明久達のSAO (凍結)   作:セイイチ

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第十七話

僕は今、雄二と翔子それに優子を加えた四人で第二層主街区《ウルバス》の中心部近くを歩いていた。

「たく、何で俺が翔子に付き合ってこんな所に来なきゃならねんだ」

「そんな事を言う割りに、しっかりと付いて来てるじゃない。意外と雄二って翔子に優しいわよね? 嫌がってるように見せて、実は今までのって、照れ隠しだったの?」

「笑えない冗談は止めろ優子。嫌がってるように見えるんじゃない。実際に嫌がってるんだ」

「‥‥‥雄二、テレなくてもいい。ちゃんと分かってる」

「俺の気持ちを分かってる奴なら、こんな事は絶対にしないぞ? ところで翔子」

「‥‥‥何?」

コイツは、なんでこんなに嫌がるんだか。美人な翔子と腕を組んで歩けるなんて妬ましい事この上ないっていうのに。

「前から何度も言ってるが、俺の腕はそっちには曲がらないんだが?」

「‥‥‥腕を組んでないと雄二は逃げちゃうから」

そう言って翔子は組んでいる手に、より力をいれたみたいで

「痛っ! って翔子! 逃げないからこの手を離してくれ!」

「‥‥‥でも世の中のカップルは腕を組んで歩くものだから」

「お前は世の中のカップルが腕を組んで歩くのは関節を決めるためだと思ってるのか!?」

「‥‥‥違うの?」

「断じて違う! そんな事を毎回やられたら、男の方が楽しそうに遊ぶ事ができないだろ!? いいか? 普通のカップルっていうのはだな‥‥‥」

な、なんて恐ろしい勘違いをしていたんだ翔子は‥‥‥

けどそうか、翔子は関節を決めながらカップルと歩くのが普通だと思ってたのか‥‥‥

翔子は雄二に正しいカップルのあり方を説明されて、自分がしていたのは間違いだと言われてるような気がしたのか、段々落ち込んできてしまった。

見ていたら何だか、翔子が可哀想に思えてきた。

「翔子、雄二の言ってる事は気にしなくていいよ? 世の中には正しいカップルのあり方なんてないんだから。そのカップル同志が好きな腕の組み方をしたって、問題なんかないんだよ?」

「‥‥‥そうなの? 私たちの好きなように腕を組んでも問題ない?」

「全くないよ。‥‥‥ほら見て? 雄二だって今よりも、さっきまでの腕の組み方の方が元気でしょ?」

「はっはっは。明久。今更翔子に何を言っても無駄だ。もう既に翔子には正しいカップルのあり方をーー待て翔子、俺の腕はそっちにはぎゃああぁぁぁああ!!」

雄二は一度は解放された腕を再び翔子に掴まれ、関節技をかけられた。

許せ雄二。落ち込んでる翔子が可哀想だったんだ。それに

「‥‥‥ありがとう明久。おかげで雄二が元気になった」

「そんな。僕は何もしてないよ」

僕は雄二が一人だけ幸せになるなんて許せないだ。

「明久、雄二が凄い形相で睨んでるわよ?」

「翔子! 雄二があそこで歩いてる人に見惚れてたよ!」

「なっ!! 待て翔子! 早まるな! これは明久の罠だ! 俺は誰にも見惚れてなんていねぇ!」

「‥‥‥雄二、浮気は許さない!」

「ぎゃあああぁぁああ!! 目がぁぁああ!!」

翔子は雄二の言ってる事なんてまるで聞いておらず、雄二に目潰しをし、雄二は痛みに悶え苦しむ事になる。

ふぅー。これで僕の安全は確保された。

「明久、アンタって意外と鬼ね」

はて? 何のことかな? 僕は自分の安全を守っただけだけど?

「明久、テメェ〜」

はっ! マズイ! もう雄二の視力が回復してきてしまった!

僕等の持ってる圏内でも相手に苦痛を与える手段の悪い所は、力を入れすぎるとシステムに妨害されてしまうから、手加減して攻撃しないといけないんだけど、その分現実世界よりも早く痛みが引いてしまうのだ。

僕は雄二に報復される前に素早く動くが

「翔子! 雄二がー」

「待て! 明久! これ以上は俺の体が耐えきれん!」

雄二に妨害されてしまう。

「(明久! お前は俺に何の恨みがあるってんだ!)」

「(恨みは色々とあるけど、今回のは純粋に雄二が幸せになるのが許せなかっただけだ)」

「明久! お前ふざけん「ふ、ふざけんな!!」な?」

雄二の声と被せるように、人の集まっている所から怒鳴り声が聞こえてくる。

「何かしら? 今の」

「‥‥‥けんか?」

「その割りには一人分の声しか聞こえてこないけどな」

「とにかく行ってみようよ」

僕等は人混みの方へと近づいて行き、ケンカしている当人達の姿が見える位置まで移動してくる。

「何で+4の武器が+0エンドになんだよ! 4回連続で失敗とかありえねぇだろう! これならNPCにやらせた方がマシだったじゃねぇか!」

「す、すみません」

ケンカというより、一方的に剣を持った男が、ドワーフにも見える鍛冶屋? に怒りをぶつけているように見える。

「なるほどな。そういう事か」

雄二には何が起こったのか、もう分かってしまったようだ。本当こういう時には思うけど、どういう頭の構造してるんだろう?

