟に腰を低くし、アリーナ直伝の正拳突きをルフィの腹に叩き込んだ。
(この感触・・・それにさっきからゴムって・・・まさか!!)
「ライフル!!」
普通の人間なら考えられないほどの回転を増した拳がソロの顔面を捉える。
これまで様々なモンスターと戦ってきたソロだったが、ここまで不思議な身体の造りをした相手と戦うのは初めてだった。
「その身体・・・キミは普通の人間じゃないようだね・・・?」
「おう!ゴムゴムの実を食べたゴム人間だ!!」
「ゴム人間・・・もしかしてバルザックみたいに進化の秘宝を使用した人間かもしくはキミ・・・」
ここで相手に聞こえないよう静かにピオリムをかける。
これで先程以上のスピードを出せる。それこそ相手にも分からないほどのスピードが。
「ん?」
「消えた!?」
「モンスターなのかな?」
一瞬でルフィとの距離を詰め、気付かれないよう背後に回り込む。
どうやら相手も気付いていないようだ。これなら反撃の心配をせず攻撃が出来る。
「ルフィ後ろだ!!」
「そこにいたのかこんにゃろ!!」
「爆裂拳!!」
「ゴムゴムのガトリング!!」
お互いに手数の多さで相手を攻め立てる。
本当にアリーナから格闘技を習っていて良かった。剣の使えない今、ソロがルフィの体術に対抗出来るのがこの格闘技だけだからだ。
(急所や顔面を捉えている筈なのに手応えがまるで無い。やはりゴム人間に格闘技は効かないか?)
今のところ自分に大きなダメージはない。だがこの手数の多さだ。少しずつ確実にダメージは蓄積されている。このまま長引けば不利なのはどう考えてもソロの方だ。
「はぁ、はぁ、強いねキミ。俺も結構強くなったと思ってたんだけどね」
「当たり前だ!!俺は海賊王になる男だからな!!」
「海賊王か・・・でも俺だって勇者として世界中の人々を守るって使命がある。こんな所で負ける訳にはいかないんだ」
そう言って頭の中にある1つの呪文を思い浮かべる。
この手だけはあまり使いたくなかった。体術しか使えない相手に呪文を使うのはフェアじゃないと思ったからだ。
だが今の現状を考えるに、呪文を使わなければ負ける可能性が高い。
絶対に負けられないソロは苦渋の選択で呪文を使うことにした。
「メラミ!!」
「うおっ!?何だ何だ!?」
間一髪の所でメラミが交わされる。そのままソロの唱えたメラミは海へと落ち、ジュワッと音を立てて鎮火した。
「やはり避けるか・・・なら次は
「すっげーなお前!?指から炎が出せるのか!?」
「え?いや今のはメラミって呪文で
「なぁなぁ!?他には何か出せんのか!?」
「えっと・・・メラ系以外の呪文ならヒャド系とかバギ系とか・・・」
「ヒャド系?バギ系?何だそれ?」
(呪文を知らないのか?不思議な人達だな。よくよく見れば服装も俺と全然違うし、刀も見たことの無い造りだ)
「「「「「乾杯〜!!」」」」」
(何故こんな事に・・・昼間までは戦っていた筈・・・だよな?)