「分かったって何でこんな事になってるのかって事が?」

優子が信じられないという表情で雄二の顔を見ると

「ああ、あくまで予想だがな。まぁ間違ってはいないだろうな」

雄二は自信満々に優子に答えると、自分の予想を話し始める。

「恐らく、今喚いている方奴があの鍛冶屋に強化の依頼をしたんだろうな。だが、あの鍛冶屋がいざ強化を行うと、四連続で強化に失敗したんだろう。それであんなにあの男が怒ってるんだろう」

「けど、それは強化をお願いする側も分かってる事でしょ? あの鍛冶屋なんて、今のレベルと素材を使用した時の成功率まで紙に貼ってあるじゃない」

まぁ、優子の言い分は正しいけど、こればっかりは経験しないと分からない。

自分が今まで大事に育てた剣が一瞬にして弱くなってしまうんだ。あれは本当に辛いもんなんだ。

僕にはベーター時代に同じような事を経験したから、あの男の気持ちは良く分かる。

男は未だに騒いでいたが、男の仲間らしき人達が二人男に近づいて行き、肩を叩いて落ち着かせる。

「落ち着けってリュフィオール。またアニブレのクエスト手伝ってやるからさ」

「一週間も頑張れば手に入るんだから頑張ろうぜ。んで今度こそプラス8にしてやろう」

「ああ、すまん二人とも。悪いがもう一度付き合ってくれ」

うわっ! 今はアニールブレードのクエスト一週間もかかるのか。早く取っておいて良かった。

「あの‥‥本当にすみません。今度は、もう内を使うのは嫌かもしれませんけど、今度こそ本当に頑張りますから」

「いや、あんたのせいじゃねぇよ。あんたは失敗した時は素材を使った分だけのコルだけで、それ以外のコルは取らないとまで言って強化をやってくれてんだらな。‥‥‥さっきは熱くなって悪かったな」

へぇー随分と客に優しい店なんだな〜。強化に使う素材代だけでいいってことは、失敗した場合はタダでやるって事だ。

「いえ、それも僕の仕事の内ですから‥‥それであの、ウチの不手際でその剣を台無しにしてしまいましたから、その剣八千コルでウチに買い取らせてくれませんか?」

おお! 八千コルで買い取る? 凄いなあの鍛冶屋。

今はエンド品のアニブレは四千コルが相場なのにその倍の八千コルで買い取るなんて。

リュフィオールも僕と同様に驚いているが、こんないい条件での買取を拒む事なく受け入れたようだ。

そして、この騒ぎ収まり野次馬と化していた人達は散り散りに散って行った。

「さぁ、人も少なくなったし、私達も早く行きましょ? 元々これが目当てでここまで来てるんだし」

そう。優子の言う通り、僕達は剣の強化にウルバスまでわざわざきたのだ。

因みに僕と雄二は二人の付き添いだ。

先日の体術スキルをしていた三日の間連絡をよこさなかった罰らしい。

ムッツリーニも今頃愛子に連れ回されているはずだ。

けど、今はムッツリーニの事はどうでもいい。

僕は今、嫌な予感に心を埋め尽くされている。

このまま行ったら悪い事が起こるような、そんな予感だ。

「んー。ねぇ優子、強化するのは、また今度にしない? もう素材は集め終わってるんだし、そんなに急がなくても大丈夫でしょ?」

「けど、次の機会にする必要もないでしょ?」

うぐっ、そう言われると返しようがない。

「まぁ、でもいいわ。また今度にしてあげても。その代わり、今日の夕食を明久が奢ってくれるならね?」

くっ! 何で僕が! けど、このままならまず間違いなく優子は強化をしてしまうだろう。

それだけは避けないといけないような気がする。なんでか分からないけど‥‥‥仕方が無い。

「分かった。じゃあ夕食は僕が奢るけど、これからどうする? 夕食までには、まだ大分時間あるけど」

「‥‥‥明久、私と雄二はこれからアルゴに用事があるから、別行動。後、夕食も私達は必要ない。雄二が奢ってくれるから」

「あ、そうなんだ。了解だよ。けどアルゴに用事って、何か知りたいことでもあるの?」

僕でも知ってることなら、わざわざアルゴに聞かなくても、教えてあげらるんだけど

「ああ、アルゴに結婚のことについてちょっとな」

ん? 今こいつは何て言った? 結婚って言わなかったか? いや、いやいやいや、僕の聞き間違いか何かだろう。

雄二の口から結婚なんて言葉がでてくるわけないよね? 僕はきっと疲れてるんだ。うん。そうに違いない。

「結婚って、まさか!」

どうやら優子の耳も結婚と聞き取っていたみたいだ。

という事は僕の耳は正常であり、雄二は

「翔子、おめでとう。良かったね? 遂に夢がかなって。雄二、貴様はこれから背中に気をつけておけ。いつか背中を刺されて死ぬ事になるから」

雄二だけ幸せになるなんて、そんなの僕は認めない。絶対背中を刺してやる。

今の僕にはPKを躊躇したりしない。確実に背中を刺してやる。

「何を勘違いしてるんだお前は。俺達が聞きに行く結婚の話はリスクについてだ」

「リスク? それ位なら僕でも知ってるのに、なんでアルゴに聞くの?」

「お前らじゃ、直ぐに翔子の味方をして、結婚させようとしてくるのは目に見えてるからな。ここは部外者であり、且つ明久よりもこの世界の事を知っているアルゴと話す。これなら完璧に翔子を諦めさせられる」

「‥‥‥雄二、私は何があっても諦めない」

「そんな事を言ってられるのも今の内だ」

‥‥‥雄二、君はアルゴの事を未だ理解しきってないみたいだね。アルゴは基本何でも情報として売っちゃうような人なんだ。そんな事相談したら面白がって翔子の味方をするに決まってるじゃないか。

「あれ? でも雄二この前、翔子が結婚について本気で考えてきたら結婚するって言ってなかったけ?」

「記憶を改ざんすんじゃねぇよ!! バカ久! 良く思い出せ! 俺は考える位はしてやると言ったんだ! 結婚するとは一言も言ってない!」

‥‥‥なんて往生際の悪い。

「雄二、もう諦めて結婚しなよ? 翔子が可哀想でしょ? で結婚したら雄二は直ぐ死ね。それで皆幸せになってハッピーエンドだよ」

「それは俺に取ってはバッドエンドだ! とにかくだ! 俺達は今から会いに行く。お前等はお前等で好きに過ごせ」

そう言って雄二は翔子を連れてこの場を去ってしまった。

「ねぇ明久?」

「何優子?」

「これってどう考えても雄二の思い通りにはならないわよね?」

「うん。百パーセントならないよ。けど多分結婚は、まだしないんじゃないかな? 雄二は往生際が悪いし」

アイツは多分何だかんだ言って今回も結婚せずに終わるけど、アルゴに情報を握られて、更に不利なるだろう。

「じゃあ、そんな見え見えの展開を見に行っても仕方ないわね」

「そうだね。行くならもっと雄二を追い詰めてからじゃないと。アイツは、まだまだ元気だから長期戦になるね」

「そうね。じゃあアタシ達はレベリングにでも行きましょう。夕食までは時間かなりあるし」

こうして僕と優子はレベルリングに、翔子は幸せに近づきに行きに、雄二は追い込まれに行く事になった。

 

僕等がレベリングを終えて夕食を食べるためにウルバスに帰る道中、優子は、ここで知り合っ女性プレイヤーと仲良く会話しながら帰っており、僕は一人で優子達の後ろを歩きながら、独り言を呟いていた。

「第二層では牛がメインでMobが出てくるんだよね。この層のボスも牛だったはずだから、しっかりと慣れておかないといけないな」

‥‥‥牛? 牛と言えば何か忘れてるような気が‥‥

あっ! 牛のミルクを大量に使ったケーキだ!

‥‥‥優子はケーキの存在知らないよね?

僕は第二層限定で販売されているケーキを思い出し、冷や汗をかく。

今日、僕は夕食を奢る事になっている。

もし優子がケーキの存在を知っていたら‥‥マズイ!

あのケーキはベーター時代に一度食べた事があるが、異常なほど高いんだ。

あんなものを奢らされたら大損害だ。

幸いケーキの売ってる店は看板がなく、出入り口も狭い店で、今の段階では知ってる人は殆どいないはずの店だから、心配する必要はないはずだけど、一応優子がその事を知ってるか確認しておくべきだろうと思い、僕は、優子が仲良くなったプレイヤー(僕は名前を聞いていないから、相手の名前は知らない)が優子と別れた時、思い切って優子に聞いた所、優子はその店とケーキの存在を完璧に知っていた。

「因みに明久、夕食って言うのは、デザートもセットだからね?」

これで僕は今日の狩りでの殆ど全ての稼ぎをケーキに失う事で確定した。

僕は、安易に夕食を奢ると言った僕を恨みたくなった。

雄二不幸なのは、どうやら僕も一緒だったみたいだよ。

僕は雄二の不幸だけを望んでいたのに、自分も同じように不幸になった事で足取りが悪くなったが、優子はそんなのはお構いなしにどんどん進んで行ってしまい、僕はその後ろをトボトボとついて行ったのだった。




今回からいよいよ第二層の話が本格的に始まります。
前回も一応、二層での話ですが、この話から第二層での本番です。

ここで、作者から明久達に珍しくメッセージを
ケーキを奢ることになった明久、恐らく(本編で書く気が無いので恐らく)アルゴにも結婚を進められて、段々追い詰められて行った雄二に一言、ドンマイ!
今は不幸でも、いつかきっと幸せになれるよ! 多分!

それでは今回はこの辺で
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