その日の夜、ソロはルフィ達と一緒に遅めの夕食を食べる事となった。
どうやらソロの使う呪文が大層珍しく、気に入ったらしい。
「よう!!飲んでるかソロ!?」
「あぁ一応・・・これってお酒?」
「これはビールってお酒よ?」
「びーる?」
「ビールを知らねぇのか?ビールってのはこの世界で1番美味い酒なんだぜ?」
「へぇ、どれどれ・・・苦っ!!これ本当に美味しいの!?凄く苦いんだけど!?」
「この味が分からないなんてお子ちゃまねアンタ?」
そう言ってジョッキに入ったビールなるお酒を一気に飲み干すナミ。
ナミだけじゃない。ゾロもナミ以上に大きなジョッキでビールを飲み干していた。
「なぁなぁソロ!?昼間使ってた呪文ってやつをまた見せてくれよ!?」
「別に構わないよ?何が見たい?」
「「「ビーム!!」」」
ルフィ、ウソップ、チョッパーの3人が同時にビームという聞きなれない単語を口にする。
「びーむ?それってビールに似たお酒の名前?」
「ビームも知らないのかよ?こうピュンッて感じのやつだよ」
「ぴゅん・・・ごめん。全然分からない」
「何だ?じゃあビームは出せないのか?」
「ごめんねチョッパー君?多分無理だと思う」
「「「そっか・・・ビームは出せないのか・・・」」」
ビームが出せないだけで何故ここまで落ち込むのだろうか。ソロにはまるで理解出来なかった。
「何かごめん・・・」
「そいつらの事なら気にすんな。それより酒は苦手なんだよな?なら料理を楽しんでくれよ?」
「うん・・・って美味しい!!これ誰が作ったの!?めちゃくちゃ美味しいんだけど!!」
「俺が作ったに決まってるだろ?昼間は悪かったなソロ?無礼を働いた分いっぱい食べてくれよ」
「無礼だなんてとんでもない!!誤解が晴れて良かったよ!!」
サンジ君の作ってくれた料理は本当に美味しかった。こんなの普段の旅では絶対に食べられないほどの美味しさだ。
「それよりソロ?アンタってどこから来たの?そもそも何でウチの船になんか乗ってたのよ?」
「それが俺にもさっぱり・・・デスピサロのいるデスパレスって城へ行く為に旅の扉を潜ったのは確かなんだけど・・・」
「「「「「旅の扉?」」」」」
「旅の扉も知らないの?こう、入ったらぐにゃあってなって、気付いたら違う場所にいるんだ」
「「「「「???」」」」」
ルフィ達は揃って頭を傾げている。どうやら呪文だけでなく旅の扉も知らないらしい。
「旅の扉ってのはよく分からないけど、つまりアンタはそのデスピサロって奴を倒す為に世界中を旅してたって訳ね?」
「そういう事になるかな?」
「そのデスピサロってのは何者なんだ?」
「デスピサロも知らないの?世界中にはびこるモンスター達の親玉だよ」
「モンスターってのは怪獣や猛獣とは違うのか?」
「全然違うよ。俺みたいに呪文や特技も使ってくるし、中には人間以上の知識を持つ奴だっている」
「「「「「へぇ〜?」」」」」
何故だろう。言葉は通じてる筈なんだがどこか話が噛み合っていない気がする。
「ねぇ?悪いんだけど世界地図とかって持ってないかな?」
「そんなのねぇよ?」
「無いの?なら次の島に着いたら買ってもいいかな?」
「多分どこにも売ってないと思うぜ?」
「売ってない?何で?」
「この世界を最後まで制覇したのは海賊王ゴールド・ロジャーだけだからに決まってんでしょ?だから世界地図なんて無いの。ゴールド・ロジャー以外この世界の全てを知ってる人なんていないんだから」
「・・・え?」
この質問で今度はソロの方が頭を傾げた。
世界地図が存在しないなんてありえない。何故なら自分はその世界地図を頼りに世界中を旅してきたからだ。
「ねぇみんな?みんなはサントハイムって国に聞き覚えはない?」
「知ってるかウソップ?」
「いや?サントハイムなんて聞いたこともねぇな?」
「じゃあエンドールは!?モンバーバラは!?コナンベリーは!?」
「聞いたことも無いわね?」
「そんな・・・まさか・・・」
その時、ソロの脳裏にある1つの可能性が過ぎった。
だがそれをソロは慌てて否定する。
流石に可能性としてはあるかもしれない。だがそれは物語の中だけの話だ。現実に起こりうる筈がない。
「っ・・・ルーラ!!」
「お?また新しい呪文を見せてくれるのか?」
「ルーラってどんな呪文なんだ!?」
(ルーラが使えない・・・って事はやっぱり・・・!!)
考えたくはなかった。だがルーラも使えない、エンドールやモンバーバラのような有名な町の名前すらもみんな知らない、となるとこれはもう疑いようがなかった。
(旅の扉を潜った時に・・・全く違う別の世界に来てしまったのか・・・!?)